アープの塔〜世界樹の森――2
「我、以土行成爆発、砕!=v
 どんっ、と空間が弾け、爆ぜる。すでに何度も聞いているロンの呪文は流暢で、微塵の淀みもない。相当高いレベルでなければ使えない魔法使いの攻撃呪文であるイオラもとうに唱え慣れている、声の響きのままに苛烈な一撃を周りを取り囲んでいる魔物たちに与えた。
 だが、その呪文はどくどくゾンビたちを吹き飛ばしたが、キラーアーマーたちを揺るがせることはできなかった。キラーアーマーは呪文が効きにくいというのは本当だったらしい。銅色の虚ろな騎士たちは、鋭い剣を振り上げつつ続々と後列のロンとサヴァンに迫る。
「……っ」
 セオが迅雷の速度で走り、鋼の鞭を振るう。だが相当にレベルを上げたセオの力をもってしても、キラーアーマーの群れを残らず薙ぎ払うことは無理だった。最初の一体はかろうじて一撃でばらばらにできたが、その勢いのまま振りぬかれた鞭撃はしたたかに魔物たちを打ち据えはしたものの、行動停止させることはできない。
 今すぐ助けに向かいたいところだが、こちらもこちらで厄介な相手と戦闘中なのだ。
「でぇ……いっ!」
「ゴ、ゴゴゥッ!」
 がきん、と斧と斧が噛み合い音を立てる。自分と同じ斧使いの魔物、エリミネーター。こいつら技はなっちゃいないが力はあるし速さもそこそこだしなによりおそろしくしぶとい。複数現れると厄介な相手だった。
「けどな……プロの傭兵を舐めるな、よっ!」
 言葉と同時にすっ、と力を抜いてエリミネーターの体を泳がせる。「ゴォァッ!」と叫びつつエリミネーターは体勢を立て直そうとするが、そんなことを許すほど自分は甘くない。奥歯を食いしばりながら踏み込み、下からすくい上げるように遠心力を利用した一撃を放つ。
「ガッ!」
 ずばっ。肉と骨を斬り裂く嫌な感触が伝わってきた、と思うが早いか手応えが消える。魔物がいつもそうであるように、攻撃に耐えきれず消滅したのだ。とりあえずこちらは片付いた、とラグは息をつく間もなくバトルアックスを握り直してロンたちの方へと走る。
「どいてろっ!」
 が、それよりも早くフォルデが駆けた。アカイライたちの始末をつけたのだということは言わないでもわかる。疾風のように駆けた勢いのまま、キラーアーマーの群れを薙ぎ払いつつ後退するセオの右脇から鋼の鞭を全力で振るった。
「ガ、ガガッ!」
「ギギギッ!」
 打ち据えられたキラーアーマーたちは全員揃って剣を弾き飛ばされた。複数を同時にってどういうやり方してるんだ、と内心舌を巻きつつも、ラグは身構えたセオやロンたちと揃っておろおろと惑うキラーアーマーたちに向け突撃した。
「っ!」
「はぁっ!」
「フッ!」
「死にやがれっ!」
 ざずっ、がずっ、どがっ、ざすっ。一刹那の間に四種の音が立ち、その一瞬のちに魔物たちは跡形もなく消えた。ふぅ、と思わずラグは息を吐き、軽く周囲の気配を探ってから全員に向かい言った。
「少し休もう。魔物はとりあえずいなくなったみたいだし、この塔に入ってからずっと戦い詰めだし」
「そうだな。少し休憩しよう。大丈夫か、みんな?」
「……へっ、誰に言ってんだっての」
「息が荒いぞ、フォルデ。疲れてるなら疲れてると言ったらどうだ」
「疲れてねぇっ! 単に動いたからちっとばかし呼吸が」
「からかうな、ロン。俺だって疲れたんだ。ここまで息つく間もなく魔物と戦えばな」
「だろうな、俺も疲れたし。君は大丈夫か、セオ?」
「あ、えと、はい。あ、の……みな、さんは……怪我とかっ、ありませんかっ?」
「俺は何発かもらった。一応盾と鎧の分厚いところで防いだけど」
「俺は一度斬られただけだ、君たちが守ってくれたからな。……なんというかこういう言葉を口にするのは微妙に面白くないものがあるな、男として」
「へっ、だったら後衛職になんて転職すんなっつの。ま、心配すんなよ、これからはきっちり俺が守ってやっからよ」
 心底楽しげににやにやと言うフォルデに(これまで稽古などでさんざん叩きのめされてきた身としてはやはり嬉しいものがあったりするのだろう)、ロンはにっこりと笑う。
「そうか、ありがとう、フォルデ。……ところで、お前には怪我はないのか?」
「は? んなもん大したことねーよ、俺の動きの速さをてめーらと一緒にすんじゃ」
「そうかそうか。では俺の治療で充分だな?」
「……は? お前、なに手わきわきさせて」
「ひどい傷を負っていたらセオのベホマが必要かと思ったんだがな、その程度の傷なら俺のベホイミで足りるだろう。心配するな、隅から隅まで触診して傷ひとつなくなるまで治してやるからな」
「な、ちょ、やめっ、待ちやがれなに考えてんだてめっ、うぎゃーどこ触ってんだこのっやめろ変態っ」
「あんまり騒ぐなよ、魔物が寄ってくるぞ」
「あ、の。それは、大丈夫、だと思います」
「え……なんでだい?」
「さっき、俺、トヘロナって、呪文をかけたので。よほど大きく動かなければ、魔物に、気付かれない、ですから……」
「そうか……気が利くね、セオ」
「えっいえっそんなっ、俺ただしなくちゃならないことやっただけですからっ」
「そういうことだからフォルデ、あんまり暴れるんじゃないぞ、魔物に気付かれるからな」
「暴れさせるようなことしといてしれっと言うんじゃねーっ!」
「あ、の……ラグ、さん。傷……癒しても、かまわない、でしょうか?」
「もちろん、助かるよ、ありがとう。……ああ、そうだ、サヴァンさんは……」
 さっきから少しも声が聞こえないので一応視線を巡らせてみると、サヴァンは自分たちから数歩離れてすうすうと立ったまま寝息を立てている。思わず頭を押さえて起こすべきかどうか考えたが、セオは真剣な顔をして自分の傷に呪文を唱えているし、ロンとフォルデはじゃれているしなので、まぁ後でもいいかと置いておくことにした。この人だったら眠っている最中に敵が来ても見事に対処してみせるだろう。その自信があるから寝ているんだろうし。
「恐れるな、なにものをも恐れなさるな、あなたは健康で幸福だ=v
 セオの唱える詠うようなベホマの呪文に、さっきから実はずっきんずっきんと処置しなかったらヤバいなー、と思うくらいの痛みを訴えていたラグの傷は見る間に癒えていく。傭兵暮らしで傷の痛みを堪えるのには慣れていたが、セオのベホマは体中の傷を癒し、それこそ生まれた瞬間のような活力を体中に漲らせてくれるのだ。
「ありがとう、セオ。いつものことだけど、君の回復呪文は本当に見事だな」
「えっ、いえっそんなっ、俺はこのくらいしかまともにできること、ないですからっ。今はロンさんだって、回復呪文、使えますし」
「君にはまだまだ及ばんがな。ベホマはまだ使えんし。……我、知命理、癒大傷=v
 回復呪文の方もロンの唱える呪文は流暢だ。ぶすっとした顔をしながらもその効力は認めているのだろう、暴れずに治療を受けながらフォルデが呟く。
「お前の呪文って、なんか変だよな」
「変? どこがだ?」
「なんか、響きが変じゃんか。他の奴らと……セオともサヴァンとも、あの……なんつったっけ、前に会った、エルフの……そーだ、エリサリって奴とも違ぇし」
 たった三人しか知らないのに呪文がどうこう言うのはどうかと思うが、当然そんなことは言わない。
「まぁ、確かに珍しい響きだよな。ダーマ地方の方言に似た響きだけど」
「ま、ダーマ近辺でなけりゃ使わん言葉だからな。これはまぁ、道≠ニいうやつだ」
「……道? なんだそりゃ」
「簡単に言うのは難しいな。いうなれば自然を呪術的に解析したものの総称みたいなもんなんだが……陰陽五行みたいに呪文の属性で世界を分類して操作しようとしてみたり風水みたいに気≠フ流れで万物の趨勢を操作しようとしてみたり」
「魔法か?」
「いや、違う。どちらかというと風習だな、ダーマ地方の。一般的な学問のように理論的な裏づけがあるものでもないし、魔法のように即効性があるものでもない。効いたとしても『運がよかった』だの『気休め』だので片付けられてしまう範囲の技だ」
「役に立たねぇじゃんか」
「だが感覚的には確かに効く。五行を意識的に操ることで呪文操作能力を上げたり気の流れを操ることで威力を増したりな。なにより、俺にとっては子供の頃から馴れ親しんでいる概念だ、どんな呪文を使ってもいいなら慣れているものにして悪いことはないだろう」
「確かにな……ほれ、干し肉」
「お、すまんな」
 全員の傷が治ったのを確認してから、腰帯に沿って付けている小袋から干し肉を取り出して全員に回す。こういうこまめな栄養補給が、いざという時の踏ん張りにけっこう響いてくることを傭兵暮らしの長いラグはよく知っていた。
 ロンはもちろん、これまでの旅でそういう思考にもすっかり馴染んだフォルデやセオも素直に受け取って干し肉を噛む。セオは受け取る時一瞬泣きそうな顔をしたりもしたが、それはとりあえず気にしないことにして。
 干し肉を少しずつ噛み裂きながら、ラグは上を見上げた。アープの塔。二階から上の中央部分が吹き抜けになっているこの塔は、当然のことながら相当に天井が高い。すでに何階分か階段を上っているというのに、まだまだ上への空間には余裕があった。
 この塔は神の造ったものだ、とサヴァンは言っていたが、確かに魔物は後から後からうじゃうじゃと出てくる(そのせいで塔に入ってから二刻は経つのにまだ四階だ。まぁややこしい構造のせいもあるが)にも関わらず建物のたたずまいにはどこか神聖な趣があった。簡素だが荘厳な細工、ガルナの塔のような、ダーマ神殿のような古びているのに清らかな雰囲気。それに、なによりも。
「ったく、宝は目の前に見えてるってのにいちいち回り道しなけりゃならねぇってのは苛つくぜ。ここ造ったカミサマっつーのはぜってーそーとーの根性曲がりだな」
「神様というのはたいていそういうもんだ。このくらい可愛いもんだと思うぞ、階段ひとつ登ったくらいで宝の場所をあからさまに見せてくれるんだからな」
「まぁ、な……あそこになかったら嘘だろうってくらいあからさまだもんな」
 他の仲間と同様、座り込んで肉を噛みながらラグは視線を横へと向ける。そこには、せいぜいが三丈四方程度の大きさの、宝箱が四つ置かれている床があった。
 ――空中に浮いている床が。
 今自分たちの座っている床と材質はなにも変わらないように見えるさして厚みのない床は、固定されたように中空に浮いたまま動かない。そしてその上方、おそらくは一階分ほどの上には薄く光る縄のようなものが張られていた。それを最初に見つけたフォルデが、自分ならそこから降りていくことは容易だ、と断言したのでその縄を目指し階を上っているのだが。
「矢ぁ撃ち込んで縄引っかけようにも、そこの空中妙な魔法掛けてあって飛び道具途中で沈むし」
「トベルーラやプカルーラで飛ぼうにも無効化されるしな」
「どうあっても上に張ってある縄から飛び降りさせよう、っていうわけだ。やっぱり、なんかガルナの時みたいな試練とか課してくるのかな」
「その可能性は高いな……」
「あ、のっ」
「ん?」
 ラグはできるだけセオを緊張させないように直視せず、わずかに視線を逸らしつつも顔をわずかに向けて微笑む。試行錯誤の末、この体勢が一番セオが落ち着いて話をしてくれると発見したのだ。
「たぶん、ですけど。試練が、あるにしても、それほど厳しい、というか……命に係わるような試練ではない、んじゃないかと、思います」
「なんでだよ。なんか目算とかあんのか?」
「え、と。あくまで推測、なんですけど……この塔を創り上げた、祖霊神ワランカの、性格的にそうなんじゃ、ないかなって。ワランカの神話を見てみると、ワランカっていう神様は、身内への親愛がすごく強い、って思うんです。そして、身内以外に対しては、誠実だけれど、決して身内以上に親しくは、しない。神話の中では、よそ者が、ワランカの言葉を聞き入れなかったり、理解しなかったせいで、自滅するっていう話が、ほとんどで」
「……ふーん。だから?」
「だ、からあの、自分の身内以外には、期待っていうものを、ほとんどしない、んじゃないかなって。求めるものは、与えるけれど、その代わりそれを使いこなせるように忠言を与える、みたいなことはしない、というか。ロンさんの、言われていた、口伝からすると、持っていくのを、拒否するってことは、ないと思いますし」
「なるほど……身内以外には期待しない、誠実さをもって拒絶する、だからよそ者が持っていってもいいものを持っていく時には大した試練は与えない、か。確かに道理だね」
 うなずくとセオはほっとした様子で、へにゃ、とわずかに口元を緩める。ラグも内心ほっとしていた。少なくとも今回は、セオにちゃんと話をさせることができた。
 一生懸命自分たちと仲良く≠オようとして話しかけてくるセオの意気を無駄にするようなことはしたくない。なんとか活かしてやりたくてできるだけさりげなく手助けすることを繰り返すこと一か月、ようやく要領が呑み込めてきたような気がしていた。こっそりとではあるが、嬉しい。
「ふーん……なんっか、ムカつくなそいつ。なんつーか……別に文句つけるとこがあるわけじゃねーけど、なんっか……上から目線っつーか、なんつーか」
「確かにな。端っからこちらを拒絶してかかる相手というのは腹が立つものだ。一応筋は通っているが、通っているからこそ面白くない気分が増す」
「なんか、サヴァンとちょっと似てんなその辺」
 フォルデが頭をかきながら仏頂面で言った言葉に、ラグは目をぱちぱちとさせた。
「? そうか? あの人がこちらを拒絶してるって……あんまりピンとこないけど」
「拒絶、っつーほどあからさまでもねーけどさ……なんつーかこー、上から目線……っつーのとも微妙に違ぇけど、なんつんだ、あー……」
「最初から諦めているところ。こちらと理解しあおうという考えを端っから捨てているところ。お互いの立ち位置が違うことを理解しているがゆえに、その立ち位置がぶれるような関係を結ぶことのないよう、こちらとの関係を感情的に断絶させているところ。……そんなところか?」
「お……おぅ、まぁ、そんな感じだ」
 珍しく大人しくうなずいたフォルデとその言葉を当然のように理解しているらしいロンに、ラグはまた眼をぱちぱちとさせる。
「……そうなのか?」
「俺が勝手に感じたことだがな、さほど間違ってはいないと思う」
「なんか、一応筋通してなくはねーけど、だから余計に苛つくんだよあいつ。そこらへんが信用ならねーっつーか。賢者っつー奴らん中でも、あいつとびっきり妙だぜ。ガルナでのサトリにもちっと似てるっつーか」
「まぁ、通じているところはあるな。なにせレベル62の100年生きている御仁だ、相当なところまで『悟りきっている』のは確かだろうさ」
 考え込んだラグをよそにロンとフォルデはなにやら話が弾んでいる。サヴァンさんはすぐそこで眠っているというのにこうもあからさまに噂話をしていいのか、とちらりと考えもしたが、今更だな、と思えてしまったので止めはしなかった。
「んだそりゃ。……っつかよ、賢者ってなぁ一体なんなんだよ。いちいちかしこぶりやがって、そんなに偉ぇのかっつーんだよ」
「偉いというか……最初に賢者になった人が偉大で、あと実際かなり使える職業特性を持っているのは確かだな」
「は? んっだよ、その職業特性っつーのは」
「『精神集中することでこの世のありとあらゆる知識を調べることができる』」
「……はぁ?」
 フォルデは訝しげな声を上げる。ラグも思わず眉をひそめて平然とした顔のロンを見つめた。賢者が偉大なのは知っているが、そんな法外な特殊能力を持っているなど聞いたことがない。
「んっだよそりゃ、阿呆なこと言ってんじゃねーよ。じゃーてめぇも精神集中すりゃこの世に起きたことなんでもわかんのかよ」
「俺に調べられる範囲のことならな」
「じゃーアリアハンの盗賊ギルドの長の愛人の名前言ってみろ」
 言われてロンは目を閉じた。眼球が数瞬ぐるぐると動き、口元が何事かを呟いた、と思うや口を開きすらすらと言葉を発する。
「レインナ・サースベル、ゼルメリザ・クノック、オミーゼ・エフェレット、フィレンヌ・ソガージャラ、フォーリィ・レフォーラ・ガジュルース」
「……は?」
 ぽかん、とフォルデが口を開ける。そこにロンはさらに流れるように言葉を続けた。
「これはアリアハン盗賊ギルド長ゲリング・ローガスが現在自分で『愛人だ』と思っている生きている女の名前だ。私費を投じて金銭の面倒を見て、かつ性的関係を複数回結んだ女だな。性的関係を結んでいても、自分の食いぶちを自分で稼いでいる女はゲリングは愛人と考えていない。なかなかわかりやすい男のようだな」
「って……おい、待てよ、おま」
「じゃ……じゃあ、これはわかるか。俺が三年前組んでた相棒の名前」
「フレデリク・アルトー。ロマリアはシャンパーニ領、バルバス地方にある領境の街バーゼン出身。職業は僧侶。宗派は大地の神ガイア。別れた理由はフレデリクが傭兵を引退し故郷に帰ると言ったから」
「な……」
「この際だ。セオ、君はなにか聞きたいことはあるか?」
「え……えと、じゃああの、ガルナの塔と、そこにいたサトリさんがどういう存在で、誰に創られたかっていうことと、賢者という職業がどういうものか、っていうことを……」
「そっちにくるか。……ガルナの塔は学問の神ネージャの提案により、数柱の神の力を合わせて創られた一種の神域だ。Satori-System=\―悟りを開いた人間に賢者≠ニいう力を与え、そこから文明を発生させ、そこから波及する森羅万象の情報を収集し、研究し、解明することを目的とした機構の拠点だな。サトリはその機構を統制・運用する役目を与えられた人工知性体のひとつで、賢者というのはその機構の端末となる存在だが、世界最初の賢者が自らの特性を研究して職業≠ニいうものを創り出した結果、職業のひとつとしてみなされるようになった」
「そうなん、ですか……」
 こっくりと、こういう時はいつもそうであるように真面目な顔でうなずくセオ――その反応に割り込むように、フォルデが叫んだ。
「……っておいっ、ちょっと待てぇっ! おまっ、んっだよそりゃっ!」
「なにがだ?」
「なにがじゃねぇっ、んなフツー知らねぇことまであっさり知ってて、んでなんだ、さとりなんたらとかんな、当たり前なことみてーに」
「だから言っただろう、賢者というものの職業特性だと」
「な……」
「じゃあ……ほ、本当に……?」
 ロンはこっくりとうなずく。
「賢者というのはSatori-System=\―神の創り出した世界のありとあらゆる情報を収集する機構の端末、となるべく創られた存在らしい。だからSatori-System≠ェ収集した……世界中に情報を収集するための目に見えないほど極小の魔道具が撒いてあるらしいんだが、そいつらの得た情報をある程度まで知ることができる。で、初めて賢者となった人が偉大で、賢者というものの力を分析して得た類似の力――職業を創り出したんで、今では職業の一つとなっているわけだ」
「な……んな……っつか、マジで言ってんのかよお前っ、フツー神だのなんだの、んなもんがそーそー」
「もちろん実際のところはどうだかは知らん。俺が見たわけじゃないからな。だが俺が賢者の力を使って得た情報ではそういうことになっていて、俺の感覚的にもそれが真実だ、と感じられるだけでな。……だがまぁ、俺の勘としてはこの話は正しい、と思う。案外神というのは俺たちの身近にあるもののようだぞ」
「……はー……」
「け、けど、情報を得るって、どうやって」
「そうだな……説明が難しいんだが。俺がその力を使おう、と思うと脳裏に窓が浮かぶ。その窓には俺が得たいと思った情報を浮かばせることができるわけだ。が、情報を浮かばせるためには、頭の中で人間のものではない言語を使って、Satori-System≠うまく操作しなけりゃならない。やり方を間違ったら情報は出てこないか、微妙に求めていたのと違う情報が浮かんだりする」
「………? よ、よくわからないんだけど」
「感覚的にはそうだな、頭の中にこの世のどんな情報も書かれた本が並ぶ図書館があると思ってくれ。そこに情報があるのは確かなんだが、あまりに蔵書が膨大すぎるから目的の情報を探すにはややこしい分類方法をちゃんと知ってなくちゃならない。おまけに見つけたとしても本に鍵がかかっていることもあって、うまくその鍵を開けないことには目的の情報は手に入らないわけだ」
「な……なんとなくわからなくもない、けど……」
「……むっちゃくちゃだな、おい。そんなもんがダーマにはごろごろしてたのかよ……まぁ、便利っちゃ便利なんだろーけど……」
「なんだか本当に自分より偉い存在のような気がして面白くない、かな?」
「どわぁっ!?」
 急にかけられた声にずざっ、と身を退くフォルデの横で、サヴァンがにっこり笑って手を振る。いつの間に起きてたんだ、とラグは思わず目を見開いたが、サヴァンは涼しい顔でロンににこにこと話しかけた。
「やー、なかなか不穏当な話してるねー。ダーマに知られたら怒られるよー?」
「言う奴もいないでしょう。俺はダーマに属しているわけでもないわけだし」
「ま、拘束力はないよね。でも意外だなー、僕のことそんなに信用してくれてたんだ?」
「もちろん。あなたの頭のよさはよく知っていますから、そんな無駄なことをしないということは信じている、というより知っています」
「やー、照れちゃうなー。っていうか、むしろ話してほしいのかなって思ったんだけど」
「俺としてはどちらでも。わざわざ喧嘩を売る気もないですが、自分から仲良くする義理もないですし」
「おおー、いいねいいねその度胸。消されないように気をつけなよー? 異端って認定したら容赦ないからねーわりと」
「その時はその時かと。認定するまでに稼いだ時間で、なんとかできないことはない、と踏んではいますが」
「そっかー、頑張ってねー♪」
「お前らなに和やかに話してんだっ、つか言ってる内容わけわかんねーっつの!」
「いやいやまぁまぁ。さて、じゃあそろそろ行こうか。もう休憩は十分なんじゃない?」
『…………』
 は、とラグは息を吐き立ち上がる。このにこにこ笑顔の聖者がなんだか恐ろしくなってきたような気がしないでもないが、今はとにかく、先に進まなければ。
 ――などと決意して進むこと半刻、自分たちは階段を発見し、縄の張られている階へと進んだ。そしてフォルデは言った通りにすいすいと縄の上を歩き、自前の縄を垂らして床の上に降り、宝箱を開けて山彦の笛と付随する金品を発見した。
 なにかガルナの塔での試練のようなものはなかったのか、と問うと、フォルデはわずかに顔をしかめて、「大したもんはねーよ」と答えた。

 ぴぽぱぽぴぽぱ。ぴーぽーぱーぽー。ぴぽぱー。ぴーぽーばー。
 結界の上からでもまだ冷たい風の吹きつける見張り台で、フォルデは行く先と周囲に気を配りつつも、少しばかりぼんやりとした気分で山彦の笛を吹いていた。ただの素焼きの卵形の胴にいくつか穴の開いた笛にしか見えないこの笛を手に入れてから一ヶ月が経っているが、その間フォルデはこの笛を何度も吹いているのだ。
 別にこの笛を気に入ったというわけではない。フォルデは別に楽器を吹く趣味はないし、特に吹いて楽しい笛というわけでもない。
 ただ、ほとんど小半刻ごとに襲ってくる魔物と戦って、稽古をして、釣りをしたり料理やら掃除やら船の中がうまく回るためのもろもろをしたりと忙しく働いて、その中でふいにぽっかり空いた時間ができると、ついフォルデは懐からこの笛を取り出し、ぼんやりと吹いてしまったりするのだった。
 ロン(とサヴァン)の説明だと、この笛は笛を吹いた時に返ってくる山彦の強さや方向でオーブ(フォルデとしてはこのオーブとやらいうもの自体うさんくさい気がしてしょうがないのだが)の位置がわかるのだという。ただその変化が微妙すぎ、現在のところきちんと場所がわかるのはセオとロンだけだ。
 その判別によると、一番近くにあるオーブはダーマの東――ジパングというフォルデはよく知らない島国辺りにあるらしいのだが、現在自分たちはそこからどんどんと離れている。アープの塔から船でさらに北上し、ダーマのあるユーレリアン大陸の北へと回っているのだ。
 季節は冬、海すら凍るほど気温は低く(初めて見た時は相当驚いた。魔船がそれをがしがしと砕きながら進んでいるのを見て(舳先に魔化した砕氷機が隠してあるらしい)さらに驚いた)、魔船全体を覆っている温度の変化を防ぐ結界があっても外套なしでは外に出られないほど寒い。なにを好き好んでこんな場所へ、と思うのだが、サヴァンがどうしてもとせがむのだ。
「ユーレリアン大陸の北、世界樹の森のエルフたちに会いたいんだ」
 正式名称は白の森≠ニいうらしい(古代帝国時代から人が住んだことがないので普通の名前がついていないのだそうだ)その森は、世界でもっとも多くのエルフが住んでいる……というか、エルフたちの故郷とも呼べる場所らしい。世界樹という世界の中心に根を張る、すべての植物の祖である樹を、エルフたちは全力で守っている。ゆえにダーマからはネクロゴンドの絶壁に匹敵する峻峰で隔てられたその森は、一度たりとも人の侵入を許したことはないのだと。
「ま、実際には何度か入ってるけどね。勇者とその仲間は」
 サヴァンがにっかりと笑って言うには、エルフたちは徒人の侵入は死命を賭しても防ぐが、勇者とその仲間は行動を慎めば案外あっさり通してくれるのだという。そして森の中央の世界樹と対面させ、落ちてきた葉を拾うことを許してくれるのだ、そうだ。
「葉なんて拾ってどうすんだよ」
「世界樹の葉には、生物を蘇生させる力があるんだ」
 サヴァンはあっさり答えてまたにっかりと笑った。しかもその葉を特別な方法で調合すれば、振りまけば見渡す限りの生物の怪我を瞬時に癒す雫になったり、魔法力を瞬時に全開させる飲み薬になったりするのだという。
「だから、ぜひともその森のエルフたちとはよしみを通じておきたいんだ。それがあれば桁違いの人間の命を救える。一応僕が勇者の仲間だった頃に会ってはいるんだけど、その勇者と別れてからは行ってないからね。できれば僕一人でも通してくれるように交渉したいんだー。君たちにとっても、世界樹の葉とか手に入れられたら便利なんじゃない?」
 そう言ってにこっと笑う顔はいつも通り信用ならない雰囲気のつきまとう代物だったが、確かに教会に行かずとも仲間を生き返らせる力のある葉などというものがあるのなら(セオもロンもすでに蘇生呪文を習得してはいるが)手に入れておくにこしたことはない。フォルデも最後には(ダーマで)サヴァンの願いを聞くことに決めた。
 今もその決定を翻す気はない。ただ。
「なんだかたそがれてるねー」
「っ」
 声にばっと振り向く。眼前――見張り台の自分のすぐ背後には当然のようにサヴァンが立っていた。さっきまで気配などまるで感じなかったというのにだ。またひとつこいつに負けたような気がして、フォルデは小さく舌打ちをした。
「わ、舌打ちかぁ。嫌われてるなぁ僕。傷ついちゃうね」
「……なんか、用かよ」
「なに考えてるの?」
 にこにこ笑顔で訊ねられ、思わず眉間に皺を刻む。
「てめぇにゃ関係ねーだろ」
「そう? だって考えてることって、僕に関係あることなんじゃない?」
「な」
「当ててあげようか。君はアープの塔で、賢者というものがどういうものか知った。神という神秘的存在が自分の思ったより身近にあることを知った。そして山彦の笛を手に入れる時、神の声を聞いた」
「っ……! お前、見てたのか!?」
「いや? ただ知ってただけ。賢者は精神集中すればどんな知識も調べられるってロンくんが言ってたでしょ。ま、神の御業についてはさすがにロンくんじゃ無理だけど、僕ならわかる。アープの塔程度なら、だけどね」
「っ………」
 いちいち当てられ、ぎりぃっと奥歯を噛みしめる。確かに、あの時自分は、幻像を見た。神によるものなのではないか、という幻像を。
 見たのは草原。そこを吹き抜ける風。遠くに見える山々。そしてそこを風に乗って自分は飛ばされていた。
 風の音。そしてその中に山彦がかすかに響いていた。さっき自分が吹いた、山彦の笛の音が響く音だ。
 自分は彼方の山を目指し宙を駆けていく。爽快な気分だった。今まで自分が感じたことのないような。というか、むしろ自分が自分とは違う存在になったような感覚だった。それこそ風にでもなったように、ただ宙を懸ける歓喜だけを感じながら無心で駆けていたのだ。
 と、その目指す山々の彼方に、人が立っているのが見えた。光り輝く、山をも越えるほど背の高い巨人の姿。
 その巨人は、自分を見て、言ったのだ。
『汝に、託す』
 その言葉の、力。威圧感とかそういうレベルではなかった。押し潰されそうなほど桁違いの重みと圧力に満ちていた。なのにその圧力が心地よかった。荘厳とか荘重というのだろうか、強烈な威力があるのに、まるで体を中から清められているような感覚があった。神々しさに打たれる、というのはああいう感覚かもしれない。
 それが、自分は、すさまじく。
「怖かったんでしょ?」
「っ」
「圧倒的な神威ってものを目の当たりにして、気圧されたんだよね? そんでそういう自分が嫌で腹が立ってしかたない。だってそういう神秘的なものを『自分より上の存在』として認めてしまったら、賢者であるロンくんも、自分の仲間も自分より上のものとして遠ざけてしまうことになるから。あとは単純に、負けたような気がして面白くないから?」
「……ざけんな。てめぇ、喧嘩売ってんのか」
 ぎ、とサヴァンを睨みつけ軽く身構えると、サヴァンは慌てたように手を振る。
「いやいや、そういうわけじゃなくてね。君の不安を解決しておこうと思って」
「てめぇにそんなもん解決してもらうほど落ちぶれてねぇ」
「そう? まぁ言っておかないと僕がなんとなく落ち着かないから言うね。……賢者っていうのは別に、神様だかなんだかみたいなやたら偉そうなもの≠フ道具っていうわけじゃないよ。自由意志は確立されてる。それなりの義務は負うけどね」
「義務……? んだ、そりゃ」
「情報の収集と研究、そして解明。それがSatori-System=\―賢者を創り出したものの目的だってロンくんも言ってたでしょ?」
「んなことして、なんになるってんだ」
「さぁ……僕には上つ方の心の内はわからないなぁ」
「――ざけんじゃねぇぞ、てめぇ」
 舌打ちしてサヴァンに向き直る。腹の底の胃の腑のねじ切れるような憤りを思いきり視線に込めた。
「てめぇがなに考えてんのかは知らねーけどな。俺らをあんま舐めてんじゃねーぞ」
「いや、別に舐めてないよ? ホントに知らないんだってば」
「ならよけいだ。俺の仲間をよく知りもしねーもんに引きずり込もうってんならぶっ飛ばす」
「いや、それはロンくんの人生なんだから、君が口出しできることじゃないんじゃないのかな?」
「知ったことか」
「いや……知ったことか、って」
 ずい、と一歩間合いを詰めて、目の前にまで顔を近づける。
「俺は、俺の勝手で、俺のために仲間を守る。あいつらがどう生きるかってのはあいつらの勝手だ。けど気に入らねぇって思ったら俺はその生き方にどんな理由があろうと文句言う」
「…………」
「それが他の奴が勝手に押しつけてきたもんならなおさらだ。――カミサマだろーがなんだろーが、俺の仲間を利用しようってんならぶっ飛ばす」
 瞳をのぞきこむようにして睨みつつ言うと、ぷっ、とサヴァンは吹き出した。フォルデは思わずサヴァンの胸倉をつかみ上げる。
「喧嘩売ってんのかてめぇ。言い値で買ってやんぞ」
「いやごめん、本当ごめん、そういうつもりがあったわけじゃないんだけど。なんていうか……うらやましいなって」
「……はぁ?」
「今の僕には言えない台詞だからね」
 くす、と笑うとサヴァンは思わず力を抜いてしまったサヴァンの手を離させ、笑顔で言った。
「そろそろ見張り交代の時間でしょ? 代わるよ」
「おい、まだ話は済んでねぇぞ」
「済んでない? どんな話?」
「てめぇは俺らを利用する気あんのかねぇのか、どっちだ」
 ぎろりと睨みつけつつ問うと、サヴァンは目をぱちぱちとさせ、それから笑った。
「利害関係のない人間関係なんて存在しないんじゃない? 親子だろうが恋人同士だろうが、相手からなにかを受け取るために与えているものだと思うけど」
「てめぇ、はぐらかしてんじゃねぇぞ」
「はぐらかしてないよ。そりゃ僕も君たちから自分の目的のためにそれなりのものを受け取るつもりではあるけれど、その分のお返しはちゃんとする。仕事をしてもらった分を報酬で返す、そういう普通の関係のつもりだよ?」
「そーいう問題じゃねーだろーがっ」
「じゃあどういう問題?」
 問われてフォルデは一瞬考え込んでしまったが、すぐにぶんぶんと首を振って睨み直し怒鳴った。
「ぐだぐだごまかしてんじゃねぇっ、単純なこったろーがっ! てめぇは俺らの敵か味方か、どっちだっ」
「……うーん。そう聞かれると困っちゃうなぁ」
 サヴァンは本気で困った顔になった。眉尻を下げ、ぽりぽりと頭をかき、途方に暮れたようにため息をつく。
「てめぇ、迷うってこたぁ」
「いや、あのね。僕はもう、誰の敵にも味方にもなれないから」
「……はぁ?」
「前に言ったよね、仲間にしてくれた勇者がいたって。その人と、約束したんだ。向こうは約束なんて思ってないかもしれないけれど」
「なにを」
「自分のために生きるって。神様のためでも世界のためでも知らない誰かのためでもなく、ただ、自分のために生きるって」
「………、意味わかんねーよ」
「うーん……なんて言えばいいかなぁ……あ」
 サヴァンが目を見開き、フォルデの隣を過ぎて船の進む先、台の舳先側に駆け寄った。嬉しげに目を輝かせて手を打ち振る。
「見て見て、フォルデくん! 森が見えてきたよ!」
「マジか!? お……マジに森じゃねぇか! このくらいの距離なら夕方前には着くなっ、海霧でろくに見えなかったけどいつの間にかすぐ前まで来てんじゃねぇか」
「僕はここで見張りしてるから、フォルデくんはみんなに知らせてきたら? 下船の準備とかもあるでしょ」
「おうっ……っててめぇ、なんか妙な真似しようってんじゃねぇだろうな」
「しないしない、本当にしない。ただ見張りしてるだけだってば」
 数瞬サヴァンをじろじろと観察してから、小さく舌打ちしてフォルデは縄梯子を下り始めた。こいつとここでいつまでも話していてもしょうがない。
「ああ、そうだフォルデくん」
「んっだよ」
 呼び止められぎろり、と睨みつけると、サヴァンはにこにこ笑顔で告げた。
「あのね。ロンくんは、いい賢者になると思うよ」
「……は?」
「ロンくんは自分の器と、できることとできないこと、そして自らを律することを知っている。だからきっといい賢者になる、もしかしたら僕よりもね」
「……だからなんだってんだよ」
「いや、言っておこうと思っただけ。あとね」
 にこ、と笑って肩をすくめ。
「君の啖呵、よかったよ。ちゃんと覚えておくからね」
 フォルデはその言葉のうさんくささというかいかにも裏がありそうな雰囲気に思わず顔をしかめたが、睨みつけてもサヴァンが笑顔をいっこうに崩さないので、ふん、と鼻を鳴らして言った。
「上等だ。がっつり脳味噌に刻んどきやがれ」
 そして縄梯子を下りていく。実際、自分の言った言葉を嘘にする気など、死んでも自分にはないのだから。

 魔船が目標地点に到達したのは、それから数刻もしない頃だった。
「ここが白の森≠ゥ……」
「見渡す限りひたすら森だな」
「すごく、植生の豊かな森、ですね」
 そんなことを話しながら魔船を停泊させ、自動昇降魔法具で地面へと降りる――とたん、ざっ、という音と共に、周囲にいくつもの気配が現れた。
「……魔物の気配じゃねぇな」
「エルフ……か?」
 そんな言葉を呟き交わすより早く、す、と森の中から一人の女性――エルフが現れて、声高に告げる。
「勇者セオ・レイリンバートルとその仲間たちよ。そして、神竜の従者であった者よ。我ら白き森≠フエルフは、貴殿らに告げる!」
 そのあとに続く声を聞く前に、反射的に全員がサヴァンの方をばっと向いた。サヴァンはいつも通りの涼しい顔でこちらを見ている。
「……今、神竜の従者、って聞こえたんですが」
 低くラグが問うと、サヴァンはわずかに苦笑して答えた。
「そうだよ。言わなかったかな。僕が仲間だった勇者っていうのは、神竜<Tドンデスさんだよ。――君たちをあるいは殺しかけ、あるいは殺した人さ」

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