ダイエットモニター
二次元世界の調教師:作

■ 1

 この頃何だか、うちの陽子お姉ちゃん、やせてキレイになったみたい。私がそう言うと、お姉ちゃんはちょっと誇らしげに、そうなのよ実は、とその秘密を教えてくれました。

「駅の裏に渋谷マコトエステサロンって出来たでしょ?」
「知らないよ。駅なんか行かないもん」
「そっか。久美は学校が反対だもんね」

 お姉ちゃんはJRに乗って短大に通ってるんです。

「お姉ちゃん、エステなんか行ってたの?」
「そこのお店、ダイエットコースのモニターを募集してたの。短大の友達に紹介してもらって」
「そうなんだ。いいなあ」
「じゃあ久美も行ってみる?」

 何でも知り合いに紹介してもらうと、無料のモニターになれるらしいんです。すごく効果があるらしくて、お姉ちゃんは1か月で7キロもやせたって言うんでビックリです。私も仲の良いお姉ちゃんに頼み込んで紹介してもらうことにしました。

「どんなことするの?」
「うーん、基本的には運動なんだけどさ……まあ行ってみてのお楽しみよ」

 お姉ちゃんはなぜか羞ずかしそうに答をぼやかしました。

――そっか。陽子姉ちゃん恥ずかしがり屋だもんね

「レオタードみたいの、着なくちゃいけないんだ」
「う、うん、まあね。ちょっとハズいかも……」
「それはちょっとヤだな。渋谷マコトさんに見られるんでしょ」
「大丈夫よ。だってマコト先生は女だもん」

 それを聞いて気が楽になった私は、さっそく次の日曜「渋谷マコトエステサロン」に連れて行ってもらったんです。事前に電話したら、制服で来て下さいと言われたので、私は通っている女子高のセーラー服姿です。マコト先生はとても落ち着いた素敵なアルトの声で、私はドキドキワクワクしながらお姉ちゃんに付いて行きました。

「お姉ちゃん」
「なあに」
「……いや私エステなんか初めてだから」

 ホントは陽子姉ちゃんがヒラヒラのすごいフレアミニをはいてたんで、思わず声を掛けてしまったんです。

――うわあ、見えちゃいそう。でもアシがキレイだなあ……

 お姉ちゃんは私と同じような背格好で、女の子としてはごく普通の身長なんですけど、やっぱりやせたおかげでダイタンにアシを出してもキレイなんです。私だってちょっと冒険してスカートをミニにすることもありますが、ここまでは絶対無理、ってほどお姉ちゃんのミニは見たことのない過激なものでした。私は見えても大丈夫なように黒いスパッツをはいてますが、普通の私服のお姉ちゃんはそんなものはいていないでしょう。見てる私の方が心配してしまうくらいでした。お姉ちゃんは私以上に恥ずかしがり屋のはずなのに、女の子はやせるとダイタンになれるのでしょうか。

――ホントに恥ずかしくないのかなあ。それマジでヤバいって、お姉ちゃん……

 その時でした。たまたま強い風が吹いてお姉ちゃんのフレアミニがパッと派手にめくれ上がってしまったんです。慌てて両手で押さえた時はもう遅く、隣に並んで歩いてた私にはバッチリ白い物が見えて目がテンになってしまいました。男の人には意外かも知れませんが、高校以上の女の子はめったに白なんかはかないものです。のぞかれて一番恥ずかしい色ですから。

 私はやっぱり一言注意してあげようかと思いましたが、素知らぬ風を装ったお姉ちゃんが首筋まで赤く染めているのがわかって、何も触れませんでした。

――そんなに恥ずかしいのに、どうして?

 陽子姉ちゃんは私から見ても色白な美人だし性格もいいんですけど、とても恥ずかしがり屋で引っ込み思案なので彼氏がいないんです。私も似たようなもので人のことは言えませんけど。きっとダイエットに成功したことに気を良くし、頑張って積極的になろうとしているのでしょう。お姉ちゃんが無口になっちゃったので、私も無駄口を叩かずに着いて行きました。

 さて「渋谷マコトエステサロン」はうっかりすると見逃してしまいそうな、小さなお店でした。

「いらっしゃい。お待ちしてましたよ、山下さん」

 お姉ちゃんと私がドアを開けると、すぐにやって来た背の高い女性がそう言って挨拶しました。

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