新・売られた少女
横尾茂明:作

■ 奸計の章4

自分を養子に欲しがっている人がいると聞いたのは夏の初めだった、すごいお金持ちでいい人だから一度考えてみてくれるかなと園長先生に言われた。

友愛学園では今まで幾人の子が養子に貰われていった、しかしたいていは小学校にも上がっていない幼子ばかりで……聡美のように中学に通うような子は皆無だった……。

同部屋の中学3年の美智が、「聡美……どうせそんなオヤジ……ロリコンのエロ爺よ!、やめなさい、どんな目に遭わされるかしれたもんじゃないよ!」と言った。

「園長もわかったもんじゃないよ!、なんかエロイ噂も有るみたいだし、それとタケシが言ってたけど……この前の日曜にやくざ風の奴らが園長室に借金取りに押しかけてたみたいよ」

「フン……園長の奴……どうせ借金で首が回らなくなって……あんたを売る気なんだよ、あんた綺麗だからねー」

「姉さん……そんな風に言ったら……園長先生に悪いよ、私のこと想って養子の話を探してくれたんだから」

「あんたは本当にオボコイねー、中学生にもなったあんたを欲しいなんて奴……どう考えてみてもおかしいと思わないの! まっ養子に行くのはあんたの勝手だけど……でもこれだけはいっとくよ、あんたを欲しいっていう奴……絶対あんたの体目当てだから……でも……こんなとこにいるよりは…………」

「エロオヤジに抱かれても……豪勢な暮らしが出来……学校も行かせて貰えれば……体なんかどんなに汚れようが洗えばわかんないもんね……あんた本当に綺麗に生まれてよかったねー……私なんか……来年から町工場の女工だよ……」
美智は寂しく窓の外を見つめた。

聡美は美智姉さんの言うことが間違いとは思わなかった、中学生にもなる私なんかを貰いたいなんてやっぱりおかしいと感じた、でも……今までお世話になった友愛学園のために自分が役に立てればそれでもいいとこの時は思った。



会話は途切れた……武雄は車内に漂う少女の甘い香りに魅了され妄想に耽っていたのだ。

助手席に座る清楚な少女……愁いに満ちた顔で通り過ぎる銀杏並木を見つめている、武雄は夢見心地でハンドルを握り、これからのことを思うと自然に前方の視野が白くぼけてくる。

(こんなに簡単に行くとは思わなかった……しかもロハで……クククク……しかし半年は長かったナー……)

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