もしもあなたが透明人間だったら
林檎飴:作

■ 第一章 薬2

「透明っ…?」

「なんだよ。透明になれるとでも……」
グニャッと世界が歪んだ。気がした。
しかし、それはほんの一瞬のことですぐに元に戻った。
「なんだったんだ…?」
隼人は首を傾げた。その時、自分の手が見え……
なかった。
「えっ……!?」
隼人はすぐに体中を見回した。
見えない。身体が見えないのだ。
確かにあるのだが、見えない。
「透明って……このこと…?」
隼人は一刻も早く戻りたいと思った。
「元に戻れないってオチじゃぁないよな…?」
その瞬間、また世界が歪み隼人は透明ではなくなっていた。

望めばすぐに透明になれる。
誰もが一度は憧れる設定であろう。
そして、透明になった男が考えることはひとつしかない。
(透明人間か…。)
まず、本当に透明になったかを立証するために母の前に出てみることにした。
(透明になれ……)
世界が歪み、隼人は透明になった。
下の階に降りてみると、母は夕食を作っていた。
母の隣に立つ。
母は隼人のほうを一階も見ないまま、夕食を作り続けた。

隼人は念のため、母の前で手を激しく振ってみた。
瞬きもしない。
(もう確実だ……俺は透明になったんだ……)
隼人は胸を躍らせた。
そして再び二階に戻り、これからのことを考えた。
(透明になったからには女の子にエロいことをするしかないだろう……。)
隼人はニヤリと笑った。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊