授乳女教師
Tsuka:作

■ 真知子の回想1

(失敗したわ……)
真知子は自分の迂濶な行為を後悔していた。普段保健室で搾乳する時は誰もいないか、もしくは石井先生以外の人がいないかを確認している。
ただ体育祭の最中だけは、よもや生徒がいるはずがないだろうと決めつけていた。結果として性欲真っ盛りの男子生徒の前で裸の乳房を晒し、こともあろうか搾乳姿を覗かれてしまったのだ。とても恥ずかしい思いをしてしまった。直ぐ近くに生徒がいたのにも驚いたが、それ以上に恋の告白を受けたのには非常に驚いた。

(まさか牧野君からあんな言葉が出て来るなんてね…驚きだわ…)
おっぱい云々もそうだが自分の素顔について言及された時は思わずドキッとしてしまった。

そう……、彼の言う通りで図星だったからだ。流石に驚きの表情を隠せなかった。

(何故あの子は感づいたのかしら…? この学校に転任して初めてだわ、あんな事言われたの…)
いくら考えても分からない。真知子に対する想いが何か特別な感知力を彼に与えたのだろうか?
社会科教師の川上真知子は先生になってちょうど10年目。現在の学校は2校目になる。常にクールで生徒をところ構わず厳しく注意するという『鉄の女教師』は真知子本来の姿ではない。
むしろ真知子の性格は真逆で、心優しく穏やかで母性がとても強い女性である。最初に赴任した学校では『マドンナ先生』と呼ばれていた。
この事を知っているのは同僚の石井先生くらいであろう。現在の学校内での真知子の姿しか知らない者は、およそ想像できまい。いったい何が真知子を変えてしまったのか?

それは7年前、前の学校に在職していた頃まで遡る。『金八先生』や『スクールウォーズ』を見て教師に憧れ、念願の教職員採用試験に合格したのは真知子が23歳のとき。最初に赴任したのは高校の男子校だった。
その頃はまだ未婚であり、旧姓の福島真知子の名前だった。とびきり美人ではないが可愛らしい笑顔を振り撒き、真知子はどの生徒達とも優しく分け隔てなく接した。

だから生徒達からの人気も飛び抜けて高く、よく相談事を打ち明けられたりもした。可愛い笑顔に96センチを誇るHカップの弾ける爆乳。
学校の『マドンナ先生』になるのに時間は掛らなかった。真知子もこの環境に満足していた。

しかし好事魔多し。

ある事件を境に状況は一変する。
赴任して3年目。教師生活にもすっかり慣れてきたある日の放課後。真知子が廊下を一人で歩いていると、後ろからある生徒に呼び止められた。
「先生…」
真知子が振り向く。
「あら、前田君。どうしたの?」
前田という生徒は真知子の担任クラスの生徒だった。
「すみません、実は折り入って相談がありまして…」
「何? 何? 悩み事?」
前田は神妙な面持ちで話す。しかしその目には何か強い意思が感じられる。
「はい…どうしても福島先生に聞いて貰いたくて」
ただ事ならない雰囲気を感じた真知子は即座に了承した。
「分かったわ。何処か適当な場所はないかしら」と言った瞬間だった。

突然前田の拳が真知子のみぞおちをえぐる。いきなりの事で身を守る間もなかった。

「うっ…」

真知子は胃液が込み上げて来た感覚を覚えそのまま気を失ってしまった。
どのくらい失神していたのだろう。真知子が気を取り戻すと、なんと自分が柱にくくり付けられた縄で手足を縛られマットに仰向けに大の字にされていたのだ。どうやら体育館の倉庫に連れ込まれたらしく、独特の臭気が立ち込めている。

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