許して悪魔様
非現実:作

■ 命を大事にね14

「ちょっと聞きたいの」
「罪姫、なんぞ?」
「……コレって終わりはあるの?」
「エンディングというやつか?、無論存在するが?」
「どうしたら終わるの?」
「マルチエンディングだ」
「まる……ち?」

意味は知っている。
だけど、緑褐色した肉体のシワ顔が真顔で言う台詞ではなかった。
思わず吹きそうになる。

「じゃ、じゃあ〜〜、一番手っ取り早く終わる方法は?」
「……ふむ」

魔王ヴァナントカは顎に手をやり少し考えて出した。
そして口にした言葉は余りにも無責任な言葉だった。

「解らぬ」
「…… …… ……え?」
「解らぬと言ったのだ」
「……ぇえ、え……と……だってアンタがそれは決める事でしょ?」
「否」

片手を突き出して、妙に格好付けて言うヴァナントカ魔王。

「それはプレイヤーが決める事であるから、私にも
解らんのだ」
「……は?」
「私の行動は全てプレイヤーが命じた事を順次行うに過ぎぬ」
「魔王さんを命令するって……はぁ?」

意味が解らない。
そして同時に、この魔王というキャラはヘッポコなのではないかとさえ思えてきた。

「魔王っていうのだから絶対なのじゃないの?」
「我は魔王、すなわちプレイヤーそのものである」
「だからっ、プレイヤーって何っ!」
「我はプレイヤーの意思に基づいて動き、プレイヤーと共にあるのだ」
「だからっ、そのプレイ……ヤ……って!」

ある仮説が頭に入ってきた。
と同時に……語尾が萎んで口から発せられる。
プレイヤープレイヤー……プレイヤー……。
ゲームしているプレイヤー……。
(え……と!)
ガンッと頭を殴られたような衝動。
クラクラする頭で必死で整理する私は……ようやく理解する事となる。
プレイヤー……つまりこのゲームをやっている人は魔王視点なのだ。
さっき目にした様々な調教を選ぶのもプレイヤーであり、その命令を実行するのがこの魔王ヴァナントカ。
つまり?。
このゲームを買い、プレイしているのは弟である健太だ。
ゾワゾワゾワァァア……・。
全身が悪寒に震える。
「あり得ない」「でもしかし」「弟と姉」「弟の趣向に合わせる姉」……全てがありえない。
ゲームを進めている弟である健太が選ぶ調教内容を姉である私は拒む事許されずに受けるのである。

「ぃぃ…いぃやぁっぁあああーーーーーーー!」

私は耳を塞ぎ、叫んだ。
形や実態は違えど、これは弟に全ての痴態を晒しているに他ならないのだ。

「案ずるな貴様は罪人、これ以上の贖罪はなかろう?」
(……なにっぃを……馬鹿な事を!)
「罪姫は様々な調教を受け、次第に己の罪を認めてそれぞれの終わりを迎えるのだ」
(それの選択肢は……私の弟なのよっ!?)
「プレイヤーに恵まれておれば貴様は良い終わり方をするであろう」
「…… ……うぅう」
「フッフッフ……良い表情だわぃ……絶望を見たその表情……フフフ」

涙は止まらない……だけど、強く敵意を込めた視線で私は魔王を睨んでいた。
だが、魔王ヴァナントカは平然と言い放つ。

「早速だが……昨日の調教を始めようか?」
「ぇ?」
「言ったであろう、プレイヤーの選択は我の行動であると?」

理解しがたい事が無念にも理解出来る。
昨日の晩、あれから……弟はこのゲームをやったのであると……。
その弟が選んだ選択肢を私は受けるのだという事を……。

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