縄奴隷 あづみ
羽佐間 修:作

■ 第5章「魔手」15

研修最終日は、足や腕、ワキとビキニラインの脱毛をして貰う予定だ。
サウナから出てきたあづみは、ローブを羽織り、新しいレーザー脱毛機が設置してある部屋に通された。
高出力のレーザー照射が広範囲に出来るので、短時間での処理が可能だ。
事実、午前中の数時間で足や腕、ワキは完全に綺麗に処理されていた。
新開発の機械の特徴で痛みはほとんど感じることはない
発毛周期に会わせて、後5〜6回行えば、完全に脱毛できるので、煩わしいムダ毛の処理から解放されると思うと、嬉しくなった。
昼食をはさんで、午後からは顔とビキニラインをする予定になっていた。

ビキニラインの処理は、部下となるスタッフにしてもらうのは、少し恥かしい気がしたが、新規事業の目玉だし、体感するべきと思い、やってみる事にした。

昼食を一緒に摂ったエステ部門の責任者の木島 紀子が、あづみに恥かしい提案をしてきた。

今度の新規事業のセレブ専用のエステ・メニュー「セレブ フルボディ スペシャルエステ」の中に下半身の陰毛を脱毛するメニューがあると、カタログの原稿を見せてくれた。
日本でも、狩野姉妹のように局部の剃毛や、入れ墨を得意気にテレビで公言してしまう時代で、ヨーロッパではセレブの間では常識のように行われていると説明をうける。
「貴女も新規事業の看板なんだから、商品を知る上で、やっておいた方がよろしいんじゃない?!」

「えっ! えぇ・・・」
突然だったので、少し驚いてしまった。
確かに狩野姉妹が、TVで喋っているのを見たことがあった・・・
しかし、恥毛の処理までもが、高倉のエステ・メニューに取り入れられていることは初耳だった。

木島 紀子は、高倉由紀と、創業時からのパートナーで、表の仕事は由紀が、裏方の仕事は木島が担当する二人三脚のスタイルでここまでの発展を成し遂げた。
木島も美人なのだが、陰なイメージがあり、どうしても華やかな由紀にスポットライトが当たるので、彼女は面白く思っていないようだと、社内の噂で聞いたことがある。

あづみが、由紀に次ぐスターに祭り上げられていく中で、自分の部下の手で日々綺麗になっていくあづみと顔を合わすたびに、何かしら棘のある言葉を投げかけてくるので、あづみにとっては、付き合い辛い、気が重い存在だった。
あづみは、由紀直属のような動きをしてはいるが、組織上、木島は、あづみの直属の上司にあたる常務取締役でもある。

返事に窮していると『どうなの? 麻木さん?』と有無を言わせぬ口調で返事を求めてきた。
「えっ、ええ…」

箇所が箇所だけに、抵抗を感じないわけではなかった。
仕事なんだし、別にやましい事は何もない。
叱られはしないだろうけど、夫の健一に相談してからにしようかと考えてたり、別の場所で研修中の陽子に相談してみようかとも考えた。

逡巡しているあづみの素振りにイラだったような口調で『貴女自身が、この高倉ビューティの広告塔なのよ! その商品を知らないでどうするの?! 自覚がないんじゃなくて?!』と木島に畳み掛けられた。

確かにその通りだわ、これもイチオシ商品なんだし! と自分を励まし、『ええ。わかっています。ではお願い致します。』と答えてしまった。
イラついた風情の木島の口の端に皮肉そうな笑みが浮かんだ。

更に『私の仕事は、最先端のエステ技術の伝道者なのよ!』と、いつも由紀に言われている言葉を自分に言い聞かせた。
「じゃ、用意してらっしゃい!」

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