三つの願い 〜男の夢〜
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■ 第四章 「第二の願い」43

 そんな感じで、数日間が過ぎた。

 あの翌朝、さちことの約束のもう一回をやったのは言うまでもない。



 それから、寮では、今まで知り合った女子はもちろん、その子たちに紹介してもらった女子とか、風呂とかで会って声をかけた女子とセックスしたりして過ごした。
 だから、寮で居場所がなかった夜は無かった。

 受付当番、洗濯当番、風呂掃除当番、とかは一回くらいずつ回ってきた。ただ、三時間も受付をやったり、風呂掃除が男子は一人だけ、ということは無かった。
 実質寮生の男子は徐々に増えているのかもしれない。


 これまでは、けいこと以外は比較的かわいい子とやってきたが、やはりかわいい子は人気があることもあり、必ずしもそういうことが続いたわけではなかった。
 そして、ずっと女子たちと過ごしていると、たとえかわいい子であっても、たとえば股間や尻を掻いていたりとか、ちょっと幻滅するようなことも多く見た。

 それでも、その時になると、体は反応して、ちゃんと立つのだった。


 やるときは(そこにたまたまに二人しかいない、とか、夜寝るときその方が自然である場合とか、他に何か事情がない限り)二人きりということは少なかった。

 だいたい、大学内では教室とか芝生の上とかどこでも、寮だったら何人かいる部屋か、廊下とかでやることが(寝室がある割には)意外と多かった。昼間に寝室で二人でやってもドアは開けていたり。

 とはいっても三日目の晩のように女子三人対僕一人、ということは、あれ一回だったが。

 特に理由もないのに二人きりでやることは“何かあの二人は怪しい”的に言われるようだった。
 もとの世界で彼氏彼女だった二人は、見ていると確かに二人きりでやっているようだった。
 でもだからといって他の人とまったくしないわけではないようだ。

 まあ、セックスが話すのと同じように気軽な世界だから、話すことを考えると、元の世界で二人きりで密室で話していることに当てはめれば、確かにそんな感じかもしれない。



 そんなある日、授業が終わった僕は大学の“男子”トイレに行った。端の小便器には女子が放尿していた。

 女子の放尿も、寮でも大学でも何回も見てずいぶん慣れて、もうそれだけで立つことはなくなった。
だから女子と一緒の放尿も普通のことになった。

 大きい方も一回だけ見る機会があった…和式トイレで扉を開けたままそれをしている女子がいて。
 でも、それは、あまり気持ちのいいものではない…これもそのうち慣れるのかもしれないが…

 ここですすむに会った。すすむとは久しぶりに二人でちゃんと話した。

 すすむとは授業では一応会っているが、休み時間はお互いに学科の女子とやるのに忙しく(僕の相手はひろことかたえことか、あと二、三人くらいに限られていた。まあ、もとの世界でも話していたのはそんなようなメンバーだったし。あいかとかしほとかは人気があって学内ではあれから入れていない)寮ではあれからすすむとは一度も話す機会は無かった。

 寮ではあいかとは、あのあと一回だけ、夜を一緒に過ごすことができた。小テストの前の日はさすがに出かけないで四人で寮で勉強していたのだ。(この四人で勉強することなんて、前の世界では無かった。でも一緒に住んでいて同じテストを受けるメンバーなので自然にそうなった)
 寮内だから当然裸で、だが、四人は時間を決めてその時間は集中して勉強し、それ以外の時に触り合ったり絡み合ったりした。
 ただし、あいかはそのとき生理で(割れ目からひものようなものを出していた)夜を一緒に過ごした、と言っても口でやってもらっただけだった。
(しほとは一回やった)

 トイレでの話に戻ろう。

「おお、まさる、順調にやっているか?」
「うん…まあな…そっちは?」
「おお、女子寮制覇は80%くらいすすんだぞ!」
「…72人の…8割?? もう50人くらいってこと?? それは忙しかったろう」
「おおよ。特に土日は30分ごとにアポイント入れたりしてな」
「そうか…充実しているなあ…」

 僕の土日は……寮で何となく過ごして、何人かとはやれた。その時はあんまり積極的にならなくても、同じように暇していた女子はいて。

 実はあいかを誘ってはみたけど、小テストのあたりの続きで「ごめん生理中でできない」って断られた。
 後で、それなら、口でもいいから、とか、またはこないだみたいに買い物とか、食事とかに誘ってみればよかったのではないか、とも思ったが、その時にはもう遅かった。というか、そうしていいのかどうかもよくわからなかった。


 そういえば、処女ののどかさんはどうなったのだろう?
「ところで、3SEののどかさんとは…もうやったの? …あ、のどかさん知ってる?」

 すすむはちょっと顔をしかめた。
「…ああ、知ってるよ…やっぱり処女は難しいな」

 すすむでもやはりそうなんだなぁ



「…うーん、なんか、残っているのか…」

 すすむは、便器に向かいながらそうつぶやいた。

「ションベンが?」
「いや、精液がさ。最近、やってから結構時間が経っても、出てくる」

 僕はその方向をちらっと見た。たしかに、ションベンでない白っぽいものが、そこから垂れていた。

 僕は、ふと、そんなようなことをどこかで読んだような気がした。

「…なあ、すすむ…ちょっと」
「なんだ? その前に、ちょっと、拭かせてくれ」

 すすむは、ここに置いてある、主に女子が使っているトイレットペーパーを手に取っていた。

 棒をしまった僕たちはトイレを出た。そして、僕は小声でいった。

「これ、なんかそういう病気なかったか?、ションベンのとき、ち○ち○、痛くないか?」
「うーん、そういえば、最近そんな気がする」
「帰って検索してみよう」


 僕たちは早足で寮に帰り、服を脱いですぐに「あいかとしほのべんきょうべや」に向かった。
 部屋にはちょうどしほがいて「おかえり」と言ってちょっとキスしたり抱き合ったりしたが、すぐに部屋を出て行った。

 僕とすすむだけになってから、僕はここに置いてある僕のノートPCを開き、電源を入れた。
 ハードディスクの回転音以外は、しほがつけていたらしい小型のテレビだけが物音だった。

 そして、それらしいサイトを検索した。

「うーん、すすむ、これは…最近トイレ近くなってないか?」
「…そう言われてみれば」

 僕は確信した。
「これは淋病に違いない」

 それを聞いたすすむは、下を向いて額に手を当て「アチャー…やっぱりそれ系かぁ…」のようなことを言った。
 そのすぐ後に画面を見たすすむは
「…なんだ、抗生物質で直るんだな。じゃあ早速明日、医者いってくるか。保険センターでもいいのかな…ああ、でもしばらくは毎回コンドームしないとならないのか…めんどくさいなあ」

 すすむは笑いながら言った。

 笑っていいのだろうか?
 僕は、改めて、今までちょっとは考えて、しかし深くは考えなかった−考えることから逃げていたかもしれない−ことを考えた。

 確かに、さちこの「クラミジアもらった」話は、まるでちょっと風邪ひいたくらいの感じで、この世界ではあまり重要ではないのかもしれないが…
 しかし、前の世界で不治の病と考えられたいくつかの性病は、ここでは…

「もし…エイズとか伝染ってたら、どうしたら…」

 僕は独り言のように言った。

「…それは悪魔さんがある程度防いでくれているんじゃないかなあ。セックスが気軽にできる世界だし。“これこれに感染しているからコンドーム使って”って言った子は何人かいたけど、エイズとかの子は一人もいなかった」
 すすむは気軽にそう言った。
「コンドームの箱に『エイズを含む他の多くの性感染症に感染する危険を減少し…』とかとは書いてあったぞ…それに、前の世界だって、みんながみんな“エイズとかが怖いからコンドームを”ではなかったような気がするけど。だから危険が無いわけではないんじゃ…」

 ぼくは、前の世界の時にネットで見たニュースなどを思い出しながらそう言った。

 すすむは笑顔のまま言った。
「うーん、それならもしかしたらエイズは当たり前になっていて、エイズへの偏見とかは、この世界では無くなっているかもしれないなぁ」

「偏見とかそういう問題じゃないだろう! 一応、不治の病だぞ!」



「あっ、あっ、あっ」

 テレビのCMのあえぎ声だった。この世界になってからある程度時間がたって、昼間のテレビでもこのくらいは流れるようになっていた。ただし、声だけで、声の主はぼかされていた。
 でも宣伝とすると、何の宣伝だろう? と思い、僕はぼんやりテレビの画面を見た。

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