悠里の孤独
横尾茂明:作

■ 逡巡6

「悠里、きょう千代田の方で女子校を経営している友人に会いに行ったんだ」食事中 雅人は突然そう切り出した。
「その人は大学時代の親友でね元々は医者になる予定だったんだ、でも僕と同様 結局家業を継がねばならず今は学校経営をしてるんだが…昨日それを思い出し君の進学のことを頼んでみようと出掛けたんだ」

そう言いながら雅人はテーブル上の皿を除け女子校の入学パンフレットを置いた。
(この話…最近聞いたような、あっ伯父さんと同じ話だ)そう悠理は思いだし雅人の次の言葉を待った。

「その人…竹田理事長と言うんだが悠理の事を話したら Vもぎで70以上もとれる優秀な子なら当校としては嬉しい限り、今年は定員割れだったから是非にも欲しい、しかし我校は情けないがCランク…その子の偏差値はSランクなんだろ そりゃ本人が了承しないよって言うんだ。

だから咄嗟の思い付きで…今年は本人の事情で入試が出来なかった、だがいまどき浪人というわけにもいかないだろう、そこで今年1年だけ貴校に入学させてもらい来年は都立に編入させたいんだ、と話したら…先方はそれでもいいと言うんだ、悠理 こんな時季遅れに入学に応じてくれる高校はこの程度の高校になってしまうけど…いいかな?」

「先生…嬉しい、その事は今夜先生に御相談しようと思ってたんです、でも先生が私の高校進学まで考えてくださってたなんて感激です、高校に行けるならどんな高校でもかまいません悠理スゴく嬉しい」

「そんなに喜んでくれるんだ、だったら明日にも入学の手続きを取らなくっちゃ、入学式は確か再来週の木曜日のはず…制服や教科書・カバン・文房具などいろいろ揃えないとね、こりゃぁ来週は忙しくなりそうだな」

「先生、先ほどその高校には1年だけって聞きましたが、都立高校への編入方法は…私立から都立への編入って難しいって聞きましたが…」

「病院の付き合いで都の学校教育部の課長をよく知っているから一度相談してみるよ、たぶん編入試験があると思うけど、君なら問題ないはず」

「私のために何から何まで…先生 本当にありがとうございます」言うと悠里は甘えるように雅人の肩におでこを当てた。

「悠里こそ僕の願いを聞き届け、こうして胸に飛び込んでくれたじゃないか、だから僕こそありがとうと言うべきなんだ」
雅人は甘える悠里の肩を抱き暫し見つめると顎を少し持ち上げ口を吸ってきた、それは甘く優しげな口づけで伯父の粘液質な口づけとは異なり心が暖かくなるような口付けだった。

「先生…今夜は抱いて欲しい…」雅人の唇から少し離し囁くように言うと雅人はその唇をすぐに塞いでしまう。
やがて悠理の囁きに応えるように「悠里、ベッドにいこうか」と上気した悠理を立ち上がらせ二人はもつれるように寝室へ移動した。

二人はベッドに横になり固く抱き合う、悠理は寂しさを埋めるかのように、雅人は欲しくて堪らなかったものをようやく手にした達成感で…やがて雅人の手がブラウスの釦にかかった、悠理はそれに気付き目を開け雅人を見つめた。

「先生…先生は1億円払っても私が欲しいとおっしゃいました、先日私を抱いてその価値はあったのでしょうか?」

「1億円どころか…これまで妻以上の女など絶対いないと思っていた、だが君の体を見てまた性交してみて世の中には上には上が有るもの…そう至高の女体と感じたんだ、君に言うのも恥ずかしいが…正直この肌に触れただけで射精できそうなほど気持ちいい肌だったよ」

「そう、ならよかった…だったら私も臆することなく先生に抱いて貰えます、今夜は私の体で一杯気持ちよくなって下さい先生」
悠理はそう言うと恥ずかしげに雅人の胸に顔をうずめた。

(今日は絶頂に逝けなくてもいい、先生に気付かれぬよう伯父さんに仕込まれた快楽の手管を駆使し、先生がこの体から離れられないようにしてみせる、きょうはそれだけに集中しよう…)

そうは思うも、心の片隅では…いつか肛門性交や変態行為をおねだりし…伯父の調教により染みついた瑕疵に気付かれ嫌悪されて捨てられる、もしくは先生の普通のSEXでは満足できず、自分の方から先生を捨て小千谷に走り伯父の性玩具に成り下がる…。

さて、この先はどうなっていくのか、伯父の性玩具ならずともこのまま先生を愛し続けることは難しいようにも思える、それはこれから高校大学を経て大人の知性を身につけたとき…今の娼婦のような人生に満足できるとは到底思えなかったからだ、ならば刹那的な今の恋情を精一杯楽しもうと悠理は想った。

ーおわりー


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