鬼の飼い方
鬼畜ヒスイ:作

■ 檻ノ参・飼い鬼の刻印4

 足りない。まだ足りない。
「はうぅ……き、来てぇ。ご主人様の、立派なペ○スで私の淫らなマ○コをグチャグチャにしてください……」
 背景に映る主人に、クイナは懇願する。
 枕元にあったヌイグルミを掴み、綿の詰まった腕を恥壷に突き入れる。中身が綿とは言え、出来の良いヌイグルミの腕はそれなりの硬さがある。
 本物の主人の肉棒ほどではないにしろ、三日間の責苦に狂った少女を絶頂に導くのには十分だった。
「イ、イクッ! 変態、クイナは、ご主人様のペ○スでイってしまいます! はぁ、あぁぁぁぁぁ――ッ」
 これまでには無い大きな波が骨髄を迸り、背中を大きく仰け反らせながら少女は絶頂に達した。
 溢れ出す愛液がヌイグルミを汚し、掛け布団にまで飛び散る。少女は、そんな醜態を晒したことも気に留めず、絶頂の後の余韻に酔いしれるのである。
「はぁ……はぁ……。あ、汚しちゃった……」
 蜜がヌイグルミと掛け布団に染み込んだ頃、ようやく少女は現実に引き戻された。
 薄暗い自室で、ベッドに横たわりながら天井に目を巡らせるクイナ。頭はまだ絶頂の余韻で朦朧とし、体を程よい倦怠感が包み込む。
 しかし、一度の自慰程度ではクイナの情欲を満足させることは出来ない。
 もっと激しく、もっと卑猥に攻め立てて欲しい。白い肌に縄を打ち、怪しく蠢く玩具で性器を嬲って欲しい。そんなことを考えれば考えるほど、更に情欲の念が湧き上がってくる。
「我慢、出来ないよぉ……」
 薄っすらと湿ったテディベアを抱きしめ、満たされない欲求を堪えるように体を縮こまらせる。
 カタカタと、窓ガラスが鳴り始める。思ったより早く、台風がやってきてしまったらしい。まだこの辺りは少し風が強いだけだが、しばらくすれば豪雨を伴って暴風雨が吹き荒れるだろう。
 外に出られるのは、今のうちだけだ。
「……確か、ここに」
 何かを思い立ったクイナは、気だるい体を起こしてクローゼットを開く。
 中には衣服や、使わなくなった雑貨がゴチャゴチャと納められたダンボールがある。ダンボールを漁り、束ねられたボロボロのロープを引っ張り出す。
「あった。懐かしいなぁ。お父さんが昔使ってた、登山用のロープ」
 擦り切れたロープを見つめ、クイナは感慨に更けながら呟く。
 まだクイナが小学生の頃、山間救助隊だった父が困難な救助から戻ってきた時に、ボロボロになりながらも父の体を支えてくれていたそれを思い出として受け取ったのだ。
『これさえあれば、絶対にお前との絆は断ち切れないよ』
 父は、そう良いながらクイナの頭を撫でてくれた。

 まだ幼かったクイナには、単なる大切な思い出でしかなかった。けれど、今ならこれをどうするべきなのか分かる。
 まさか父はそんな使い道を予想しなかっただろうが、そのロープは父とクイナの絆を結ぶものではない。
 そう、クイナと大切な人の絆を結ぶための物。
「これを、こうして……。それから、こう通せば、ぅんッ……ちょっときつかったかな?」
 クイナは、自らそのロープで自分を縛る。
 通常の登山用ロープなどで体を縛るのは難しいが、ボロボロに擦り切れて細く、柔らかくなったロープなら安易に縛ることが出来る。
 見よう見まねで綱吉の縛り方を真似してみた。流石に両手は縛れなかったが、拙いながらも十分に体を締め付けている。もちろん、制服のスカートの下は縄以外に何もない。
 準備はそれだけで、クイナは外に出ると同時に駆け出した。少し体を動かすだけで縄が股間に食い込み、片足を前に出すだけでザラザラとした縄が秘部を擦る。
 それでも、クイナは走る。台風が強くなる前に、クイナは戻らなくてはならなかったから。自分がいるべき場所に、戻りたかったから。
 どうにか止まる前に乗れた電車で郊外に出て、田畑が見え始めた道を走り抜ける。
 太腿を愛液が伝い始めても、何度縄の快楽に達しそうになっても、クイナはそこへ向かって走った。雨が降り始めて、風と共に体に打ち付ける。傘は無意味となり濡れた服の下に縄の線がくっきりと浮かぶが、暴風雨を恐れた人々が外に出てくることはない。
 いや、誰かの視線があると考えただけでも、冷たい雨に晒されながらも体は火照ることを忘れなかった。
 そして、ようやく目的の場所にたどり着く。
 嵐の中でヒッソリと佇む、オンボロで小さな自分の居場所に。

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