緑色の復讐
百合ひろし:作

■ 第三話9

元々桜流忍術は"基"である「風を感じる」事が重要であり、それを体得する手段というものはその時の師匠によって違っていた。つまり希美と霞は同じ母から受け継いだ訳だが、霞はほぼ母のやり方を踏襲し、練習時は面を着けて可能な限り視界を制限するが、臍出しランニングというのかタンクトップと言えばいいのかという上半身に半ズボンというスタイルで肌を出し、それで練習して来た。
霞は現在小学校四年生で、今から二年前の二年生の時に母が希美を後継者として指名したがその時点で既に相手が大人でも格闘経験が無くかつ闇討ちならば仕留められる位の腕にはなっていた。
その時よりも腕を上げてる今なら、漸く音を立てずに歩ける様になったレベルの遥相手なら正対した状態からでも仕留められる───。
つまり、希美の様に服を脱ぎ捨てて恥ずかしい思いをしてまでパンティ一枚姿でやる必要など無い、と思っていた。とはいっても師範は希美なのだから"希美に習っている"遥は希美の言う事を聞くべきであるのは当然だった。

一方希美は母から習っていた時から既に、風を感じる必要性から服を着て練習している事に疑問を持っていた。更に頭の上に水を入れたコップを乗せて体を揺らさず音を立てない練習をしていたのも、溢した場合コップを拾って水を汲み直すのが手間であるし、何よりコップも水も無機物であるのでそれから伝わる感覚、感触も無機的な物だと感じていた。つまりそれらの不満を全て解決したのがパンティ一枚というスタイルだった───。
希美は母から師範を継ぐ前にも一人になった時にパンティ一枚になって試していた。すると体は自然の息吹を真正面から感じ、水とコップの役割は乳房が受け持った事で体の僅かなブレが乳房の揺れとしてダイレクトに伝わった。この事で今まで得られなかった感覚を手に入れられた───。

そして余談になるが、母から師範を継いでから初めてこの場所に来た日、これからは自分の思うがままに出来るという喜びから面を着けて服を脱いだ時から一気に感じ始めて、
「あっ───ああ、あん!」
とあえぎ、体をビクビク反応させながらブラジャーを外して、勃った乳首を晒した後、小屋から出るや否や既に濡れていたパンティの中に手を突っ込み立ったままでマスターベーションを始めた。しかしすぐに快感に耐えられなくなり、崩れ落ちた後仰向けになった───。漸く自分の思う通りに修行出来る喜びの他にも風にも乳首を撫でて貰える悦びを感じながら激しいマスターベーションに耽った。
「あーっあ、あ───ああん!!」
と声を枯らすまで何回もイッた希美は、最後に限界まで体を反らした後左右に暴れる様な感じで動いた後、一気に崩れ落ち今までしたことが無い様な激しい痙攣をした。パンティは愛液を吸収しきれずにグシャグシャに尻まで濡れ、更にはそれだけでは足りず太股の内側は勿論、河原の石をも濡らした。この日、ここにいたのは修行しに来た希美ではなく、ただ単に面を着けパンティ一枚姿で片膝を立てて快感をむさぼった後に痙攣していた希美だった───。

希美はブラジャーを取った遥を見て、師範になって最初にした事が"イキまくる"事だった事を思い出し、クスッと面の中で笑った。それから風に向かって立ち両腕を軽く広げて風を受け入れて背中を反らし、顔を空に向けた───。
「気持ちいい……」
希美はそう思った。いつもある程度の快感は感じていたがこの日の希美の乳首はいつもより勃起していた。そしてパンティを直す時に股間に触れるとイヤらしい音と濡れた感触が指に伝わった。
「あ……ん」
希美は体を反らしたままあえぎ声と共に一回ビクッと体を震わせた後、師範になったその時以降殆んどしていなかったマスターベーションに耽りたい気分になったが気を取り直した。近くに遥や霞がいるときに快感の虜になる訳にはいかなかった。
そして遥の隣に移動して動きを観察していた。勿論指導する為である───。
遥は乳房を揺らさない様、今まで以上に慎重に歩いていた。ブラジャーを外しただけで今まで出来ていた事がこんなにも難しくなるなんて、と思いながら今までは河原の石だったのが今は岩の上を伝う様な気分で歩いていた。
「はぁ……駄目だ。難しい」
遥はそう呟き、ピンクのパンティに指を通して直した───。そして地面に手をついてしゃがんで休んでると、霞が希美と格闘の稽古を申し込んでいた。とはいっても、お願いします、といって正式に申し込んだのではなく、遥に指導をしようとした所に突然攻撃を仕掛けるといった具合だった。
霞の不意打ちを希美はかわし、向き直って二歩下がって間合いを開いた。それから一気に間合いを詰めて低い体勢になって霞の足元を狙う蹴りを出した。ここまで無駄な動きが一切無い───。
霞は後ろにジャンプして避けた。すると希美は霞のその動きが分かっていたかの様に更に間合いを詰めた。
「しまっ……!」
霞は自分のミスに気付いた。希美に一撃を入れる事だけを考えていたせいか、桜が散る時の静けさの様な動きを忘れてオーバーアクションになっていた。後ろに飛んで避ける等論外で、それから静かに着地するのがどれだけ難しいか───。
霞は何とかガードしたが、着地と同時に希美の回し蹴りをまともに受けてしまい吹っ飛ばされ、地面に叩き付けられた。
「う……くっ……」
小学生には厳しい攻撃に霞は目に涙を溜めていたが声を出して泣く事だけは堪えていた。そこに希美が音を立てずに近付き止めを入れ霞を気絶させた。
「霞───貴方は雑音が多すぎるわ。何処から来るか全て解るから」
希美はそう言い、遥の方に振り返った。遥は一瞬で終わった二人の格闘に驚いていた。正直今の自分では霞にすら敵わないだろう。希美は霞に雑音が多すぎると言ったが、遥から見れば霞から雑音なるものは全く感じられなかった。霞は極めて静かに、初めて遥と会った時の様に希美に近付き、攻撃を仕掛けたと感じた。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊