虜〜露出に目覚める女たち〜
パーラメント:作
■ 第1章5
「そりゃ、お金がほしいからに決まってるじゃない」
やっぱり、と思いながら続けた。
「なら、バイトすればいいんじゃない?」
「面倒くさいし、まとめて大金ほしいからよ…別にいいじゃない」
どのくらいのペースで、いくらもらっているのかは知らないが、普通にバイトしているほうが稼げるのでは…と考えると、かなりな大金をもらっているか、実は他に理由があるか、しか思いつかなかった。
「ふーん、じゃあ、何で始めようと思ったの?」
「それは…何となくよ」
どこか歯切れの悪い返事に何かを感じ、追及してみる。
「オジサン好きとか?」
「違う」
「将来、風俗で働きたいとか?」
「違う!」
「じゃあ、ホントにお金目当て?」
「違っ、あ…」
「お金ほしさじゃないとしたら、何が目的なの? 言ってごらんよ」
しまった、という顔をしている里奈を見ると、やはりお金以外に目的があるようだ。下を向いたまま携帯を出すと、ウェブ通信をはじめて、あるホームページを開く。
「え、これって…」
画面に写っているのは、『ウリ姫りな』というタイトルのページだった。
「これ…」
「私のホームページ。私、ネットアイドルやってるの」
聞けば、里奈は中学の頃から自分でつくったホームページでネットアイドルとして活動しているらしく、その類のランキングなどでは上位の常連なのだとか。
最初のうちは、顔出しをせず、パンチラや胸チラなどの軽い内容の写真だけ掲載していたのだが、熱狂的なファンの要望やランキングでの人気不振を受け、顔出し写真を始めたという。
最初のうちは、顔出しに抵抗があったらしいが、載せる度にもらうコメントに気を良くし、次第に顔出しが普通になっていったという。
そんなある日、とあるサイトを見つけ、それが転機となったという。
そのサイトは、女の子が掲示板に売りたい私物などの内容・値段を書き込み、それを見た人がメールでやりとりして取引をするという、ネット上のフリーマーケットの支援サイトだった。当時、遊ぶお金欲しさに使用済みのリップクリームや小さくなって着けれない下着などを売っていたが、こちらでも客の人気を掴み、とうとう自分のサイトで売買を始めたということらしい。
元から客を掴んでいた里奈にとってはいい金ヅルになり、多いときには1ヶ月で十万に届きそうなくらいの稼ぎになったこともあるようだ。しかしその代償は大きく、下着だけの取引のはずが、『上乗せするから』と言われ、身体を要求されるようになった。当然拒否したのだが、上乗せされた金額のあまりの多さに目が眩み、身体を許すようになっていったのだという。
「なるほどね。でも、お金目当てじゃないって言ってたよね?」
「最初はもちろんお金が欲しくてやってたけど、いつの間にかそういうことしてる自分に酔うっていうか、気持ち良くなってきちゃって。」
ジュースを一口飲んで、話を続けた。
「いつもウリをする場所が、公園のトイレとかカラオケとか…一回ネットカフェでもしたかな。いつ人に見られるか分かんないようなとこでするんだけど、そういう場所でエッチなことするとすごいドキドキしてきて…こういうの、露出狂って言うのかな」
昨日、実際に見てはいないが、嬉しそうに公園であんなことをしてた訳が分かった。
“この女、本気で露出狂だ!”
弱みを握られ、言うことを聞かなければいけないからとはいえ、ここまで話してくれるとは思わなかった。嬉しくなると同時に、ある考えが浮かんだ。
「まぁ、人の趣味はそれぞれだから何も言わないよ。そういうことなら、事情が変わってくるな…」
「何それ、どういうこと?」
「よ〜く分かったよ。どうせ指示されるなら、庄司さんも楽しいほうがいいだろ? だから、これからは庄司さんが好きそうな指示を出してあげるよ。露出狂の庄司さんにピッタリのをね♪」
我ながらいいアイデアだと思った。実際、里奈も納得したように了承してくれた。こんな簡単にオッケーを出してくれるなんて、誰に指示されるとか以前に、単純に露出を楽しみたいんだとしか思えなかった。
「じゃ、色々とよろしく」
「こっちこそ。その代わり、秘密は必ず守ってもらうからね」
話の内容は決して他人に言えたものではないが、こうして奇妙な関係から生まれた奇妙な仲間意識? を抱いて、今日の集まりは解散した。
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