2005.09.23.

危ないエステ
01
神野 舞
(加筆:木暮香瑠)



■ 第一話

 チラシをヒラヒラせながら、店に入って来た女。その女の顔に見覚えがあった。恋人との別れ際に見た、彼の携帯の中の写真……。見間違う筈はない。まさしく、裕也を私から奪った女だ。
 私はプロのエステシャン。女の体を凝視する……。85・60・85くらいだろうか。エステの必要のないスタイル、肌も白く張りがある。裕也らしい趣味だ。女は可愛らしさの中に私には無い品を備えていた。十二分に魅力的なのに、これ以上何を望むのだろう。それでも女はエステに現れた。

 彼と別れたのは一ヶ月前。黙って彼の携帯を見たことが、彼の怒りを買い別れ話になった。しかし、彼には新しい恋人がすでに出来ていて、私と別れる理由を探していたらしい。その証拠に、携帯画面の中ではこの女が満面の笑みで微笑んでいた。今でも忘れられない笑顔。人を心地よくさせるはずの笑顔が、私には憎悪を生んだ。

「すいません〜。このチラシを見て来たのですが、無料というのは本当なのですか? 私、エステって初めてで……」
 初めてのエステを体験する期待と不安に満ちた顔。店に入った女は珍しそうに辺りを見回していた。でも私のことは知らないみたいだ。彼も、わたしのことを秘密にして付き合っていたのだろう。
「いらっしゃいませ。はい、チラシをお持ちの方は無料でエステを体験していただいております」
 私は笑顔を浮かべながら丁寧にお辞儀をして女を迎えた。

(この女さえ現れなければ、今ごろ私は裕也とゴールインしたはずなのに)
 可愛らしさと私には無い品。嫉妬と悔しさ、そして怒りがこみ上げてくる。
「お客様、どうぞこちらへ」
 女を個室に案内した。清潔なサロンと丁寧な接待に満悦する女をデスクに招いた。
「ここに、ご住所、お名前、年齢、電話番号をお願いします。ここには勤め先の住所、会社名を……」
 左薬指にダイヤの指輪を光らせている。裕也からの婚約指輪に違いない。私たちが別れて一ヶ月しか過ぎていないのに婚約に至るということは、彼は二股をかけていたのだろう。それも、相当の間、彼は私とこの女を抱いていたのだろう。私の膣を埋めた、私が咥えた男根も、彼女を抱いた後の物だったかもしれないと思うと悔しさがふつふつと煮えたぎる。

 あどけなさを残す女はサラサラと必要事項をカルテに記入していった。
(広尾? けっこういい所に住んでいるのね。田中美鈴24歳か、私より5つも年下……)
 私には、その可愛らしさも品も若さも、住んでる所さえ気に入らなかった。
(許せないわ、今にみていなさい。美鈴を醜鈴にしてやる……)
 秘めた思いを隠し、笑顔で応客する私。

「記入が終わったら、こちらの衣類籠に服を入れて下さいね、バックもこちらに」
「あの、……」
「あぁ……、裸になっていただくのよ。美鈴様はエステ初めてだったわね。ごめんなさい説明が足りなくて」
「裸って、全部脱ぐのですか?」
 戸惑う美鈴に、あくまでも笑顔を絶やさない。
「ええ、全身エステですから……。決まりですから」
 後の楽しみの為なら、この女に笑顔を振り撒くなんて、なんでもない事。
 完全個室のエステルーム、清潔感のある白い壁に飾られた絵画、そして微かに漂うアロマの香りが彼女の気を落ち着かせる。女は白いノースリーブのワンピースを脱ぎ始めた。

 このサロンには隠しカメラがセットされている。元々はセキュリティーの為の物だ。プライバシー保護の為、一時間経つと写された画像は消去されることになっているが、私は設定を連続録画に切り替えた。
(写した映像を勤め先のホームページに送信しようかしら、闇の組織に売るのも、おもしろいかも)
 本来なら、客は美容着と呼ばれるウエアを着るのだが、それをすばやく個室から隠したの。
 美鈴は清楚な白いブラとショーツを恥らいながら脱ぐと、畳んだワンピースの間に挟んだ。白く張りのある肌と括れた腰、スラリと伸びた脚、盛り上がるところは十分に発達している肢体はこの上なく美しいのに、恋する女心がエステに足を運ばせたのだった。



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