なんでも言うことを聞く年上の女
けん:作

■ 2

裕美は厳格な父と優しい母の1人娘として育った。
父の仕事の都合上海外生活が長かった。
小学生時はクラスで1番エバっているような男の子が好きだったが、おとなしい性格だったので、告白とかすることが無いまま、帰国して中高一貫の私立の学校に入学した。
中学 高校ではバレーボールをやり、お嬢様学校だったので、男子と話すことすらない生活を送った。
大学は父の反対を押し切り、一浪までしてK大に入学した。
大学時代はミスキャンパスにもなり、深夜放送のラジオのDJやファッション雑誌のモデルをしていた。
大学時代に初めて彼氏ができた。
2歳年上のサークルの先輩で、いつも皆を上から見下すようにしている男だったが、何故か惹かれてしまい、彼が就職で地方へ行き自然消滅するまで、それなりに楽しい時を過ごした。
就職はNテレビのアナウンサーの内定をもらったが父の大反対に遭いしょうがなく諦めた。
後で聞いた話だが、裕美の変わりに補欠で女子アナになったのが、元祖アイドルアナのNだそうだ。
父の薦めも有り、一流商社に就職した。
得意の語学を駆使し、バリバリのキャリアウーマンとして頑張ったが、直属の部長と不倫関係に落ちてしまう。
彼は押しが強く一方的に何でも勧めた。仕事も良く出来憧れの的だった。
しかしそんな関係に疲れ、父の死も重なりボロボロになった時に出会ったのが、4歳年上の今の旦那だった。
彼は今まで付き合った2人とは正反対で、とにかく優しかった。
人生に疲れていた裕美は勢いでそのまま結婚をした。30歳だった。
結婚を機に仕事をやめ、子作りに励んだが出来なかった。
いろいろ不妊治療も試したが、裕美に原因があるらしかった。
37歳の時に郊外に家を買い今の町に引っ越してきた。

その頃から夫婦間では徐々にセックスレスになり。
3年前からは完全に無くなってしまった。
今でも旦那は優しいし仲良く買い物とかには出かけるのだが、一切男女関係は無くなってしまった。
もともと旦那は淡白で本当に普通のセックスしかしなかった。
家で一人でいるのもつまらないので、近所にパートにでも出ようと思い、自転車で5分の山下の勤める会社にパートで入った。
正直旦那は高給取りで、お金には困ってなかったが、時給850円のパートが唯一のストレスを解消してくれる場所だった。
ただパートに出る時、旦那は何も言わなかったが、友達や母は、「なるべく地味な化粧や、服装で通勤するんだよ、あなたは目立ち過ぎる」と釘を刺された。
その言いつけを守りなるべく目立たないように、おとなしく勤めていた。

山下のことは、仕事上頼りになる正社員だなとは思っていた。
確かに優しいし面倒見もいいが、10歳も年下だし特別な感情も無かった。
不景気も重なり会社の飲み会もまるっきり無かったので、仲良くするきっかけも無かった。
ところが裕美は最近入ってきた加藤のいい加減な仕事ぶりが、同じパートとしてどうしても我慢できなかった。
もともとキャリアウーマンだった裕美は仕事をいい加減にこなす事が許せなかった。
注意しようと思ったが、その前に責任者である山下に相談を持ちかけた。
そして言われた言葉が「それはお前が悪い!」だった。
結婚してから12年1度も経験しなかった感覚だった。体中に電流が走った。
一目惚れならぬ「一言惚れ」だった。

「あの一言で、山下さんの魔法に掛かっちゃった。」
なんともかわいらしい台詞を言った。
「これから浩次さんて呼んでいいですか?」
敬語で聞いてくる。
「おう、いいよ」
偉そうに答えた。
すかさず「じゃあお前は、あの日から俺のことを思いながら、オナニーしてたのか?」
信じられない質問をした。言い過ぎたかな?
裕美を見ると真っ赤な顔をしてシーツをかぶった。
認めた? ウソ? AV以外で女性がオナニー認めたの初めて見たよ。
こんなにかわいい女性を見るのは生まれて初めてだった。

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