あとがき。

 のんびりのんびりやってきたサマンオサ〜アリアハン編、ようやくの終了です。
 掲示板にも書きましたが、自分の生活にもあれこれと面倒なことはあるものの、自分としてはこれからものんびりと自分が楽なペースで(できれば人生が終わるまで)書き続けるつもりですので、来訪者の方々も気が向いた時に遊びに来ていただけると嬉しいです。……まぁ今の段階でもう、自分を生暖かく見守ってくれる方だけがたまに見に来られるサイトになってる気はしますが……(笑)。みなさんいつもありがとうございます、これからもよろしくお願いいたします。たまに送られてくる拍手や返信不要のメッセージ心底ありがたいです。

 今回の話は前章のあとがきでも書きましたが、バラモス戦前の一番の山場ということで、気合を込めてがっつりドラクエ……というか、冒険譚というか英雄譚というか、をさせていただきました。なので話もぐんぐん伸びて、最終的には全十一話というこれまでの最長の長さに。まぁ、書く前からだいたい予想していたことではあるんですが。相当前からここで書くことほぼ決まってたんで。
 なんでここまで長くなったのかというと、サマンオサイベントがDQ3でほぼ唯一と言っていい、『一般人を絡めることが可能な』『一国の興亡に関わる話』だからなんじゃないかなと思っております。基本ドラクエ3は(そもそもが魔王が出てきたってのが話の始まりなんですから)一国というか、世界の興亡に関わる話なわけですが、サマンオサのように『圧政を敷く王』という、一般的な人間の世界に属する要因から一国が滅びに瀕しているという事件はここだけだと思う(ジパングはそもそも当人たちは滅びに瀕しているとか思ってない上初っ端から神だの生贄だのって浮世離れした話なわけですし、ラダトームは滅ぼそうとしてるの大魔王さまなわけで、勇者≠ニいうトンデモな存在にどうにかしてもらわねばどうにもならん状態)。
 それがどうかしたのかというと、要するにサマンオサイベントって、群像劇に非常に向いた構造になってると思うんですね。勇者という普通の人間とは違う、自分の小説の表現で言うなら『人でなし』と、それを崇めたり利用しようとしたり反発したり憎んだり妬んだり憧れたりっていう、救われる側の立場である一般人とが、それぞれの立場で事件に関わり合える話になってると思うんですよ。
 どこのDQ3小説でもだいたいそうなってますが、サマンオサイベントって一般人の立場から見たら勇者みたいな『人でなし』と関わらない、自分たちの世界の中で解決できる一般的≠ネ話なんですよね。まぁ恐怖政治とか一般的にやられたらたまったもんじゃないですが、魔王みたいな人間じゃ絶対どうにもなんないから勇者様助けてー、みたいなんじゃなく、人を集めて協力し合えば打倒しうる障害、として見てる感じで。
 なので『一般人から見た勇者』というものや、勇者という人間兵器が一般人の社会でどう扱われるかみたいなところをがっつり描くチャンスでもありますし、社会的な問題になる以上人手がいないとどうにもならんところもあるので、必然的にいろんなキャラを出さねばならなくなる。なのでこれまでに出てきたキャラとかを出すのにちょうどいい、というわけで、これまでに出てきた名前のあるキャラは(ヒュダさんみたいな別の街に根付いている人を除き)ほぼ総出演、という話になったわけです。
 まぁキャラが増えればそれぞれに出番を割り振ってやらねばならない分当然の帰結として話が長くなるわけで、自分としてはこれだけ長くなるのはそれなりに予想していたことではありました。それに自分の好みとしても群像劇ってけっこう好きなんで、前々からいろいろネタ考えてたんですよね〜。今回全部書き切れて、嬉し楽しい気分と同時に正直ほっとしております。

 今回の話で出てきた新キャラとしましては、ガルファン――サイモンの息子と、マイーラ――サマンオサの王女がいるわけですが、自分的にはこの二人にはかなり重要な役目を割り振ったつもりでいます。
 ガルファンについては、セオと同じように英雄――勇者の息子として生まれ育ちながら、勇者ではない者としての視点の主として。マイーラについては………勇者を好きになるお姫さま、という古式ゆかしい役柄を演じる者として、です。
 いや、サマンオサのお姫さまって実際勇者に惚れるお姫さまとしてはかなりいいポジションにつけてるキャラだと思うんですよ。彼女にとってはまさに国と自分の命を救ってくれたヒーローですからね、3勇者って。命懸けてぞっこん惚れ込んでもおかしくないはず。
 自分としては成長し、アリアハンにいた頃より強くなってきたセオがおなごにモテモテになるシーンが書きたかったんですよね〜。個人的に好きな主人公がモテモテになるところは書いていて楽しいということもありますが(笑)、客観的に、一般的な目から見てもセオが成長して、いい男になってきてるんだぞ、って示した方が話が面白いかな、と。
 まぁ当然ながら失恋は決定事項だったわけですが(笑)。自分的にはセオのお相手ってもう決まってるってこともありますし、なにより最終的にアレフガルドに向かうセオたちが普通に女の子とくっついちゃったらあまりにどっちも可哀想すぎる気がするので。キャラ的にもセオに恋をさせてくれるほど魅力的な女の子なわけでもないし……いやまぁそういうあくまで『一般的』な女の子を目指して書いたんで当たり前なんですけどね。
 対してガルファンですが……彼は文中でも書いた通り次の話にも続投するので詳しくは次回に回しますが、基本勇者という役割に徹する父親に反発するキャラになっております。これはまぁなんというか自分に引き比べて考えて、世界を救うために自分たちを放って戦ってとっとと死んじゃうような父親がいたらイラッとくるだろうな〜、という感想を普通に発展させてった感じですね。
 オルテガもそうですが、英雄で勇者の父親を持つっていうのは、自分だったら誇りに思うよりもしんどいことが多いだろうな〜、って考えちゃうので。特に3勇者って自分の意志お構いなしで世界を救う役押しつけられるわけですし。基本自分の勇者の息子と父親の関係というものには、斜めから見た感が入っちゃってます。そういうの抜きの、心から父親を誇りに思ったり愛したりしてる息子っていうのもそれはそれで好きなんですけどね。
 サマンオサの王さまの性格と反応にも、そこらへんの気持ちが反映されてます。日本のRPGの始まりとなった分、どうしても生まれてしまうドラクエのストーリーのアレな部分に対する……まぁいろんな方も書いてらっしゃる反感というか、突っ込みというかなわけですけど、自分なりに面白く料理できていたらいいのですが。
 実際この作品の中の勇者というのはどっか一本ネジが外れてるというか、頭おかしいと言われそうな部分がないとダメなわけで。設定的に。それぞれその部分がどんな方向かは違えども。
 で、今回書く英雄サイモンはこういう方向になりました。詳しくは次章書くことになるかと思いますが……まぁ、それと相対することになったサマンオサの王さまは大変だったと思います。英雄と、勇者と呼ばれる人と、それになれない人のそれぞれの業が、少しでも表せていたらいいのですが。

 あと、今回はこれまでに出てきたキャラ総出演という気持ちで書いたので、当然ながらいろんなキャラがそれぞれに見せ場を持っている……よう書いたつもりです。
 個人的にはヴィスタリアとヴィンツェンツの戦闘シーンやっと書けたー設定出せたー、というのが嬉しい。自分やっぱり強キャラが圧倒的な強さで敵を蹂躙するシーンとか好きなんで。話としても重要なポジションにいる二人ですし、気合を入れてバシッと活躍してもらいました。
 他のヒロインたちは投げっぱなしになってるキャラもいますが……(苦笑)。まぁそこらへんは、次章の冒頭でそれなりにちゃんと描写するつもりです。これで出番が終わりになる予定とかないしね。予定は未定ですが。
 サヴァンについてもね。彼の背景に関してはここできっちり書いておくつもりだったんですが、なんかついでっぽく流しちゃったのがちょっと心残り。これについても次章……かその次でなんとか書いておきたい。
 そして――サドンデス。ラスボス候補(えっ)の一角の設定をだーっと垂れ流すことになってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。
 読者の方々には気を持たせる形になってしまったわりに、うまく書けなかったなーと反省しきりです。伏線回収というよりもネタバラし作業という形になってしまった気がひしひしと。
 ここでサドンデスの設定をバラす予定になっていたのは間違いないんですけどねー。読まれている方にカタルシスを与えられなかったんじゃという危惧が。……これからも精進しますのでどうか見捨てないでください。
 それと、セオのアリアハンへの帰還。これもきっちり予定に入ってはいたんですが……これを思いついた一番の理由は単にセオを女体化したかったからというのが自分でもどうかと思います。いや自分女体化って別に好きなわけじゃないんですけど、セオが超絶美少女になって仲間たちがおたおたするところを書いてみたかったというか……(苦笑)。
 でも話としても、成長したセオが母親や祖父やアリアハンで自分をいじめていた人たちとのケリをしっかりつけておくのは必要なシーンだと思いましたので。まぁあんな感じで、憎むにもあまりに物足りないオチになってしまったわけですが。
 ですがこれは一応ずっと前から決まっていた話ですので勘弁してくださいまし。虐待されていた子供にとっては圧倒的な強者だった親も周囲も、成長してみればあまりにか弱いものでしかないというのは、当たり前と言えば当たり前ですしね。アリアハンは基本、この話の中ではその程度の存在でしかない、という形でしか書けなかったのが自分にとっても悔しい話なのですが。
 父親については、またいずれ書くことになるでしょう。まだまだ先の話になると思いますが。

 あと、自分的にはかなり重要なのが、仲間たちの山場での活躍シーンだったりします。
 ロンがいとけない子供を……っていうのは本当にやらせちゃうかかなり迷ったんですけど、勇者ではない、勇者の仲間でしかない者の現実への立ち向かい方として書いておきたかったですし(これまだ話引っ張ると思います)。フォルデやレウのような年少組が、保護者のいないところで必死に勝てない奴相手に頑張るってシーンも必要だと思いましたし。
 それにラグのヴィトール将軍に対する啖呵。自分ここラグの超見せ場のつもりでネタ考えてたんですけど、いかがでしたでしょうか。書いてみたらなんかさらっと書いてしまった気がする……。自分としては人生や軍事や革命や理想に対する自分なりの答えとして気合入れて書いたつもりだったのに。
 まぁ自分も年を経て感覚が鈍磨してきたということなのでしょうか。脳の活性化のために新しい体験をして新しい出会いを得た方がいいかもしれませんね。……人とコミュニケーションまともに取れないけど。

 次回の話は、幽霊船とオリビアの岬とサイモンの幽霊、というどちらかというと今回の話の後日談的な要素が強い話になる予定です。ヒロインとかの書ききれなかった話もあるしね。
 サドンデスとの次回の会談はその次かな。のんびりと自分のペースで楽しく気合入れて書くつもりなので、どうか気が向いたらまた見に来てくださいませ。

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