2004.10.15.

国取物語
01
しろくま



■ 1

ここは王国「ロマリア」、人口100万人ほどの小国である。
肥沃な大地、金や鉄鉱石が豊富に採掘できる鉱山、大きな湖、etc・・・・
さらに、良き統治者であるアレク王の善政もあって国内は、ほぼ完璧と呼べるほどの平和な状態が続いている。それ故、ロマリアの国民は皆、豊かで幸せそうな生活を送っていた。
しかし、このような豊富な資源を持つロマリアを狙うものは多い。
特に、隣接する大国「スーザン」は、これまでも幾度となく侵略行為を繰り返してきた。
スーザン帝国の人口は約1千万人、ロマリアの10倍ほどの規模であった。
戦争は長期化したが、ロマリアはこの大国の侵略に屈することはなく、終には《和平協定》を結ばせることに成功したのである。
小国であるロマリアが、圧倒的兵力を有するスーザンに対抗できたのには、それなりの理由があった。
まず、良質な鉄鉱石と腕の良い鍛冶屋により、質の良い武具が手に入ったこと。
アレク王自身も武人であり、兵は少数ながらも手練れ揃いであったこと。
多彩な戦略、戦術を駆使して形勢を逆転させた、優秀な軍師がいたこと。
食料も水も豊富に蓄えてあり、戦争中でも生活には困らなかったこと。
さらに、ロマリアの科学力、特に兵器関連の技術が異常に優れていたことも大きい。ちなみにロマリアは《火薬》を発明し、実践に応用させていた。
この小さい国土の中に、これほどの逸材がそろっていたロマリアは、むしろスーザンを追い詰めていたのだ。ただ、アレク王の人徳もあり、侵略をせず《和平協定》という形で戦争を終わらせたのであった。
この《和平協定》後は、スーザンも侵略を止めた。それにより、ロマリアは平和を取り戻したかに見えた。しかし、それから1年ほどたった今、ロマリア国内では異常な出来事が多発するようになる。



クリス「またですか!!! これで15件目ですよ!?」
アレク「ふ〜む・・・困ったものだ・・・」
ここ最近、謎の怪物により家畜が襲われる事件が多発していた。それだけなら、まだ良かったのであるが・・・
クリス「今回は家畜だけではないのですよ? 早急にあの怪物の討伐を!!」
なんと、今回は人間の被害者が出てしまったのである。
被害者は3名。見回りをしていた兵士と、若い女性が2名。兵士は惨殺され、女性2人は行方不明である。
ちなみに、アレク王には2人の娘がいた。長女のアンナと次女のクリスである。
長女のアンナには王位継承権があるためか、アンナは《お姫様》として育てられた。
しかしクリスは王女であるにもかかわらず、幼少のうちから剣を学び、今では第2騎士団の団長を務めている。アレクも、本当はクリスに女らしく育って欲しかった様なのだが・・・
クリス「国王!! 私を討伐隊の隊長に任命してください!」
アレク「い、いや・・・お前は女だぞ?・・・もっとこう、女らしくだなぁ・・・」
とは言ったものの、アレクは半ば諦めていた。実際、騎士団への入団の時も、強く反対したのだったが・・・
ただ、クリスの剣の腕は本物で、16歳にして団長の任に就いたのも、すべて自分の実力。騎士団の連中も彼女を《王女》としてではなく、1人の《騎士》として接している。
今では国民も、先の戦争でも活躍した彼女のことを《勇者》として尊敬していた。
ちなみに、ロマリアには1〜6まで、6つの騎士団が存在する。そして1つの騎士団には50人の騎士が就いている。そして、彼らの下には、500人からなる《兵士団》が、騎士たちをサポートしていた。
《騎士》と《兵士》には仕事に明瞭な差はないが、騎士はいわば《精鋭部隊》、主に、重要な任務に就くことが多かった。
アレク「分かった・・・それではお前を討伐隊の隊長に任命する。そして、第2騎士団50人を討伐隊の任に就けよう。」
50人とはまた多いものだが、彼女を心配しているからであろう。ただ、スーザンの脅威もない今、それほど兵が足りない状態ではなかったのも事実である。

クリスは現在17歳。5歳の時から剣を学び、腕は一流。先の戦争でも数々の武勲をたてた。
性格は優しく無邪気ではあるが、少々男の子っぽく活発的。姉のアンナとは正反対であった。しかし、その中性的な魅力と、可愛らしい容姿もあって、人々は彼女を《勇者》と呼んで称えた。
その地位と性格もあって、17歳と年頃の娘ではあるが、異性への興味はそれほどなかった。彼女は、1人の女性としてではなく、男女や年齢を問わず、すべての国民から慕われた。高嶺の花ではあったが、誰もいやらしい目でなど見ていなかったのである。
それゆえ、《恋人》が出来なかったのも事実ではあるが・・・
クリス「我々第2騎士団は本日を持って、あの生物の討伐隊に任命された。」
クリスは団員の前でそのことを説明する。
クリス「これより、あの生物を《オーク》と名づける。」
生物学を学んだ者に聞いては見たが、まったく新種の生物らしい。
クリス「目撃者の話から推測すると《オーク》は非常に凶暴で、強靭な身体を有している。心して懸かれ!!」
団員「おお〜!!!」
彼らの叫び声が地響きを起こす。皆、クリスを心から信頼しているようだ。
ちょうどその時、あの怪物の情報が入った。

兵士「ク、クリス様! つい先ほど化け物が現れ、女性を攫って行きました!!! 現在、追跡中ですが・・・」
アレク「クリス・・・行ってくれるな?」
クリス「はいっ!!」
攫われた女性はなんと4名。どうやら1匹ではなく、2匹のオークがそれぞれ別の場所で、2人ずつ攫っていったらしい。連れて行った場所も違っていたようだ。
逃げた方向から察すると、南にある廃墟と西にある洞窟、この2ヶ所が怪しい。兵も途中までは追って行ったそうだが、身体能力が桁違いで、馬に乗っていたが見失ってしまった。
クリス「よし! 隊を2つに分ける。廃墟には私が、洞窟にはレオナが、それぞれ25人ずつの部隊で行くとしよう!」
レオナは第2騎士団の副団長で、22歳。性格は真面目で忠実。自分より若いクリスの命令も素直に聞いていた。クリスにとっては、部下ではあったが姉のような存在でもあった。
ちなみに、アンナとは血は繋がっていたが、ほとんど会っていない。第1王女のアンナは、城から出ることが出来なかったからでもある。
ちなみにレオナは、仕事に熱を入れるあまり、男性との交際はほとんど出来ないでいた。美人ではあるが、その真っ直ぐな性格も災いして、男性経験は少ない。
クリス「レオナ! 気をつけて!」
レオナ「ええ、あなたもね!」
そうして、2人はそれぞれの場所に、兵を引き連れて出発した。



クリス達は2時間ほどで廃墟に到着した。
この廃墟は、戦争中に要塞として使用されていたものだ。しかし、今は見る影もない。
しばらく見回したあと、クリス達はオークの足跡は発見した。
クリス「間違いない! 行くぞ!!」
クリスの掛け声とともに、団員たちが突入する。しかし、この廃墟の中で行われていたことは悲惨なものであった。
この要塞の1階部分は広いホールになっている。半壊しているため2階へは行くことは出来ない。
中にいるオークは4匹。まだこちらには気づいていない。しかし・・・
クリス「な・・・なんてことを・・・」
2人の女性はオークに犯されていたのである。なぜ、女性ばかりを攫うのか、その謎が今解けた。
女性「うう・・・あぐっ・・・も、もう・・・やめて・・・」
しかしオークに言葉は通じない。お構いなしに奴らは、激しく腰を振っている。
女性「はぁっ!・・・そんな・・・ううっ! 乱暴に・・・だ、ダメっ!!」
オークは女性の膣内に射精した。しかし、とても入りきる量ではなく、外に大量に流れ出る。
彼女たちは体中精液塗れになっている。いったい何回射精したのであろうか・・・
クリス「か、かかれ!!!」
団員たちは一斉にオークへと攻撃を仕掛ける。オークたちは邪魔されたからか、ひどく興奮して襲い掛かってくる。
団員「ぐわぁ!!」
団員の1人が攻撃を受ける。恐ろしい腕力による一撃は鎧を粉砕し、身体を数メートル吹き飛ばす。
しかし、団員たちは怯むことなく攻撃を続ける。クリスは、華麗な剣技でオーク達を圧倒している。その後、1時間ほど戦闘は続いた。



25人もの圧倒的な人数もあって、何とかオークどもを殲滅できた。負傷者は12名、絶命している者もいる。
クリスはオークの戦闘能力の高さを痛感させられた・・・

クリスは女性達を保護し、城へ戻りアレクに報告した。
アレク「良かった・・・無事で何よりだ。」
アレク「しかし、戦死した者のことは残念に思う。彼らの冥福を祈る・・・」
クリス「はい・・・」
クリス「しかし、オークどもの目的がはっきりしました。奴らは人間の女性を、お・・・犯していたのです・・・」
アレク「ふむ・・・それならば、女性ばかりを攫うことも納得いく。しかし・・・なぜ・・・」
彼の疑問はもっともである。なぜ人間の女性と交わるのであろうか。他の動物は食べられるだけであるのに。
学者に聞いたところ、オークは人間の形態に近い。ゴリラと熊を足して2を掛けたような生物である。もしかしたら、人間と交配する確率もありえる。とのこと・・・
クリス「ところで、レオナはまだ戻ってきていないのですか?」
アレク「いや、まだだが。彼女なら恐らく無事に帰ってくるであろう。」
そうは言われたものの、クリスは心配であった。
クリス(たしかにレオナは強いけど・・・もし、あのオークが、もっと大勢いたら・・・)
オークの力を、身をもって思い知らされたクリスは不安で仕方がなかった。
・・・レオナ達は1日経っても戻らなかった。



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