幸福の多いレストラン
 京浜東北線大井町駅から歩いて十分ほど。閑静と言うにはやや車通りが多すぎる住宅街にそびえるビルの一階に、その店はある。
 周囲に自然に馴染むパステルカラーの外壁と、綺麗に磨かれたガラス張りの出入り口。中は常に適度に明るく、そのゆったりとした間取りが通りからいくぶんか見て取れる。
 ガラスに金属の取っ手をつけた扉の上にある木製の看板には、黒インクの見事な崩し字でこう記されていた。
カルパ・タルー
 ――それがこの店の名前だ。
 営業時間中は常に漂うたまらなく食欲をそそる芳香と食事時になると時々小さな行列ができることから、その店が食事をする場所であり、かなりに繁盛していることが知れるだろう。
 実際この店は近所どころかかなり遠くからも噂を聞きつけて人がやってくるような、雑誌に出ないほどの隠れた名店として一部に知られていた。誰でも気軽に入れそうな雰囲気とは裏腹の味は、口コミでのみひそかに伝えられているのだ。
 この、店名通りの、なんでも望むものを出してくれる古代インドの伝説の樹木のごとく、自分たちに一時の幸福を与えてくれる小さな楽園を、無粋な闖入者たちの手で壊されぬように。
 そして、いつの頃からか、この店にはふたつの小さな噂が囁かれるようになっていった。店名からきたものか、その驚くべき味からきたものかは誰も知らないが。
 ひとつは、『この店に来ると願いを叶えることができる』というものだった。どうしようもなく切羽詰った時、苦しい時、誰かの助けが必要な時にこの店に来ると、なぜか道が開けるのだと。
 そして、もうひとつは―――

「だから、あたしは高いお金出して食事する気分じゃないって言ってるじゃない」
「まーまー、いいから来なさいよ。ほんっとにおいしいんだから」
 大井町の歩道を、二人の仕事帰りのOLらしき女性が歩いていた。
 一人はややぽっちゃりとした、いかにも趣味は食べ歩きと言いそうな女性。もう一人の女性を引っ張るようにして歩いている。
 もう一人は痩せぎすの、ぱっと見骸骨じみているとすら言えそうな女性で、いかにも気が進まないというように首を振りながらぽっちゃりとした女性に腕を引かれつつ歩いている。
「おいしいって言われたって、あたしは美紀と違って食事に高いお金かける趣味ないのよ。明日も仕事なんだから、早く帰って休みたいの」
「んもう、仕事って言ったって小百合今ろくに仕事進んでないじゃない! あの人に振られてから仕事も生活もガタガタでさっ」
 その言葉に、小百合と呼ばれた痩せた女は唇を噛み締めた。ぽっちゃりした女性――美紀ははっとしたように小百合を見て、眉を下げる。
「ごめん……」
「……いいわよ、わかってるから。あたしが馬鹿だったのよ、あんな女たらしに引っかかるなんて。どうせ遊びだろうと思ってたら案の定だった、それだけの話よ。別に落ち込んでなんかいないわ」
 そう平板な声で言う小百合の表情にも目にも、力はない。
 美紀はますます眉を下げ、それでも小百合を引っ張った。
「ね、だからおいしいもの食べて元気出そって言ってるの。そんであんな男のことなんか忘れちゃいなさい。おごったげるから」
「…………」
「そこの店ほんっとにおいしいから。それに安いし。まぁ小百合は今回はおごりだけどさ」
 あからさまに渋々という様子ではあったものの、小百合は美紀と共に店の前までやってきた。明かりの漏れるガラス張りの出入り口を見て、美紀が歓声を上げる。
「ラッキ! 列できてない!」
「……そんなに繁盛してる店なの?」
「うん。回転はすごく早いんだけどね、食事時には人多いから。さっ、入るわよ」
カルパ・タルー≠ニ書かれた看板の下の扉を開けて中に入ったとたん、ささやかな喧騒が小百合を包んだ。にぎやかな話し声、食事をする音、人の動き回る音、それら全てが騒々しくないレベルに抑えられ、心地よいとすら言ってよさそうな音を作り出している。
 ぷうん、と漂ってきた香りにも、小百合は思わず鼻をうごめかせてしまった。食欲なんて微塵もなかったのに、この匂いはひどく食欲をそそる。
「いらっしゃいませ! おや、川田さま、今日はお友達とご一緒ですか」
 素早くやってきたギャルソンを見て、小百合は絶句した。そのギャルソンは外国人の血が入っているのか鮮やかな栗毛に翠の瞳で、それだけでも驚くには充分だったが、それよりも――その男はモデルでもそうそういないだろうというほどに美しかったのだ。
 優美さすら感じさせる姿態といい、艶やかな髪といい、深く澄んだ翠の瞳といい。貴族的に整った顔貌など、小百合にはもう芸術作品のようにしか思えなかった。今まで見たことのないような超美形だ。
 思わずぽうっと見惚れる小百合にかまわず、美紀は席に案内されながらギャルソンと親しげに話をしている。ゆったりした作りの店の真ん中あたりの席に座ると、美紀がさっそく聞いた。
「今日はなにがおすすめですか?」
「そうですね、むろんうちのシェフはどの料理もおいしく仕上げますが、今日は海老のいいのが入りましたので、滑蛋蝦仁などいかがでしょう」
 にこやかに笑うギャルソンの口からするっと飛び出した中華風の言葉に、小百合は困惑した。黒エプロンのギャルソンと店名でそう思いこんでいたが、ここは洋風レストランではないのだろうか。
「美紀……ここ、中華料理店なの?」
 こっそり聞くと、美紀は笑った。
「そーじゃないのよ。このお店はね、和洋中印伊西、どこの国の料理でもなんでもメニューにのぼるの。インド風カリーとカバブ、本格イタリア風アンティパストにアクアパッツァ、手打ちそばに炊き込みご飯が同じメニューに並ぶんだから」
「メニューは日によって変わりますので、さまざまな料理を楽しみたい方にぴったりかと存じます」
 にっこりと微笑むギャルソンに見惚れつつも、小百合は首を傾げていた。普通料理人というのはどこかの国の料理を集中して学ぶものではないのだろうか。無国籍料理というのもあるにはあるが、どうしても素人料理という印象がつきまとう。
「おい、ロト! 早くこっちの仕事手伝えよ」
 突然聞こえた乱暴な言葉に、小百合は驚いて声のした方を見た。明らかに脱色した金髪の、高校生くらいにしか見えないなかなかハンサムな少年が(といってもこのギャルソンも顔立ち自体は大学生ぐらいにしか見えないほど若いのだが)、緊張した面持ちで皿を持ってそろそろと歩いている。
 ロトと呼ばれたギャルソンはくすりと笑って頭を下げた。
「申し訳ありません、あれはアルバイトなのですが覚えが悪く。教育が行き届かないことをお詫びいたします」
「てめぇロトっ、聞こえたぞ! 悪口言ってる暇があったら手伝いやがれ!」
「はいはい、君も人に偉そうなこと言ってる暇があったら皿四枚持ちできるようになろうねー。……では、ごゆっくり」
 最後の一礼はこの上なく優雅だったが、それまでの台詞は定食屋のおばちゃんのごとき雑駁さ。それまでの高級料理店のような言葉遣いとはまるで違うギャルソンの態度に、小百合は思わず美紀に聞いた。
「ねぇ、ここっていっつもこんな風に怒鳴り声とか飛び交ってるの?」
「んー、飛び交ってるってほどじゃないけど、ロトさんとコーくん……ギャルソンの二人はよくじゃれ合ってるかな? すぐ慣れるわよ、不快なことはしないから」
 と言われても信用などできるはずもない。
 しかし周囲を見渡すと、周りの客はみな気にも留めず、数少ない注目している人間もむしろにこにことしていて、誰もおかしなことだとは思っていないのがわかる。変な店、と小百合はメニューに顔を隠しながら思った。
 メニューは言われた通り、統一性というものがなかった。さまざまな国の料理が、手書きで、B5の紙四枚につらつらと書き連ねてある。
 ……だけど普通こういう街のレストランで、しかもメニュー日替わりの店で、こうも何個もメニューに載せられるものだろうか? という疑問が頭に浮かんだが、それを口にする前に美紀が言った。
「あ、ここお酒類は言えば詳しいメニュー出してもらえるけど、言わないと普通のお酒しか出してもらえないからね」
「………? 普通じゃないお酒なんてあるの?」
「あそこ見て」
 指された先を見て驚いた。店の奥にバーらしき一角がある。
 カウンターの中には一人の男が座っていた。さっきのギャルソンほど整ってはいないがその数倍セックスアピールに溢れた野性的な顔に口髭を生やした、小百合のイメージする伊達男を絵に描いたような男だ。
 目が合った瞬間ウインクされて、小百合はかっと顔を赤らめた。
「あのバーのマスター……ステファンさんっていうんだけどね」
「外国の人?」
「うん、国籍はギリシャだって。……その人がすごくお酒に詳しくていろんなお酒用意してるんだけどね、あんまり種類が多いから本当のメニューがすごく分厚いの。すごく高いお酒とかもいっぱいあるみたいでね、お酒に詳しくない人には邪魔だからって言わないと出してくれないのよ」
「そんなに変わったお酒出すの?」
「変わったっていうか、珍しいお酒。世界中で出せない酒はないってステファンさん豪語してた」
「ふうん……」
 小百合はメニューの文字を追うのをやめて、店の中を見渡してみた。
 ビルの一階をほぼ全部使ったゆったりとした空間。適度に明るい照明と、美しく整えられたテーブル。その間にはにぎやかな、けれど騒々しくはない話し声と、食欲をそそる香りが満ちている。
 小百合は目を閉じた。なんだか、この店の空気にたゆたうのは、気持ちがいい―――。
「お客様」
 ふいに話しかけられて小百合は一瞬飛び上がりかけた。あの美形のギャルソンが薄く微笑んで自分の前に立っている。
「当店のシェフが、ぜひお客様に一皿、料理をお贈りしたいと申しているのですが」
「え、え?」
「すっごーい小百合、プレゼント≠セぁ!」
 美紀がはしゃいだ声を上げる。わけがわからず美紀とギャルソンを交互に見つめる小百合に、美紀が嬉々として説明した。
「あのね、この店ではね、時々シェフが一皿料理をプレゼントしてくれることがあるの!」
「むろん、お受けになるもならないもお客様の自由です。ですが、お受けいただければ必ずやお客様の舌を満足させられることと存じます。もちろん納得されない場合はお代はいただきません」
「はぁ………」
「お受けになりますか?」
「ねっねっ、受けなよ小百合ぃ」
 二人に見つめられて、まだ今ひとつ納得のいかないまま小百合はうなずいた。ギャルソンは微笑んで店の奥に姿を消し、すぐにまた姿を現す。
 ギャルソンの持っていた盆からは湯気が立ち上っていたが、小百合は奇妙に思った。あの盆の上に載っているのは、小さな鍋ではないか? それも取っ手付きの、ステンレスの。
 料理を出すにしては奇妙な器に小百合は眉根を寄せたが、ギャルソンに料理を置かれると絶句した。
 盆の上に載っていたのは――
「……これ、ラーメン?」
「はい、チキンラーメンでございます」
 それも具はネギのみ、丼にも移さない鍋そのまんまのチキンラーメン。
 美紀が困ったような顔でギャルソンを見るのが見えた。
「ねぇ……ロトさん。これはいくらなんでも、プレゼントって言ったって………」
「しばしお待ちを。人生と手品は最後まで味わわなければ価値のわからないものですよ」
「だって、いくらなんでもチキンラーメンって……?」
 そんな二人の会話など耳にも入らず、小百合はじっとチキンラーメンの入った鍋を見ていた。そして、すっと箸を取り、鍋の中に箸を突っ込んで麺を取り、啜る。
 ―――とたん、涙が溢れた。
「さ、小百合………?」
「おいしい……おいしい………!」
 小百合は泣きながら、何度もチキンラーメンを啜った。
「あの時と同じ味……ううん、あの時よりずっとずっとおいしい………!」
「あの時……?」
 小百合は答えず、ラーメンを啜り続けた。
 そう、言ってもしょうがないことではあった―――一年近く前、まだ別れた恋人と仲がよかった時に、仕事でミスをして落ち込んだ小百合に、恋人がチキンラーメンを作ってくれたことなど。
 よくある話だ。恋人がいれば珍しくもない話だ。事実小百合は今までそんなことずっと忘れていた――けれど、これを食べて思い出した。
 確かに恋人は自分を弄んだのかもしれない。次の女への繋ぎのようなものだったのかもしれない。
 でも、それでも楽しいことは、嬉しいことは確かにあったのだ。優しい気持ちが通じたことが確かにあったのだ。
 思い出した。ようやく。
「あたし……あたし、頑張る……もう後悔すんのやめる、やめて頑張る………!」
 なにを頑張るのかもわからないままにそう言う小百合に、ギャルソンはそっと微笑んで、
「幸運をお祈りしています」
 優しくそう、言ったのだった。

 川田と連れが満足して帰ったあとも、店の営業時間はまだまだ続く。
 何人もの客に料理を運び、時々ミスをして給料を減らされ、といつも通りに広里浩(ひろさとこう)はバイトをこなしていった。
 時々料理を見て涎が垂れそうになるが必死で我慢する。作る料理はなんでも死ぬほどうまいが、お客様を不快がらせるような真似は絶対に許さないのだ――この店のシェフ、箕輪祐(みのわたすく)は。
 けどなー、こんなうまそうな匂いさせられてちゃ我慢できねぇって。あーくそ、早く終わんねぇかな、祐さんの料理早く食いてぇー。
 夕食分のまかないは一人前以上たいらげたのにそう思う浩。浩は普通の人間より食糧が大量に必要な体質だ――胃下垂というのではなく。
 注文を受けて厨房に足早に入る。注文表をフックに引っ掛けて、大声で言う。
「魚介のミックスグリルとサルティンボッカ、天ぷら定食とライスふたつ!」
「魚介グリルとサルティン、天ぷらライス了解!」
 威勢良く答えながら料理をするのは――一人の少年だった。
 黒髪黒目で彫りが深い顔立ち。わずかに褐色がかった肌もあいまってエキゾチックな雰囲気を漂わせる容貌は、事実インドで生まれたものらしい。
 だが日本人としても通用するような清潔な顔貌は、人に警戒心を起こさせない。それ以上に彼を魅力的にしているのはその雰囲気だ。その優しい性格からくるのだろうか、そこにいるだけで空気が和むような、ふわっというかほわーんというか、とにかく彼の笑顔を見ているとほっとするのだ。
 だから彼、箕輪祐と相対して素直に話さない人間はほとんどいない――たとえ見かけが、十歳の少年であっても。
「はい角煮定食ととろろそば、トム・ヤム・ガイとミー・ハイ・サン上がり!」
「角煮とろろトムヤムミーハイ了解!」
 目にも止まらぬ速さで調理場を動き回り手を動かす祐により、料理は次々と、どれも数分のうちに作り上げられていく――その早さ、十歳の少年――どころか、人間のものではない。
 それも当然、祐は実は、人間ではないのだ。
 それどころか、この店で働く者――箕輪祐、小此木浪人(おこのぎろうと)、ステファノス・ゲラリス、そして自分広里浩は、全員人間ではない。人ならざるもの――妖怪なのだ。
 この二十一世紀に妖怪が実在している、など真剣に言えば普通の人間は笑い出すだろう。しかしそれは事実なのだ。
 妖怪。それは、この世に想い≠ェ生まれた時から存在していた命ならざる命。
 妖怪というのは通常の生物ではない。生命を生命たらしめているエネルギー――それを一部の人間は『気』や『オド』、『Lフィールド』などと呼んでいるらしい――が、通常とは違った場所に生命として結実してしまったものなのだ。
 普通生命というのは、宙に漂う生命エネルギーを親となる存在の意思――子供がほしい、子孫を残したいというような――が引き寄せ、胎児や卵に宿らせることによって生まれる。だがまれに、本来宿るべきでないものに生命エネルギーが宿ってしまうことがあるのだ――人や自然の意思によって。
 それはたとえば大自然に対する畏敬の念であり、闇に対する恐怖であり、愛用する道具に対する愛情であり、見えぬものに対する想像力である。そういう想いが、多くは人間の想像力の集合により、形を取って生まれたものが妖怪なのだ。
 人間の想いから生まれたものは多くは人間が想像した姿を取る。化け狸、鬼、蛇神、人狼。元からそういう生物がいたのではなく、人間が闇に怯えて想像したものが形となったのだ。
 今も絶えず妖怪は生まれ続けている。この世に想いを抱く人間がいる限り。
 そしてその妖怪たちの多くは、都市に――人の間に潜んでいる。昔ながらに人里離れた山奥に住む妖怪たちもいるが、今や都市で生まれた妖怪の方がはるかに多いし、なにより刺激的で楽しいからだ。
 だが、その妖怪たちが常に苦労するのは、人との関わり――特に仕事である。
 都市で人間として暮らすのならば、仕事を持たないわけにはいかない。しかし、妖怪と人間が一緒に仕事をして、正体をばらさないようにするにはいろいろと大変なのだ。
 妖怪としての力を使わないようにするとかいうのはともかく、妖怪は基本的に年を取らない。人間に化けることができる妖怪は多いが、その人間の姿でも自然に年を取る、ということができないのだ(できる妖怪もいるが、少数派だ)。
 なので、妖怪としてはあまり長い間ひとつところにいることなく、次から次へと仕事を変えねばならない。住処を変え、時によっては顔を変え、戸籍も変えて別人にならねばならないのだ。
 それは不可能ではないし、妖怪たちはそれが容易になるようなネットワークを長い時間をかけて作り上げている――しかし、果てしなく面倒くさい。
 もっと楽に、妖怪たちが無理をせずに、気に入った仕事を長く続けることはできないか――そういう要望に応えるべく動いているのが、この店のオーナー会社、水澤グループなのだ。
 もともと人間の親から生まれ、先祖返りした妖怪が立ち上げたグループで、妖怪の持つ超常能力を普通の人間社会の実生活に役立てることを目標としている。例えば怪力を持つ妖怪は狭い場所での救助活動や破壊活動に便利だし、心を読める妖怪は交渉の場で非常に役に立つ。次元跳躍能力を持つ妖怪は運び屋として使えるし、潜入能力を持つ妖怪は極めて優秀な調査員になれる――
 などなど、妖怪の能力を日常的に利用しながら妖怪に向いた仕事、やりたいと思える仕事をストレスなくやれる環境を与えているのだそうだ。古い妖怪からは批判の声も上がっているが、実際に働いている妖怪たちには歓迎されているらしい。
 祐もそうだと言っていた。祐は本来インドの料理の神様アトゥムラティとして生まれた、それこそ神のごとき料理の腕を持つすごい妖怪なのだが(神も人の想いから生まれた存在、すなわち妖怪なのだ)、人間としての姿が十歳児なのでどこも料理人としては雇ってくれない。仕方なく草の根料理人として世話になっている人に料理を振舞ったりしているところをスカウトされたのだと言っていた。好きな仕事を思う存分できてお金がもらえる、ありがたい――
 祐はそう言っていたのだが、浩にはいまいちピンとこなかった。浩は人間と妖怪のハーフとして生まれ赤ん坊の頃から人間に混じって育てられてきたし、自分を人間だと思っているわけではないが人間とそう違う存在だとも思えない。人間にない特殊な能力がいろいろ使えることは運がいいと思っているが。
 自分も一ヶ月前スカウトされて、このバイトをしているが、浩は別にこのバイトをしたかったわけではない。そこそこ稼ぎはいいし(と言っても浩はまだ高校生なので親に養われている気楽な身分なのだが)、祐のうまい料理を腹いっぱい食えるというのも非常に嬉しい条件ではあったが、浩はもっと単純な肉体労働の方が好きなのだ。
 なのにこのバイトを続けているのは、祐の料理に惹かれたせいもあるが――
 この店のもうひとつの仕事を――噂の要因となっている仕事を、心の底からやりたいと思ったからだ。
「お待たせしました、トム・ヤム・ガイになります!」
 鶏肉のトムヤムスープをテーブルの上に置いて、浩は店の中を見回した。ギャルソンというのは店の中の状態を常にチェックしてなければならないから面倒だ。
 と、小此木浪人――通称ロトが料理を運びながらくいっと顎をしゃくった。そっちに視線をやると、店の隅で、ひどく緊張した風の中年男が手を上げている。
 早足でそちらに向かい、笑顔は練習だけで顔がひきつったので浮かべずに、少しだけゆっくりと問う。
「お待たせいたしました。お決まりでしたらお教えください」
 注文表を取り出しながら問うと、中年男はがちがちに固まりながらやや掠れた声で、小さくこう言った。
「―――釈迦とサタンにドモヴォーイが供した料理をください」
「!」
 浩は大きく目を見開き――こっそりガッツポーズをとる。
 もうひとつの仕事が、やってきた。
「お客様、こちらへご移動願えますか?」
 浩はその客を奥の部屋に案内する。厨房の脇にある小さな部屋。ここは、もうひとつの仕事のために用意された待合室なのだ。
「少々お待ちください」
 客をソファに座らせて、足早に部屋を出て厨房に向かう。こっちの仕事で、客から話を聞くのは祐に任せることになっているのだ。
 祐はカルパ・タルーの中で最も――というか、常識外れなほどに人から話を聞くのがうまい。営業時間中は一番忙しいシェフという役職についているにもかかわらず、それ以上に見かけは十歳児にもかかわらず、彼の人を和ませる雰囲気と口のうまさは度外れているのだ。
「祐さん、仕事の客」
「……了解」
 ちょうど作業の合間だったらしい祐は(次から次へ客は来ているのだが、祐の料理を作る早さは異常なほど常識外れなのだ)ふう、とひとつため息をついて小部屋に向かう。祐は料理人としての仕事に全精力を注ぎたいので、こっちの仕事はあまり嬉しくないのだそうだ。
 だがそれでもやらないわけにはいかない。こっちの仕事も契約には入っているし、なによりこれは自分たち妖怪にとっても、困っている人間にとっても必要な仕事なのだから。
 小部屋に入っていく祐を見送り、浩はこっそり覗き穴から中をのぞいた。こっちの仕事の話を聞いておくのはちゃんと許可されているのだ。
「お待たせしました」
 優しい声で(またこの声が柔らかくて優しいいい声なのだ)言う祐に、中年男はぎょっとしたようだった。そりゃたいていの人は待っていろと言われたら次出てくるのはそれなりの地位にある人間だと想像するのに、こうも可愛らしい十歳児じゃ驚きもするだろう。
「き、君は………?」
「お話は僕がうかがうことになっております。当店の責任者、箕輪祐です、以後お見知りおきを」
 流れるような言葉遣いで祐は言う。きっと顔にはにっこりと笑みを浮かべているのだろう。
「し、しかし、君のような子供が、責任者………? 本当かね?」
「不安に思われるのはもっともですが――僕は子供と言われるほどの年ではないんですよ。常識では考えられない事態には、常識では考えられない力を持つ存在が必要なもので」
「………まさか、君は、年を取っていない………とか?」
 おそるおそる聞いた中年男に、祐は答えない。(たぶん)笑顔を浮かべながら、中年男の顔を見ているだけだ。
 中年男はさーっと顔から血の気を引かせて、それから勢い込んで頭を下げた。
「お願いします! 私を、私を助けてください! 私は……もう、どうすればいいかわからないんです………!」
「大丈夫です、篠崎さん。あなたが無事これからも生きていけるよう、僕たちは全力を尽くしますから」
「な、なぜ私の名前を……」
 くすり、と祐が笑う音が聞こえた。
「大丈夫、そうそう意味もなく人の心を読んだりはしませんよ。あなたの名前付きの携帯のストラップが、ポケットから出ていますので」
「は……これは……失礼しました」
 目を白黒させながらそう言う篠崎に、祐は言う。
「あなたはたぶん今今まで出会ったことのない事態に混乱されていると思います。苦しんでいらっしゃると思います。ですが、僕たちは今まで何度もそういう事態に出会い、そして解決してきました。あなたが自らに恥じるところがないのなら、僕たちはどこまでもあなたをお助けします。大丈夫。信じろと言われて信じていただけるとは思えませんが、僕たちはあなたを助けます」
 するりと心の中に入ってくる澄んだ声。きっと顔は真剣な瞳に口元にだけ優しい笑みをのぼらせているのだろう。
 祐の顔と雰囲気でこれをやられると、抵抗できる人間はほとんどいない。篠崎は勢い込んでうなずき、叫んだ。
「私を、あの化け物から救ってください………!」
 祐はうなずいた。それがカルパ・タルーのもうひとつの仕事――妖怪たちを普通の仕事で働かせつつ、妖怪絡みのトラブルに対処させるという仕事なのだから。
 そして、それがカルパ・タルーの噂のひとつでもあるのだ――『不思議なことでどうしようもなく困ったことがあると、カルパ・タルーである注文をすればなんとかしてくれる』という。

 始まりは篠崎が、お気に入りのソープランドで新しい娘を指名したところから始まるのだという。
「写真見たらすごい美人で、そのわりに値段も安かったし、一目でこれだと思って」
 実際に会っても美人だったし、プレイも上手だったから大いに満足したのだが、別れ際にこんなことを言われた。
「『浮気しないでね』って、怖いくらい真剣な顔で言われたんです……」
 ソープ嬢にはそぐわない台詞ではあるが、男としてはなかなか嬉しい台詞だ。そう思った篠崎は「しないしない」と軽く答えてその場は終わったのだが――
「次にそこのソープランドに行って、別の娘を指定した夜――そいつが来たんです……」
 夜。そろそろ寝るか、と布団を敷いていると―――
 かり。かりかり。
 アパートの扉をひっかく音がする。
 篠崎の部屋は1Kの普通の独身者用のアパートだ。鼠など出たことはないし、動物の類には縁がない。
 奇妙だなと思いつつとりあえず外を覗き窓でのぞいてみたのだが、誰もいない。扉を開けようかと思ったとたん、声が聞こえた。
「『憎い……憎い……』って、地獄の底から聞こえてくるみたいな、暗くて怖い声でした……」
 篠崎はぞっとしてその場に固まった。声はすぐそばから、扉のすぐ向こうから聞こえてくる。
『憎い……憎い……』
『私を裏切ったあなたが憎い……』
『浮気しないと言ったのに、私一人だと言ったのに』
『憎い、憎い、殺してやる、殺してやるぅぅ……』
 その声のあまりの恐ろしさに、篠崎は扉を開けることなどとてもできず布団に飛び込んだ。その声と音は朝まで続き、篠崎はとても眠ることなどできなかった。
 朝、声と音がしなくなって、外に出ないわけにもいかずおそるおそる外に出て、絶句した。木製の扉にはいっぱいに、引っかき傷がついていたのだ。
「心当たりなんて全然なくて、とにかく大家さんに報告しなきゃって」
 大家はアパートの前に一戸建ての家を建てているのだが、篠崎の報告を聞いて目を丸くした。
「『そりゃおかしい。昨日は友達と縁側で飲んでいたが、住んでる人間以外がアパートの方へ行く姿なんてまったく見てないよ』って言うんです……」
 その日から、篠崎は毎日毎夜、女につきまとわれるような気配を絶えず感じるようになったのだという。
「それに会社にも家にも携帯にも、女の声で『憎い、殺してやる』って繰り返す電話が何度もあって。朝会社に行ったら私の机に血で『憎い、殺してやる』って書かれてて……」
 そして夜は毎夜朝まで扉をひっかく音がする。
 当然篠崎は必死に心当たりを思い出そうとした。そしてようやくあの時のソープ嬢の声だった、と思い出し、そのソープランドに行くと――
「その娘はもうやめちゃったって言われて……」
 だが、相手がわかって篠崎の恐怖は半減した。その娘は体格的に華奢だったというせいもある。
 今日こそ扉を開けてはっきり言ってやろう、と決めて部屋で待ち――
「扉をひっかく音がしたら、すぐ扉を開けました――でも、そこには誰もいなかったんです……」
 篠崎は狐につままれたような気分になって周囲を探した。だがどこを探しても誰もいない。
 とりあえず部屋に戻ると、またひっかく音と声が。扉をすぐ開く、しかし誰もいない。また音がする、誰もいない。音がする、誰もいない――
 そんなことを繰り返しているうちに、篠崎は恐ろしくなってきた。確かに声はするのに、さっきまでしていたはずなのに、扉を開くと誰もいない。
 その怪談じみた状況に、電気をつけたまま布団をかぶると――
「今度はすぐそばで、布団のすぐ近くで笑い声がするんです……」
 馬鹿な。入ってこれるはずがない、扉はちゃんと鍵をかけたはずだ、なによりいつも開ける時軋む音を立てる扉が少しも音を立てなかったじゃないか。
 だが声は間違いなくすぐ近くで聞こえる。くすくすくす、という女の笑い声。
 自分の周りを歩き回る、きし、きしという軋み音。女の息遣いさえはっきり聞こえた。
 目を開けられず、必死に目を閉じて震える。爪のような、だがそれにしてはひどく濡れたものでつうっと頬を撫でられた。
『憎い人』
 その声は笑みを含んでいた。
『殺してやるよ、殺してやる。心臓を貫き、首をもぎ、四肢をちぎりとって』
 つぅ、と濡れたものが体を這う。
『苦しみ悶えさせながら殺してあげるよ。憎い、愛しい人』
 怖い、怖い、怖い怖い。だがこのままじゃいけない、どうせ目を開ければたかが女一人なんだ、男の力にはかなわない――
 そう必死に自分を励まし、思いきって自分の顎を触られている瞬間に、篠崎は目を開け――
 たが、そこには誰もいなかった。さっきまで確かにすぐそこにいたのに。
 篠崎は、目を回して気絶した。

「――翌日、会社を休んで必死にネットでこういうことを相談できる人を探して……ネットのその手の掲示板でここに助けを求めて解決してもらったっていう人がいたから……どうかお願いです、助けてください! このままじゃ家に帰るに帰れないんです!」
 テーブルに頭がつくほど頭を下げる篠崎に、祐はしばらく間を置いてからうなずいた。
「わかりました。今日はこれからなにかご予定は?」
「え……いえ、そんなものは」
「では、営業終了時間までお待ちいただけますか? お帰りになる時にご一緒させていただければ、僕たちがその声に対処できると思うので」
「え……今日、ですか?」
「早い方がいいと思いますが。なにかご都合の悪いことでもありますか?」
「いいえ! いいえ、ただそんなに早く来ていただけるとは思っていなかったもので。……ありがとうございます!」
「お気になさらず。営業終了時間まであと二時間ですが、待っていただけますか?」
「もちろんです! ……で、あの。お礼はいかほど……」
 声を小さくして聞いてきた篠崎に、祐は笑った。
「こういった事件に関しては特別にお礼はいただいていません」
「え!? あの、解決してもそうなんですか!?」
「はい。こういったことは当店ではあくまで食べに来ていただける方へのサービスという形を取っておりますので」
「あの、でも、私はこの店に来るのは初めてなんですが」
「それでは今日お食事していっていただけますか? そうすればあなたは当店の大切なお客様です。お客様のご要望には、誠心誠意応えさせていただきますよ」
 きっと祐は今天使みたいな笑顔を浮かべている、と浩は思ってくくっと笑った。
「それでは……浩くん? このお客様にメニューを持ってきて差し上げるようにね?」
「はいっ!」
 思わず扉の向こうにそう答え、浩はすっとんでメニューを取りに向かった。祐の声はあくまで穏やかだが、祐が盗み聞きを禁じてはいないものの好きでもないことは知っていたからだ。

「はい、浩くん。今日もよく頑張ったねのまかない」
 目の前に並べられた数々の料理を見て、浩は思わずよだれを垂らした。祐は通常に倍する食料が必要な自分のために、店に来た時食事時間店が終わったあと、とたくさん飯を作ってくれるのだ。
 そしてそれがいちいち極上にうまいのだからもうこたえられない。浩は「いっただっきまーす!」と叫んで食事をかっこんだ。
「うまっ! うまいよ祐さん!」
「ありがとう。誰も取らないからゆっくり食べていいよ」
「取る! ステファンさん人の食いもんしょっちゅう横取りすんじゃん!」
「人が食ってるとうまそうに見えるからなぁ……っと」
「させるか!」
「ほら、食事しながら喧嘩しない!」
「それよりさー、祐さん。例の客の話してよ。今も待たせてるんでしょ?」
 今ここ――厨房には、カルパ・タルーの従業員が全員集まっている。妖怪に関係する仕事は全員出張ることになるのがほとんどなので、営業時間中に来た客の話を営業終了後に説明することになっているのだ。
 祐はうなずき、てきぱきと篠崎の言ったことを話すと、こう付け加えた。
「たぶん鬼女の類だと思うんだけど、濡れた爪っていうのが少し気になるかな」
「鬼女ってどんな妖怪?」
 浩がそう言うと、ロトが笑った。
「お前父親は中国系とはいえ日本生まれ日本育ちのくせに鬼女も知らないのー? 超メジャー妖怪じゃん」
「んだよっ! だったらお前知ってんのかよ、その妖怪の詳しい能力とか!」
「知るわけないじゃん。俺は英国生まれのポルターガイストだもーん」
「のやろ、偉そうに……」
 浩は食べながらロトを睨む。ロトは日本国籍を持ち日本風に名前を変えてはいるが、生まれは百年前のイギリスだ。ポルターガイスト現象に対する恐怖と好奇心が形を取ったもので、無生物や生物をも動かす能力を持つ。コンピュータに強く、コンピュータを操る能力も持っており、カルパ・タルーの情報収集役でもあるのだが、生まれのせいか人をからかうのが大好きないたずら野郎なのだ。
 俺より背ェ高いくせしゃあがって、と浩は軽く殴る真似をした。
「メジャーっていうか……正確には、鬼女っていう種族がいるわけじゃないんだよ。鬼……人の妄執や憎悪が形となった妖怪の中で、特に女性特有とされる想い≠ェ凝ってできた妖怪を鬼女と呼ぶんだ。この場合は、たぶん悋気と独占欲の鬼だろうね」
「へー、そうなんだー」
「てめぇ知らなかったのかよ!」
「どんな奴だ?」
 ステファンの問いに、祐は少し眉をひそめた。
「生まれてからどれぐらい経ってるかによるけど……総じて思い込みが激しく、人の話を聞かない面がある。能力はもちろん十人十色だけど、総じて白兵戦闘が得意な妖怪が多い、かな」
「へー、じゃあ俺の出番だな!」
 浩ははりきって自分を親指で指す。浩は虎人――中国系の獣人妖怪と日本人とのハーフで、その能力は身体能力に集中している。白兵戦闘においてはこの中でぶっちぎりで最強なのだ。
「まだはっきりした正体はわからないけどね。でも、戦いになる可能性は確かに高い……たいていこういう妖怪は人を守ろうとする妖怪が出てくると戦いを挑んでくることが多いから……」
 祐は沈んだ口調で言った。祐は根っからの平和主義者で、人だろうが妖怪だろうが死ぬのも傷つくのも見たくないというひとだ。こういう力づくでもなければやめてくれなそうな相手というのは気が重いのだろう。
「でも、放っといたらあのおっさん殺されちゃうかもしれないんだろ?」
「うん……鬼女にとっては人になにかを仕掛ける時最終的に食い殺すのが普通だからね。でも、浩くん。自分から戦いを挑んでいくようなことはしないでね? 戦わないですむならその方がずっといいんだし……君も危ないよ」
 心配そうな口調でそう言われ、浩は照れくさくなって鼻を擦った。このひとはきっと自分と違い、戦う力はほとんど持っていないのだろう。華奢で小さなからだとあいまって保護欲が盛り上がり、浩はどんと胸を叩いて言った。
「大丈夫、祐さんのことは俺がちゃんと守ってやっから」
「え……うん、ありがとう」
 きょとんとされてから微笑まれ、浩はまた照れくさくなって頭をかく。少しは慣れたつもりではあるが、祐の笑顔というのはやっぱり見てるこっちを問答無用で幸せな気分にしてしまうのだ。
「うわ、奥様、お聞きになりまして? この人自分の三十倍近く生きてる相手に向かって守ってやるとか言ってますわよ」
「自分が喧嘩が強いからっていい気になってますわね」
「うっせーな、言っとくけどてめーらは守んねーからな!」
 奥様ポーズで喋りあうロトとステファンに怒鳴る。どうせこいつらはそう簡単に傷つきはしないだろう。
「ひっどーい、差別よ差別」
「ブーブー。ちょっと可愛い子見るとすぐこれなんだから」
「キモいからオカマ喋りすんな!」
「とにかく……まずは篠崎さんの家に行って、やってきたひとと話をしてみよう。それでどうしても篠崎さんを殺すという意志を曲げてくれないと言うんだったら、生まれ変わってもらうのもやむなしってことでいい?」
「了解!」
「ラジャーっ」
「オーケイ、ボス」
 カルパ・タルー従業員たちは了解の意思を伝えた。
 妖怪というのは普通死んでもその妖怪に対する想いが存在していれば蘇ることができる。数十年の月日さえかければ。
 なので、妖怪と人間どちらの命を取るか、という時に、特に理由がなければ人間を優先する、というのは人間を妖怪同様に尊重する妖怪共通の認識だった。
 妖怪の中には人間をオモチャや餌としか思っていない存在もいるし、逆に人間を過剰なまでに大切にする者もいるが、人間と妖怪の価値は同等、というのが妖怪の間では多数派だ。
「さて、それじゃ篠崎さんのところへ行こうか。……きっと待ちくたびれてるよ」

「……時間としては、もう来てる頃かもしれません」
 部屋に入るなり、篠崎がそう震える声で言った。
 言っていた通り1Kの、独身男性らしい汚いアパート。その中に五人入るのはきつかったが、自分と篠崎以外は全員涼しい顔をしている。
「ま、そう怖がりなさんな。どうせなるようにしかならないんだ、ほれ一杯」
「ステファンさん! 仕事中に酒呑む気かよ」
「忘れたのか? 俺は酒で酔っ払うことはない。第一俺は酒がなきゃ役に立たないんだよ」
「あ……そっか」
 ステファンの正体はバッカスの眷属、ギリシャの酒神だ。酒にまつわる様々な能力を使うことができるが、その能力の大半は酒がなければ役に立たない。もっとも、酒を無から作り出すこともできるので、いつも酒を持ち歩かなければならないわけではないが。
 篠崎は渡されたスキットルボトルを恐々と見つめていたが、やがて意を決したようにくいっとあおり、目を丸くした。
「いい酒ですね、これ……」
「俺はまずい酒ってのは許せない質なもんでね。酒の材料はどんなもんだってうまい酒になりうる可能性を秘めてるんだ、それをまずく作っちまうなんてバッカスに対する冒涜さ」
 篠崎は不安からか、やたらと酒をあおる。ステファン自身ももうひとつボトルを取り出し、ぐいぐいとあおった。
 祐はなぜか持ってきた小鍋とハーブらしきものを取り出し、料理らしきものを始めた。ロトは小型のパソコンを取り出して、ぽちぽちといじっている。浩は一人、手持ち無沙汰を持て余して天井を見上げた。
 ――と。
 かりかり、と扉がひっかかれる音が聞こえた。
 はっと身を起こそうとして、祐に制される。全員動きを止めて待つこと数秒、声が聞こえた。
「憎い……憎い、憎い、憎い……殺してやる、殺してやるよぉぉ………」
 ――来た!
 ばっと祐を見ると、祐はすっとステファンに合図を送っていた。ステファンはふっと吐息を篠崎に吐きかける。
 篠崎がぱったりと倒れるのを見て浩は驚いたが、すぐ思い出した。ステファンは少しでも酒が入っている人間を眠らせることができるのだ。こっちの正体がバレることのないようにするためだろう。
 祐はふぅ、と料理していた小鍋に向かって息を吹きかけ火を消すと、外に向かって言った。
「今この部屋の中で起きているのは、妖怪だけですよ」
 音と声がやんだ。
「少しお話しませんか? あなたがなにをしようとしてるのか、教えてほしいんです。あなたがどういう存在か、なにを求めているのか――それを教えてくれませんか?」
「……あんたらはなんだい。その男に助けてくれとでも言われたのかい」
 低く、湿った、暗い声。なのに女の声だというのははっきりわかる。
「はい。ですが僕たちの目的は必ずしも篠崎さんの願いを叶えることではありません。人間と妖怪双方が、自分の望ましい結果を得ることです。どうか話に応じてはくれませんか」
「……全員正体を現して外に出ておいで。外で話をしようじゃないか」
「篠崎さんも一緒でかまいませんか?」
「かまわないよ」
 浩は慌てて祐に駆け寄り、囁いた。
「祐さん! このおっさん連れてってどうすんだよ、もしあいつが襲いかかってきたら危ねぇだろ!?」
「ここに置いておく方がもっと危ないよ。相手が体の一部を分離させる妖力を持っていたらどうするの?」
「あ……そっか」
「いざという時には体で庇うしかない。手伝ってね、浩くん」
「はい」
 浩はうなずき、軽く息を吸うと妖怪に姿を変えた。
 妖怪の定義としては人間への変化を解いた、ということになるのだろうが、浩としては人間の姿も本来の姿だという気がするのでべつだん開放感はない。ただ、妖怪の姿になると虎人間になるので鉤爪と牙と尻尾が生え、筋力が桁違いに増す。なので違った自分になったという気はした。
 一応服は脱いでおく。妖怪になっても浩の体格は人間時とまったく変わらないが、これから戦いになる可能性が高いのだから服が着れなくなっては困る。なにより尻尾が苦しいのだ。
 祐も服を脱いでから妖怪に変わった。祐も体格はほとんど変わらないが、肌が赤銅色に変わり、髪が伸びて金色になり、右手には包丁がいつの間にか握られているのが間抜けだが、神話に出てくる人物のようにどこからともなく布とインド風のきらきらしい衣装が現れ、神々しいと言ってもおかしくないような姿になっている。
 ロトは服を着たまま変身――するやいなや服がとさっと足元に落ちた。ロトの妖怪としての姿は幽霊のようなぼやっとした白い人型のもやで、ものも持てなければ相手を殴ることもできないのだ。その代わり自分も通常の方法では傷つかないが。
 ステファンも服を着たまま変身し、角と蹄のある下半身が獣の人間に変わった。彼の場合は服が着れなくなってもまた買えばいいと考えているのだろう(彼は度外れた浪費家だ)。
 篠崎はステファンが抱え起こした。ステファンの妖術で眠らされた人間は、通常の方法では起きることはない。
 浩が先頭になって外に出て、アパート前の広場で相手と対峙する――その瞬間、ぞくっと背筋に悪寒が走り、考えるより先に叫んでいた。
「ステファンさん、下!」
「!」
 ステファンがばっと篠崎を庇う。ぱあっと血が辺りに飛び散り、ステファンがぷうっと口に含んだ酒気を吐き出した。
 さぱぱぱっ、と酒気を避けてなにかの液体が浩たちの足元を移動し、数歩先で盛り上がって人型を作った。
「ちっ! 殺せると思ったのに」
「……あなたは……最初から殺すつもりで?」
 祐の静かな、しかし底に確かな怒りを秘めた声に、液体でできた鬼女はごぼごぼとした笑い声を立てた。
「あはは……一度目をつけた男を殺さないで逃がすなんてできるもんか。あたしは浮気な男への恨みから生まれた女。浮気する男はみんなあたしの爪で引き裂かれると決まってるのさ」
「ソープランドで働きながら浮気するなという約束を迫るのは筋違いだと思うがね。お前は要するに男を殺したいだけだろう。生まれ持った衝動と戦おうって気はないのか」
 ステファンの冷静な言葉に、また鬼女は笑う。
「あると思うのかい! 一度あたしの中へ精を吐き出した男を殺す、それがあたしにとっちゃなによりの快感だって言うのにさ!」
「うわ……もしかしてあの女、女の膣分泌液でできてんじゃないの? 中に男の精液が見えるよ」
 嫌そうに口にするロト。浩は一歩前に出た。
「こうなった以上、やるしかねぇよな、祐さん」
「……浩くん、相手の体は液体だ。浩くんの爪じゃほとんどダメージを与えられないと思うよ」
「え!?」
「あっははは、そうさあたしを殺すことはそう簡単にはできないよ!」
 笑う鬼女に、祐はふぅ、と、深い深いため息をついて、言った。
「男性を殺すのを絶対にやめる気はないの?」
「ないね! 邪魔をするなら誰だって殺してやるさ!」
「絶対の、絶対に?」
「絶対に! あたしが生きてる限り殺し続けてやるよ!」
「どんなに頼んでも、微塵もやめる気はないの?」
「しつこいね! ないよ!」
 祐はもう一度深くため息をつき――その瞳を透徹したものに変えて、きっぱり言った。
「それならば、君は僕が殺す。――やりたくはないけど」
「な……」
「みんな、下がってて」
「でも……!」
「はいはいコーちゃん祐さんの言うこと聞きまちょうねー」
「お前さんがいたってなんの役にも立たないんだよ」
 ロトとステファンに言われ、渋々浩は数歩だけ後ろに下がる。鬼女はごぼごぼと音を立てると、存外素早い動きで襲いかかってきた。
 だが、それより祐の方が早かった。祐は懐からなにか薬のようなものを取り出し、ひょいとそれを口の中に含んだ――そしてそのとたん。
 ゴオオォォォッ!!! と祐の口の中から業火が噴き出したのだ。
「辛―――――――――ッ!!!!」
 その猛烈に太い、かなり離れているのにこっちまで熱が伝わってくるほど高熱の炎は、狙い違わず鬼女にぶち当たり、鬼女を一撃で蒸発させた。
 その一瞬の出来事になにが起こったか飲み込めず呆然とする浩の前で、祐はけほけほと可愛らしく咳き込みながら言う。
「やりたくないって言ったのに……」
「よっしゃお仕事完了ー! 帰って呑むかー!」
「ステさん俺送ってってよー、俺の下宿こっからじゃ遠いんだもん」
「甘えるなバーカ、んな面倒くせぇこと俺がすると思うか?」
 勝手に盛り上がるステファンとロト。浩は呆然と祐を見つめ、祐に気づかれてにっこり笑ってこう言われた。
「もう大丈夫だよ、浩くん」
 ………そりゃねぇだろ。
 浩はぐったりへたへたと、その場に崩れ落ちた。

「コーちゃんはお馬鹿さんだねぇ。祐さんは神様なんだよん、弱いわけないでしょーに」
 翌日の日曜日の朝(カルパ・タルーの定休日は水曜日だ)、一緒に店の掃除をしながらロトが笑った。
 実はこの仕事は昨日で二回目だった浩はぶすっとモップをかけながら言う。
「……神様ったって料理の神様じゃん」
「料理の神ってことは台所の神。これすなわち火の神ってことでもあるんだってさ。祐さんからの受け売りだけど」
「……それであんな炎吐けるわけ?」
「そ。あの炎はすごいよー、俺外れた炎がコンクリートの壁の分厚いの蒸発させるとこ見たことあるもん。人間だって食らったら蒸発だよ。妖怪だってあれもろに食らったら弱いのだったら一撃死だね、マジで」
「………へー」
 浩はぶすっと、わっしゅわっしゅとモップをかけた。別にそれが悪いというのではないが――
 あんなに華奢で、優しくて。料理がうまくて。そんな人だから当然のごとく弱いと思ってて。
 だから守ってやるなんて言って―――
「うがー!」
 あああ自分が恥ずかしいぃぃ! と浩はモップを放り出して頭を抱えた。
「まー、妖怪は見かけじゃわかんないってことだね。勉強になったでしょ、祐さんを弱いと思いこんでたコーくん?」
「……なったよ」
 くっくっと笑って、ロトは言った。
「だってさ、祐さん?」
「へ!?」
 慌てて立ち上がり店の奥を見ると、そこには祐が立ってじっとこちらを見つめていた。
「あ、あの、祐、さん……」
 思いっきり慌ててわたわたする浩を、祐はじっと見つめる。
 どうしようどうしようどうしよう、とパニックに陥る浩。祐はじっと、感情の読めない目でこちらを見ている。
「祐、さん……」
「浩くん」
 祐はつかつかと歩み寄り、拳を作り――
 ぽん、と軽く浩の頭を叩いた。
「掃除サボっちゃだめっていつも言ってるでしょ」
「へ!?」
「お客様にちゃんとおいしくご飯を食べてもらうためには、こういうところからきちんとしてかなきゃだめなんだよ。終わるまできちんときれいにお掃除。終わったら僕に報告。わかった?」
「は、はいっ!」
「よろしい」
 そこまで厳しい顔で言うと、顔をにっこりと、優しく笑ませ。
「頑張ったらあとでおやつ作ってあげるからね」
 ぽんぽん、と頭を撫でるように叩いて厨房へと戻っていく。
 それをちょっと呆然として見送り、浩は叫んだ。
「うおおー!」
「なになにコーちゃん急にでかい声出して」
「やるぞー俺は。強くなる! あの人守れるくらい強くなってやる!」
「はぁ? コーちゃんってそういう趣味の人だったの?」
「うっ、い、いいだろ別に。水差すな!」
「いやコーちゃんがいいってんなら別にいいんだけどさ」
「だってよ……祐さん確かに男だけど……」
「男だねぇ。人間の姿は小学生だけど」
「俺の母ちゃんよりよっぽど母ちゃんらしいんだもん……」
「……母ちゃん?」
 ロトはなぜかじと目で浩を見て、やれやれと肩をすくめ掃除を再開した。
「アホらし」
「んだとロトっ、なにがアホらしいんだ!」
「いやいいよ別に。頑張れば? 祐さんを守れるようになるには相当の修行が必要だと思うけどさ」
「おう、頑張るぜっ! とりあえず今は掃除だ! 頑張ったらおやつ作ってくれるって言ったもんなっ」
「はいはい。その調子で皿の四枚持ちもできるようになろうね」
「う、うるせー!」
 雨上がりの六月。今日も空は青く、この店の空気は優しい。
 来店した客と自分たち自身に、ありったけの幸福を――そう願う妖怪が一人いるからだ。

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キャラクターデータ
料理の神アトゥムラティ(箕輪祐)
CP総計:999(未使用CP1点)
体:10 敏:16 知:18 生:12/92(0+80+125+20+40=265CP)
基本移動力:7 基本致傷力:1D−2/1D よけ/受け/止め:7/10/- 防護点:8(32CP)
人間に対する態度:友好(−20CP) 基本セット:通常(100CP)
特徴:あきらめない(10CP)、記憶力1LV(30CP)、意志の強さ1LV(4CP)、カリスマ5LV(25CP)、美声(10CP)、慈悲深い(−15CP)、誠実(−10CP)、平和愛好/無垢な相手は害せない(−10CP)、誓い/できるだけ多くの人においしいものを食べさせる(−5CP)、誓い/お客様には誠心誠意尽くす(−5CP)
癖:作った料理は必ず味見する、どんなジャンルでもうまければなんでも作る、料理を粗末にされるとキレる、一度会った人はもう友達、どんな料理も一度口に入れてから判断する(−5CP)
技能:調理30(12CP)、外交20(2CP)、言いくるめ20(3CP)、動植物知識20(4CP)、手術、原子物理学、生化学、呼吸法、言語学、生理学、遺伝学全て15(0.5CPずつ計3.5CP)、医師、異種族学、嘘発見、会計、化学、鑑識、経済学、考古学、航法、催眠術、獣医、情報分析、植物学、診断、心理学、人類学、数学、生態学、戦術、地質学、天文学、毒物、哲学、動物学、物理学、文学、法律、歴史全て16(0.5CPずつ計14CP)、異生物学、オリエンテーリング、気象学、調査、記録、指導、手話、神秘学、尋問、生存/砂漠、森林、島・海岸、山岳、商人、追跡、読唇術、爆発物、紋章学、家事、接客全て17(0.5CPずつ10CP)、礼儀作法、探索、身振り、地域知識/インド、日本、世界、船乗り全て18(0.5CPずつ計3.5CP)、演劇19(0.5CP)、格闘15(0.5CP)、運転/乗用車14(0.5CP)、水泳16(0.5CP)、社交10(0.5CP)、日本語、英語、ラテン語、中国語、仏語、独語、イタリア語、露語、アラビア語、ギリシャ語、インドネシア語、ベトナム語、スペイン語、チベット語、ポルトガル語全て18(0.5CPずつ7.5CP)
外見の印象:異界の美(10CP) 変身:人間変身(瞬間+20%、18CP)
妖力:超技能/調理(10CP)、衣装/台所用品(10CP)、追加疲労点21LV(63CP)、オーラ視覚2LV(相手が心の奥でどんな料理を求めているかわかる+10%、22CP)、透明感知(ハーブが必要−20%、12CP)、食べられる1LV(一度食べたものならどんな食物でも出せる+100%、食べた人間のおいしいという言葉で補充できる+50%、材料のみ−50%、合計+100%。10CP)、無生物との会話(台所用品のみ−20%、24CP)、超味覚(5CP)
妖術:激辛火炎20-18(エネルギー=熱属性、妖怪時のみ−30%、瞬間+20%、扇形1LV+10%、手加減無用−10%、あらかじめ準備した薬が必要−30%、薬を口の中に入れ飲み込む動作が必要−20%、使うと一日味覚がおしゃかになる−10%、合計−70%。36+16CP)、感情知覚1-16(2+2CP)、性格探知3-16(9+2CP)、成分探知11-16(11+2CP)、思考探知10-16(40+2CP)、生物探知15-16(妖怪時のみ−30%、調理道具と材料が必要−10%、調理する動作が必要−20%、合計−60%。24+2CP)、妖力探知15-16(同左、−60%。24+2CP)、状態探知15-16(同左、−60%。18+2CP)、人払い15-16(左に加えて匂いがわからない相手には無効−10%、合計−70%。9+2CP)、治癒15-16(病気治療もできる+10%、摂取のみ−30%、調理道具と材料が必要−10%、調理する動作が必要−20%、合計−50%。23+2CP)、記憶操作5-16(左から病気治療もできるを削除、調理技能判定が必要−15%を追加、−75%。7+2CP)、感覚暴走5-16(同左、−75%。5+2CP)、魅了1-16(同左、−75%。2+2CP)、感情刺激・封印5-16(同左、−75%。7+2CP)、破術2-16(精神操作系全てに有効。同左、−75%。5+2CP)、感覚麻痺1-16(同左、−75%。2+2CP)、心理強化5-16(左に加えて回復にも使える+50%、合計−25%。30+2CP)、美化1-16(効果が永続+100%、摂取のみ−30%、調理道具と材料が必要−10%、調理する動作が必要−20%、疲労10点−50%、集中三倍−30%、調理技能判定が必要−15%、合計−55%。3+2CP)
弱点:苦手/想いのこもっていない食物/1分ごとに2D点ダメージ(−15CP)、依存/自分の作った料理を食べておいしいと言ってもらう(一日ごと、−30CP)
人間の顔:カルパ・タルーのシェフ、容貌/美しい(10CP)、身元/偽造戸籍(5CP)、財産/快適(35CP)、住居/カルパ・タルー(たまり場。店屋レベルの大きさ10CP、メンバー登場確率に+6する10CP、まったく自由な出入り−10CP、記憶操作の妖術が付与されている(1-16、従業員の年齢を忘れさせるだけ−50%、3+24CP、合計37CP。そのうち30CPを負担)
ネットワーク:カルパ・タルー(複合ネットワーク、ときどき使命を下される、5CP)

虎人(広里浩)
CP総計:599(未使用CP1点)
体:50(人間時13) 敏:17 知:9 生:13/93(139+100−10+30+40=299CP)
基本移動力:7.5+1.25 基本致傷力:5D+2/8D−1(人間時1D/2D−1) よけ/受け/止め:9/14/- 防護点:8(妖怪時のみ−30%、23CP)
人間に対する態度:友好(−20CP) 基本セット:通常(100CP)
特徴:意志の強さ1LV(4CP)、未成年(−4CP)、性格傾向/負けず嫌い(−2CP)、敵/ちょっとした集団/まれ(暴走族、−10CP)、直情(−10CP)、かんしゃく(−10CP)、正直(−5CP)、愛好症/猫グッズ(−5CP)、アレルギー/石鹸(−5CP)、義務感/友人(−5CP)、恐怖症/医者/軽度(−5CP)
癖:猫グッズを集めていることは絶対秘密、いつもふてくされた顔をしている、でも感情は素直に顔に出す、祐の料理が大好き、ちょっぴりマザコン……というか母性に憧れる傾向がある(−5CP)
技能:空手18(8CP)、ランニング10(0.5CP)、軽業14(0.5CP)、水泳16(0.5CP)、登攀15(0.5CP)、忍び15(0.5CP)、投げ14(0.5CP)、接客8(1CP)
外見の印象:異界の美(10CP) 変身:人間変身(瞬間+20%、18CP)
妖力:鉤爪3LV(妖怪時のみ−30%、28CP)、超反射神経(60CP)、加速(妖怪時のみ−30%、疲労9点−45%、合計−75%。25CP)、闇視(25CP)、異類会話/哺乳類(15CP)、牙(妖怪時のみ−30%、4CP)、跳躍力1LV(妖怪時のみ−30%、7CP)、超嗅覚(15CP)、完全平衡感覚(必要器官/ヒゲ/−6で命中−10%、妖怪時のみ−30%、合計−40%。9CP)
妖術:なし
弱点:腹ぺこ1LV(−10CP)
人間の顔:カルパ・タルーのバイト兼某工業高校に通う高校生、容貌/美しい(10CP)、身元/本物の戸籍(15CP)、財産/貧乏(15CP)、我が家/普通の持家(5CP)、足手まとい/25CP/まれ(正体を知らない、つきまとってくる後輩、−9CP)
ネットワーク:カルパ・タルー(5CP)

ポルターガイスト(小此木浪人)
CP総計:599(未使用CP1点)
体:10 敏:16 知:17 生:12/62(0+80+100+20+25=225CP)
基本移動力:7 基本致傷力:1D−2/1D よけ/受け/止め:7/10/- 防護点:0
人間に対する態度:友好(−20CP) 基本セット:通常(100CP)
特徴:数学能力(10CP)、トリックスター(−15CP)、好奇心3LV(−15CP)、トレードマーク/いたずらしたあとに物で笑顔を作る(−5CP)、強迫観念/浪費家1LV(−5CP)、嫌な行動/人をしょっちゅうからかう(−5CP)
癖:いつも面白がるような笑みを浮かべている、暇な時はコンピュータをいじっている、ネットではそっけない、オフでは愛想だけはいい、仕事する時だけは一応真面目(−5CP)
技能:格闘15(0.5CP)、忍び14(0.5CP)、言いくるめ15(0.5CP)、数学17(0.5CP)、裏社会15(0.5CP)、探索16(0.5CP)、鍵開け15(0.5CP)、嘘発見14(0.5CP)、手品13(0.5CP)、尾行15(0.5CP)、電子機器/コンピュータ、保安システム共に15(0.5CPずつ計1CP)、電子工学/コンピュータ、保安システム共に14(0.5CPずつ計1CP)、コンピュータ操作16(0.5CP)、コンピュータ・プログラミング17(0.5CP)、コンピュータ・ハッキング18(2CP)
外見の印象:びっくり(5CP) 変身:人間変身(15CP)
妖力:幽体(オフにできて特徴も隠せる+50%、妖怪時のみ−30%、合計+20%。60CP)、透明(同左、+20%。36CP)、磁気感知(5CP)、電気信号感知(妖怪時のみ−30%、必要器官/震える頭/−6で命中−10%、合計−40%。15CP)、電波発信1LV(3CP)、電磁侵入1LV(妖怪時のみ−30%、必要器官/震える頭/−6で命中−10%、合計−40%。36CP)、追加疲労点1LV(3CP)
妖術:混乱する世界5-15(エネルギー=精神属性攻撃、範囲に影響+50%、踊る・故障と独立連動+40%、瞬間+20%、範囲拡大1LV+20%、妖怪時のみ−30%、抵抗できる−20%、邪気がただよう−20%、世界よ混乱しろ! と叫び両手の指を鳴らさないと使えない−20%、世界はあるがままに! と叫ぶと効かない−10%、必要器官/光る指/−6で命中−10%、合計+20%。36+4CP)、踊り5−15(範囲に影響+50%、攻撃・故障と独立連動+40%、瞬間+20%、範囲拡大1LV+20%、妖怪時のみ−30%、、邪気がただよう−20%、世界よ混乱しろ! と叫び両手の指を鳴らさないと使えない−20%、世界はあるがままに! と叫ぶと効かない−10%、必要器官/光る指/−6で命中−10%、男性には影響半分−10%、六十歳以上の老人には無効−10%、無生物も一緒に踊る±0%、合計+20%。30+2CP)、故障5-15(範囲に影響+50%、踊る・故障と独立連動+40%、瞬間+20%、範囲拡大1LV+20%、妖怪時のみ−30%、邪気がただよう−20%、世界よ混乱しろ! と叫び両手の指を鳴らさないと使えない−20%、世界はあるがままに! と叫ぶと効かない−10%、必要器官/光る指/−6で命中−10%、心理効果−30%、合計+10%。33+2CP)、念動13-15(制御不能−50%、邪気がただよう−20%、合計−70%。16+2CP)
弱点:弱み/聖別された品物の攻撃2LV(−10CP)、依存/いたずらの快感/一週間おき(−10CP)、行為衝動/ストレスを溜め込んだひとを見るといたずらしてしまう(−10CP)
人間の顔:カルパ・タルーのギャルソン、容貌/最高(25CP)、身元/偽造戸籍(5CP)、財産/貧乏(15CP)、我が家/安下宿(1CP)
ネットワーク:カルパ・タルー(5CP)

フォーン(ステファノス・ゲラリス)
CP総計:849(未使用CP1点)
体:11 敏:17 知:17 生:12/102(10+100+100+20+45=275)
基本移動力:7.25 基本致傷力:1D−1/1D+1 よけ/受け/止め:8/12/- 防護点:10(40CP)
人間に対する態度:友好(−20CP) 基本セット:通常(100CP)
特徴:音楽能力5LV(5CP)、戦闘即応(15CP)、美声(10CP)、うわばみ(5CP)、怠惰(−10CP)、お祭り好き(−5CP)、愛好症/飲んだことのない酒(−15CP)、気まぐれ(−5CP)、義務感/友人(−5CP)、強迫観念/浪費家(−10CP)、くいしんぼ(−5CP)
癖:よく食いよく飲むのに太らない、まずい酒を飲んだ時に「バッカスへの冒涜だ」と言う、宮崎アニメが好き、子供は(愛情をもって)いじめる、いつも酒のボトルを持ち歩いている(−5CP)
技能:酒造20(8CP)、酒知識20(8CP)、歌唱20(2CP)、楽器/リュート20(1CP)、楽器/フルート20(1CP)、社交15(4CP)、性的魅力12(0.5CP)、吟遊詩人17(0.5CP)、接客16(1CP)、手品16(2CP)、日本語17(1CP)、言語学13(0.5CP)、英語、仏語、イタリア語、礼儀作法、コンピュータ操作、演技、格闘、地域知識/ギリシャ、偽装、調理、外交全て16(0.5CPずつ計5.5CP)、建築、言いくるめ、記録、作詞、写真術、隠匿、鍵開け、忍び、登攀、農業、変装、尾行、爆発物、投げ縄、読唇術、彫刻、書道、商人、尋問、神秘学、追跡、陶芸、賭博、裏社会、罠全て15(0.5CPずつ計12.5CP)、毒物、獣医、偽造、絵画、神学、催眠術全て14(0.5CPずつ計3CP)、闇社会13(0.5CP)
外見の印象:異界の美(10CP) 変身:人間変身(15CP)
妖力:超技能/酒造(10CP)、無生物会話(30CP)、夢見る力(10CP)、睡眠コントロール(5CP)、毒無効(酒以外−10%、14CP)、超味覚(5CP)
妖術:酒夢殿3-14(一日二回−30%、集中二倍−10%、疲労消費3LV−15%、充電15秒−20%、合計−75%の酒に対する願望を叶える桃源郷。6+1CP)、夢操り5−14(酒をべろべろになるまで飲んだ者に対してのみ−30%、相手の人生をいい方向に変える操作のみ−20%、合計−50%。5+1CP)、酒酔夢5-14(左に加えて一日四回ー20%、合計−70%の白日夢。8+1CP)、酒睡5-15(酒が入っている者以外には無効−20%、酒が必要−10%、普通の生き物には持続が日単位+50%、合計+20%の誘眠。30+2CP)、酒幻1-14(酒が入っている者以外には無効−20%の幻覚。6+1CP)、酒造20-17(酒しか造れない−50%、なんの支えもない空中に作れる+50%、瞬間+20%、酒を注ぐための容器が必要−10%、合計+10%の液体作成。88+8CP)、水変形10-15(酒じゃないとパワー半減−25%、15+2CP)、酒精10-18(実体=化学・風属性、神経毒−20%、妖怪時のみ−30%、瞬間+20%、扇形1LV+10%、痺れと連動+10%、酒が必要−10%、酒を飲み込んで吐く動作が必要−20%、刺し+40%、合計±0%。60+12CP)、痺れ8-18(酒精と連動+10%、妖怪時のみ−30%、瞬間+20%、扇形1LV+10%、酒が必要−10%、酒を飲み込んで吐く動作が必要−20%、知力にも影響+40%、合計+20%。29+12CP)
弱点:依存/酒/1日おき(−15CP)、行為衝動/精神的に疲れている人を見ると酒を飲ませずにはいられない(−10CP)
人間の顔:カルパ・タルーのバーマスター。容貌/最高(20CP)、身元/偽造戸籍(5CP)、財産/標準(25CP)、我が家/賃貸マンション(5CP)、たまり場/カルパ・タルー(7CP)
ネットワーク:カルパ・タルー(5CP)