授乳女教師
Tsuka:作

■ 授乳女教師8

「馬鹿な事なんかじゃありません。先生が好きなんです。」
「冗談も程々にしなさい」
「冗談ではありません。本気です、俺は」
先生は『やれやれ』といった感じで呆れた表情をする。
「牧野君、あのね…あなたくらいの年齢の子達はたいてい年上の女性に憧れるものなの。でもねそれは一時的な感情でそうなるのよ」
確かにそうかも知れないと俺は思った。しかし俺の川上先生に対する感情は特別なモノだと自負していた。
「違います。一時的な感情でもありません。入学した時からずっと先生に魅了され続けてます」
先生は自分の意見をことごとく跳ね返されて困惑してるように見える。
普段は有無を言わさない説得力を発揮するが、今回ばかりは説得力が無い。俺の先生ヘの想いの方が上回っている。一度噴き出た想いは堰を切ったように止まらない。
「本当に先生が好きなんです。胸が苦しいくらいに。気がつくといつも先生の事を考えてるんだ。先生の事を考えない日なんてあり得ない。俺の頭の中は川上先生の事だけなんです。」
「…あのね…」
先生は何か言おうとしたがそれを俺は遮る。
「もうこの際だから、恥ずかしい事も含めて洗いざらい言います。俺は先生の魅力の虜になってる。先生は色白でスタイルが良くて豊満な身体をしてる。とりわけ…」と言いつつ、俺の視線はブラウスの胸の部分を高々と押し上げてピッチピッチにさせている肉感的な爆乳に注がれる。
つい先程まで露にされていた美しく見事なJカップ乳だ。
「とりわけ…先生は凄くおっぱいが大きくて…それが魅力的でたまらないんです。甘えたい…先生のおっぱいに甘えてみたい」
それを聞いて先生は顔を真っ赤にさせた。普通なら恥ずかしくてとても口にできない事もこの時に限って抵抗なく話せる。もう怖いもの無しだった。

「牧野君、いい加減に…」
「でも、それだけじゃありません!」
俺はいきなり口調を強めた。
「それだけじゃないと思うんだ。俺がまだ知らない先生の内に隠された素顔に魅力を感じるんです」
先生はギョッと驚いた素振りを見せて目を見開いた。明らかに動揺してるように見える。
日頃はポーカーフェイスの川上先生がこんなに豊かな表情を見せてくれるのが意外であった。

おそらく俺の熱意に押されて冷静さを保てず、自分の感情が表に出ずにはいられないのだろう。
何か段々と川上先生が本来の姿に戻っているような気がした。自分の想いをほとんど吐き出した俺は最後とばかりに言う。
「先生の事が好きなんです…先生が家庭を持ってるのも百も承知で言います。俺の…、俺の気持ちに応えて下さい…!」
哀願するような目線で先生に迫る。生まれて初めての告白だった。
それまで驚いた表情をしていた先生は、いとおしむような、しかし何処となくもの悲しい何とも言葉で表現しづらい複雑な表情を浮かべている。
だが、それはほんの僅かであった。直ぐに厳しい表情に変わり、開いた口が塞がらないという感じで冷たく言い放つ。
「いったい何を言い出すかと思えば…全く…呆れて言葉が出ないわ」
それを聞いて俺の熱意が急速に冷めて行く気がした。
「先生を馬鹿にするのもいい加減にしてちょうだい」
「いえ、別に馬鹿になんか…」
今度は先生が俺を遮る。
「先生のおっぱいがどうだとかこうだとか……聞いてるだけで虫酸が走るわ…、これは立派なセクシャルハラスメントよ。失礼な事この上ないわ」
先生はなおもトドメとばかりに言い放つ。

「先生はね、あなたみたいなナルシストがそのまま服を着たような人が大っ嫌いなの!」
先生からの無情なセリフに俺は奈落の底に突き落とされた気分だ。黙ってうつ向く。
「今後一切そんな事は言わないでちょうだい。それと、ここであった事は誰にも言わないように。もし言いふらすのなら先生も出るとこに出るわよ」
キツイ言葉の連続に俺はすっかり萎えていた。

「……分かりました…すみません…」気力を振り絞ってそれだけをやっと言う。
「分かればいいわ、先生は戻るわね。お大事に」
ドアの鍵を外してバタンッ、と大きな音を立てて保健室を出ていく。ドアの閉まる音が虚しく部屋に鳴り響く。バッドエンドを知らせる終りの鐘のように思える。

一人ぼっちになった俺は呆然と立ち尽くしていた。今までの会話を把握するのに時間を要する程に打ちのめされていた。生まれて初めての告白はものの見事に玉砕したのだ。
(終わった……、終わっちゃったよ…)
全身を虚脱感が襲う。気分の悪さはとうに消えていたが体育祭に戻る気には毛頭なれない。閉会式だけには参加したが、その前後の事は良く覚えていない。そんな事はもうどうでもよかった。

川上先生にフラレたという事実だけが頭の中にこびりついている。俺は何もかもが嫌になり自分の殼に閉じ籠るのだった。

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