1人えっちなルームシェア
二次元世界の調教師:作

■ 2

 こんな不道徳なことを考えてしまった私は、雨宮はるか。高校を卒業して県外の看護学校に進学するため、2つ学年が上で理工系の大学に通う兄、耕平の下宿で一緒に暮らすことになりました。高校を卒業したら家を出て暮らしたいとわがままを言った私に、親の出した条件はお兄ちゃんの下宿で一緒に暮らすなら、と言う、私にとっては渡り船のようなおいしい話でした。実は、私がわざわざ下宿しなければいけない県外の学校を志望したのも、お兄ちゃんと一緒に生活出来たら、と言う家族の誰にも気付かれていない筈の願望を実現するためだったのです。

 両親は私が1人暮らしをしたいのだろうと思い違いをして、お兄ちゃんと一緒に暮らすように言えば家を出ることを諦めるだろうと考えたのでしょう。そうは問屋が卸しません。私はお兄ちゃんの下宿している場所から通える看護学校を探して、地元の学校よりレベルの高いその学校に入るため、苦手な数学も必死で勉強しました。その甲斐あって見事に合格を勝ち取った私は、こうして「ルームシェア」と言う形で、あこがれのお兄ちゃんの下宿に転がり込むことになったのでした。

 この話を聞いた時、お兄ちゃんも半信半疑のようでした。

「マジかよ。
 冗談だろ?」

 普通はそうだと思いますが、お兄ちゃんは妹と2人で暮らすことにいい顔をしてくれませんでした。でも私が本気らしいことを知ると結局、しょーがねえな、としぶしぶ承諾してくれたのです。受験する時にもお兄ちゃんの下宿に泊まったのですが、足の踏み場もないくらい乱雑に散らかった部屋を片付けようとする私を、お兄ちゃんは露骨に嫌がりました。でも、お前明日受験だろ、と私に掃除をやめさせたお兄ちゃんは、以前のように数学を教えてくれたんです。

 小学校の頃まで、私はがさつで乱暴者のお兄ちゃんが嫌いでした。つまらないことで叩かれてよく泣かされ、お兄ちゃんは親にこっぴどく叱られたりしてたものです。でも大きく成るに連れて肉体的な暴力はなくなり、中学に入って大の苦手の数学に苦労している私を、親の命令でお兄ちゃんが教えてくれることになってから、だんだん仲が良くなって来たんです。

 お兄ちゃんはいつも嫌な顔をして、母さんがうるさいから仕方なく教えてやるんだ、と言う態度でした。丁寧に教えてくれず、わからない所は自分で考えろ、このバカ、などと小突かれて、泣いてしまったこともあります。でもお兄ちゃんは私が泣いてしまうと困ってしまい、ようやく優しく教えてくれるのでした。だからと言ってウソ泣きしたりしたことはありませんが、ぶっきらぼうで怖いお兄ちゃんが、本当は優しいんだ、と実感した私はだんだん彼に惹かれるようになったのです。スポーツマンで明るく社交的なお兄ちゃんと、アニメオタクで暗くて内向的な私は全く対照的でしたが、だからこそ魅力を感じたのかも知れません。

 お兄ちゃんへの好意が、はっきりと恋心に変わったのは、私が高校に入学した頃だったと思います。妹の私の部屋はなかったので、しょっちゅうお兄ちゃんの部屋で勉強を教えてもらうようになり、やっぱり小汚い部屋でしたが、彼の一挙手一投足に胸をときめかせてとても幸せな時間を過ごしました。お兄ちゃんは相変わらず乱暴な教え方でスパルタでしたが、こんな頭の悪い私が悪いんだ、と彼に怒られることにさえ歓びを覚えてしまう有様でした。

 私は内向的でほとんど感情を表さない暗い子なので、お兄ちゃんは私の気持ちには絶対気付いていなかったと思います。でもいいんです。妹がそんなアブない気持ちを抱いているなんて知ったら、お兄ちゃんは私を避けるに違いありませんから。共学の高校に通うお兄ちゃんはガールフレンドも多かったようですが、そんなことも気になりません。私はお兄ちゃんに部屋で数学を教えてもらう幸せな時を過ごすだけで、満足でした。

 そしてこの頃から、散らかり放題のお兄ちゃんの部屋に難儀していたお母さんが、私に向かって勉強を教えてもらうかわりに部屋を片付けてあげなさいと言ったのです。お母さんも見かねて時々掃除していたようですが、お兄ちゃんはすぐに又散らかしてしまうのです。私はずっと思っていたけど遠慮してたことなので、お母さんのお墨付きをもらい喜んでお兄ちゃんの恐ろしく汚い部屋を片付けてあげました。ただし絶対知られないようお兄ちゃんがいない時に掃除しましたから、たぶんお母さんに掃除されてるのだと思ってたでしょう。お兄ちゃんが下宿の掃除を嫌がったことからも、私はバレてないと思いました。

 そんなある日お兄ちゃんの部屋を掃除していて、私はその後の運命を暗示するような、あれを見てしまったんです。そこまでは見てはいけないと思いながら、つい好奇心に負け開けてしまった机の引き出しの奧に、何冊ものいかがわしい雑誌が。私はまだお兄ちゃんが絶対に部活から帰っては来ない時間であることを確認すると、それらを慎重に出してじっくり見入っていました。

(お兄ちゃん、こんな本見てるんだ……)

 お兄ちゃんが隠してた雑誌は、制服を着た女子高生が下着を見せているようなグラビア誌と、SM雑誌ばかりでした。心臓の音が聞こえるほどドキドキしながら雑誌のページをめくっている内に、私はその時学校帰りで着たままだったセーラー服の奧に、手を忍ばせてしまっていました。

(お兄ちゃん、セーラー服が好きなの……)

 セーラー服の子がすごく短いスカートから白い下着を見せていたり、縄で縛り上げられている衝撃的な写真を見ていると、私はわけがわからなくなるくらい興奮してしまい、自然とそんな羞ずかしいひとりえっちの格好をしていたのです。変な場所を触ると気持ち良くなってしまうことは中学時代に気付いていましたが、下着の上から触るだけでそれまでに感じたことのない素晴らしい心地良さを覚えた私は、いつしか夢中になってグラビアをめくりながら指を使っていました。知識としては知っていても、お乳の先とアソコの縁にある羞ずかしいしこりが石みたいに固くなってしまったのは、この時初めて経験した感覚でした。

 夢見心地で指を使いながら、私はお兄ちゃんの好きな女の人を理解したつもりでした。制服を着た女子高生とナースです。そんなグラビアばかりだったからです。進路を決めあぐねていた私がナースになろうと一瞬にして決意したのもこの時でした。こんな志望動機、口が裂けたって言えませんけど。気が付くとヤバいくらい時間がたっていて、慌てて絶対にバレないようそれらの雑誌を机にしまい込んだ後、私はスカートの中がおもらししたみたいに冷たくなっていたのを、今でも鮮明に記憶しています。それは私が生まれて初めてひとりえっちと言う行為と、それによって濡れる、と言う感覚を経験した時でした。

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