屋上の王子様
二次元世界の調教師:作
■ 1
その日も私は学校の屋上に上がり、ぼんやり景色を眺めていました。
「ああ〜、いい天気……」
小春日和って言うんでしょうか。私はあったかい春の陽気に、ついそう一人言を呟いていました。
「こんにちは。」
そう背後から声を掛けられた私は、ゆっくりと振り向きます。そこには見たことのない、私よりずっと小柄な男の子がニコニコしながら立っていました。中学生かと思いましたが、うちの高校の制服を着ています。
「何してるの?」
「別に。」
「授業中だけど。」
「じゃ君は?」
面倒くさいのでシカトしようかと思いましたが、黒縁メガネを掛けた中学生みたいな相手に、つい気を許してしまった私は、「君」なんて言ってしまいました。どう見ても下級生でしたから。
「サボってる。」
「ふうん。」
これ以上ちょっかいを掛けられても面倒なので、私はそう言うと思い切り彼から視線を外し、学校の外を見ます。でも少しばかり高いビルがぼちぼちと、後は山が見えるだけで特に面白い物は見えません。この町はたかだか4階建てのうちの高校より高い建物はほとんどない、田舎のショボい町です。
ところが彼は諦めません。それどころか体育座りで大きなエアコンの室外機みたいな機械にもたれて座っていた私の正面に回り込んで来ました。
「ねえお姉さん。」
「お姉さん?」
私は露骨に嫌な顔をしてあげました。なんてなれなれしいやつだろう、と思いながら、私がその場を去ろうとしなかったのは、彼の下手すれば小学生に見られそうな外見と、甲高い女の子みたいな声のせいでしょう。まるでコナン君みたいな子だと思いました。
「でもお姉さんでしょ。
僕、中山大地、1年生。
お姉さんは?」
「3年だけど。」
「やっぱりお姉さんだ!」
何が嬉しいのか、彼は妙にはしゃいでいました。
「ねえ、お姉さん名前は?」
「……ながさわまさみ」
「へえ、同姓同名なんだ。」
私はいい加減イライラして来ました。
「授業に戻らないの?」
「まさみさんだって授業サボってるじゃない。」
「私はいいの!」
「何で?」
らちが開かないので、はっきり言ってあげる事にしてあげた。
「あのさ、ウザいんですけど、君。」
「中山大地だよ。」
「じゃあ中山君。
ここ私が先にいたんだから、邪魔しないで。」
「いいじゃん、お話しようよ、お姉さん。」
私ははあ〜とため息をつき、コイツの事をシカトする事にしました。ここは狭い空間で本来は人が座り込めるような場所ではありません。恐らく5人も人が出たらギュウギュウ詰めになってしまうでしょう。
そんな所に知らない男の子と2人でいるのは嫌でしたが、仕方ありません。私だって最近発見したほとんど人がやって来ない、授業サボリにはもってこいの場所なんです。今追い出されたら行き場に困ってしまうし、そんな理不尽な事はありません。私は彼が諦めて出て行ってくれるのを待つ事にしました。
「ねえ、まさみお姉さん。
スカートの中見えてるんだけど……」
シカトしようと思った私は、いきなりそんな事を言われて少し動揺してしまいました。体育座りだから、確かに見えています。でももちろん黒いハーフパンツをはいてるので問題はないはずなのですが。
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