瑞希と悠希の放課後
木暮香瑠:作

■ 策略の代償

 ラグビー部の部室は、いつにない賑わいだった。集まった生徒たちは、秘密ショーの出演者の噂で持ち切りである。
「今回も一万円って事は、瑞希先生並みの美人って事だよな」
「そうすると悠希って事か?」
「悠希の今日のスカート、短かったよな」
 みんな、期待と願望を込め、にやけた顔で隣の観客と噂話している。

 カーテンの陰で一人佇んでいた悠希に裕司が話しかけた。
「緊張してるのか? しばらくは稼がせて貰うぜ。約束だからな」
「心の準備をしてただけ……。か、覚悟はできてるわ」
 悠希は、震える声で答えた。しかし、すぐに気を入れなおし、「さっさと始めましょ!」と、自分を奮い立たせるかのように語尾を強め、きりっとした瞳で裕司を見た。
「お前も、気の強い女だな。真莉亜に復讐して……、そして自分の身を晒してまで、あの男を自分のものにするなんてナ」
 悠希は、床の一点を見詰め裕司の話しを聞いている。
「これで真莉亜も大人しくなるだろう。いやっ、ラグビー部員たちのチ○ポを突っ込まれ、大声で喘ぎまわってるか。ふふふ……。お前たちにちょっかい出すことも無くなったって訳だ。瑞希先生の淫らな姿も恋人に見せつけ、お前も心置きなくアタックできるって訳だ。うまいことヤッタな。自分はお姉ちゃん思いを気取って……」
「あなただって得があったでしょ、真莉亜さんから解放されて。これで気兼ねなくお姉ちゃんを口説けるんだから……。だから私の提案を受けたんでしょ?」
「ふーーん、まあな……」
 裕司は口元をニヤッと吊り上げ、満足気に頷いた。

 しばらく俯き沈黙していた悠希が呟くように言う。
「お姉ちゃんが許せなかったの。恋人が居るのに、他の男で感じるなんて……。隆さんが可哀相過ぎる」
 重々しい雰囲気が二人の間に漂う。その重々しさを振り払うように裕司は、カーテンの向うの観客に聞こえる位の大きな声で悠希の背中を押した。
「さあ、始めようぜ」

 裕司がショーが始まることを告げると、その場は静寂と緊張に包まれた。皆が期待する女性が本当に出演するのか、固唾を呑んで見守っていた。

 悠希と観客を隔てていたカーテンが引かれた。制服姿で佇む悠希を目にした観客の間から、「うおお……」という低い歓声が上がる。胸の前で両拳をギュッと握り締め、頬を朱に染め佇む悠希の姿は、羞恥心と強い決意が表れていた。観客たちのギラギラとした視線を受ける中、悠希が口を開いた。
「み、みなさん、今日は来てくださって……ありがとうございます。わたしの幼い裸でよければ、楽しんでください」
 裕司に教えられた口上を、震える声で述べていく。
「それから……、今年度中……私はみなさんが勉強に励めるよう努めててまいります」
 まるで、生徒会長就任の決意を述べるような挨拶が続く。
「モヤモヤが溜まったら、お言い付けください」
 緊張で強張った唇を、悠希は必死で動かした。
「一回五千円で、みなさまの性欲を処理させていただきます。わたしの口でご奉仕させていただきます。高田裕司さんを通して、私に言い付けください」
 口上を言い終えた悠希は、ふうっと息を吐き天井を見上げた。そして、胸元を飾る制服のリボンを解いていった。

終わり


■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊