捨てられた猫
一二三:作

■ 勘当の身1

 柳川春香は今日も夢遊病者の様に精根尽きた格好でハローワークの中に這入って行きます、受付カードに昨日の面接表を挟んで窓口に出し待合の長椅子に掛けて順番を待ちます、30分位経って名前を呼ばれました。
「柳川春香さん、お待たせしました、6番へどうぞ」
 春香は6番窓口に行き椅子に掛けながら、
「お世話になります、如何もダメでした」
「その様ですね、何か原因が有るますか」
「はっきりは云って貰えないのですが、組合の方から圧力が掛っているようですわ」
「何か貴女に思い当たる事が有りますか」
「前の理容店で、お客様に家電品の購入で保証人になって頂いたのが原因かも知れません」
「購入代金払って無いのですか」
「いいえ、毎月きっっちり払っていますわ」
「ジャー其れは問題無いですよね、何故でしょう」
「此の際隠さずに申しますが、私の身体を週に1回抱く事が条件でした、其れが奥様にばれたからだと思います」
「やっぱりね、最低のケースですね、こんなフシダラな事してたら業界から干されても仕方ないですよ、1次的に他の業種を当ってみませんか、人材派遣会社で清掃婦なら在りますよ」
「何でも遣ります、ご紹介願います」
「給料は時間給で1時間750円です、公的保険は全部有ります、夜間や深夜の勤務も有ります、無論手当は付きます、其れでは是を持って南海商事に行って下さい」」
 春香は係官から紹介状を渡されハローワークを出て、其の足で南海商事に行きました。簡単な面接で即刻採用となり、「明日朝7時45分までに会社に出勤して下さい」と言われ、今迄の絶望感が一気に消え去りました。
 春香は最初から失敗したくないので7時40分に出勤し、受付の女性事務員さんに、
「今日からお世話になる柳川春香です、宜しくお願いします」
 と、挨拶すると、
「ハイ、柳川様ですね、少々お待ち下さい」
 と言って社内電話を掛け、
「只今柳川様が見えました、−−−−−−−−−−−−ハイ解りました」
 事務員が電話を切り、
「社長がお会いするそうですから此方へどうぞ」
 と言って案内されたのは豪華な応接室でした、春香は今迄この様な応接セットの深々とした椅子には座った事が有りませんでした。
「お掛けになってお待ち下さい」
 と言って事務員が出て行き、暫くして社長様が現れました。
「イヤー、お待たせしてスマン、貧乏会社は朝から野暮用が多くてね、私が社長の南ですどうぞ宜しく」
 社長様は持って来られた書類ファイルをテーブルの上に置かれ。表紙をめくって書類と春香を見比べながら、
「君、理容師免許を持ってるんだね、掃除婦のオハチャンでは勿体無いよ、第一未だ若いんだから、何で掃除婦に成るの」
「ハイ、前の店で失敗しましたから、食べる為には何でもしなくては成りませんから」
「免許持ってれば幾等でも働く所あるでしょう」
「ハァ、職安でも言われました、でも駄目なんです」
「ホー、何か理由が有るの、善かったら聞かせてよ、悪い様にはしないから」
 春香は昨日のあまり簡単な面接でOKが出た事に不安を感じました、「ああ、又此処もダメか、事情を言っても如何にも成らないだろう」と半ば諦め、臍下3寸の恥ずかしい話をする気にも成れずモジモジしていると、
「そんなに言い難い事なの、若い時の失敗は早く忘れた方が良いよ、引きずっていても何時かはばれるからね、其の為には何もかも隠さず表に出して、御和算にして再出発する事だよ、前の丸森理容室で何かあったのだね、私で出来る事なら力になるよ」
「ハー、一寸」
「何でも言って看なさい、楽に成るよ、人間誰でもあやまちは有るのだから」
 社長様の言葉は柔らかですが眼光は春香の心を見抜いている様でした、もうこうなると蛇に睨まれた蛙です。
「私が浅はかだったのです、早く1人前になりたい1心で先生の言われるが侭に成ったのがいけなかったのです」
「ウーン、多分そんな事だろうと思っていたがやっぱりそうか、修行の身では拒否出来ないものな、辛かっただろうね解るよ、何時頃からなの、詳しく話して御覧」
 此の優しい言葉に春香は一気に恥ずかしい過去を話し始めました。
「中学を卒業すると、両親の勧めで理容師に成る為丸森理容室に住み込みで就職し、1年位経った頃から先生を稽古台に髭剃りを教えて頂き、剃刀の研ぎ方等を教えられ、掃除洗濯使い走りだけだったのが、やっと本業を教えて頂く事に成った頃の事です。毎週月曜日が定休日なのですが、毎月第3日曜日も定休日なのです、此の時は二日続きの連休なので、私は郷里に帰ったり友達と映画を見に行ったりして居ましたが、業界の合同お花見会が有りお昼から飲めや歌えのドンチャン騒ぎで、2時過ぎには私はすっかり酔ってしまって其の場で寝込む有様でした、先生は私を気遣ってタクシーを呼んで下さり先生と一緒に先に帰る事に成りました」
「其れで真直ぐ家に帰ったの?」
「タクシーから引き出され担ぎ込まれたのはラブホテルでした、夢現の中でベッドに転がされ服を脱がされている時気が付きました。「イヤー、先生、何するんですか、嫌です許してー」と叫び抵抗しましたが身体が動きませんでした、全裸にされ手を浴衣の紐で後ろ手に縛られ、キスをされながらお乳を揉まれ、性器に指を入れられました。先生の口が離れた時先生が耳元に熱い息を吹きかけながら、「お春、俺はお前が好きだ、お前も早く免許取りたいだろう、俺に任せておけ、秋の試験には合格させて遣るから」と言われ、私は抵抗するのを止めました。先生も裸に成られ大きな硬い物が私に中に這入って来ました、私は思わず、イタイー、と叫びました、先生は私の腹の上に被さり腰を上下されます、暫くして先生が「オウー、イクゾー、オウーー、フーー・・・、ハーー、ハーー、ハーー」。私の中に生暖かい物を噴射されました。私は此の時初めて大人が言っていた「オマ〇コをする」と云う行為が判りました」
「で、如何だった、気持ち善かったか?」
「痛いだけで少しも好くありませんでしたわ、其の時先生が言われたのが「お春、処女だったんだな、俺は嬉しいよ、お前のオマ〇コは最高だ、俺はお前を離さないからな、早く免許を取れよ」と言われました」
「で、其の後は何も無かったのかね」

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