夢魔
MIN:作

■ 第11章 計画4

 稔はそんな美香の答えに、首を小さく左右に振りながら、溜息を吐いた。
 そんな稔の姿を見て、弥生がいち早く有る事に気付く。
(あれ? 稔様今溜め息吐いた…ってそれって、落胆じゃない? 落胆も感情よね…。作り物の表情?)
 頭の中で、困惑し自問自答を繰り返すが、もう聞かずには居れなくなった。
 弥生は勢い良く手を挙げると、稔に質問する。
「ご主人様! 今溜め息吐かれましたよね?」
 弥生の突然の質問に、稔が頷くと
「それって、作った溜め息ですか?」
 弥生が質問を重ねる。
 弥生の突然の質問に
「いえ…多分反射だと思います…」
 稔が考えながら、答えを返す。
(お! 良いぞ弥生…そのまま、上手くたたみ込め…)
 狂が稔の後ろで、小さくガッツポーズを取り、弥生を心の中で応援する。

 そんな事には、全く気付かなかった弥生が、思った事を質問しはじめた。
「溜め息も落胆から来る、感情の一種ですよね…。反射で出す事が出来るなら、微笑みや怒りも反射に成るまで、続けてみてはどうですか? 私たちも感情を表にだす時、意識して出している訳では有りません。表情の変化に意味なんて、求めた事有りません」
 弥生がまくし立てるように、そこまで言うと
「そ、そうです…嘘でも…作り物でも…。続けていけば、いつか本当になると思います…」
 沙希が身を乗り出して、弥生に同調する。
 稔は無表情のまま、美紀に顔を向け
「美紀はどう思います…」
 静かに問いかける。
 美紀は稔の無表情の顔から、視線をそらせ
「あ、あの〜…、私には、ご主人様の今のお顔…怖いです…。微笑まれたお顔が…大好きです…」
 モジモジとしながら、稔に答えた。
 梓の方を向くと、梓は稔が質問する前に
「私も同意見です。差し出がましいようですが、出来れば笑顔をお作り下さい…」
 深々と頭を下げて、稔に懇願した。
 稔は少し考えると、微笑みを作り
「解りました、皆がそう言うなら表情を常に浮かべましょう」
 女達に約束した。
 女達は一様に喜び、それぞれ感謝を口にする。
 しかし、一番喜んでいるのは、稔の後ろの狂だった。
(俺達が言っても、ぜってぇ折れなかった癖に…奴隷の言う事は、素直に聞くんだな…)
 狂はニヤニヤ笑いながら、弥生の功績を喜んだ。

 和んだ空気が流れる中、美紀が稔におずおずと手を挙げ
「あ、あの〜…ご主人様…」
 稔に声を掛ける。
 稔はニコリと微笑みながら
「どうしました美紀? 何か質問ですか」
 美紀の顔を正面から覗き込む。
 途端に、美紀の顔が真っ赤に染まり、俯きながら
「あ、あの…私も沙希ちゃんみたいに、ご主人様をお呼びしても、良いでしょうか…」
 稔に名前の呼び方の、変更を頼みだした。
 美紀の依頼に、弥生と沙希が身を乗り出し
「わ、私も…お願いします…」
「お許し頂けるなら。私にも許可を下さいませ」
 必死な顔で、懇願する。
 稔はそんな3人に、クスリと微笑むと
「良いですよ、構いません。丁度、主人が4人揃った所ですから、変えようと思っていました」
 その微笑みのまま、3人に許可を出す。
 3人は稔に許可を出されたのと、その微笑みに、身体がとろけそうに成っていた。
(ああ〜ん…稔様の笑顔ステキ〜…嘘でもイイモン…)
(なんてステキな笑顔なの…この笑顔が見られるなら…何でもするわ…)
(あっ、あ〜っ…罪作りですわ…私の心を縛り上げる笑顔…)
 3人は、デレデレに崩れた顔を見せまいとするように、急いで平伏し感謝を述べた。

 そんな中、一人面白くなさそうに仏頂面を沙希が晒す。
(何よ…稔様の秘密だって、呼び方だって、私だけのモノだったのに…私は、ずっと笑顔を我慢して、許してもらえたのに…みんなずるい…)
 沙希がブスッと膨れて、3人を見下ろしていると、突然頭をガシッと捕まれ、グリグリと撫でられた。
 沙希が驚いて、その手の主を見ると、庵が無言で沙希の頭を撫でていた。
 庵は沙希からは視線を離し、ただ無言で撫でた後、ポンと頭を軽く叩いて、元の場所に戻る。
 沙希は呆気に取られ、自分の頭に手を乗せ、その感触を確かめながら
(い、今のは…何…? あの厳しい庵様が…私を気遣ったの…? まさか…、でも…)
 解るはずもない理由を求めて自問自答する、その顔は嬉しそうに崩れていた。
 その顔を見て、稔が問いかけるまで沙希は、自分がニヤニヤと笑っている事に、気付かなかった。
「どうしたんです、沙希? ニヤニヤと気味の悪い…」
 稔が笑顔で問いかけると、自分の顔に手を置き、それを確かめ真っ赤になって俯いた。
「何でもねぇよ…なあ、庵…」
 全てを見ていた狂が、意味深な含み笑いを浮かべ、庵に同意を求める。
 庵はバツが悪そうな顔をして
「何でもありません…」
 小さくぶっきらぼうに呟いた。

 稔は不思議そうに首をかしげると
「それでは、最後に質問します。この計画に参加し、私たちに協力してくれますか?」
 女達に向き直り、改めて質問した。
「はい、稔様喜んで、この身体を差し出させて頂きます」
「稔様、どうか弥生をお使い下さい…。そして、奴隷として調教して下さい」
「私は、稔様の奴隷です。どんな事でもさせて下さい」
「沙希を、お側に置いて調教して下さい」
「私は、どんな事にも従います」
 5人の女は、5匹の奴隷になる事を誓い、頭を下げた。
 その途端稔の腹が、ぐ〜と鳴り、朝食を要求した。
 全員慣れたのか、一斉に朝食の支度に掛かる。

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