夢魔
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■ 第32章 崩壊73

 純が明日香を可愛がっている頃、学校近くの鍼灸院に1人の少女が訪れる。
 少女は淡いピンクのノースリーブワンピースを身に纏い、頬を赤く染め俯きがちに、インターホンのスイッチを押す。
 インターホンの音が鳴り、暫く立ちつくして待つが、一向に返事は帰って来ない。
 少女は首を傾げ、再びインターホンのスイッチに手を伸ばすと
「麗子〜、抜け駆け禁止〜」
 麗子の背後から、亜里砂が声を掛ける。
 麗子はその声に驚き、後ろを振り返ると、亜里砂と供に綾乃と瑞穂が立っていた。

 3人が麗子を責めるような眼で見ていると
『は〜い…どなたですか〜』
 拓人の声がインターホンから流れる。
 だが、4人の耳はその奥で、クスクスと笑い合う声を聞き逃さなかった。
「れ、麗子です。あ、あの、お邪魔しても宜しいでしょうか?」
 麗子は慌てて、インターホンを押し、拓人に来訪を伝える。
『あ、麗子さん。はい、どうぞ…、入ってきて下さい、玄関は開いています』
 拓人が麗子に答えたが、その背後から聞こえる声は、明らかに不満を表していた。

 麗子はクルリと後ろを振り向き
「千里と陽子がもう中にいるわ! みんな、急ぎましょう」
 ムッとした顔で、亜里砂達に告げる。
 亜里砂達はコクリと頷くと、鉄柵を開け庭を横切り玄関に向かう。
 扉を開けようとする、4人の背後から
「おう、先輩達も来ててのか…。俺達も、混ぜて呉れよ」
 明るい声で慶太が呼び掛けた。

 亜里砂達が後ろを振り向くと、慶太の回りを桃香、静佳、忍、歩美の4人が取り巻き、ニコニコと慶太を見詰めている。
「俺んち、狭いからよ。拓人の所で、相手しようと思ったんだ…。でも、流石にこれは多いか…」
 慶太はボリボリと頭を掻きながら、告げると
「もう、先に千里と陽子が入っています。みんなで押しかけても、大丈夫ですか?」
 麗子は心配そうに問い掛ける。
 麗子の問い掛けに、慶太は腕組みすると
「2人入ってるって事は、家の人留守だな…。なら、何とかなるか」
 ニヤリと笑って、ズカズカと玄関に近付き
「拓人〜入るぞ〜」
 大声で言いながら、返事も待たずに家の中に入って行った。

 8人の女性徒が慶太の後に続くと、拓人は携帯電話を片手に、誰かと話している。
「ん、解った…。んじゃ、待ってるよ」
 拓人は携帯電話を切ると、慶太に向かって
「弥彦来るって…。相当真剣な話みたいだよ…。一体何かな?」
 弥彦の来訪を告げる。
「ふ〜ん…。でもよ、あいつが暫く合わない方が良いって、言ったんだぜ…。それが何で、今頃…」
 慶太がブツブツと呟くと
「うん、詳しい事は後で本人に聞くしかないと思うけど、状況が変わったって、考えるのが、妥当じゃないかな?」
 拓人は無邪気な微笑みで、慶太に答えた。

 拓人と慶太が話をしている傍らで、全裸に成っていた千里と陽子が、麗子達4人の視線を受け、引きつった愛想笑いを浮かべて、頭を掻いている。
(約束が違うじゃないの)
 麗子達の視線は、千里と陽子を責め、千里と陽子は小さく成って行く。
「麗子さん、そんな怖い顔しないで…。僕が、誘ったんです…。[先輩達は家が遠いですから、学校から直接どうですか]って…。許して上げて下さい…ね…」
 拓人は無邪気な微笑みを浮かべ、麗子の頬に手を添え、2人を擁護した。
 そんな事をされてしまえば、麗子はもう反論など出来無かった。
「あ、いえ、別に…、あの…、はい…」
 麗子が頬を赤く染め、コクリと頷くと
「有り難う御座います…」
 拓人は礼を言いながら、麗子の頬に口吻をする。

 それだけで、麗子の怒りはどこかに吹き飛び、頬を真っ赤に染めて、膝の力が抜けペタリと床に座り込む。
「あふ〜拓人様〜…」
 麗子は濡れた瞳を拓人に向けて、鼻に掛かった甘え声を上げる。
 拓人は麗子の頬から手を放すと、スルスルと亜里砂、綾乃、瑞穂に同じように口吻すると、3人も同じようにへたり込む。
「へっ…、やっぱり女コマシだ、おめぇは…」
 慶太が拓人に呟くと
「僕が、女コマシだったら、慶太も十分そうじゃない。だって、先輩達の顔見てご覧よ」
 桃香、静佳、忍、歩美の4人は、完全におねだりの表情で、慶太の顔を見上げていた。

 慶太はニヤリと微笑むと4人を抱きしめ、次々と唇を重ね抱擁を解く。
 4人は興奮した顔で、ペタリと床にへたり込み、慶太の両足にしがみついて、身体を擦り付ける。
 拓人と慶太は、完全に10人の上級生を支配し服従させていた。
 2人は一度も服従を強要した事は無く、女性徒自らが捧げた物だ。
「へへへっ、モモ、シズ、シノ、アユ…お前等、最高に可愛いぜ…」
 慶太がそう言うと、嬉しそうに眼を細め、慶太の足下に正座して、我先に慶太の足に口吻をする。
 その光景を見た、麗子、亜里砂、綾乃、瑞穂が真似をしようと、拓人の足下に正座した時、玄関の扉が唐突に開く。
 それは、家人の帰宅のように、突然で躊躇いが無い物だった。

 女性徒達はその唐突さに驚き、ビクリと身体を震わせ、その場を取り繕おうとした。
「拓人居る?」
 扉を開けた本人が、問い掛けながら拓人の家に入る。
 それは、2人の親友、明神弥彦だった。
「うん、弥彦いらっしゃい。慶太もいるよ」
 拓人が弥彦に返事を返し、慶太の存在も教えると
「あ、丁度良かった。会わせたい人が居るんだけど、呼んで良いかな?」
 跪く女性徒が、目に入らないような話し方で、問い掛けた。
「う、うん…。良いよ…」
([駄目だ]って言っても、会わせるくせに一々断りを入れ無いでよね…。本当強引なんだ…)
 拓人は相も変わらぬ、弥彦の押しの強さに辟易しながら頷いた。

■つづき

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