夢魔
MIN:作

■ 第14章 専属(梓)9

 梓は稔の並べる、専属奴隷のメリットにドキドキと胸を躍らせる。
 稔は梓を見詰めながら、更に付け加えていった。
「梓はこれからは、調教を受ける必要はありません。もう基本的な事は、全て終わりましたからね。この後梓は僕とのプレイの最中に、奴隷として技術や感覚を磨いて行って下さい」
 稔がそこまで言うと、梓が泪を流しながら
「み、稔様…それは、稔様の奴隷とどう違うんでしょうか?」
 質問してくる。
「違いですか? 違いは、僕と梓が認める主人が現れるまで、僕が仮の主人に成っていると言う点だけですね」
 稔のあっさりとした言葉に、梓は歓喜に、美香は打ちのめされ、震え始めた。
(それって、ママが認めない限り、実質上ずっと稔様の奴隷じゃない…)
 美香が稔の言った、言葉の穴に気付き、肩を落とす。
「まあ、仮契約と思って下さい。本契約とは、少し扱いも違いますが、奴隷として僕の好みに仕上げて行く事は、覚悟して下さいね」
 稔はそう言って、梓に念を押すと、梓は両手で顔を覆い、感極まって身悶えしながら
「はい…はい…どのようにでもして下さい…。梓は、全て受け入れます…」
 涙声で稔に誓った。

 稔は梓の頭を撫でると、優しく語りかける。
 そのやり取りを見詰めていた美香は、知らず知らず胸前に抱えていた手を、キュッと握りしめ下唇をかみしめた。
 稔はスッと美香に向き直り
「僕の特別な奴隷は、もっと扱いが変わります。それこそ、梓の仮契約とは、雲泥の差程にね…」
 ニッコリ微笑んで、美香の目を射抜いた。
 美香の心臓はドキドキと激しく波打ち、湯船の中のオ○ンコからは、ドロリと愛液が溢れお湯に混ざる。
(あぁ〜…心が無くても…この笑顔が嘘でも構わない。この方に支配されたい…心の底から服従して、ご奉仕したい…。その為なら、死んでも良い…)
 ビクビクと腰を痙攣させ、美香は軽いアクメを感じながら、心に思い浮かべた。
 美香の反応を確認した稔は、梓に向き直り
「お風呂から上がったら、直ぐに連絡を取ります。僕の意見が通れば、梓には僕の持ち物の証を付けますね。少し痛いですけど我慢しなさい、解りましたか?」
 落ち着いた命令口調で、梓に伝える。
 梓はそれだけで泣き止み、顔を上げて蕩けるような目で稔を見詰め、返事を返した。
(ああ〜…、口調が変わった…今までの、[依頼形]じゃない…完全な[命令形]だわ。私は、本当に稔様の奴隷に成ったんだわ…稔様もそれをお認めになって下さった…)
 言葉1つで、梓はそれを理解し、歓喜に震えている。
 これが、梓にとって、人の生活が終わった瞬間だった。

 稔の手によって隅々まで身体を洗われた梓は、その快感がいつもの数倍に感じられ、蕩けるような顔で悶え、嬌声を上げて稔の耳と目を楽しませる。
 一方美香は、初めて受ける快感に絶頂を迎えるが、心ここにあらずの風情だった。
(稔様に洗われるの…確かに気持ちいい…。でも、あんな話聞かなければ良かった…専属奴隷の話なんて…)
 美香は梓が目の前で、痴態を晒し絶頂を迎えながら、稔の言った言葉を思い出す。
「いつも以上に気持ちいいでしょ? それは、梓の身体が僕の持ち物に成った事を認識したからだよ。人間はメンタルな生き物だから、心の位置で快感なんかは数倍に変化するんだ。その気持ちよさは、僕が認め、梓が認めた奴隷の服従の証さ」
 顔を興奮で真っ赤に染め、迫り来る快感に驚いていた梓は、稔の説明に頷いて納得し、快感の中にその身を投げ出した。
 梓の狂態を見詰め、自分もその感覚が欲しいと思い、何故自分にそれを与えて呉れないのかとも思い、その理由を既に自分は知っているのに、どうして稔を責めるような事を考えるのかと、自己嫌悪に落ちいる。
 美香は複雑に絡む自分の感情が、行き場を無くして、心の中で暴れるのを感じた。
(ママが羨ましい…でも、[奴隷にそんな感情は、有ってはいけない]って稔様は、仰られたのを美紀達から聞いた…。でも、どう考えても、本当に羨ましいんですもの…)
 美香は項垂れ、何度も何度も、打ち消しては頭を持ち上げる羨望に、その心を灼かれる。

 お風呂から上がった稔達は、リビングに戻った。
 稔達がリビングの扉を開けると、庵の座る一人掛けのソファーの前に、沙希がマングリ返しになって股間を晒し、庵の足指を一生懸命舐めながら、オ○ンコを庵の指で嬲られている。
 戻って来た稔達に気付いた庵は
「ほら、もうも度って来たぞ…。お終いだ…」
 沙希のお尻を1つ叩いて、足を引っ込めた。
「あ、あぁん…は〜い…」
 沙希は残念そうな声で返事をして、クルリと身体を回して正座になり、餌を待つ犬のように、庵の前で舌を出して口を開けて何かを待っている。
 庵はウンザリしたような、何処か困ったような顔をすると、沙希を嬲っていた指をその口に突っ込んだ。
 沙希はニコニコと笑いながら、庵の指を丹念に舐め清める。
 そんな2人のやり取りを見た稔は
(おおっ! どうした事ですか。我が目で見ても、信じられませんね…あんなに、庵の身体に触れる女性が居るなんて…。庵もまんざらでは無さそうですし、これはヒョッとしたら、ヒョッとするかも知れませんね)
 目を丸くして、庵の無痛症の治療を考え始めた。

 庵の無痛症は後天的な物で、その主な原因は心因性の物である。
 庵の母親は、愛情と痛みを庵の心に深く植え付けたのが、その要因だと判断され、稔の義父の元に治療に来たのだった。
 幼い庵の脳は、母親から受ける痛みから逃げ出すために、その回路を閉ざしてしまったのだ。
 しかし、その結果は母親の狂気を加速させ、凶暴化させる。
 眠っている時も、起きている時も、唐突にやってくる、母親の優しい顔と声の抱擁。
 その後に繰り返し加えられる、暴虐の行為。
 庵が警察に保護された時、庵の身体は生きているのが不思議なくらい痩せ細り、打撲、切り傷、擦り傷、火傷、あらゆるタイプの傷が、身体中を埋めていたという。
 そのため、庵は安眠する事も、身体に触れられる事も、一切受け付けなくなった。
 庵が身体を極限まで鍛え、武道を身に付けたのは、他ならない[護身]のためで有る。
 皮肉にも、痛みが無いために庵の肉体作りは、限界を遙かに超え今の鬼神のような力を得た。
 そんな庵の治療をするのに、最も有効的と判断されたのが、母親の記憶を払拭する女性と、その女性に対する庵の思いだった。
 庵の思いが脳の回路の断線を繋げた時、庵の無痛症は無くなる、しかし、今までの庵はその女性に触れる事すら心が拒み、身体が反応してしまう。
 そんな庵が、今目の前で自分の手を自分の意志で差し出し、舐めさせている。
 稔は庵の治療に対する、光明が見えた気持ちになっていた。

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