真梨子
羽佐間 修:作
■ 第3章 目覚め14
−マ・ゾ・お・ん・な− 6月3日(金)
――久美ちゃん、もうパリに付いたのかしら?
昨夜、真梨子がお風呂からあがると、携帯に伝言メッセージが入っていた。
浩二からかと期待したが、菅野 久美からだった。
メッセージを再生してみると、海外に赴任中の父親が急病で倒れたらしく、急遽パリに行くので、病状次第で、暫く会社を休むかもしれないとの伝言だった。
――あら・・・ お父さん、大事にならなければいいのに・・・
コールバックしたが、電源OFFのメッセージが返ってきた。
思えばメッセージのノイズが、空港のような感じがしたので、搭乗前に掛けてきたのだろう…
「何だか今日の食事会は気が進まないなぁ・・・」
朝の身支度をしている最中、ふと呟いた。
今日は、久しぶりに「真梨子Fan Club」の飲み会が予定されている。
久美も参加予定だったのだが、プロジェクトチームの仲間が、親が入院する病院に駆けつけている時に、お酒を飲んで騒ぐのはどうにも気が引けてしまう。
――中止になったら吉野さん、怒るだろうなぁ
大の真梨子FANのIT室/吉野課長のたって願いが、やっと実現するので、中止するとうるさそうだ。
――とにかく久美ちゃんの連絡を待つしかないわ。
「さぁ、今日も頑張りましょっと! 行ってきま〜す。浩二さん」
フォトフレームの中で微笑む浩二に、いつものキスをした。
◆
約束通り、8時に翔太が新御茶ノ水駅のホームに降り立った。
秋山に気付き、浮かない表情で歩み寄る。
「おはようございます…」
「ははっ、気乗りしないか? 君の言ってるような女が本当にいるのか確かめるだけさ」
「はぁ・・・」
「それに、君も憧れの人にもう一度悪戯出来るんだから良いだろう?! しかも俺も君と同罪になるんだから、俺に対する弱みがなくなるんだからな」
「はい・・・」
「じゃ俺は、階段の蔭に隠れているから、頼むぞ!」
秋山は、真梨子が現れるはずの階段の脇に移動して、真梨子の登場を待った。
少し緊張してきたのか、唇が乾き、手に汗が滲んできた。
――電車で同僚を痴漢する… ばれたら人生は終わりだな…
秋山にとっては、真梨子を電車の中で痴漢する事はとても危険な事だ。
しかし真梨子のスカートの中を、そして真梨子がマゾ女なのかを、確かめずにはいられない。
秋山を抑えきれない衝動に呑み込まれていた。
◆
――えっ・・・ 翔太くん・・・
階段からホームに降り、少し歩いたところで、真梨子は立ち止まってしまった。
1両先の位置に10日ぶりに翔太がいた。
翔太を見た瞬間、身体の奥がキュンとなった。
昨夜、翔太に痴漢された場面を思いだしながら、自分で激しく慰め、体を駆け抜けた快感が頭をよぎった。
――触って欲しい・・・ でも、ダメよ!もうこんな事しちゃ絶対いけないんだわ!
淫らな欲望に負けしまいそうな自分に言い聞かせるように、”近寄らないで!”と意思を込めて首を大きく横に振りながら翔太を見詰めた。
その時、翔太の口が(マ・ゾ・お・ん・な)とゆっくりと動いた。
――あぁぁ・・・ だめぇ・・・ 言わないで・・・
真梨子の媚肉の奥で熱い淫汁が湧いてきたのを感じる。
翔太のいるいつもの車両へ行って触られたい欲求を何とか堪え、真梨子は、身近な列に歩を進め電車を待った。
◆
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