夢魔
MIN:作

■ 第31章 農場26

 そして、この件で最も被害を受けたのは、他ならぬ純だった。
「あ、あの〜…、工藤君…少し、お時間頂けませんか…」
 女生徒が、男子トイレから出て来た純を見つけ、真っ赤な顔で話し掛けてくる。
 狂が純の意識の中に消え去ってから、まる4日が過ぎ5日目に入っていた。
(えっと〜…。この子…だれ…? 知らない子だよね…。C組の子だ…何の用だろ…)
 純は始めて見る少女に、驚きながら曖昧に頷くと、少女は顔を輝かせて純の手を取り
「あ、あの…、ちょっと、こっちに来て下さい…。お願いします…」
 グイグイ純の手を引き、人気の無い方へと引っ張って行く。

 少女に手を引かれ、戸惑いながらついて行く純は、廊下の影に引き込まれ、少女の身体で通路を塞がれる。
 少女は顔を真っ赤に染めながら、純に擦り寄り
「あ、あの〜…私の処女を貰って下さい!」
 涙を湛えた目線で、純に哀願した。
 この少女は志保理のような処女喪失は諦めたが、思い出にはしたかった者で、学校内で最も綺麗な純に、処女を捧げに来たのだ。
 余りの直球攻撃に、流石に面食らった純は
「しょ、処女!? 貰う? 僕が! どうして…?」
 思わず純のままで、素っ頓狂な質問をした。

 少女はスカートの中に手を差し込み、パンティーを脱ぐとスカートの前を両手で持ち、下半身を晒して
「お願いします…。管理者に成ってとか…、付き合って下さいとか…、絶対に言いません…! ただ、処女を貰って欲しいんです…」
 純の身体に乳房を押しつけるように迫ると、涙声で哀願する。
 純は何とか体勢を入れ替え、少女の身体から離れると
「ば、馬〜鹿…、ルールを作った俺が、ルールを破れる訳無いだろ…」
 少女に狂の口調を真似、吐き捨てると、脱兎の如くその場から逃げた。

 だが、特攻少女は彼女だけでは無かった。
 次から次に純の姿を見かけると、一目散に走り寄ってくる。
 その少女達は、学年、クラス、一切関係無く純を見かけると、追尾装置が働いたように、純に迫った。
 純は追い詰められながら、やっとの思いで自分のクラスに逃げ込むが、ここにも特攻少女は居た。
 だが、このクラスの特攻少女は、更なる爆弾を持っている。

 3人の女生徒が純の周りを取り囲み、口々に訴えた。
「工藤様! どうして、誰も教育成されないんですか?」
「私達では、ご不満なのでしょうか?」
「お願いします、私をひれ伏させて下さい!」
 女生徒達は、純の身体に自分の身体を押しつけて、目一杯媚びを含み懇願する。

 女生徒達の迫力に押されながら、純はどうして良いのか分からず、軽いパニックに成った。
 そして、助けを求める為にクラス委員を捜そうと頭を上げると、その姿をジッと見詰める1人の少女。
(うわ〜っ! え、絵美ちゃん…、凄く怒ってる…。は、早く何とかしなきゃ!)
 絵美の刺すような視線が、純に更なるプレッシャーを与える。
 慌てて、女生徒達から、逃れようとするが、パニックに成った純に威圧感は0で少女達は引き下がらない。
 困り果てている純に、クラス委員達が戻って来て、助け船を出しやっと解放される。
 純はチラリと絵美の方を盗み見ると、絵美はプイッと顔を振り、純に目線を合わせなかった。
 純はガックリと肩を落とし、絵美の機嫌をどう取ろうか頭を悩ませる。
 そして特攻少女達は、自分達に志保理と同じ物を与えて欲しいと、京本の元にも迫り事態は収拾が付かなくなった。

 授業が始まり全ての奴隷生徒は教室に戻り、今回の関係者が小会議室に集まった。
「ちょっと、キサラさん責任取って下さいよ…。絵美ちゃん僕と目も合わせてくれないんですよ!」
 純はキサラに、抗議する。
「あ〜ら、僕ちゃん。それを私に言うのはお門違いでしょ? 奴隷の手綱ぐらい、ちゃんと握ってなさい。だから舐められるのよ…」
 キサラは純の抗議を鼻で笑いながら、京本に目を向ける。
「でも、京本先生には、お詫びしなきゃね…叶先生も、朝から揉みくちゃにされたって聞くし…。本当、礼儀を教えるのが先だったわね…」
 キサラは京本に頭を下げると、[ふぅ〜]と溜息を一つ付き
「人数も予想外だったけど、反応も予想外だったわ…。何か良い方法無い…?」
 黒澤に向かって問い掛ける。

 黒澤はジッと黙り込んで考えていたが、キサラの問い掛けでユックリと口を開く
「良い案は無いが…、気をつけなきゃいけ無い事は有る。源さんの事だ…、あの人の能力が、生徒達にバレたら、工藤君の比じゃ無く成るぞ…」
 ボソボソと呟くような言葉に、キサラの顔が引き痙り
「あっ…それは、確実だ…。やっばい、関係者に口止めしとかなきゃ!」
 キサラは直ぐに会議室を出て行こうとする。
「ウチの教師達は構わないですよ。他言して、源さんが奪われるのを1番恐れているのは、彼女達ですから」
 黒澤がキサラの背中に、声を掛けると
「解ってるって、白井や小室と用務員の馬鹿2人よ」
 キサラは振り返って、黒澤に答え、直ぐに出て行った。

 教頭が溜息を一つ付きながら
「本当に、厄介な事をしてくれた…。ここはもう、ペナルティで絞めるしか無いんじゃないですか…」
 罰則案を出すと
「いや、一方的に禁止すると、折角盛り上がった奴隷化の雰囲気迄、消えてしまうし、規則の作り方如何では、私達の首を絞めかねない」
 黒澤が罰則案に慎重な態度を取った。
 そして、話はまた振り出しに戻る。

 純が頭の後ろで手を組み、大きく伸びをしながら
「もう、何かの成績順とかにしたら…」
 投げやり呟くと
「それが良いかもしれないな…」
 黒澤が真剣な表情で、ボソリと呟き考え込んだ。
 その呟きを聞いて、3人が呆気に取られていると、黒澤は考えをまとめ顔を上げて、説明を始めた。
「先ず、教頭案の禁止通達を出し、試験の成績トップをとれば、有る程度の望みを叶えると言うのはどうだろうか? そうすれば、女生徒達の視線は必然試験に向くし、奴隷化の雰囲気も加速する」
 黒澤の提案を聞き、みんながそれに対して、シミュレーションする。
 結果は受験をコントロールするクラス委員の難度が上がるだけで、さしたるマイナス要因も無い事から、それが採用された。
 決められた規則は、即刻校内に通達され、特攻少女は居なく成り、表面上は平穏を取り戻した。

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