2007.12.20.

鈴宮ハルキの憂鬱
03
なぎぃ



■ みくる編1

いつぞやかの休日。

暇を持て余し、部屋中をうだうだ転がり回ることにもそろそろ飽きてきた。
妹の勉強を教えるのも面倒だ。
かと言って、こんな貴重なお休み時に暇だ暇だと言っているのも珍しい方だ。
俺の携帯がなるなんて、もってのほか。

かかってくるとしたら……

ピリリリリリリリリリリリリ

どーせ……

『あ、キョン? あんたいつまで寝てるワケ? 私からの貴重な連絡には素早く反応しなさい!』

……やっぱり、我が団長様の収集電話か。

『今から3分以内に、いつもの場所に来なさい』

ブツッ ツー。ツー。ツー。

言いたいことだけを言って電話をきった団長様の後ろには、既に他の団員も集まっているのだろうと、そして、その団長様は機嫌を損ねているのだろうと、更に、遅れていった罰としてその後の飲料も全て俺の奢りになるだろうと……
頭の中がフルに回転した。

そりゃぁ、少しでもハルキの機嫌を軽いモノにしようと、努力はしたさ。
でだがな、3分以内は無理なんだよ。自転車飛ばしてやっと5分だぞ?
その前に準備やらなにやら、やることだって……

「ぐちぐち五月蠅いわね。まぁ良いわ。どっちにしろアンタのおかげでコーヒーが無料で飲み放題なんだから」

おい。飲み放題はやめてくれ。今月の金が減るじゃないか。

「当然の報いよ」

どうやら俺は、運命、もといハルキに決められた途を歩むしかないようだ。

「今日の活動は……」

ハルキは俺の事など全く無視して、活動の日程を話し始めるのだった。


今回の活動は野外探索というものだろうか。

普段は学校でただ奇怪な事件が訪れるのを待っているだけの俺たちだったのだが、む
しろその方が平和で良かったのかもしれない。

まずその事例に、俺の財布がそろそろ札を求めているのだ。
それだけじゃない。
小泉は良いとして、朝美奈さんの顔を見てみろ。どうせハルキのことだから、朝早く
に叩き起こしでもしたんだろう。可哀想に。

それにしても今日は休日だと言うのに何故か永戸はいつもと同じように制服を来てい
る。
たまには違うジャンルの洋服を買ってみれば良いのに。


さて

本題に戻ろう。

くじびきの結果、俺は前半永戸と共に行動することになった。

話しかけようにもその無表情な瞳に何を問えば良いのかも解らない。

「…こんなことしても何も見付からないと思わないか?」

永戸は答えなかった。



後半は一人一人の単独行動となった。

俺は最初からやる気などなかったので、公園のベンチで呑気に缶ジュースでも飲もう
と思ったんだ。

その時だった。

「あっ。キョンくん…っわ…ふわわわっ」

どこか聞き覚えのある声に振り向いてみれば、そこには栗色の髪の天使が地面にへば
りついていた。

「あ…ぃたた…」
「大丈夫ですか? 朝美奈さん」

今にも泣きそうな天使は鼻をおさえて顔をあげた。先輩と言えど後輩にしたいそのベ
ビーフェイスには俺も勝てる気がしない。
手を差しのべるしか選ぶ道は無いな。

「ぁはは…ありがとう」

いえいえ。朝美奈さんのためならこれくらいどうって事無いですよ。
手を差しのべても礼さえ言わない団長に比べたら…

「でも良かった。キョンくんがここにいて」

朝美奈さんはそっとはにかむように笑った。


朝美奈さんはこの暑い日にしっくりとあうソーダ水なるものを飲んでいた。俺はその
横でコーラを口にする。

「んで…朝美奈さん、収穫はどうでした?」
「はぁ…それが全然…」

まぁ、そうだろうな。
第一、こんな身近で宇宙人がうろついてても困るだろう。

「あ…もう無い…私、飲み物買ってきます。キョン君は何が良いですか?」

やっぱり暑いと冷たいものが砂漠のオアシスみたいですよね。っていうか、朝美奈さ
んが選んだものなら例えヘドロだろうが飲み干しますよ?

「じゃあ…コーラで良いですか?」

有難き幸せです。

私服のスカートを揺らして歩くように走ってくる栗色の髪をした天使はまたも平面で
転びかけ、買ったジュースを守りきったその笑顔を俺に向けた。

可愛いです。朝美奈さん。

「はい、どーぞ」

差し出されたコーラは冷たくて、その先に触れた天使の指先もまた冷たかった。

手にある飲み物を喉に流しながら、朝美奈さんと会話を続ける。

「こっからどーしますか? このまま此処にいても…」

なんだろう。
頭がくらくらとする。

「そうですね…じゃあ…」

無意味な睡魔に襲われた気分。

「…で、…の………から」

朝美奈さんの声が遠い。
次第に、まわりの景色までぼやけてきた。

「………ね。キョンくん…」

何と言ったのだろう?
俺にはその声も聞こえなかったし、その顔をうかがうこともできなかった。


「…ごめんね。キョンくん…」


目が覚めた時、俺は何故か温かい布団の中に居た。

上半身、裸で。

「…目が覚めた?」

その傍ら、優しく微笑む朝美奈さんの美しい体…

「あ、朝美奈さん!!?」

よく発達した胸に細い身体、すらりと伸びる腕から指先…その姿はほんの布一枚で隠
されていた。
濡れた髪にバスタオル一枚という際どいかつ高校男子になんとも貢献しているだろう
その格好は、正直今の俺には素直に喜べなかった。

「どうして…そそそんな…っ」
「キョンくん…」

甘く俺の名前(ニックネームだが)を囁いた栗色の髪の天使は口先に小悪魔的な微笑を
湛えていた。

…何されるんだろう?

「お願いがあるの…」

今のこの状況で彼女は何をお願いしてくるんだろうか。っていうか、何言われても良
いかも。

そもそも、そんな格好で俺を誘惑したのは朝美奈さんのほうじゃないですか。
だから文句は聞きません。

「ふわっ!!!?」

朝美奈さんは可愛い声をもらしたが、次の俺の行為によってそれが続行されることは
なかった。

重なりあった唇から、一筋の糸がひいた。

「キョンくん…っダメ…っ」

強く抱こうとする腕の力を拒み、朝美奈さんは俺の胸元を精一杯の腕力で押しながら
距離を取った。

「…あのね、まだ、ダメなんです。その…」

朝美奈さんが何を考え、何をしたいのか。
それは他人である俺に解るようなことじゃなかったし、むしろそれが当たり前だと思
った。

それにしても。

さっきから気になっていたのだが。

朝美奈さんの後ろの後ろに並ぶアレは何なんだろうか。
チャイナ、メイド、ナースに制服。
いわゆる、コスプレってやつなんだろう。
でも、そんな物が何故ここにある?
仮にここがあの団長率いるSXS団の拠点、文芸部室ならまだ説明もつくし、納得も
できる。
でもここは、明らかにそんな場所じゃない。

綺麗に整備されたベッド。丁寧にシャワー室まで付いている。

ここは…まさか。


「あの…」

思考を遮ったのは、天使の甘い声だった。

「キョンくん…?」

応答の無い俺に何を見い出したのか、二言目には何故か疑問符がついている。

「朝美奈さん」

俺は優しくもなく、鋭さもない声で、天使の名前を呼んでから

「こんな所に連れて来たってことは…」

語尾を濁して質問してみる。
天使は、次にこう応えた。

「私と…SEXして下さい」


それは、とても衝撃的な発言だった。



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