脱定式的乗法
 今年の四月に涼宮ハルヒという傍若無人かつ倒行逆施、その上無意味に抜山蓋世でありつつ無駄に才色を兼備しているおそらくは世界トップレベルいや世界一も堅いであろう変人と知り合ってから、俺は毎日のように艱難辛苦を経験し苦杯を嘗めさせられてきた(意味のわからない熟語があったら悪いが辞書を引いてくれ)。
 もはや心のどこかで諦めの境地に至りつつある今日この頃だが、それでも人間には運命に抵抗する権利は与えられてしかるべきだし、そもそもハルヒと出会ったことが運命だなどと主張するどっかの戯け者には即座に天罰を与えるべきだと神様に上申したいね。
 というわけで今回はハルヒと出会ってからの事件の中でも最高級に理不尽かつ最悪かつ抹消したい記憶No.1である話を紹介したいと思う。俺としてはあんな記憶など宇宙の彼方に島流しにしたいと強く希望するところではあるのだが、理不尽かつ最悪なことにあの記憶は俺の中にがっしりと根を張ってしまって動く気配がなく、ならば誰かに語ってせめて同情なりとも得たいと思うのは人情だろう。それに後世に残すことで俺のような被害者を一人でも少なくできるかもしれないし。――女子に語るのは死んでもごめんだが。
 まず、世の中の正常かつ一般的な思考と感性を持つすべての男子に告げておきたい。
 ―――美形の男はなにがあっても信用するな。

 それは俺たち(という呼称にまだ抵抗を感じる程度には俺にはハルヒに反抗する意思がある)SOS団が夏の合宿をしていた初日のことだった。
 この夏の合宿というのがそもそもの始まりからハルヒの思いつきから始まったようなものだし、それを後押ししたのが古泉というニヤケハンサム男というところがさらに嫌な予感を増すものではあったが、今日のところはこともなく、まぁ一般的な青春の一ページと言って差し支えないだろう時間をすごすことができた。明日もこういきたいものだ。朝比奈さんの水着姿というすばらしいものを拝むこともできたしな。
 晩飯も終わり、歯も磨き、あとは風呂に入って寝るだけ。ハルヒは昼間はしゃぎすぎたのか眠いと言ってとっとと部屋に引き上げたので、他の面々も平和にそれぞれ部屋に引き取った。
 親からちゃんと面倒を見るようにと固く言い渡されている我が妹は朝比奈さんと一緒だから心配はないだろうし、今日のところは早めに寝て気力体力を回復しておこう。今日でさえ夜に島の探検とやらに連れまわされたことだし、明日になればハルヒがなにを思いつくかわかったもんじゃない。
 個室には一個ずつ洋風のそんじょそこらのホテルより大きなバスルームがついていたので、服を脱いで中に入り栓をひねってお湯を出す。ややぬるめのお湯が昼間に日焼けした俺の肌の上を心地よく撫でていく。
 こんな孤島に水道が通じているのかそれとも雨水を貯めて使っているのか俺は一瞬疑問に思ったが、すぐに考えるのをやめた。俺が考えて意味があることじゃない、圭一さんも新川さんも水を節約しろとは言っていなかったのだから普通に使っていいんだろう。
 鼻歌など歌いつつ、スポンジでは痛いので手にボディソープをつけて体を洗う。海から帰ったあと軽くシャワーは浴びたが、意外なところに砂がついていたりして少し驚いたりしつつものんびりと――
 していたら突然バスルームの扉が開いて俺は仰天した。
「こんばんは」
 そう言って毎度のごとく扉のところでうさんくさい笑みを浮かべたのは古泉である。俺はそいつを睨みつけた。この状況下ではハルヒや長門ほどは心臓に悪くはないが、嬉しくもないぞ。朝比奈さんとは比べるも愚かというものだ。いや俺がシャワー浴びてる時に朝比奈さんがバスルームに入ってきたら俺は死ぬほど驚くけどな。
「なんの用だ。見ての通り俺はシャワー浴びてるんだが」
「わかっています。そのくらいの時間を見計らって部屋に入りましたから」
「はぁ?」
 俺は困惑の証に眉をひん曲げた。こいつは俺と一緒にシャワーを浴びたかったのか? 冗談ではない、俺はこいつと裸の付き合いなぞする気はないぞ。なんかバスローブなんか着て準備万端っぽいが。
「別にシャワーを浴びている時でなければいけないというわけではないんですが、そちらの方がいろいろと面倒がなさそうなのでね。うまい具合に時間が合って幸いでした」
「幸いってなにがだ」
「そうですね、そこから説明した方がいいでしょう」
 古泉はいつものムカつくほど無駄に爽やかな笑みをこちらに近づけてきた。俺は反射的に後ろに下がり、壁にぶつかって舌打ちした。その顔を近づけるな、殴りたくなるから。
「別にそう突飛なお願いをしようというのではありません。涼宮さんが引き起こす超常現象の数々からすれば、はるかに高校生らしいお願いですよ」
 俺は悪い予感がでんぷんのヨウ素反応のごとき勢いで広がっていくのを感じた。こいつがこんなことを言い出したということはろくな願いではあるまい。
「率直に言います」
 ぐいっと顔を俺の目の前数cmまで近づけて古泉は言った。だから顔近いんだよ。
「僕とセックスをしませんか?」
 …………………………………………。
「はぁっ!!??」
 俺は絶叫した。男にこんなことを言われた男子高校生としては当然の反応であると誰もが認めてくれると思う。
 だが古泉はそんな俺の反応などまるっきり気にもかけず、俺の唇を手で塞ぎつつ唇に指を当てて静かにするよう促し、説明を始めた。
「思いもかけない台詞であるのは重々承知ですが、僕にもそれなりに理由がありましてね。『機関』のお偉方からの極めて強力な命令がありまして」
 命令とはなんだ命令だからってなんで俺がお前とヤらなくちゃならん『機関』のお偉方とやらは頭に全員キノコでも生やしてるのか。
「現在涼宮さんの驚異的な能力に最も近づいている勢力は三つ。僕たち『機関』と朝比奈さんたち時間跳躍者グループ、長門さんたち統合思念体の命に従うグループです。涼宮さんに直接的な影響を与えられるグループは、この三つに絞られたと言ってよいでしょう」
 それとこの状況となんの関係がある。
「その中で、最も遅れをとっているのは我ら『機関』である、というのがお偉方の考えでしてね。理由は一つ。僕が男であるからです」
 はあ?
「涼宮さんの精神状態に影響する最も重要なキーがあなたであることはもはや疑いようがありません。つまりあなたを手中にすることは涼宮さんを手中にすることに等しい。……ですが現在のところあなたは僕に一般的な友人としてもやや低いレベル、いやむしろ軽い敵意に近いような関心しか抱いていないというのがお偉方の結論で、そしてその結論はお偉方にとってはなはだ面白くないわけです」
 だからなんだ。
「簡単に言えば、お偉方は僕にもっとあなたと親しくなれ、と命を下してきたのです。朝比奈さんや長門さんに先んずる、とまではいかないにしても遅れを取らない程度にはね。朝比奈さんや長門さんが女性としての武器を使用しあなたを篭絡しようとしても抵抗ぐらいはしてもらえるようになっていてほしいわけです」
 ……まさかそれで俺とヤって俺をお前に夢中にさせようという作戦じゃあるまいな。
「夢中、とは言わないまでも一定の好意は獲得しておけとのことです。ああ、ちなみにセックスという手段を取ったのは単なる僕の趣味ですが」
「お前ホモだったのか!?」
 俺は思わず古泉の手の下から絶叫した。これまた不本意であろうともいつもつるんでいる同年代の男子がホモであったと知った高校生男子としては一般的な反応だそうだとも。
 だが古泉はにっこりとまったく腹が立つほどに嫌味のない笑顔で首を振った。
「僕は魅力的な人間であれば性別にはこだわらないのが信条です」
 そんな信条山の向こうに放り捨ててしまえ。
「男女の間は寝てみて初めて深くなるものです。男と男の関係も、また然りです」
 そんな変態の理屈を俺の生活する周辺で持ち出すな。
「断る。断固として断る」
 俺は古泉の手を押しのけ、きっぱり首を振った。心なしか腰が引けているような気がするのは気のせいということにしておきたい。
「お嫌ですか?」
「嫌だ。決まってるだろうが俺はホモじゃないしこれから先の人生ホモになる予定もまったくないぞ」
「僕もホモではありませんが」
 バイもホモも俺から見れば似たようなもんだ。
「ふむ、あなたの意に反して行為を行うのは僕の本意ではありませんが……」
 俺は壮絶な悪い予感にすざっと身を引いた。だが後ろは壁、ここはバスルーム、出口との間には古泉、逃げ場はない。俺は(格好が悪いが格好をつけている場合ではない)大声を上げて助けを呼ぼうと息を吸い込んだ。が。
「新たな世界に友を導くには多少の強引さも必要であるというのも確かですので、体から篭絡させていただくことにしましょう」
 それより早く古泉がそうにっこり微笑んで――俺にキスをしてきた。
「! ! !」
 幸いにしてファーストキスではないが、それでも男とキスなんて冗談じゃないことこの上ない。俺は必死に暴れて古泉を突き飛ばそうとする、だが古泉の唇はしっかりと俺の唇に吸い付いたまま離れない。その上、古泉の手は俺をしっかり抱き寄せて固定し、ケツまで撫でたりしてきた。
「………はっ………!」
 息が苦しくなってきて、必死に息をつごうと口を開けると、古泉の舌が俺の口内に侵入してくる。古泉の唾液かとろりとしたものが俺の口から喉に滑り落ちた。俺は古泉の舌を噛み切ってやろうと思いきり顎を閉じたが、その前に古泉の舌はするりと俺の口内から抜け出した。
「………っ………!」
 古泉の手は、俺のケツのみならず前のほうまでまさぐってきた。さわ、と優しく触られて鳥肌が立つ。男の手に触られて感じるか! と怒鳴ってやりたかったのだが、俺の口は古泉の口による塞き止め真っ最中だ。
 俺は必死に暴れていた――のだ、が。
「……………………!!?」
 俺の股間は勃ち上がってきていた。男にキスされて体をまさぐられているという萎え萎えなシチュエーションなのにもかかわらず、である。というかこれは認めたくはない認めたくはない断じて認めたくはないのだが、古泉の手が気持ちよくなったりなんかしてきちゃったりしてないだろうか。
「………はっ………ぁ」
 俺は思わず声を漏らした。古泉の手業は実際、驚くほどに巧みだった。俺自身すら気づかなかった俺の性感帯を、次々見つけ出しては触れていく。
 俺が口を開くと、すかさずそこに古泉は舌をねじ込んでくる。――その舌も、気持ちよかった。
「………んっ………ふぁ、う」
 ディープキスなんて初めてだったが、俺は凄まじく気持ちよかった。尻を撫でられたり揉まれたり、前の気持ちいいところを巧みに弄られたりしつつ舌を絡められたり甘噛みされたりするのは、体の背筋がぞくぞくとして、体の芯が震えるほどの快感だった。
 たまらなくなって股間に手を伸ばす。この快感を感じながらイってしまいたかった。
 と、古泉が唇を離し、いつも通りの微笑みを浮かべながら腰を擦りつけてきた。俺の股間に。その半分くらい勃起した、悔しいが俺のより一回りでかいブツを。
 俺はぼんやりとそれを見つめたが、古泉は俺の手を導いて俺のと古泉のとを一緒に握らせた。そして軽く動かさせる。
「あ……!」
 一瞬目の前で火花がスパークした。他人と重なり合ったブツをしごくのがこんな快感をもたらすとは思わなかった。今までの自慰では味わったことがないほど、熱くて、気持ちいい……。
 俺は熱に浮かされたように古泉のと俺のを同時にしごいた。だから古泉の手が俺の尻、しかもウンコを出す場所にあてがわれ、なにやらぬるぬるするものを塗りつけているのはほとんど意識の外だった。
「あっ!」
 俺は嬌声と言ってもいいと自分でわかるほど情欲に濡れた、まぁなんというかエロい声を漏らした。なにか俺の尻の中に、長いものが入ってきているのだ。
 そしてそれが俺の尻というか肛門というかの中を弄っている。ガキの頃座薬を入れた時は死ぬほど痛いと思ったのに、痛みはほとんどなかった。というより、中を弄られている感覚、長いものがそっと入り引き抜かれていく感覚、中でなにかが動く感覚が、気持ちいい……。
 あともう少しでイきそう、という時になって、古泉は俺の手を外させた。もう少しでイけるのに、と俺は顔を歪めて古泉を睨んだが、古泉はいつもの涼しい顔で笑った。
「後ろを向いて、壁に手をついてください」
 俺はもうまともな思考が頭からだいぶん吹っ飛んでいたので、黙って言う通りにした。もし正気が残っていたら古泉を殺して俺も悶死していたであろうところだが、その時俺の考えていることはイきたい、出したい、もっと中を弄ってほしい、それだけだったのだ。
 そして俺が後ろを向いて壁に手をつくと――すさまじく太く、固く、大きなものが俺の中にずるぅりと入ってきた。
「はぁぁ………!」
 俺はたまらず声を漏らした。俺の尻の中がすさまじく太く、固く、大きく、そして熱いもので満たされている。ず、ず、と少しずつ奥に進み、俺の中のいろんな場所をたっぷり擦っていく。
 その熱く、太く固く大きく、ぬるぬるとしたものは、俺に間違いなく強烈な快感を与えてくれていた。
 長いような短いような時間をかけて、それは俺の中に収まった。古泉の熱く柔らかい肌が、濡れた手触りの毛が、俺の肛門周りにぴったりとくっつく。
「――全部入りました。これからどうしてほしいですか?」
 いつも通りの爽やかな声。普段ならこういう状況下でなかろうとむかっ腹を立てていたところだが、俺はもう肛門を犯されるアブノーマルな快感に浸っていて、喘ぎながらこう言うしかなかったのだ。
「も……と、動いて、く……」
「わかりました」
 言うやずるぅ、とそれが引き抜かれていく。俺の内壁を適度な柔らかさを持ちながらも固いものがごりごりと擦っていく。
「あ! あーっ!」
 そしてぎりぎりまで引き抜かれて、またずるるぅ、と中に挿れられていく。そしてまた引き抜かれる。そしてまた挿れられる。そのたびに俺の内壁はたっぷりとあちこちを擦られていく。
 次第にその動きが抜き差しと言えるほどに速く、激しくなってきた。ぬちゃ、ちゃっ、ずぬっ、ぬちゃっ、と肛門周りから音が立つほど。それでもそれに馴染んだ俺の中は、最奥を突かれる衝撃も快感に変換し、ブツの先からカウパーをどばどばと出させる。
「あ、あ、あぁ、ああっ、く、あぁっ」
「すごい量の先走りですね……触ってもいないのにビンビンじゃないですか。いやらしいですね?」
「は、あぁっ、あーっ!」
 耳元で囁かれ、耳をかぷ、と甘噛みされ、前を触られしごかれ、当然後ろもすごい勢いで犯され、俺はもう限界だった。
「イくっ! イくっ、イっちまう、出る、出ちまうっ、あ、あーっ!」
「出していいですよ。僕もたっぷり出してさしあげます。あなたの中にね」
「あー、イく、イく、イくイくイくイくぅっ!!」
「……っ!」
 ぴゅっ、と言うよりはどぷどぴゅどばっ、という感じで俺のブツから大量の精液が吹き上げられ――俺はその場にずるずると崩れ落ちた。

 そのあと戦場は俺の部屋のベッドに移動し、そこでも俺は思いっきり肛門を犯されてよがりまくった。
「あ、あーっ、もっと、もっと突いてくれっ、もっと、あーっ、イイっ!」
「こうですか? まったく、いやらしいですね、あなたは」
「あ、あ、あぁぁっ、イイっ、イイっ、またイくっ!!」
 今から思い出すとぶん殴ってやりたくなるような台詞だが、その時の俺はそんな余裕は当然のようになく、それどころかその囁き声すら快感に変えるほど全身を性感帯にしていたので何度も派手に精液をぶちまける羽目になった。
 最後の方は記憶にない。理性が飛んでたか気を失ってたか、多分両方なのだろう。
 で、気がつくと俺は糊の利いたシーツをかけられたベッドの上で、寝巻き用のシャツと短パンで寝ていたわけで。
 起きたとたん寝る前のことを思い出し顔面蒼白になり、夢だったのかと一瞬ほっとしたが(夢でもかなり嫌だが)、肛門にまだなにか入っているような感じがすることと、よーく知っている栗の花の匂いと、サイドテーブルに古泉の字で『シーツは気づかれないように洗っておきます。この建物は防音がしっかりしているので声を聞かれた心配はないと思いますよ。追伸、お尻が辛いようでしたらこの薬を塗っておいてください』と書かれたメモとチューブ入りの薬が置いてあったので、また顔面蒼白になった。
 それでも森さんが朝食だと呼びに来たからには食堂に行かざるをえず、行ったからにはハルヒはじめSOS団の面々+我が妹、そして憎き古泉と顔を合わせざるをえず。
 俺はもちろん顔から火が出るような恥ずかしい思いをしつつ渾身の憎しみをこめて古泉を睨んだのだが、古泉の野郎はそのエセハンサム面にいつもの爽やかな笑みを浮かべてウインクなんぞしてきやがった。
 殴ってやりたかったがみんなの前で殴り合いの喧嘩などするわけにもいかないし、下手をうって昨晩のことをばらされでもしたら俺は死ぬしかないので、歯噛みしつつも俺はいじらしくなかったことにしようと決めたのだが――
 まったく、人生とはままならないものだ。ハルヒと知り合ってからもう嫌というほど証明されたその命題を、こんな形でさらに押し付けられるとは、この世の摂理を支配する神かなにかはハルヒ級に性格が悪いとしか思えんね。
「あ、あ、あぅっ、そ、そこっ、もっと、突いてく、あ、あぁっ」
「ここですか?」
 古泉がぐいっと腰を押し進めて、俺のイイところをその大きな亀頭で存分に擦りあげる。
「あ、あー、イイっ」
「まったく、あなたも本当にいやらしい体になってしまいましたね。そんなにお尻を犯されるのがイイんですか?」
 俺は四つんばいの体勢からぐいっと首を曲げて古泉を睨んだ。余計なことを言うなこの変態が。せっかくの気持ちよさが萎えるだろうが。
「お前なっ、あとで殴られたくなかったら黙って腰動かせっ」
「それは困りましたね。セックスには言葉も重要な要素ですよ?」
「お前のは変態くさいんだ! いいからお前は黙って俺の言う通り動いてろ!」
「お望みのままに」
 くすっと古泉は笑みを漏らして、俺をバックから緩急取り混ぜつつがんがん突いてきた。その攻めは俺の好みを熟知した人間のもので、俺は満足して喘ぎ声を上げる。
 ……まぁ、なんというか。最初こいつに犯された時はもう悶死しそうだったんだが。また古泉にちょっかいをかけられて、必死に抵抗したもののまたよがらされて犯されて、そういうことを何度か繰り返しているうちに、まぁ、慣れてきてしまったわけで。
 今ではなんというかまぁ、男同士ではあるもののセックスフレンドのような形に落ち着いている。といっても奉仕するのも場所を準備するのもすべて古泉の仕事だが。当たり前だ、こいつが俺にちょっかいをかけてきたんだから。
 ……自分でも時々なんでこんなことになったんだとため息をつきたくなるが、古泉に誘われると俺はついつい乗ってしまうのだ。だって若いし。気持ちいいことは好きだし。俺と同じ高一なのにどこで経験積んだのか知らんし断じて知りたくもないがこいつ上手いし。一人でやってもつまらんというか気持ちよさが段違いだし。
 古泉は俺の上半身をぐいっと持ち上げ、下半身も自分の体の上へと移動させて俺に後座位の体勢をとらせた。俺はバックとこの体位が好きだったりする。理由は主に古泉の顔が見えないから。あいつのエセ爽やか面を見ると萎えてしょうがない。
 俺を自分の上に軽々と持ち上げて(実際こいつのこういう時の体力は大したものだと思う)、下からずん、ずん、と突き上げつつ俺の股間のブツを激しくしごく。あいつのブツが俺の体内に深々と突き刺さるたまらない気持ちよさに俺は嬌声を上げた。
「あ、あー、イイ、イイっ………!」
「前をしごかれると後ろがきゅうっと締まりましたよ。お尻、すごくよさそうですね?」
「おま、黙ってろって……」
「もうこんなにして。今にもイってしまいそうですね?」
「あ、あぁぁっ………!」
 俺は亀頭をぐりぐりといじめられて悲鳴を上げた。もはや快感か痛みかもわからないほどの刺激にもう喘ぐしかない。
「あ、あ、あーっ………!」
「イきますか? 男にお尻を犯されて、ペニスをしごかれて、イってしまうんですか?」
「あ、あぁっ、イくっ、イくっ、イくぅっ………!」
 俺は古泉の手の中に精液を放出しながら、最初に犯された時のことを思い出していた。
 初心者だった俺がああも乱れて男相手に感じまくったのは、絶対こいつが妙な薬とか盛ったせいに違いない。絶対いつか復讐をせねばならん。俺は古泉と違い人並みに常識と理性と羞恥心と復讐心を持っているのだ。
 だが、まぁ、それは今でなくてもいいだろう。ケースバイケース、時と場合だ。こいつが俺にお手軽に強烈な快感を与えてくれるのだから、利用できる間は利用して当然だろう、被害者として。
 うっかりたまにエロい気分になってる時に自分からフェラしてしまったり、キスしてしまったりなんてことは、たぶんどっかから電波が送られてきたせいに違いないのだから、無視していいのだ。
 そんなことを考えつつ、俺は快感の余韻に浸って身を震わせていた。

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