あとがき。

 のんびり……にもほどがあるというかそういうレベルのペースじゃないというか、我ながら恥の多い人生を送ってきましたとか太宰顔で言いたくなるようなスローペースですが、グリンラッド〜幽霊船〜オリビアの岬編、なんとかかんとか終了です。
 もはやすでに最初から頑張って更新しようというつもりのない、自分の楽なペースで話を書き綴るつもりのサイトではありますが、三篇綴るのに一年近く、しかもその半分以上はラスト一篇に使ってるとか今さらながらに自己嫌悪抱きたくなってしまう……のですが、まぁそんなん真面目に今さらすぎますし、頑張って更新しようとしてない分際でいっちょまえにプライドを持つというのがそもそも思い上がりだということなのでしょう。これからもネットの片隅でちまちまと自分にやれる範囲でお話書き連ねていきますんで、読みたい方だけ気が向いた時に遊びに来ていただけると嬉しいです。

 今回はサマンオサ編という山場を越えて……というか、その山場の後始末的な話になってしまいました。書き始める前はそこまで意識してなかったんですけど、書いてみたらサイモン息子のガルファンくんが英雄サイモンに抱いている屈託を解消するための話、みたいに。
 君物ではサイモンはそこまで話の本筋にかかわってくるわけでもないんですけど、それでもやっぱり世界の中で数えるほどしかいない勇者の一人であり、偉大な先輩格であり、主人公勇者の父オルテガの親友であった相手なので、それなりに特別感を込めて書くつもりではありました。ただなんというか、書いているうちにガルファンにきちんと救われてほしいというか、サイモンときちんと縁を結びなおしてセオたちとの関わりをきちんと昇華してもらいたい、なんて欲求が湧いてきてしまったので、話の展開とサイモンの性格が書きながら二転三転することに。
 ぶっちゃけ、サイモンって最初の予定ではサマンオサの王さまが恐れたまんまのド外道勇者の予定だったんですよ。ガルファンの想像する通りの秩序の化け物的な。世界秩序を自身の命より魂より優先するからこそ世界を護る力を得た、みたいなキャラ。
 ただ、その……書いててですね、最初の二篇でえんえんガルファンの心情やら状態やらをあれこれ描写しててですね(正直それを書く理由の大半はセオたちの超人アピールというか一般的な視点から見てセオたちのとんでもなさを解説する……みたいなのだったんですけど)、それじゃガルファンがあまりに可哀想すぎるというか、ガルファンの想いはどこに行けばいいの、みたいな疑問を抱かざるを得なかったんですね。話としてもうまくオチがつけられなかったし。
 でもこれまでに書いてきた文章との整合性もきちんと取らなきゃだし。そもそも話が論理的におかしかったらダメのダメダメだし、っていうんで必死にこねくり回して、君物のサイモンはとてつもなく不器用で世渡りが下手な、半ば宗教的な救世欲を抱く、お互い誤解し合っているけれど本当は心の底から息子(血は繋がってない)を想っている男≠ニいう代物になりました。まぁ世界を救う者と世界に認められるだけの人間なんだから、大人物の方が話的に正しいよな、とは思うのですが。
 ただ個人的に申し訳ないなーと思うのが、サイモンの妻、ガルファンの母を悪者にしてしまったこと。最初はサイモンに人生を振り回された不幸な女性というつもりで書いてたのに(ろくに描写ないけど)。途中で話を変えてしまうというのもよくないし、それになんというか、『また女性を悪者にしてしまった……』という気持ちが……。なんで自分は女性を悪いようにしか書けないのでしょうか。人として魅力的な女性とか心から優しい女性とかほとんど出てこない……。ここは、自分的にはマジに精進したいところです。
 ただサイモンという人物に関しては自分なりに掘り下げができたと思うので、きちんと次からの話に活かしたいと思います。サイモンは父オルテガの親友、っていう主人公勇者が父を理解するための大きな助けとなってくれる存在ですし、せっかくあれこれ考えたんだからしっかり描写に盛り込もうと。今回はガルファンの話がメインだったので流しましたけれども。
 ガルファンというキャラについてですが……彼は基本的に勇者というものを一般人視点から見上げるキャラクター、というつもりで書いていましたし実際そういうキャラに落ち着いたと思うんですが、彼なりの自負というものが自分の中ではかなり重かったらしく、勇者とわりと真正面からぶつかり合うキャラになったなぁ、というのが印象です。最後にはサイモンと和解しセオを素直に労わりつつも尊敬するキャラになったものの、それまでにがっつりぶつからないと納得しない感じに。なので正直自分からすると、書く分には暴れ馬的なポジションに……まぁ、サマンオサ編でうまく描けなかったまっとうな誇り高い戦士という像が少しでも描けていたのなら、そんな苦労も慰められますが。

 サマンオサ編の後始末という意味で他に自分的に大事だったのは、ロンが子供を殺したことを何気に引きずっているということと、ラグがムーサときっちり後腐れなくケリをつけたこと、フォルデとヴィスタリアとの演出された別れ……そして、自分的に対ラグヒロインであったエヴァ・マッケンロイエルを、ラグがきっぱりばっさり振ったことでしょうねぇ。
 いや、基本的に最初からラグにはエヴァを振らせるつもりだったとはいえ、書き始めた時はサマンオサでばっさり縁を断ち切られるとはあんまり思ってなかったんですが……書いてるうちにどうしてもそっちの方が自然だ、ってことになってできる限り情け容赦なく振ってもらいました。
 これも自分が女性を描くのが下手なせいだと思うんですが、エヴァって正直どうやっても魅力的なヒロインになってくれなくてですねぇ。どうやっても世間知らず身の程知らず、自分の気持ち(だけ)がなにより大事な身勝手娘、っていうキャラから抜け出せなくって。その上想いの強さってやつも、年頃の乙女の恋に恋する状態、っていう脆いものとしてしか描けなくて。
 ここで完全にヒロイン役から切り捨てちゃっていいのかどうか、正直まだ迷ってる部分もあるんですが、これはもう無理にヒロイン役やらせ続ける方が無茶だ、って気持ちになって……完全に出番がなくなるというわけではないんですが、基本的にヒロインとしては描かなくなるんじゃないかなぁ、と思います。まぁ予定は未定ですけども(そもそもラグのヒロインは母親だ、という意見を笑い飛ばせない辺りに一番の問題があると言われるとちょっと言い返せないんですが……笑)。
 自分がまともに女性を描くのが下手なばっかりに、割を食わせてしまったエヴァ嬢には、こっそり哀悼の意を表したい気持ちです。うまく描いてあげられなくてごめんね、エヴァ嬢。

 そして、自分が個人的にちょっと書く際に苦戦しているのが……セオたち一行の仲良し度についてです。特にセオの反応についてね。
 基本的にですね、セオはですね、ルザミで仲間たちに救われて、自分が苦しい時同じように辛いと思ってくれる、価値どうこう関係なしに自分を心配してくれる人がいるってことを理解してるわけですよ。なんでまぁ、自分の痛み苦しみ完無視で人を救うために突っ走る、みたいなことはしなくなってるわけですよ。一山越えて問題解決しちゃってるんですよ。
 んで、もともと仲間たちのことは大好きですし、仲間たちもセオもお互いも大切にしてますから、基本的にパーティ内で不和が巻き起こる可能性とかすげー低いわけですよ。エニイタイムみんな仲良し状態なわけですよ。
 でもですね。それだと話盛り上げんのすげー難しいわけですよ!(笑)
 心の問題が解決してなかったら、問題とぶち当たれば即パーティ内に嵐が吹き荒れ、それをどう解決するかってことを書いてるだけで話はそこそこ転がっていきますが、基本全員問題解決仲良し状態だとそーいうわけにはいかないというか……。なんかトラブルが起きてもちゃんとした理性と感情でさくっと対処されちゃうので、話が盛り上がらないんですよね。
 それにセオの一番大きな特徴だった『これ以上ないくらい卑屈な勇者』ってのがなくなっちゃってますからねぇ……まだまだ旅は続くのに、このままでいいのかという気持ちがあります。
 いや、まぁ、全然心の問題解決してない、これだけ旅してても全然進歩してない状態をこれ以上書くのもなぁってセオを成長させたの自分ですけど(笑)。後悔してませんし話の展開としてそれが真っ当だったとも思うんですけど。仲良し状態を書くのも楽しいんですが、甘いばっかりの話じゃ物語として自分的にもおいしくないのですよね。なんというか、うまく緩急をつける方法を身に着けたいなぁと思っております。

 次回は海賊のアジトでレッドオーブゲットの予定です。サドンデスの持ちかけた依頼についても次回で話をつけるつもり。あとはサイモンの話してくれたオルテガの話ですかね。セオの中でもオルテガは、心のかなり強烈な部分を占めておりますので、オルテガの話がちゃんと出てきた機会なんだから、ここはちゃんとやっとかないとですので。
 もちろん予定は未定ですが、基本イベント的な話になるだろうと思うのですが、今回もわりとそんな話だった気がするので……なんとか話として面白いものに仕立て上げたいところです。

戻る   次へ
『君の物語を聞かせて』topへ