滝川は他のみんなが仕事場に向かっていく教室で、とりあえず舞のところへ向かった。 「芝村……」 「なんだ」 舞の方も椅子から立ち上がると、まっすぐ滝川のほうへ向かってきた。じっと滝川の目を見つめる。 それに気付いて少しばかり焦りながらも、滝川は舞に小声で訊ねた。 「おまえってさ、幻獣のオリジナルが熊本城にあるって、知ってたのか?」 「………」 舞は無表情で滝川を見た。 「昨日ちかぢか戦闘が起こるみたいなこと言ってたしさ。もしかしてって……違ったら悪いんだけど……」 舞は無言で、滝川の額をはじいた。 「いてっ!」 「たわけ」 「なにがだよっ!?」 ほおを膨らませる滝川に、舞は倣岸な表情で言う。 「なんであれ、明日空前の大戦闘が起きるのは確かだ。……準備をするか、滝川」 「え? お、おう」 なんだか疑問に全然答えてもらってないような気がしつつも、滝川はうなずいた。 「言い出したのは我らだ。当然、一番つらいところは、我らが行うぞ」 「え? 言い出したって……?」 「……そなた、熊本市中の全幻獣を相手にすると聞いてどうだ? 恐ろしいか?」 急に話が飛んで、戸惑いながらも滝川は答えた。 「え、いや……まだよくわかんねーよ。いきなり明日すげえ数の幻獣と戦闘しなくちゃなんないとか言われても……実感わかない。……けど……」 「けど?」 「とりあえず、やることはやっとかなくちゃなって思うけど」 舞は倣岸な表情でうなずいた。 「うむ。それでよい」 「はあ……?」 「行くぞ、滝川。とりあえず運動力の訓練と仕事を交互に二回繰り返して行う。長々と一つの作業をやっていると作業効率が落ちるからな」 「お、おうっ」 何はともあれ、滝川は舞について歩き出した。 |