■ 2
「ねぇ、まだ処女でしょ? 12歳だもんね。中1だもんね。でも、美咲ちゃんおとなっぽいなぁ…」
霧也はおしゃべりだ。おしゃべりな人間がこんなにもいやだと思うことって、この先あまりないんだと思う。
だけどこのとき私は、パパにオナニーがバレていたことがショック過ぎて、霧也の話なんて聞いていなかった。
だから、気づいた時には大股開かれていたわけだ。
「ごめんね。許してね。」
血走った目で霧也は私の目を見る。いよいよその時がやってきたのだ。
意識を遠くのほうに飛ばせることができたら、どんなにラクだろう。
だけど現実は神経が股間に集まってしまう。
生あたたかい肉棒が自分の股間に刺さっていくのがわかる。
膣が押し広げられるという表現よりも、焼き切られるという表現のほうがこの痛みには妥当かもしれない。膣の上の壁と一緒に、腸がびっしり詰まっているおなかもぐぐっと持ち上げられているようなこの感覚。
痛いのに、歯をくいしばることしかできなかった。涙も流すことはできなかった。もしも自分が性病を持っていたら、全力で感染させてやりたいと思った。
恨むことで、自分を支えていた。
「う……! はぁ……」
霧也が果てた。思ったよりも早かったのが救いだった。
膣の中が生ぬるい液体で汚れた。シーツにはピンク色のシミ。
「はじめてだったんだよ、僕。ありがとう…」
犯したくせに、霧也は平然とそんなことを柔らかな表情をして言ってきた。
髪の毛をいたわるようになでてくる手を、今すぐに切り落としてやりたいとまで思った。けれど、そんなことできない。
広い家のかわいい部屋。
私はここで、父に縛られていなければ、生きていけない存在。
…そんなもんなんだ。諦めた。…ほんとうに諦めた。
けれど、蒼依を好きな気持ちには何ら変わりはなかった。
むしろ、霧也とのこの一件によって、ますます好きになったかもしれない。
☆
朝を迎えて、部屋の重い鍵が開いた。
飼われたイヌにも散歩の時間ぐらいあるものだ。私は学校に行くことが許可された。
紅色を基調としたセーラー服。
リボンはギンガムチェック。正直すごくかわいい制服だと思う。きっとこんな汚れた身でまとった生徒なんて、私ぐらいなのかと…。
――なんて考えるうちに、学校なんてどころじゃなかった。
あの霧也…何者? 尾行してやる…。
私は学校に行ったフリをして、居間の会話を聞いていた。
「どうだったか? 霧也君。」
「とてもいいですね。先生のおっしゃる通り、成熟した体の持ち主ですね」
「そうかそうか。まだ胸はないがな。」
「今度今回のレポートを提出しにまた伺いますんで」
「あぁ。いつでも来なさい。教授にもよろしくな。」
「きっと祖父も喜びますよ。」
「なにせ、投薬から二年、こんな成果がでるとはな。ははは!」
投薬? レポート??
なんのことだろう。だが、話を聞くうちに全てがわかってしまったのだ。
要するに、私は二年前、10歳の頃になんらかの薬を実験的に打ち込まれたらしい。
それの効き目がだいたい2年後といわれていたわけだ。
…私はパパの実験台だった。
お母さんも実はパパに何らかの薬で殺されてしまったんじゃないか!?
妙な不安が頭をよぎる。全身が一瞬にしてしびれた。
許せない…!
でも、所詮は私はパパに飼われている身。運命から逃げるなんてそんなことできるわけないのだとわかっている。
人間、誰しも使命を持っているというが、私はパパが開発している媚薬みたいなものの実験台になるのが使命なんだろう。
だけど、だからといって蒼依を諦めようとは思わない。
私に使命があるように、パパにだって、私に裏切られるという運命があるのだ。絶対に見返してやる。
「レズに育ってしまったのは、この薬の失敗だ」
…近々そんな言葉を吐いて、せいぜい嘆くがいい。
☆
ところがそんな私の心を見透かしたか見透かしていないか、とんでもないものを用意していた。
霧也が去ってまだ日がない頃。私の部屋に奇妙な椅子がおいてあったのだ。
少し高めの椅子、そして左右の足を乗せて広げるための台が付いていた。
これは…産婦人科用の椅子??
そのそばにはまた大量のプラスチック製の電気製品のようなものがある。
スケルトンピンクだったり、黒かったり。それらのほとんどがコードでつながれていた。
「美咲、また門限を破ったようだね」
静かな声がしたので、振り返ると白衣をまとったパパがいた。
私はパパに後ろを振り向かずに答えた。
「部活あるのに、門限7時って、厳しくないですか?」
「黙れ!!!!」
パパは乱暴に腕を引っ張り、無理やり私を椅子に乗せた。
「さて、今日はその部活とやらの話でも聞こうじゃないか」
パパは笑った。笑いながら、私の足を広げたまま、台に固定をした。
股が熱くなってくる。まるで熟れすぎた柿みたい。今にもとけてきてしまいそうだ。
「1年生のこの時期なら、随分部活は大変なんじゃないのか」
「はい」
「ボール拾いにあけくれているのか」
「基礎トレーニングをしたりもしています」
「ふーん、例えば?」
「腹筋100回や、腕立て伏せ200回などです」
「そうか。見せてみろ」
「!?」
驚きうろたえた時には、すでにセーラー服のリボンははずされ、上半身はブラジャー1枚の状態にさせられていた。
「ここが腹筋か。」
パパの指が私の腹筋をなぞる。上から下に。股間がよけいに熱を帯びてきた。
あぁ、オナニーしたい。今イけたらラクになるんだろうなぁ…。
「腹筋を鍛えると、比例して鍛えられる個所ってわかるか?」
「わかりません」
「じゃあ、パパが教えてあげようか。」
パパは私のスカートをまくった。予想はしていた。この展開。
だけど、いざ自分の父親が自分のスカートをめくっているこの状況は、人生のどんぞこを思わせるものがあった。
パパ、小さい頃、よく高い高いしてくれたね。
その手で私の太ももを撫でないで。
パパ、私がはじめて100点とったとき、にこにこしながら誉めてくれたよね。
その目で私の秘部を見ないで。
もう何も考えたくない。ただ時がすぎるのを…なるたけ無難に…待っているだけだった。
けれど、パパはいつも私の想像を超えたことをしてくる。
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