虜〜露出に目覚める女たち〜
パーラメント:作

■ 第1章10

翌日も学校は休みで、俺は朝早くからある場所へ向かっていた。以前からネットのコミュニティサイトで親交のある、同じ趣味を持つ仲間と『オフ会』を開くため、待ち合わせの場所に行く途中なのだ。
その場所は、我らオタクの聖地、秋葉原だ。

駅に到着し、待ち合わせ場所である改札前で立っていると、“いかにも”といった人たちが大勢降りてくる。さすが休日。ホントにすごい量の人混みだ。

その中に、見知った顔を見つけた気がした。

“あれ? 本人じゃないよな。こんなとこに来るとは思えないし…”

などと考えていると、その見知った顔がこちらへ近づいてくる。疑問が確信へ変わりはじめた時─

「あ、宮前…君? おはよ。待ち合わせ?」

目の前に現れたのは、愛しの愛原美香だった。白のブラウスに薄い水色のカーディガンを羽織り、白地のロングスカートの彼女は、どこぞのお嬢様と見間違えてもおかしくない上品さを醸し出している。
対する俺は、黒のTシャツに同じく黒のジャケット、下はジーパンというラフな格好だ。美香のお嬢様風な出で立ちと並ぶには違和感のある組み合わせだ。

「愛原さんは、何か用事あるの?」

ぶしつけな質問だが、あの美香が秋葉原にいるというのが信じられず、聞いてみたくなった。家電量販店も多いので、家族で来てるなら話は分かるのだが、どう見ても一人のところを見ると、何か目的があるのだろう。

「うん。人と待ち合わせだよ。宮前君は?」

「ぼ、僕も、待ち合わせなんだ」

それっきり、特に会話らしい会話はしなかったが、とりあえず美香の近くで仲間を待つことにした。

しかし、約束の時間をとうに過ぎているというのに、誰も姿を見せない。美香のほうも待ち人が来ないようで、しきりに時計を気にしている。すると、同じ様子の自分を見て気になったのか、今度は美香から話しかけてきた。

「宮前君は友達と待ち合わせなの? 随分待ってるね〜」

「うん。ゲーム仲間っていうか、ネットゲームがきっかけで仲良くなった人たちと会う約束なんだ」

これを聞いた美香が突然驚いた顔をして聞き返してきた。

「もしかして、ファンタジアゲートじゃない?」

「そうだけど…何で知ってるの?」

「えー! じゃあ、流星の丘の…」

ここまで聞くと、こちらも事情を察してきた。どうやら、美香と同じ目的でここに来たらしい。

「そうだよ。愛原さんもやってるんだ、ファンタジアゲート」

「やってるやってる♪ねぇ、ハンドルネーム何? 私はローズだよ」

だいぶノリノリな美香を見て、ついこちらも嬉しくなり会話が弾む。何より、共通の趣味があったということが一番驚きだった。

「僕はイクサスだよ。ローズにはだいぶ世話になったけど、まさか愛原さんだったなんて…」

共通の趣味が発覚し、大いに盛り上がるが、それでも約束のメンバーが揃わない。困ったね、と話をしていると、連絡先を交換していた唯一の仲間からメールが入った。

イクサス氏へ

連絡が遅れてすみません。もう現地でしょうか?

他のメンバーに連絡したところ、アスカ氏とマリアネル氏が来れないとのことですので、勝手ながら延期とさせていただきます。もう現地にいるようでしたら、本当に申し訳ありません



メールを美香にも見せてあげ、状況を確認する。少し経ってから美香にも同じ内容のメールが届いたが、現地に着いてから30分も待たされると、今更…という気分になる。
このまま帰るのはもったいないな、と思っていたが、美香から嬉しい提案が出された。

「誰も来ないならさ、二人でオフ会しようよ♪秋葉原来たの初めてだから、色々見たいんだ〜」

願ってもない、美香と二人きりの、文字通りデートだ。断る理由などあるはずもない俺は、美香を連れて秋葉原へ繰り出した。

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