縄奴隷 あづみ
羽佐間 修:作

■ 第5章「魔手」3

− 発 覚 −

「もう少しで終わりますから^^」
「そう^^」
内装業者の職人に声を掛けられた。

この日は、お店は休みだが、店舗改装の工事業者が入り、その場で指示しなければならないことがあるので、朝から一日付き合っていた。

今日は夕方からはプライベートな時間だという事は、隆に何日か前に伝えていた。
自縛用の縄と、新たに購入したバイブを持って店に出掛け、仕事が終わったら、それらを装着して家に戻るようにと隆から指示メールが入っていたのは3日前の事だ。
あづみも、野外で淫らな命令を実行する自分を想像して胸がトキメキ期待していた。
しかし、昨日になって陽子が話したいことがあると言って来たので、今日、陽子のマンションで手料理をご馳走になりながら話すことになってしまった。
予定が変わった事を伝えようと何度もメールを送っているが、連絡がつかないまま、今日になってしまっていた。
作業している間、何とか隆に連絡を取るために、スタッフルームのパソコンはMessengerを繋いだままにしていた。

今までに、仕事中にノーパンで! とか、ノーブラで! とか、乳首にクリップを付けて! とかのリクエストは何度もされてきた。
しかし、仕事中の命令だけは、絶対出来ません! と、どんなに叱られても勘弁して貰っていた。
『だったら、仕事が終わればいいんだな!』と隆に突っ込まれて、何度かバイブを股間に呑み込んで会社帰りに買い物をした事があった。

今日の陽子との食事は、仕事とは言えないので、隆との約束から言うと守らなければいけない・・・
しかし、仕事の大事なパートナーの前で、しかも妹のように可愛がっている陽子の前でそんな淫らな事が出来るわけがない。
仕事が長引いて時間がなかった事にしようかと思ったが、隆は異様に鋭いところがあり、あづみの心の動きを、隣で見ているかのように指摘する。
麗香に続いて隆とも音声チャットを始めていたので、ウソを突き通せるなんて絶対無理だともわかっていた・・・
それだけに、彼とのチャットは、心のそこまで見透かされるようで、ドキドキして興奮をさせられるんだわとあづみは思っていた。
―(メールで予定変更を知らせているから、そんなに叱られたりしないかも…)

しかし、とりあえず、バッグの中には新しいバイブとφ4.5mmの細い麻縄を1本を忍ばせて家を出ていた。
バイブは非合法な改良がされているリモコン型のバイブらしく、隆の指示で買ったものだ。
説明書には、業界初のスペシャルリモコンバイブと謳っている。
要するに、同梱されている、ピンクのコントローラーで遠隔操作が出来るものらしい。
昨夜、電池を入れて、スイッチを入れてみると、本体はうねりながら振動し、根元の突起が小刻みに震えた。
使っている場面を想像して顔が赤らんでしまった。

予定通りの時間に内装工事が終わり、デスクを片付けてそろそろ陽子の家に向かおうかと思ったところに隆がMessengerにログインしてきた。

『仕事は終わったのか?』
スピーカーから、いつもの何か機械で細工されているらしい、身代金を要求する電話を掛けてきたドラマの誘拐犯のような野太い声が聞こえてきた。
お店のパソコンにはマイクが付いていないので、慌ててキーボードを叩いた。

「はい・・・」
『メールはみた。 同僚との食事は仕事じゃないからな!』

「・・・でも・・・・」
『アンタ、約束破るのか? 俺は仕事の邪魔はしないと言った!』
『今から行く家は仕事先か?』

『・・・いいえ。でも仕事場で妹のように可愛がっている同僚の家です
その子の前でそんな恥かしい格好なんてできません・・・
食事が終わってからでいいでしょう!?』

『仕事が終われば直ぐに命令を実行するって約束じゃなかったのか? やっぱり約束を破る気だな! 牝犬のくせに!』

「そんな・・・・・」
『それにな! おまえに聞くが、その子の前で裸にでもなる気か?!』

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