2003.6.22.

過ぎた好奇心
ボクらの秘密シリーズ
01
木暮香瑠



■ 過ぎた好奇心1

 学校帰り、ボクはいつもの五人組と一緒に帰っていた。武彦、亮太、実、一樹、そしてボクの五人組だ。話題は、今日の六時間目の授業だった。男子は自習になり、女子だけが視聴覚教室で授業を受けた。ボクは自習になったことをラッキーとしか考えなかったが、武彦は違っていた。

「今日の6時間目、女子だけビデオ見てたらしいぞ」
 武彦が話を切り出した。武彦はちょっとませたヤツで、成績も優秀で学級委員もしている。女子だけが受けた授業の内容を、どこからか聞き出していた。
「えっ、あいつらだけビデオ見てたのか?」
「本当? いいなぁ……」
 自習になったことをラッキーと言ってたことも忘れ、ボクたちは女子が羨ましくなった。

「それもHなビデオらしいぞ! 卑怯だよな、自分たちだけ見るなんて……」
 さすがに武彦は情報通だ。いつもボクたちの知らないことを知っている。
「えっ! Hなビデオ? 卑怯だよ、先生……。女子だけに見せるなんて……」
「本当だよな! 先生だって、いつも『男女平等』って言ってるのに女子だけなんて……」
 ボクも、武彦の意見に同調した。武彦もビデオの内容は詳しくは知らないみたいで、何の授業だったのだろうと、その話題で五人は盛り上がっていた。

 背の高い亮太が、クラスの女子を見つけた。美紀と彩子だ。ボクたちより頭一つ飛び出した亮太は、見つけるのは早い。ボクたちは、彼女たちのところに駆けて行った。

 二人を五人で取り囲むようにして、美紀に問いただした。
「なあ、美紀。今日、お前たちだけビデオ見たんだろ? 卑怯だよな」
「何が卑怯なのよ! 先生が女子だけって言ったんだから仕方ないでしょ!」
「どんなビデオだよ、教えろよ!」
 実が強い口調で言う。声が低く大人っぽい喋り方の実は、その気はなくても強く感じる。ぼくらは実の性格を知っているから平気だけど、初めて実の声だけを聞いた人は大人と間違える。電話に出ると、お父さんと間違えられるといつも不満を口にしていた。
「いやよ。先生も男子には喋ってはいけませんって言ってたもん。女子だけが見るビデオだもん」
「卑怯だぞ、いつも男女平等って言ってるのはお前たちだろ!」
「そうだ、そうだ! 男女平等だろ?」
 ボクたちは、みんなで美紀に詰め寄った。しかし、美紀は話をはぐらかすだけだ。あまりにもひつこく食い下がるボクたちに、美紀もキレそうだ。
「これは別なの。あなた達には関係ない話なの! いい加減にしなさいよ」
 美紀は、きっぱりと言い放った。

 ボクたちは、美紀から聞き出すのを諦め、話を彩子に向けた。
「彩ちゃん、どんな内容だったの?」
「えっ、先生が話したらいけないって言ってから……」
 彩子は、頬を赤く染め恥かしそうに下を向いてしまった。明らかに変だ。誰にでも優しい彩ちゃんは、どんな時でも誠実に答える。二人が答えられない内容と言うこと、先生が男子に喋ってはいけないと言ったことが、ボクたちの興味を掻きたてる。
「いいじゃん。誰にも喋らないから、ねっ!」
 ボクたちは、さらにしつこく彩ちゃんに詰め寄った。
「でも……、恥かしい……」
 困った表情の彩子の手を美紀が引っ張り、
「喋ったらだめよ! 早く帰ろ! 早く……」
そう言いながら、二人は小走りに駈けていった。

「恥かしいって言ってたよな、彩ちゃん。やっぱ、Hなビデオだったんだ……」
 僕たちのビデオへの興味は膨れ上がるばかりだった。



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