夢魔
MIN:作

■ 第20章 恋慕5

 絵美は受話器を取り、ダイヤルを回す。
 指が震えて、中々上手く回す事が出来ない。
 最後の数字を回し、ダイヤルが戻っていき、回線が繋がる。
 トゥルルルル〜と呼び出し音が鳴り、絵美は呼び出し音を数え始める。
(1・2・3・4・5…11・12・13・14・15)
 15回目の呼び出し音で、ガチャリと通話が繋がる音がして、絵美は口を開こうとする。
 だが、カラカラに乾いた喉は、何の言葉も発する事が出来なかった。

 そして、絵美の耳に女性の声が飛び込んでくる。
「留守番電話にお繋ぎします…」
 絵美は落胆と安堵を浮かべながら、急いで受話器を戻し、通話を切る。
 受話器を電話に戻した絵美は、何度か速い呼吸を繰り返し、そのあと深呼吸を始めた。
 徐々に鼓動が落ち着き、冷静さを取り戻す。
(どうしよう…。繋がらない…。でも、純君にお礼を言わなくちゃいけないし、返済方法も決めなきゃ…。それと、一番大事な事…あのお金をもう少し使わせて貰う約束をしなきゃ…。純君が貸してくれたのは…希美の入院費だもん…生活費に使うために、貸してくれたんじゃないんだもん…。言わなきゃ…、約束しなきゃ…。使えない…)
 絵美は再び、受話器を持ち上げる。

 今絵美は、下着を着けていない。
 3度目の電話を終えた時、少し冷静になって汚れたショーツを洗う事にしたのだ。
 その時、ブラも一緒に洗い、今は陰干し中だった。
 大きめのTシャツに、ショートパンツを素肌に纏い、絵美は考え込む。
(どうしよう…、借りたお金を替えせって言われたら、どうしようもない…。純君なら事情を説明したら、貸してくれると思うけど、あんな大金…返せる筈無い…。純君はいつでも良いって言ってたけど、100万円を返すなんて早々出来ない。そうなったら、やっぱり私が出来る方法でお礼するしかない…。でも、純君みたいな可愛い子が、私みたいな、何もない女を相手してくれるのかな…。私の身体…そんな価値あるのかな…)
 この時の絵美は既に、自分の身体を投げ出し、純に借金のお礼をする事を決めていた。

 純が絵美を気に入り、使う事で返済を待って貰えるなら、絵美にとっても望ましかった。
 見も知らぬ男を相手にし、陵辱の限りを尽くされるなら、自分も惹かれている純に身体を開いた方が、百万倍マシだったのだ。
 絵美の頭の中に、過去3回の売春相手が浮かび上がる。
 それは、100万円の借金を思う度に、強烈に甦ってきた。
(15万円でオシッコまで飲まされたのに…。5万円であんなオモチャを使われたのに…。100万円だったら、どんな事をしなくちゃいけないの…? 5万円で、ペットみたいに扱われたんだから…100万だと少なくとも、20回はオモチャにされなきゃいけない…。ううん…純君の好意を考えたら、もっと…もっとしなくちゃいけないわ…)
 絵美が頭の中で、想像を巡らせる。

 今までにされた事を、純を相手に考えた。
 ドクンと総合病院の診察室以上の衝撃が、絵美の子宮を襲う。
 下着を着けていない身体が、大きめの部屋着の中で、熱く熱を帯びる。
(私のお尻を打ってくれるかな…純君だったら、きっと優しく叩くんだろうな…。私の事犬みたいに扱ってくれるかな…きっと優しく撫でてくれるんだわ…。オモチャで遊ばれて、私がいっぱい感じるところを見てくれるのかな…きっと、微笑んで褒めてくれる…。ああ…純君…)
 絵美は妄想を膨らませながら、Tシャツの中に左手を差し込み、痛いほど起立する乳首にソッと触れる。
 ビクンと身体が跳ねて、子宮が収縮し全身が泡立つ。

 ドロリとオ○ンコの奥から、愛液が溢れる。
 絵美は熱に浮かされたような顔に蕩け、右手をオ○ンコに添えた。
 パックリと開いた大淫唇の奥から、ネットリとした愛液が粘りけを伴い流れ出す。
 絵美がオ○ンコに指を沈めると、ヌチャといやらしい音を立てて、指を飲み込んだ。
 蕩けた視線は、すやすやと眠る妹達に向けられるが、絵美の指はもう止まらなかった。
(純君…純君…。絵美を使って…絵美の身体を使って…! ここで、恩返しさせて…絵美の身体で恩返しさせて…。どんな事でもするから…お願い…絵美を…絵美を…)
 激しく指を使う絵美の脳裏に、突然梓の顔が浮かぶ。
(美紀ちゃんのお母さん…綺麗だった…。私もあんな風になりたい…そうしたら、純君もきっと喜ぶわ…。いっぱい絵美を使ってくれるわ…)
 絵美は激しい欲情の中、梓の姿を追い求め、純に使われる事を望み、絶頂を迎える。

 ビクビクと震える身体が、ユックリと余韻を感じながら、醒めてゆく。
(私もあんな風になりたい…そうすれば、純君も私を好きになってくれるかな…)
 絶頂を迎え醒めてゆく意識の中、絵美はふと一つの考えに行き着く。
(私を好きに成ってくれるかな…? 好きに成ってくれる? どうして…? 私好きになって欲しいの…?)
 絵美は途端にドキリと胸を高鳴らせ、自分の考えに入り込む。
(私純君に好きになって欲しいの…? どうして…? だって、私には恋愛をする暇なんか無いのに…。お金を…家族を支えるお金を…)
 その時絵美はギクリとする。
 そのお金は、純が用立てている。
(私逃げてる…お金を借りて、気持ち良くさせて貰って、それで好きになって欲しいなんて…裏を返せば、純君を好きに使ってるだけじゃない! 何て…何て傲慢なの…)
 絵美は絶頂の余韻を掻き消しながら、ガックリと項垂れその考えを突き詰め始めた。

 絵美の身体は、急速に快感から醒め、意識は自分の心を攻撃する。
(駄目! 駄目よ! 純君に好きになって欲しいなんて考えちゃ絶対駄目! 私はそんな事望める立場じゃない! あんな綺麗な、才能いっぱいの人に…そんな事望んじゃ駄目なの! 困っていた私にポンとお金を貸してくれる、そんな優しい人に、私は相応しくない。お金に困って、身体を売るような女が、好きになって貰える権利なんて無いの!)
 絵美の自分に対する攻撃は、辛辣だった。
 それは、普段自分を律し、家族を支えるためにアルバイトに励む絵美には、当然の事で有る。
 自分の欲望を抑え込まなければ、とても耐えられる物では無い生活を送っていたからだ。

 必然絵美は自分を攻撃し、追い込む事に成れていた。
 成れる事により、その言葉は強く辛辣に変わって行く。
 絵美は自分自身に、辛辣な言葉を投げ掛け、自分を傷つけ抑え込む。
 絵美の心はその言葉に跪き、小さく成って服従し、自分の惨めさを自覚する。
 自分自身を傷つける言葉は、自分の一番弱い所を熟知し攻撃する。
 その攻撃により、自分を更に追い込んで行く
 その様は、まるで、マゾヒストの精神オナニーのようだった。

■つづき

■目次2

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊