診察室
ドロップアウター:作

■ エピローグ

 私は、ぐっしょり濡れた玲さんの股間をバスタオルで拭いてあげて、それから玲さんを起こしました。
 私に無理やりいかされた時はぼんやりしていましたが、ベッドから降りた瞬間、何かを思い出したかのようにおえつをもらして泣き出しました。
「お疲れさま。もう服を着て帰っていいわよ」
 私がそう言うと、玲さんは泣きながら、ゆっくりとした動作で服を着始めました。
 でも、一時間近くに渡って過酷な体験をしたことで、玲さんの華奢な体はすっかり参ってしまっていたのです。
 ようやく服を着終えて、処置室のカーテンに手をかけようとした瞬間、玲さんは床に崩れ落ちました。


 結局、午後の部活動に玲さんは出ることができませんでした。
 見るからに顔が青ざめていて、少し熱もあったので、畳の間で布団を敷いて、しばらく休んでもらうことにしました。
 一時間ぐらい眠って、玲さんはようやく落ち着いて、どうにか家に帰っていきました。
 帰り際、玲さんはあれだけ辛い思いをしたのにも関わらず、私に「ありがとうございました」ときちんとお礼を言ったのです。
 私は、ますます罪悪感にさいなまれることになりました。
 そしてその直後、私は信じられない光景を目の当たりにしたのです。
 玲さんが帰った後、私は診察室に戻ろうとしたのですが、ドアを開けた時、野田さんと先生が話している声が聞こえてきました。
「今日はいいストレス解消になりましたね。ああいう真面目な子をいじめるのって、ホントに楽しい」
 野田さんの言葉に、私は息を呑みました。
 後で分かったのですが、野田さんは若い女の子が来ると、いつもあんなふうにいじめているそうなのです。理由はよく分かりませんが、たぶん若さに嫉妬しているんだと思います。
 病院の信じられない一面を見せつけられて、私はこの世界でやっていく自信を失いました。
 私は結局、その後一年ぐらいしてその小児科病院をやめました。今は、どうにか別の病院で働かせてもらっています。
 今でも、玲さんの涙が忘れられません。あの子は今、どこでどうしているのでしょうか。この体験が心の傷になっていないことを、私はただただ祈るのみです。

≪完≫

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