悪魔のメール
木暮香瑠:作

■ 新たな要求3

 午後の体育の授業が、もうすぐ始まる。体育館でのバレーボールの授業だ。2クラスが、男子と女子に別れて合同での授業である。バレーボールの授業は、体育館に2面、バレーボールのネットを張り、男子と女子が各々のコートを使う。

 美樹は、まだ体操着に着替えることが出来ないでいた。更衣室の残っているのは、美樹と由布子だけになっている。
「美樹、もう行くよ」
 すでに体操着に着替え終わっている由布子が、美樹に声をかける。
「う、うん。先に行ってて……」
「美樹も早くね」
 美樹は、由布子が更衣室を出るのを確認し、制服を脱いだ。一人残った更衣室の中、美樹の身体が蛍光灯の光に照らされ白く輝いている。体操着を手に持ち、胸の前でギュッと握り締めている。美樹は、なかなか着ることが出来なかった。体操着を着るには、今、美樹の胸と秘部を隠しているブラジャーとパンティーを脱がなければならない。
(脱がなくちゃ、早く脱がなくちゃ、授業が始まってしまう……)
 美樹は、しばらく戸惑ったあげく、ブラジャーのホックに手をかけた。今まで、フルカップのブラジャーに押し込まれていた相乳が、ブルンと跳ねた。ブラジャーによる支えを失っても、美樹の相乳は、垂れることなく重力に逆らって、お椀型を保っている。その先端に、ピンクに染まった小さ目の乳輪と半分埋まった乳首が載っている。

 ウエスト56cmの華奢な身体に、85cmのバストは、美樹にとってはコンプレップスだった。中学二年生の夏頃から、男の視線が気になりだした。町を歩けば、男達に露骨な視線を浴びせられた。学生からサラリーマンまで、まだ幼い美樹の顔を見た後、必ず視線を胸に落とす。そして、せーラー服を押し上げた胸を見て、驚いたような表情を見せた。中には、露骨に美樹に声をかけるものもいた。
「お姉ちゃん、いい胸してるね。いくつだい。Dカップか? Fカップか?」
 中学生の美樹には、ただ恥ずかしさに頬を染め俯き、その場を小走りに走り去ることしか出来なかった。高校生になっても、肉丘をフルカップブラで押さえ込み、目立たないように気を配っている。

 美樹は、急いで体操着に首を通し、その胸を隠した。
「ふうーー」
 美樹は、大きく息を一つ吐き、パンティーに指を掛ける。すでに、頬を赤く染めている。
「脱がなくちゃ……」
 自分に言い聞かせて、お尻からパンティーを下ろしていった。染み一つ無い相肉が現れてくる。コンパスで円を描いたような真丸い相尻を露出させ、美樹は手を止めた。これ以上下げると、股間を飾っている茂みが露出する。恥ずかしさに手が止まる。美樹は、目を瞑り、一気にパンティーを引き下げた。
「いやっ、だめ……。恥ずかしい……」
 股間を、梅雨明けま近の、生暖かい湿った空気が直接撫ぜていく。学校の中でパンティーを下ろし、陰毛を露出させている自分が恥ずかしく、美樹は床にしゃがみ込んだ。
(できない……、できないわ……)
 美樹は、パンティーを急いで引き上げ、ブルマーを履いた。
(ブルマーを履いてるんだもん。判るわけないわ……)
 美樹が、更衣室を後にしたと同時に、授業開始を告げるチャイムが鳴った。

 準備運動の軽いランニングが始まる。体育館の中を壁に沿って走る。ブラジャーの支えから開放された相乳は、足を運ぶたび大きく揺れた。男子生徒たちは、女子生徒の体操着姿のランニングを眺めている。普段の体育の授業は別メニューで、同じ場所で授業をすることは少ない。男子生徒にとって、Tシャツにピンクのブルマー姿は、同じ体育館での授業の楽しみだ。
「おい、見てみろよ。美樹の胸、ブルンブルン揺れてるぜ」
「おおっ、ほんとだ。すげー。美樹って、あんなに大きかったか? おっぱい……」
 女生徒たちのランニング姿を眺めていた男子たちの会話が聞こえてくる。美樹は、顔を赤く染めながら、恥ずかしさと戦っていた。美樹の後ろを走っている由布子が、美樹がノーブラなのに気付いた。
「美樹、どうしたの? ブラジャー、してないの?」
「う、ううん……」
「やばいよ。男子たち、みんな見てるよ。どうしたの?」
「替えのブラジャー、忘れちゃったから……。汗吸ったブラジャー着けたまま、6時間目の授業受けるの、イヤだから……」
 美樹は、俯いて曖昧に答えた。
「だ、だいじょうぶ……。今日だけだから……」
 美樹は、自分に言い聞かせるように小さな声で頷いた。

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