オカルト教師
二次元世界の調教師:作

■ 5

「真央さん」
「はい」

 俺のことは名字を呼び捨てで、「真央さん」か。僕はしかしそんなことより、この部屋の奥にある暗室から聞こえた涼しげな美声が実に自然に「はい」と答えたことに気持ちを動かされていた。僕は一言もしゃべることが出来ないのに、既にそのような対応をするように命令されていたのだろうか?僕は放課後すぐここに直行したと言うのに……

「いいお返事ですね、えらいですよ、真央さん」
「ありがとうございます、ご主人様」

 僕は暗室の向こうの聞き間違うはずもない姉貴の声が、ガマガエルとそんなおぞましい会話を交わしたことに、頭をハンマーで殴られたようなショックを受けた。ただの「あやつり」で、どうして姉貴はそんな言葉を口にするのだ。

「ではこちらに来て下さい、真央さん」
「はい」
「もう一言もしゃべってはいけませんよ」

 こうしてやって来た姉貴の顔を見て、僕はアッと思った。目が泣き腫らしたように真っ赤になっているのだ。いつも元気で健康そのもの、おまけに勝ち気で男勝りな性格の姉貴が泣いた所なんて見たことがない。するとそんな僕の気持ちを見透かしたかのようにガマガエルが言った。

「真央さんはずいぶんと手を焼かせてくれたが、お前が来るまでにミッチリとしつけて、かわいい奴隷にしてやったよ。これも岡田、お前がお姉ちゃんのシモの毛をくれたおかげだ、礼を言うぞ」

 何てことだ。ひょっとしてガマガエルのやつ、昼休憩からの2時間姉貴を監禁して秘術を用い、「奴隷」にしてしまったと言うのか。「ファラオの秘術」は行為を強要するだけで、心までは影響を受けない。だから姉貴がどんな辛い思いで、コイツを「ご主人様」と呼び、奴隷の言葉遣いで命令に従わうよう調教されたのかは想像するに余りある。その証拠が真っ赤に泣き腫らして、せっかくの美貌が台無しになった姉貴の顔だ。だが僕は、ガマガエルに対する恐怖をフツフツとわいて来る怒りが凌駕しながら、同時に初めて見た姉貴の泣きべそにどうしようもない興奮が込み上げて来るのを禁じ得ないでいた。これではガマガエルのことを鬼畜だと罵るわけにはいかない。実の姉に邪な欲情を覚えている僕の方がたちの悪い鬼畜ではないか。

「では真央さん。こちらに来て立ち、スカートをめくって弟にしっかりパンツを見せなさい」

 しゃべるなと命令されていた姉貴は無言で僕のすぐ前までやって来ると、スカートを両手でガッと上げて見せた。とても我慢出来なくなった僕が、思わず目をつむると大声でガマガエルの「命令」がやって来た。

「馬鹿野郎! しっかり目を開けてお姉ちゃんのパンツをガン見しろ!」

 僕はもちろん命令通りに目を開けるとかなりの至近距離に来ていた姉貴のたくし上げたスカートの中を穴が開くほど見つめた。僕はガマガエルにあやつられているのだが、自分の気持ちに正直に行動しているのと変わらなかった。それほど姉貴のスカートの中は僕にとって魅力的だったのだ。姉貴がはいていたのはあの日のピンクのような色でなく、ごく普通っぽい白パンツだったが、よく見るとレースのハイレグで大事な所がうっすらとスケて黒い飾り毛がバッチリ見える際どいデザインの代物だ。姉貴はスポーツウーマンでそんなえっちな下着を着けているなんて思ってもみなかったが、考えてみれば高校三年生である。そのくらい当然なのかも知れないが、これまでのイメージとのギャップに僕は激しく萌えてしまい、もう股間はビクビクと爆ぜんばかりに脈動していた。

「おい岡田、仲間に入れてもらうぞ」

 するとガマガエルのやつ、僕のすぐ隣に同じように壁にもたれて座り込むと、同じアングルで姉貴がめくってワナワナと慄えているスカートの中を見上げ始めた。

「おおなかなか絶景だな。見ろよ岡田、お前のお姉ちゃんはシモの毛がボウボウだぞ」

 ふと見ると姉貴は首筋まで真っ赤に染めて羞ずかしいのだろう、目を閉じて僕達の方を見ないようにしていたが、ガマガエルはそれも許さなかった。

「駄目ですよ、真央さん。しっかり目を開けて、弟君が興奮してチンポを固くさせてる所をよく見るのです」

 姉貴は何とも言えない表情で目を開ける。

「よしよし、お互いのマタの間を仲良く見せ合うってもオツなもんだろう、なあ岡田」

 そう聞かれても、姉貴の素晴らしいスケパンツに目が釘付けになった僕も、どうしようもなくビクビクと張り切ってしまう僕の肉棒をじっと見つめている姉貴も、一言も発することは出来ない。それに気付いたガマガエルは、新しい命令を下した。

「よし、これからお前らは聞かれたことにだけ正直に答えろ。まあ、術が効いてる限りウソがつけるはずはないがな」

 そんなこともあやつられてしまうのか!僕はウソが付けず本心を晒け出さねばならないことの恐ろしさを想像して、又鎮まりかけていた恐怖がジワジワと込み上げて来た。恐らく姉貴も同じだろう。僕の股間を眺めている目に怯えたような色が浮かんでいた。

「まず岡田、お前からだ。その通りだと思ったら、復唱して答えるんだぞ。お前は大人しそうだが、本当は女の子にとても興味がある、イヤらしいやつだな?」
「はい、僕は女の子にとても興味がある、イヤらしいやつです」
「だから、教室で女子の机をのぞいて、体操着の匂いをかいでいたんだな」
「はい、僕は教室で女子の机をのぞいて、体操着の匂いをかいでいました」
「俺に見つかった時、お前は何部の、何と言う名前の女の子のブルマの匂いをかいでいたんだ」
「僕はバレー部の、竹本ひとみさんのブルマの匂いをかいでいました……」

 ああ。何と言うことだ。姉貴には絶対に知られたくないと思った変態行為を、こんな形で告白させられるなんて。僕が自分のクラブの後輩のユニフォームでそんな行為に耽っていたことを知った姉貴は、どんな思いでそれを聞いているのだろう。だが言葉まであやつられている僕は、一瞬のためらいもなく本当のことを語ってしまう。

「お前はお姉ちゃんがブルマをはいてるのも、イヤらしい目で見ていたんだろう?」
「わかりません……」
 
 少しホッとした。僕は姉貴の公式試合にはほとんど欠かさず応援に行ってるが、正直言って他の子のユニフォーム姿にムラムラ来ることはあっても、姉貴のお尻をそんないかがわしい目で見たことは一度だってないと思っていたからだ。だが、本当にそうなのか、確信を持って言い切ることは出来なくなっていた。そしてガマガエルはあいまいな答に気を悪くするかと思いきや、むしろそんな僕の気持ちの揺らぎを意地悪く観察しながら楽しんでいるようだった。

「ではパンツはどうだ?お前はお姉ちゃんのパンチラを見たいと思ってたんだろう?」
「たぶん、そうかも知れません」

 それが僕の本心だ。

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