来須:「お前の好きな人を聞きたい」 滝川:「ばっ、ばらしたら殺すぞ。……芝村……だよ」 (うおおお!) 滝川:『恋したいっ!』『恥ずかしそうにほほえんでいる』 芝村:『恋したいっ!』『嬉しそうに話している。時々、小声で話して笑っている』 (うおおおおお!) 滝川のアイテム一覧 エアミニマム ボウリングチケット 救急箱 イカスネクタイ 麦わら帽子 イヤリング みんなで撮った写真 滝川の靴下 猫の首輪 舞の写真 舞の手作り弁当 (うおおおおおおおおお!) 『来須が入ってくると普通の雰囲気になった』 滝川:「……お、おのれー」 芝村:「……お、おのれー」 (うおおおおおおおおおおおおおおおおお――――っ!!!) OVERSの寄生した来須は浜辺を夕陽に向かって走っていた。この際どこの浜辺だとか仕事時間なんだから仕事しろよとかそういうことを気にしてはいけない。 (やった……神よ、俺はやったぞ……!) 寄生していたのが来須でなければ大声で叫んでいたであろう。今彼(にとりついているOVERS)は阿波踊りとソーラン節とええじゃないか音頭を踊り狂いつつ街中を闊歩してもおかしくないくらい絶好調で浮かれていた。 今日、彼はかねてから着手していた『滝川スキーと舞ちんをラブラブ恋人同士にしちゃうぞv 大作戦』に、見事成功したのである。 (思えば……長い道のりだった……) 滝川と舞をくっつけようと思いついたのが三月の始め。そこから即座に猫の首輪と魅力アップアイテムを二人に渡し、嵐のような『『みんなでお昼』提案をお互いに了承させちゃおう作戦』が始まったのだ。 むろん裏工作も万全だ。舞とくっつく可能性の高い速水はとっとと二組に飛ばし、万一の可能性もなくすため舞と恋人になって二人が親しくなる前に恋人を作られないようにする。 幸い速水はヨーコと、魅力が高くて昼提案をよくするののみと瀬戸口はいつも通り二人でくっついてくれたため他の誰かが恋人になるという可能性はまずなくなった。 (……だが、それでも道は険しかった……) まず、二人はどちらかが昼提案をすればもう片方は必ずと言っていいほど昼提案をしなかった。つまり単純に考えて倍の日数がかかるわけである。 まあ滝川は怒涛のように昼提案をしまくる習性があるため、舞の好感度は順調に上がりわりとあっさりカンストしてくれたのだが、問題は逆の方である。 滝川の舞に対する好感度がなっかなか上がらなかったのだ。なにせ滝川は芝村嫌い。愛情度はさほど低くないのに友情度の下がること下がること。一時期など−100を越えていた。 当然舞の提案を断る可能性もけっこう高い。おまけに舞は昼提案を一日に一度しかしない。ただの『受け入れる』ではなく『喜んで受け入れ』てもらわなければ間に合わない。 滝川が昼提案するより先に舞に提案させ、かつ『喜んで受け入れ』させる。さもなくば即リセット。 当然のごとくリセット回数はとんでもない数に上った。何度ガンパレにソフトリセット機能がないことを恨んだことか。本体のリセットボタンを押すとPSの商標表示から始まって段階ごとに省略するボタンの違うガンパレのオープニングを味あわなければならないのだ。あのボタンを使えば一分にも満たない間が、果てしなく長く感じられた。 提案を成功させるためなら思いつくことは何でもやった。『一緒に歩こう』&テレポートを駆使して舞を隔離し、もう昼提案をした滝川をそこに連れて行ったり、朝からずっと教室の外にどちらかを引き止め、もう片方を連れて行って昼提案させたり。 辛く、苦しく、長い戦いだった。 (……だが、それでも希望はあった) 滝川の舞に対する愛情度が高くなってきたせいか、滝川が舞の提案を『喜んで受け入れる』ことがほとんどになってきたのだ。 話している姿を時々見かけるようになった。 そして…… (……あの時) 何の気なしに校舎裏を通ろうとした瞬間。あの音楽が聞こえてきたのだ。 ちゃ〜らり〜ら〜♪ 滝川:「……お、おのれー」 芝村:「……お、おのれー」 (……俺は叫んだ。心からの歓喜の叫びを) まだ友情度はマイナスだったが、それまでの−数十というのより一気にずっとマシになっていた。いけるかもしれないと思った。正直不安は残る、だが賭けてみよう。そう思ったのだ。 ――そして、今日。 (……俺は賭けに勝った) 滝川のアイテム欄には、『舞の手作り弁当』が燦然と輝いていた。 (神よ……あなたのご加護を感謝する! 俺は……俺は……!) 来須(にとりついたOVERS)は再び走り出した。走る、走る、どこまでも走る! 心底からの願いを叶えた人間は喋ることができない。ただ心底から湧き出る衝動のまま――走るのみ! 「……と……だよ。間違いない。一緒に歩いてた」 「……だからなにが言いたいのだ」 (…………ふふふふふふ) 顔を赤らめながら会話しあう一組の恋人。来須はそれを見てこっそりほくそ笑んだ。 むろん、ここまで手を尽くして二人をくっつけるのに奔走している自分がはたから見たらどれだけアホかということなど気づいてもいない。 また、彼はこの後、滝川の『瀬戸口&ののみ懐きまくり行動』にも苦しめられることになるのだが、それはまた別の話である(そうか?) |