人身御供
非現実:作

■ 落日2

梟の鳴く声。
まるで闇夜を支配していると云わんばかりの、気高き声だった。
その声に恐れをなしたのか、他の音は何も聞こえない。
厠で用を足した後、ふと廊下で立ち止まる。
(雲で隠れる半月……)
戦が近いせいか、こんな時まで考えてしまうのは職業病だろう。
平和な地を求めて出奔した筈なのに、未だ争い事の中心にいる。

「貴方様……」
「ん?」

直ぐ後で白い半襦袢姿の琴乃が立っていた。
「何をしてるの?」と、大きな瞳が問いかけている。

「身体が冷えるぞ、中へ入りなさい」
「貴方様が出て行ったので……何事かと」
「厠だよ」

(起こしてしまったか……)
琴乃は何時でも一人でいる事を極度に嫌がる。
何も聞かないがその嫌がりっぷりは相当で、恐らく精神の病にも関係しているのだろう。

「今宵はやけに冷える、さぁ部屋へ戻ろう」
「はい」

先頭を立つ私の裾を、小さな手が握られる。
その手が離れないよう足取りに気を遣いながら、部屋へと戻った。

布団が2つ敷かれてある一番奥の室。
私は早々布団に潜り込もうとしたが、琴乃は布団の上に正座したままだ。
(む……)
ちょっと潤んだ瞳が訴えているのだ。
そういえば……随分と久方。
私は布団に座りなおして向き直った。
真っ直ぐ見つめ返してやると、顔から火が出たみたいに真っ赤となり俯く琴乃。
(我が妻……)
そっと頭の後ろに手を添えて、ゆっくりと身体を引き寄せた。

固く抱き締めながら、頭と背中を優しく撫でる。
すんっと鼻を鳴らす琴乃は……正に借りてきた猫。
身体を合わせたまま布団に倒れる。
下となった琴乃の身体を、更にきつく抱き締めた。

「んぅ」
「痛いか?」
「ぃえ……」

半襦袢越しの胸が身体に当たる。
そのふくよかな胸を感じながら、琴乃の口を奪った。

「むぅ〜〜〜んん……ぅ」

口吸いをねだる様に、顎を上げる琴乃。
それに応じて更に激しく口を吸う。
舌で艶やかな唇を割り、琴乃の口内を責めた。

「〜〜〜む〜〜ぅ〜〜〜ぉ…ん」

口内を嬲りながら……胸の辺りの半襦袢をそっと脱がした。
たわわな胸が露になる。
心はわずか10代、だが身体は立派に発育していた。
私は口から離れて、両手で胸を下から上へと揉みしだく。

「んぁあ…ぁっぅ!」
「綺麗だぞ、琴乃」
「ふぅ…あ」

優しく愛撫を続けながら、再び口吸いをする。
今度は琴乃が私の口の中へと入ってきた。
(愛する我が妻よ……)
口内に侵入している琴乃の舌に、私も舌を絡める。
舌と舌で愛し合う。
お互いの鼻息は荒く、それは甘美なものだった。
乳房を大胆に揉み続けていた手は、ようやく乳首に標的を合わせる。

「ぅっぅ…ぁああっぁ〜〜ぁ〜」

途端、琴乃が口を離して声を出した。
お預けにされていた乳首は、ようやく得たりという感じで昂ぶっていた。
既に固く尖った乳首を優しく指で愛撫しながら、私は半襦袢を全て脱がしに掛かる。
緑の薄帯を解き、半襦袢を少しずつずらしてゆく。
モジモジと身体をくねらす琴乃を、見つめて安心させる。
潤んだ瞳は私を射抜いていた。

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