少女の性
横尾茂明:作
■ 誘惑1
先週の強烈な体験をしたあの日以来・・愛美は誠君の事が頭を離れなくなっていた、以前は何となくステキな子!ぐらいにしか感じてなかったのに・・今は強烈にスキと感じる。
秘密の恥戯を共有しているという勝手な観念が、愛美の心の現実と耽りの境界をいつしか取り去っていたのだ。
愛美はホームルーム中・・ずーと誠の後ろ姿を見ていた・・。
(愛美の今の心を誠君にどうやって伝えたらいいの・・)
(付き合って下さい!・・なんて・・とても言えないヨー)
(涙が出てくるほどスキなのに・・)
(涙が出てくるほどスキなのに・・)
(誠君は愛美のこと・・どう思っているの)
(学年中の女の子が誠君のこと・・関心を持っている)
(私なんか・・相手にもされないのでは・・・)
(今日も誠君に何も言えなかったよー)
愛美は校舎の階段を下りながら自分の勇気のなさに落ち込んでいた、
下の方から足音が聞こえ・・誰かが勢いよく駆け上がって来る、
(あっ・・誠君!・・)
愛美の胸は弾けそうなくらい高ぶった・・(何か言わねば・・)
だが愛美は頭が真っ白になり・・誠に路を開けるのが精一杯で階段を右に寄った。
誠も愛美を避けようと何故か同方向に寄ってしまった・・愛美は(いけない!)
と思い反対に動いたが・・誠も急に進路を変え結局は愛美に体当たりをしてしまった。
「痛ーい」・・愛美は腰を階段の角にぶつけ呻きをあげて座り込んだ。
「ご・・ごめん・・ゴメンネ」・・誠はしゃがんで愛美の顔を心配そうにのぞき込んだ、「痛かった?・・立てるかい」・・誠は愛美の肩に手を置いた。
「・・・・・・・・・」
愛美は嬉しかった・・誠君の優しい声が耳元でくすぐったく聞こえ・・
腰の痛みは急激に薄らいでいくのがわかった。
「大丈夫です・・」・・愛美はゆっくりと立ち上がり俯いてスカートを叩いた。
「本当に痛くなかった?・・ゴメンネ」
「愛美・・チョット待ってて・・僕・・君を家まで送っていくヨ」
「すぐ鞄を取ってくるから校門のとこで待っててくれるかい」
誠は愛美の返事を待たず階段を全速力で駆け上がって行く。
(・・・・・・キャー・・誠君と喋れた!・・送ってくれるんだって)
愛美は天にも登る気持でこの偶然の衝突に感謝した。
愛美は校門まで来て・・鞄を後ろ手に持ち肩を揺らし背伸びをして誠が校舎から出てくるのを心待ちに待った。
空は今にも雨が落ちてきそうな雲行きで、遠雷が聞こえる。
すぐに誠が校舎から飛び出してきた・・「さー愛美帰ろう!」
「誠君・・きょうは部活の方はいいの?」
「きょうはずる休みしちゃった・・愛美に少し話したいことが有るから・・」
愛美と誠が並んで歩くのを見て・・他の女生徒たちが羨望の目を丸くして
何かを囁きながら追い越し・・嫉妬顔で愛美達の方を振り返った。
愛美と誠はお互いを強烈に意識しながら無言で歩き続けた・・。
小川の橋にさしかかった時・・誠が唐突に「手を繋いでもいい?」
と愛美に恥ずかしげに囁いた。
(・・・・うん・・・・いいよ・・)
誠は・・はにかんだ仕草で愛美の手を深く握った・・。
愛美は心臓が張り裂けそうになり目眩さえ感じた・・。
汗ばんだ誠の手の平の感触は強烈に男を感じさせ・・誠の汗の匂いは愛美の鼻腔を甘くくすぐった。
(アー今・・誠君が横にいる、手を繋いでいる・・このまま何処かに連れていって欲しい・・ずーとこのままでいたい)
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