夢魔
MIN:作

■ 第1章 淫夢4

 上郷弥生は26歳で、この学校のOGだった。
 東京の大学を出た後、都内で働いていたが両親を事故で亡くし、自宅の管理のためこの町に戻って来た。
 薬学を専攻していた彼女は、自宅に戻って父親の跡を継ぎ、漢方の薬剤師に成ったが、それだけでは生計が立たず、去年の春から母校の養護員を始めた。
 弥生の身体は身長160p体重47sB83W60H80とモデル並みで、少し吊り上がった大きな目、すらりと伸びた鼻梁、薄い唇に細く無駄のない顎のラインを持ち全体的に、冷たく気の強そうな顔に、銀縁のメガネを掛けている。
 しかし、実際は内気な性格で無口なため、友人も居らず人付き合いが苦手なタイプであった。
 そんな彼女は、夜毎自分を悩ませる淫夢に、どっぷり嵌り込んでいた。

 授業のチャイムが鳴り、弥生は椅子に深くもたれ掛かる。
 実際授業が始まれば、弥生の仕事は無いに等しい。
 たまに気分が悪くなって、生徒が保健室を訪れるのは、3時限目を過ぎた辺りだし、今の時間帯に生徒や教師がここを訪れる事は、まず無かった。
 深く椅子に腰掛けた、弥生がうつらうつらと居眠りを始めた時、どこからとも無く時計のアラームが聞こえる。
 すると、弥生はフラフラと立ち上がり、保健室のベッドに歩いて行き、コトンと横になると途端に眠りについた。
 眠りにつくと同時に身体から、すっと力が抜け瞼の裏で、瞳が激しく動き出し、うっすらと開いた唇から淫声が漏れ始める。
 弥生はここでも、淫夢に侵され始めた。

 弥生が淫夢に侵されている頃、郊外の森下家では、昨晩深夜勤を終えた、美紀の母親、森下梓(もりした あずさ)が疲れた身体に、熱いシャワーを浴びせていた。
 梓はこの町の総合病院に勤務する、形成外科医だった。
 高校で夫と出会い、卒業と同時に結婚、第一子で有る美紀の姉美香を出産し、直ぐに美紀を身ごもる。
 しかし、出産直前に夫は事故で亡くなり、乳飲み子二人を抱え途方に暮れたが、持ち前の努力と頭脳で大学に合格し、夫の保険金を使いながら、医師免許を習得し今に至る。
 実年齢は36歳だが、バイタリティー溢れるその姿勢のせいか、10歳は若く見える。
 美姉妹の母親だけ有り、その容姿もスタイルも申し分の無い、美人女医であった。

 しかし、この美人女医も、淫夢に悩まされる一人だった。
「ふ〜っ…最近どうしたのかしら…欲求不満なのかな…確かに、慶一郎さんとは最近会えてないけど…それにしても…あんな夢…」
 梓は同じ病院の外科部長である、柏木慶一郎と現在不倫関係にある。
 柏木は梓の6っつ上だが次期、副医院長の呼び声の高い、切れ者で有った。
「最近少しも会ってくれないから…身体が疼くのよ…フンだ…」
 梓は火照る身体をシャワーで鎮め、疲れを癒そうとする。

 しかし、そのシャワーを浴び始めると、梓の身体に変化が起こり始める。
 身長162p体重51sB90W63H85の身体は、うっすらと脂肪が乗りそれが艶と成って現れた豊満な身体。
 2人の子供を産んだとはいえ、早くに夫を亡くし、女手一つで子供を育てていたため、女の喜びを知ったのは、ごく最近だった。
 その熟れた身体は、喜びを教えられただけで、満足する程の回数をこなしていない。
 言わば、お預け状態が続いているような物だった、その身体がシャワーの水流で、目覚めてしまった。
 自然に乳房に伸びた手が、緩やかに乳房をもみ始めると、シャワーヘッドを掴んだ右手が、下腹部に降りて行き、オ○ンコに熱い水流を当てる。
 熱い奔流がクリトリスを刺激し、急速に快感を押し上げる。

 高ぶる快感の中で梓は、自分の彼氏以外の名を呼んでいる。
(ああぁ…お願いします…許可を…許可を下さいませ…○×△様…梓はもう我慢できません…)
 しかし、おこりが掛かったように震える身体は、絶頂を向かえる事が出来ない。
(お願いです…お願いします…何でも…従いますから…イカせて下さい〜…)
 そして、どれだけ快感が襲おうとも、梓は絶頂を迎えられなかった。
 はぁはぁと荒い呼吸をする梓は、拗ねたような表情でシャワーヘッドを放り投げると、お湯を止めた。
 欲求不満は高ぶるばかりで、その身体を鎮める事も出来ず、梓は風呂場を後にする。

(何なんだろう、最近こんな事ばかり…前は簡単にイケたのに…こんなんじゃ、生活にも影響出ちゃうわ…)
 梓は火照った身体をもてあまし、バスルームから出てバスローブを羽織ると、キッチンに向かい冷蔵庫を開ける。
 冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出すと、プルトップを開け一口あおる。
「あーもう…ムシャクシャするー! 何なのよ一体…」
 梓は言いようのないフラストレーションをため、地団駄を踏む。
 すると、どこからとも無く時計のアラームが鳴り、それを聞いた梓の表情から意志が消える。
 缶ビールを置くと、フラフラと寝室に進み、ベッドに横になると、そのまま深い眠りに落ちてゆく。

 梓が寝室で眠りに着いた頃、美紀と沙希は移動授業で廊下を歩いていた。
 3時限目の授業は、化学実験室で実験の授業だった。
「ねぇ…小室先生ってさ…何か良くない…」
 沙希が小声で美紀に耳打ちしてくる。
 美紀は、驚いた顔で沙希を見詰める。
 化学教師の小室はどちらかと言えば、もてるタイプの人間では無く、人によっては激しく嫌悪するタイプの、中年の陰気な教師だった。
 だが、美紀はその事で驚いたのではなく、美紀も人知れず想いを寄せていたからだ。

「あの白衣を着て長身で、メガネの奥から覗く瞳が…ゾクって来るの…変かな私…」
 頬を赤らめながら沙希は、美紀に告白する。
(ど…どうしよう…私も沙希と同じだ…。沙希も小室先生…でも、みんな気持ち悪いって言うのに…どうして…)
 美紀は親友の沙希と思い人が被ってしまった事に、強い罪悪感を感じながらも、同意した。
「そ、そうね…良いかもね…私は…そんなに思わないけど…。見る人が見たら…そう思っても仕方がないんじゃない…」
 美紀はしどろもどろに成りながら、沙希に答えた。
 沙希はそんな美紀の言葉を、訝しむ余裕もなく、自分の思い人に意識を向けていた。

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