2006.06.15.

もしもあなたが透明人間だったら
01
林檎飴



■ 第一章 薬

本条寺 隼人(ほんじょうじ はやと)は、いつもの学校への道をのんびりと歩いていた。
(春だなぁ……)
4月の下旬。桜が散り、葉桜に変わる頃。
隼人の身に想像もつかないことが起こった。

一日の勉強を終えて、隼人は家路につこうとしていた。
日は傾き、夜があたりを飲み込もうとしていた。
その夕日はなぜか異常に紅く、隼人を不安にさせた。
隼人は知らず知らずの間に足を速めた。
そして、いつもは使わない暗い路地裏の近道を使うことにした。
(少し気味悪いけど……まぁいいか。)
隼人は路地裏に入っていった。
奥へ進む。
すると、目の前に少女が居た。
まだ、4・5歳の幼い少女。
真っ白いワンピースを着て、上目遣いに隼人を見つめていた。
(なんで、、こんなところに……?)
隼人は疑問に思った。
その時、少女と目があった。
すると隼人の意識が急速に薄らいでいった。
(なっ……なんだこれっ……)
隼人は数秒もしない間に、気を失って倒れた。

それを見た少女がニヤリと笑った。

「くっ……」
隼人はゆっくりと目を開けた。
鋭い光が目に飛び込んできて、また目をつむる。
「ここは……?」
自分の部屋のようだった。
電気を付けっぱなしで、ベッドで寝ている。
時刻は6時。さっきより一時間ほど過ぎている。
ガチャっと音がして、母が入ってきた。
「あら、隼人いつのまに帰ってきたの。ただいまくらい言いなさいよ〜。」
母はそう言ってまた出ていった。
(なんだったんだ……? 夕日…少女…)
隼人はふっと机に目をやった。
なぜか一枚の紙が置いてある。
(なにか書いてるのか?)
そう思って紙をのぞき込んだ。

そこには『透明』と書かれていた。

「透明っ…?」

「なんだよ。透明になれるとでも……」
グニャッと世界が歪んだ。気がした。
しかし、それはほんの一瞬のことですぐに元に戻った。
「なんだったんだ…?」
隼人は首を傾げた。その時、自分の手が見え……
なかった。
「えっ……!?」
隼人はすぐに体中を見回した。
見えない。身体が見えないのだ。
確かにあるのだが、見えない。
「透明って……このこと…?」
隼人は一刻も早く戻りたいと思った。
「元に戻れないってオチじゃぁないよな…?」
その瞬間、また世界が歪み隼人は透明ではなくなっていた。

望めばすぐに透明になれる。
誰もが一度は憧れる設定であろう。
そして、透明になった男が考えることはひとつしかない。
(透明人間か…。)
まず、本当に透明になったかを立証するために母の前に出てみることにした。
(透明になれ……)
世界が歪み、隼人は透明になった。
下の階に降りてみると、母は夕食を作っていた。
母の隣に立つ。
母は隼人のほうを一階も見ないまま、夕食を作り続けた。

隼人は念のため、母の前で手を激しく振ってみた。
瞬きもしない。
(もう確実だ……俺は透明になったんだ……)
隼人は胸を躍らせた。
そして再び二階に戻り、これからのことを考えた。
(透明になったからには女の子にエロいことをするしかないだろう……。)
隼人はニヤリと笑った。



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