優等生の秘密
アサト:作

■ 29

「ただいま。」
 貢太は小さなため息をつきながら、靴を脱いでいた。最近、成績が上がってきた為か、母親も以前ほどうるさくはなくなっていた。
「貢太、ちょっと来なさい。」
 ふいに母親に呼び止められ、貢太は身体を強張らせた。今までの母親に抑圧された生活で、すっかり身についてしまった反射である。
「何?」
 いつものように、金切り声を上げて怒鳴ってくれた方が、どれだけ気が楽だろう。思いながら、貢太は母親の次の言葉を待った。
「貢太、今日、帰り道で中嶋さんちの息子さんと話してたでしょう?」
「あ、うん……話してたけど……何?」
 いつ、母親がヒステリーを起こすだろう。貢太の心中は穏やかではなかった。
「あんな負け犬と話すのはよしなさい。貴方まで腐ってしまうわ。せっかく、成績もよくなってきたっていうのに。」
 母親はそう言って、大きなため息をついた。
 貢太は、ようやく母親がヒステリーを起こさない理由に気付いた。所詮、母親の中で絶対的な価値を持つのは学歴だけなのだ。高校受験のときに、貢太に勝つ事の出来なかった人間など、貢太に何の影響も与えないと考えているのだろう。
その態度に、貢太は言い知れぬ怒りを感じていた。だが、どうすることも出来ない。

――親なんてなぁ、一発ぶん殴ってやればおとなしくなるぜ?――

 ふいに、俊樹の言葉が脳裏をよぎった。その恐ろしい考えを振り払うかのように、貢太は曖昧な返事を母親に返すと、逃げるように自室へ向かい、ベッドに体重を預けた。いつもよりも、ずっと身体が重いように感じた。
 その時、貢太の携帯が鳴った。慌ててディスプレイを見てみると、それは、俊樹からのメールだった。救いを求めるかのような気持ちで、貢太は俊樹からのメールを開いた。
『もう帰ったか? まだ帰ってなかったら、明日土曜だからさ、久しぶりに遊ばねぇか?』
 そのメールに、貢太の心は重くなった。
『悪い、もう帰ってる。うちの親、一回うちに帰ったらもう外に出してくれないんだよ。それに、明日学校で勉強会あるし。』
 重い気持ちでメールを打ち終えると、貢太は立ち上がって制服を脱ぎ捨てた。ジャージにTシャツというラフな格好になった時に、再びメールが届いた。
『また息苦しい生活してんなぁ。言ったろ? 俺らはもうガキじゃない。力だって、女よりずっとある。いくらでも親を思い通りに動かす事が出来る。』
 俊樹の言葉が、貢太の心をぐらぐらと揺さぶっていた。
『俺には、母さんを殴るなんて出来ないよ。』
 それだけ書いて、メールを送信した。それでも、貢太には、その言葉を疑う気持ちがあった。本当は、簡単なんじゃないか、本当は、殴って言いなりにすることも出来るんじゃないか、そんな気持ちが、貢太の中で渦巻いていた。

「来週の土曜だな、編入試験。」
「うん。罰ゲームはともかくとして、勉強会のおかげで成績が上がったのは確かね。」
 勉強会に向かいながら、貢太と夏美は談笑していた。こうやって二人で歩いている姿は、周りから見れば恋人同士にも見える。
「これで、特進クラス入りは間違いないわね。」
「油断するなよ?」
「分かってるわよ。」
 夏美はそう言って、にっこりと微笑んだ。
 教室へ入ると、いつもどおり、京介と聡子、そして加藤が既に来ていた。
「さて、始めるか。」
 いつものように淡々と、勉強会は進んでいった。復習の必要がないほど、貢太も、夏美も実力をつけていた。この勉強会に参加している者全員が、まだ習っていない範囲から出題されても、余程の応用問題でない限り、解けないということはなくなっていた。
 そして、テストが始まった。全員が黙々と問題を解き、あっという間に時間は過ぎていった。
「今回は、なかなか面白い結果になったな。4位、加藤、倉敷、同点だ。」
 その言葉に、加藤と夏美は顔を見合わせた。夏美は少し勝ち誇ったように微笑んでいる。
「3位、聡子。2位、仲原。」
「う……そ……!」
 聡子は、京介の言葉が信じられないといった感じで、口元を押さえた。貢太は、ようやくこの時が来たと言わんばかりに、目を輝かせた。
「仲原、一つ忘れてないか? まだ上には俺がいる。聡子に手は出させない。」
 その言葉に、貢太は何か言いたげだったが、ぐっと言葉を飲み込んだ。
「だが、聡子。今日は最後まで口でしてやるんだ。」
「な……っ!? どうして!?」
「仲原ごときに負けたんだ。当然だろう。」
 京介はそこまで言うと、聡子の唇を乱暴に奪った。聡子の口内に無理矢理舌を入れて、絡ませあう。歯列をなぞり、その唾液を吸い尽くすかのように、唇を貪った。
「んうぅっ……!」
 聡子の喉から、苦しげな声が漏れる。それでも京介はかまわずその唇を吸い続けている。そして、器用に聡子の服を脱がせて、下着だけにしてしまうと、四つん這いにさせて、自分の方に尻を向けさせた。
「聡子。もう濡れてるな。」
 ショーツの上から亀裂を指でそっとなぞると、なぞられた部分にじわりとシミができた。京介は焦らすように、聡子の敏感な部分をそっと指で撫でる。
「んっ……やぁあ……っ!!」
 続きをねだるかのように、聡子はもじもじと腰を揺らした。その様子を冷ややかに見つめながら、京介は貢太に合図をした。
 命令されるがまま、貢太はズボンのジッパーを下ろし、窮屈そうにしていたものを取り出した。聡子の媚態を見ていて、それはすっかり硬さを増していた。透明な先走りで、ぬらぬらと輝く先端を、聡子の桜色の唇に押し当てると、意外にも聡子はそれをすんなりと頬張った。
「ん……んぐ……っ……」
 聡子の喉の奥から、苦しげな声が漏れる。それが貢太にとってはこの上なく心地いいものだった。
「あっちは楽しみ始めたな。俺達はどうする?」
 加藤は夏美の肩に手を回して微笑んだ。
「今日は、ちょっと生理始まっちゃって、したくないな。ほら、教室の床汚しちゃダメだし。」
 夏美の言葉に、加藤は残念そうに低い唸り声を上げた。
「あ、じゃあ、口でするっていうのはどう?」
「嫌じゃなけりゃ、お願いするよ。」
 そうは言いながらも、加藤はすぐさまズボンのジッパーを降ろした。グロテスクな造形が、ジッパーの隙間から顔を覗かせている。夏美は微笑んでから、そこに軽く口付けをして、それから裏筋に沿わせて舌を這わせ始めた。

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