その部屋の四方は、灰色の石造りの壁だった。装飾も色塗りも施されていないむき出しの壁は、ひどく寒々として、そこにいる人間をとても惨めな気分にさせる。 それこそがこの部屋を作った人間の狙いなのだから、当然だろうが。 レックスは扉を開けて部屋に入ってくると、ここにたった一人で住む――と言うよりは住まわされている少年に微笑みかけた。 「いい子にしてたかい、ナップ?」 首には首輪、手には手枷、足には足枷。それ以外はほとんど素っ裸。首輪に鎖がつながれているせいでこの部屋の中を這うように動くことしかできないナップは、それでもきっとレックスを睨みつけた。 体中を拘束され、長期間監禁されても屈しようとしない凛とした瞳――だが、それも今では半ば以上が必死の強がりでしかないことが、瞳の揺らぎでわかる。 そのことに満足しながら、レックスはナップに歩み寄り、くい、と首に繋がった鎖を引っ張った。 「聞いたら答えなきゃ駄目じゃないか。口が利けないのかい?」 「ん! んぅ、んん、ん……」 ナップは抗議の視線でレックスを見つめる。その、自覚してはいないだろうが、どこか縋るような色をした目にレックスは微笑んだ。 当然だ、ここでは自分のほかにナップには頼るものがないのだから。 「ああ、そうか。口枷をはめているからナップは喋れないんだったね。でも、その顔もすごく可愛いよ」 「んー! んん、ん……」 口に枷をはめられているせいでナップの口は開きっぱなしだ。口の端からだらだらと涎を垂れ流しながら、必死にレックスを睨みつける。 「そうそう、食事を持ってきたんだ。お腹が空いただろう? たくさん食べるんだよ」 そう言ってレックスは食事を持ってきたお盆を床に置いた。そしてナップの口の枷を外す。 ナップはそれでも顔を上げたままレックスを睨みつけ続けた。歯を食いしばりながら、ともすれば潤みそうになる瞳を必死で見開き、なんとかなけなしの矜持を支えようとレックスと向き合っている。 ――背筋が、ぞくりと震えた。 「ナップ」 くい、とわずかに鎖を引っ張り、ナップの首を揺らす。 ナップは小さく震えたが、それでも目は逸らさない。その事実に震えるほどの快楽を覚えながら、レックスは優しくナップの体に触れた。ナップがびくんと震える。 「食べるより先に、出したいのかい?」 ナップの体が硬直した。 固まった体をレックスの指は滑るように這い回り、首から背中、背中から尻に移動し、最後にそっと肛門を押す。 「君のお尻の穴もだいぶほころんでるみたいじゃないか。もしかして、早く出したくてしょうがなかったりするのかな、ナップ?」 「…………」 ナップの顔が泣きそうに歪む。それでも辛うじてレックスを睨む視線は外さないまま、小さくふるふると首を振る。 「食事を食べるね?」 こくんとうなずく。 レックスはにっこりと笑って、お盆をすっとナップの前に差し出した。 ナップは一瞬縋るような視線をレックスに向けたが、レックスが微笑みながら首を振るのにうつむいて、姿勢を低くする。 そしてそのまま、盆に載っている食器に顔を突っ込むようにして食料を食った。手枷のせいで手は使えない、犬のように這いつくばって食べるしかないのだ。 半日ぶりの食事だ、ほとんど動いていないとはいえ育ち盛りのナップなら腹を減らして当然だろう。それでも食料を貪り食う動物のように食べる自分が情けないのか、ナップは食べながら今にも涙をこぼしそうだった。 食べ終えたナップの頭を、レックスは優しく撫でる。 「よしよし、いい子だ。ちゃんと行儀よく食べられたね。お腹いっぱいになったかい?」 「…………」 「ナップ。おいで」 ナップは恨みがましい目でレックスを見つめていたが、レックスが何度も鎖を引っ張ると、諦めたのか大人しくレックスの膝の上に乗った。 レックスは左手で優しくナップの頭を撫でながら、素っ裸のまま身を固くしているナップの体に右手を滑らせ、体中を優しく愛撫する。最後に肛門に行き着いたところで、ずっと身を固くしていたナップがびくんと震えた。 「おや? どうしたんだい、ナップ? ここがどうかしたのかい?」 言いながら懐から取り出した粘性の香油を肛門に垂らす。またナップがびくんと震えたが、レックスは構わず香油を何度もナップの肛門に塗りこめた。 必死にこらえようとはしているようだが、肛門を優しく撫で回す度にナップはびくびくと震える。快感を感じているというほどではないが、性感帯として開発された場所をこう優しく触られれば体は勝手に反応してしまう。それを重々承知していながら、レックスは笑った。 「いやらしい子だね。お尻の穴を触られるのがそんなに好きなのかい? 俺がいない間も、ここをいじってほしくてうずうずしてたんだ?」 「ちがっ……!」 「違わないだろう? ナップは本当はお尻をいじられたりいじめられたりするのが大好きないやらしい男の子なんだよね」 言いながらレックスはたっぷりと香油をつけた人差し指を一本、ナップの肛門につぷりと挿入した。 「んっ……!」 思わず声が出てしまうナップの肛門と直腸を、香油をたっぷり塗りこめて押し広げていく。香油がナップの体温で溶けて、むせるような香りを発しながらナップの肛門をぐちゅぐちゅにした。 指でナップの腸の奥を上下左右に、時には円を描くように押す。肛門がほぐれるに従って指を増やし、ゆっくりと抜き差ししながら腸内をかき回す。 「んっ、あ、んっ、はっ、んっ、う、んっ」 体の奥を直接押されて自然に漏れる声に、レックスはくすくすと笑った。 「そんなに喘ぎ声を上げちゃって。気持ちいいの? ナップってば、本当にすっかり変態になっちゃったね。お尻でそんなによがるなんて」 「やっ、はっ、んっ、ちが、ちがっ、んっ、はっ」 「違わないだろう? こんなにちっちゃいお尻なのに、もう三本も指をくわえこんじゃって」 「そんっ、あ、なっ、あん、んっ」 「ほら、ナップのおちんちんもちゃんと大きくなってるよ?」 「…………! あ、んっ!」 左手で軽く幼茎に触れられ、ナップは体を震わせた。そこは確かに、後ろの刺激だけでゆっくりと勃ち上がっている。 羞恥のあまり顔を真っ赤にしてうつむくナップ。レックスはその様子を楽しみながら後孔をいじり、指先にふと触れるものを感じて笑みを深くした。 「うんちが下りてきてるよ」 「………!」 ナップはさっきまでとはまた違った風に体を震わせた。さっきまでが羞恥なら、これは恐怖だ。 「お尻の穴、きれいにしなくちゃね?」 ナップはうつむいたままで、必死にかぶりを振った。たぶんその顔は泣きそうになっているだろうことは、レックスならずとも予想がついただろう。 それでもレックスはにっこり微笑んで、首を振った。 「わがままを言っちゃ駄目だろう、ナップ? ナップが自分で言ったことじゃないか、なんでも俺の言うことを聞くって。泣きながら何度も『なんでも言うこと聞きます』って言ったよね?」 ナップはレックスの方に顔を向けて、涙を溜めた瞳できっとレックスを睨みつけた。震える声で、必死に言葉を紡ぐ。 「アンタが……アンタが言わせたくせに……!」 その必死の訴えも、レックスはさらりと流した。 「人のせいにしちゃいけないな。あんなに何度も何度も必死になって言っておきながら」 ぐちゅっ、と音を立ててナップの肛門から指を引き抜くと(ナップがはぁ、と声を漏らした)、軽く尻を叩いてから言う。 「お尻を高く上げて」 「…………」 「ナップ?」 ナップはもう今にも泣きそうになりながら、レックスの膝の上で尻を高く上げた。レックスはにっこりと笑って、置いてあった浣腸器を取った。 中には薬液とぬるま湯を混ぜたものがたっぷりと入っている。レックスはすっかりほぐれたナップの肛門に、つぷっと浣腸器の先端を突き刺した。 「んう……」 「ほぅら、お腹の中にどんどん液が入っていくよ。お尻をちゃんと締めて。さもないと漏らしちゃうよ」 「ん、うぅ、はぁ……」 レックスが浣腸器を押すごとに液はどんどんナップの中に入り、ナップの腹を膨らませていく。液を全てナップの中に注ぎ終わると、レックスはパンパンに張ったナップの腹を一撫でし、肛門にずぷっと懐から取り出した栓をはめた。 「んうぅ、くう……」 「お腹がごろごろ鳴ってきたよ? 出したいんじゃないのかい?」 呻きながらも首を左右に振るナップ。 「強情だね」 レックスはくすりと笑うと、ナップの腹を何度も撫でた。そして便意ですっかり萎えたナップの幼茎を揉みしだき、優しくしごき、栓をした肛門を上から何度も撫でる。 「んぅ……! や、やっ、やめ……」 「なんでやめてほしいんだい?」 ぬけぬけとした問いに、ナップは顔を赤らめた。 「で……出ちゃうからだよ……」 「なにが?」 「う……うんこが……」 レックスはまた、くすりと笑った。 「出してしまえばいいじゃないか。俺は気にしないよ、君がこのままうんちを恥ずかしげもなく垂れ流しても」 「…………!」 「ほら、ほらほら」 腹、幼茎、肛門。この三点をレックスはしつこく何度も何度も攻める。その度にナップは猛烈な便意に呻いた。 それでも必死に我慢しようと括約筋を締めると、肛門にはめられた栓を否が応でも感じてしまう。 「………行かせて」 「ん?」 「便所、行かせてくれよ!」 「うんちしたいのかい?」 顔を真っ赤にしてうなずくナップに、レックスは笑った。 「そうだなぁ。いつもみたいに、おまるに俺の見てる前でなら、漏らしてもいいよ?」 「…………!」 ナップは唇を噛み締める。今までに何度もやってきたことだというのに、ナップは排便を見られることに羞恥を感じるらしかった。 レックスはくすくす笑いながらナップの腹を撫でる。 「それともこのまま漏らす? 俺はいいよ。栓をしてもはしたなく広がって床にうんちを漏らすナップの肛門とかを見るのも楽しそうだし」 「………………」 ナップはとうとう、目の端からぽろりと涙をこぼした。こらえようこらえようとしても漏れる涙を不自由な手で拭きながら、きっとレックスを睨んでうなずく。 「おまるで漏らす?」 うなずく。 「じゃあちゃんとお願いしなきゃね。『オレは人の見られる前でうんちを漏らすのが好きな変態です。肛門からいっぱいうんちを漏らすところを全部見てください』って」 「…………!」 ナップは一瞬しゃくりあげるような声を立てたが、泣き出しはしなかった。その代わり、少しだけ涙の混じった声で、言われるままに繰り返す。 「オレは、人の見られる前でうんこを漏らすのが好きな、変態です。肛門から、いっぱいうんこを漏らすところを、全部見てください」 「いい子だね」 レックスはナップの頭を優しく撫でると立ち上がり、ナップの首についた鎖を軽く引っ張った。ナップは引っ張られるたびにびくんと震えながら、四つん這いでおまるのところまでやってくる。 おまるにまたがるナップ――だが、レックスは栓を取ろうとはしなかった。 懇願の視線でこちらを見つめるナップに、レックスは笑う。 「せっかくだからさ、ナップ。ゲームをしようよ。俺のをしゃぶって満足させてくれたら、栓を抜いてあげる。駄目だったら自分のお尻の力だけで栓を抜くんだ。どう?」 「…………」 ナップは無言で、泣きそうになりながらも諦めたように口を開いた。レックスは笑いながらズボンを下ろし、ナップの顔の前にペニスを突きつける。 ちゅ……じゅぷ……じゅぱ……ぴちゃ……。 便意に耐えながら、必死に唇と舌を動かすナップ。レックスは微笑みながら、腰を前後に揺らした。 「ほらほら、もっとちゃんと舌を動かして。頑張らないとうんちができないよ?」 「ん、んう、うう」 ナップがいくら懸命に舌を動かしても、襲い来る便意に必死に耐えているこの状況ではレックスを満足などさせられるわけがない。それがわかっているのか、レックスはしばらくナップに口を使わせたあと、するりと口からペニスを抜いた。 「しょうがないなぁ、ナップは。そんなに自分で栓を抜きたいのかい?」 力なくかぶりを振るナップに構わず、レックスはしゃがみこんだ。 「仕方ない、手伝ってあげるよ。気持ちよくなったら栓が抜けるようになるかな?」 そう言うやナップの幼茎を優しく握る。手に香油を垂らし、幼茎の先端から睾丸まで、香油でぬるぬるにしながらぐちゅぐちゅとしごく。その巧みな手業に、便意も最高潮だというのにナップの幼茎は固くなっていった。 「や……やめ、やめろよ……やだ、漏れる、漏れちゃう……」 「漏らしちゃえばいいじゃないか。下はおまるなんだし。栓と一緒に漏らしちゃえ」 「やだ……お願い、栓、抜いて……」 レックスは懇願を聞き入れずどんどんと手の動きを激しくしていく。ナップの声に喘ぎが混じり始めた。 「やだ、あっ、んっ、抜いて、おねが、いっ、やっ、出ちゃ、出ちゃう、やだよぉっ!」 「栓抜いてほしい?」 レックスは自身もペニスをしごきながら、そう訊ねる。 「抜いて、おねが、抜いて、あはぅっ」 「じゃあこう言ってごらん。『オレはうんちでイっちゃう最低の変態です。お尻の穴におちんちんを入れてぐちゅぐちゅにかき回して種付けしてほしいです』って」 ナップは涙をぽろぽろとこぼしながら、それでも言われるままに叫んだ。 「オレはうんこでイく最低の変態ですっ! ケツの穴にちんこ入れて、ぐちゅぐちゅに、かき回して種付けして、ほしいですっ……!」 レックスはにっこりと微笑んで、ナップの幼茎を思いきりしごきながら栓に手をかけた。 「じゃあ言った通りに、うんちでイってごらん!」 「あ……はぁぁーっ!」 ぐちゃぶびびゅぶぶちゅびゅるるるっ! 盛大に大便を漏らしながら、精液を吐き出すナップ。 レックスはおもむろに立ち上がり、その顔に、最大限にまで勃起した自身のペニスから精液を吐き出した……。 「うぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!」 レックスはまたも、絶叫と言っていいくらいの悲鳴を上げながら跳ね起きた。 ベッドの上で左右を見渡し、そこがいつも通りの自分の部屋だということを確認して、溜め息をつく。 「………また夢………」 またも愛する生徒をネタにした夢を見てしまった。 しかも今度は変態度五割増し。あんなもんを見たら吐き気を催すのが普通の人間だろうというところまでいってしまった。 「俺はっ……俺は、絶対にあんな趣味はないっ!」 いかに夢で見たと言っても、あんなことをナップにしたいとは絶対に思っていない。あんな……あんな、人間としてどうかと思われるようなところまで、自分は歪んでいない。絶対。 誰に向けてか必死に力説し、何度もうなずいたところ―― 下半身に違和感があることに気がついた。 「…………まさか…………」 まさか、まさか、まさか、まさか。 恐怖に震えながらそろそろとズボンの中をのぞきこみ―― 「――――!」 絶句して、ばばっと勢いよくズボンを脱ぎ捨てる。恐ろしいものを見るようにズボンを見つめ、頭を抱えて絶叫した。 「お、俺って奴は……俺って、俺って奴はあぁぁぁぁぁ!」 「せんせーっ! 早く起きて授業してくれよー……って、またなにやってんの?」 部屋に入ってきて、泣き叫ぶレックスを奇妙なものを見るような眼差しで見つめるナップ。 その清らかな眼差しを見て、レックスはぼろぼろぼろっと目から涙をこぼすと、ズボンをひっつかんで部屋の窓から外に飛び出した。 「先生!? なにまた変なことやってんだよ!?」 「ごめんよぉぉぉっ、ナップぅぅぅぅっ! 俺は君の先生の資格がないっ、人間のクズ以下の存在なんだぁぁぁぁっ!」 「先生、なんだかよくわかんないけどズボン穿けよ!」 結局レックスはやはり昼には戻ってきてナップの授業をしたが、その進みはおそろしく遅かった。 いったいなんなんだよ、というナップが問う度に、レックスは泣き叫びながら遁走しようとするので、やはりナップは口を噤むしかなかったという。 |