ボクがガルガドに怒られるワケ
 オーファンの盗賊ギルド幹部、鼠≠フ長デュラインからの呼び出しがきたのは、ノリスが無事自分の体を取り戻してから数日経ったある日のことだった。
「名指しで呼び出し? ボクに?」
 ノリスは可愛らしく小首を傾げた。現在の格好はロングヘアの鬘にヘッドドレスをつけ、あちこちにフリフリのフリルがついたエプロンドレスというメイドかウェイトレスかという格好――要するに女装である。
 ファンドリアの特殊工作員、顔のない<Nランズに体を奪われ、エルフの宝物を奪ったり《青い小鳩亭》に火をつけたりと悪事の限りを尽くされてしまったノリスは、ほとぼりが冷めるまで外に出る時は女装しているのだ。
 その格好を連絡役の盗賊はにやついた顔で見やって言う。
「ああ、噂の真偽とギルドへの上納金のことで聞きたいことがあるってことだったぞ」
「ふぅん?」
 ノリスはまた小首を傾げる。噂――というかある意味根も葉もある真実の違法行為についてならギルドにはすでに釈明済みだ。上納金についても一度払い忘れてひどい目に会ってからはきちんと納めるようにしてある――というかこの前納めた時からまだ一年経ってない。
 第一鼠≠フ長が冒険者のノリスになんの用があるというのだろう。ノリスは一応穴熊≠ノ属しているわけだし、仕事関係ならそっちの方から話が来ると思うのだが――
 だがノリスはすぐに考えるのをやめた。どうせギルド幹部からの呼び出しに逆らうなんてできないのだ、素直に呼び出しに応じてさっさと話をつけてくるべきだろう。
 ……ここらへんの思考の切り替え――というか放棄の早さは経験を積んで幹部になってもおかしくないほどの腕前になっても一向に変わらない。
「わかった。今日の夜だね。場所はどこ?」
「《妖精界への扉亭》だ。場所は知ってるな?」
「うん」
 ノリスはうなずいた。オーファンでも最高級の宿屋だ。盗賊ギルドの幹部にふさわしい場所だろう。
 ――平の盗賊と話をするのになんでわざわざそんな場所を選ばなくてはならないのか、とここで疑問に思ってもおかしくないところなのだが、ノリスは全然そんなことには気づかなかった。
「あ、それと注文だぜ。来る時は必ずその女装したカッコで来ること」
「………へ?」
「どういうことかわかるだろ? まぁせいぜい楽しませてもらうこったな」
 げへへへ、と下品な笑い声を上げる相手の盗賊になんとなくつられてノリスも笑った(相手の盗賊はその伝説的な阿呆っぷりゆえノリスのことを馬鹿にしきっているが、純粋な技量ならノリスはかなり年上のこの盗賊より上だろう)。
 ノリスにはどういうことなのかちっともわかっていなかったのだが(そこらへんが平の盗賊から昇進できない所以だろう)。

 家族に今日は幹部に呼び出されたから夕食いらない、と告げ、ノリスは部屋でこっそり着替えて出発した(祖母に見つかると怒られるので、堂々と女装するわけにはいかないのだ)。
 仲間たちには呼び出しを食らったすぐあとに会っているから(《青い小鳩亭》跡地で溜まっている時だったのだ)、自分を訪ねてきたりはしないだろう。高級なご飯〜、とちょっと楽しみにして鼻歌を歌いながらとことこ歩く。
 その姿は歩き方といい仕草といいどこからどう見ても可愛らしい女の子そのもの、少しも違和感はない。おまけに今日は変装のノリもよかったし、服を剥がなければ相当な腕利きでもこのメイド姿の少女が実は少年だとは見抜けないだろう(具体的に言うと達成値20ぐらい)。
 その可愛さに目が眩んだか、一人のちょっと金持ってそうな青年がノリスに寄ってきた。
「君可愛いね。よかったら僕と一緒に食事でもどうだい? おごってあげるよ」
 一瞬心が動きかかったが、ノリスはにこっと可愛らしく笑って首を振った。
「ごめんね、これから約束があるんだ」
「そんなこと言わずにさ、行こうよ。ねぇ……」
 手をつかもうとするのを軽く避けて、とん、と膝裏を軽く蹴り、かっくんと腰を抜かしたところに微笑みをひとつ。
「おいたはダ〜メ。暇な時だったら遊んであげるからv」
 その笑顔に青年はぽうっとなるも、ノリスは気にもしないで道を急ぐ。
 ちなみに、ナンパのあしらいに馴れているのは気のせいではない。ノリスは女装しなくても、男の子好きの男にはけっこうモテていたのだ。職業上その手の場所をうろつくことも多いし。
 ノリスの処女を奪ったお兄ちゃんに教わったのであからさまなナンパはかわせるが、言葉巧みに言い寄られてぱっくりいただかれちゃったことは何度かある。それも最近まで。
 だがノリス的には『最初からそのつもりだったわけじゃないし、お小遣いもらっても平気だよね?』で全然罪悪感を抱かないのでガルガドにもまだバレていない。
 ともあれナンパをかわしつつ《妖精界への扉亭》に到着し、受付に待ち合わせしている人間を言って部屋に案内してもらう。
 高級感溢れる宿屋の中を、ちっとも緊張しないままボーイに案内されて真ん中ほどの部屋に案内される。ボーイがノッカーを叩いて、声をかける。
「お客様をご案内いたしました」
「通せ」
 落ち着いた声が返ってくる。ボーイは扉を開き、ノリスが中に入ってから一礼して扉を閉めた。
 中はすごく広い、とまでは言わないが《青い小鳩亭》よりは高級感溢れるしつらえになっていた。その奥のテーブル前の椅子に、デュラインらしき壮年の白髪の男が座っている。
「ノリス・ウェイストックです。なんの御用でしょうか?」
 慣れない敬語を使いながらぺこりと頭を下げる――だがその様子を頭の上から下までじろじろと見られて、ノリスはう、と思った。
 なんか視線がやらしい。これって、もしかして。
「来たか……まぁ、かけなさい」
「はい」
 言われてとことこと歩いて向かいの椅子にかける。その様子を、デュラインはじろじろにやにやと観察していた。
「……噂には聞いていたが、見事な変装だな。どこからどう見ても女にしか見えん」
「はぁ。どうもありがとうございます」
 じろじろ舐めるような視線で見たあとの一言に、ノリスはきょるん、と瞳を動かした。
「今日呼び出したのはな……君の身体を乗っ取ったファンドリアの工作員のしでかしたことについて、だ」
「はぁ。でも、もう説明はしましたよね? あれはボクの意思でやったことじゃないって」
「だが、君はまだ素顔で外を歩くことができないほど評判が悪いな?」
「はぁ……」
「そこで、だ。私が特別に、君のその評判を回復させてあげよう。有能な盗賊が不遇を囲っているのは、見るに忍びないからね」
「え、ホントですか? ありがとうございます」
「ただし、だ………」
 デュラインはにやぁと、思いっきりいやらしい笑みを浮かべる。
「君にもそれなりの誠意を示してもらわないと、なぁ? わかるね、君?」
「………はぁ………」
 やばいなーそう来るんじゃないかと思ってたけどやっぱそう来たなー、と思ってもいまさらもう遅い。
 いやらしいヒヒジジイそのものの顔で、デュラインはにたにた笑って言った。
「一晩で解放してやる」
 その言葉に、ノリスはすぱっと諦めた。あ、一晩ならいいや、抵抗しなくても。相手はヒヒジジイだけど、ギルドの幹部だし逆らっちゃまずいよね、と。
 ……そこらへんの軽さがガルガドをして未だにヘボシーフ呼ばわりさせている原因なのだが、ノリス自身は全然気づいていない。

「膝をついて、奉仕しろ」
「はーい」
 あっさり答えて、ノリスは前をくつろげたデュラインのペニスにキスをした。それは年齢を現してだらんと垂れ下がっていたが、大きさそのものはなかなか大きい。
 ちゅ、ちゅ、とまず亀頭にキスをして、ぺろぉんと舌を出してペニスを上から下まで舐めていく。ふぐりも口に含んでちゅぱちゅぱと愛撫する。幹がよだれでべとべとになってきた頃を見計らって、れろぉんと下から舐め上げながら口に含んだ。当然時々上目遣いで顔を見上げつつ。
「う……おお、いいぞ………」
 デュラインが満足気な声を上げる。なにせ器用度ボーナス+3、お口もなかなかに器用なのだ。
 ちゅぱ、ちゅぱ、と吸い上げときおり口から出して見えるように舐め上げ、時には喉の奥までペニスを導いて前後に動かし――
 ノリスはデュラインのペニスを、完全に勃起させていた。
 うわぁけっこう年なのに元気だなぁ、かなりでっかいし、とかノリスは思った。これだけの大きさと固さの一物が自分の中を擦り上げるところを想像すると、ちょっと背筋がゾクゾクとする。
「あぁ……上手だな、いい子だ。……そこの壁に手をついてお尻を突き出しなさい」
「はぁい」
 ノリスは素直に立ち上がり、壁に手をつき尻を突き出す。ノリスにこの程度のことで減るプライドはない。
 デュラインはにたにたと笑いながら(当然前丸出しのまま)ノリスに近づいて、スカートを捲り上げておほぅと喜びの声を上げて尻を撫でた。
「女物の下着を穿いているのか。わかってるじゃないか」
「あん……」
 尻もばっちり性感帯のノリスは思わず声を上げる。女物の下着を穿いているのはスカートめくり対策のためなのだが(ノリス自身がよくやったので警戒しているのだ)、わかってるなと褒められるとちょっと嬉しい。
 デュラインはピンク色のノリスの下着のレースに沿って指を滑らせながら、前の方に手をやった。そしておぉ、と歓声を上げ前をまさぐりながらまたにやついた声を出す。
「もうおちんちんをこんなに大きくしているのか。いけない子だ」
「やぁん……」
 若さと感じやすさゆえ、ノリスの陰茎は三分の一ほど勃起していた。その大きさの控えめさゆえまだ可愛らしい女物下着の中に収まってはいるが、それでもはっきり形がわかるほど下着の前を持ち上げている。もう少し大きくなれば下着からはみ出してしまうだろう。
「ちょっと触っただけなのにこんなに大きくして。こんないやらしい子にはお仕置きしなきゃいけないなぁ」
「やぁ……ごめんなさい……」
「許してほしいか?」
「はい……」
「じゃあ『ちょっと触られただけでおちんちんおっきくしちゃってるいけないノリスにお仕置きしてください』って言いなさい」
 この人言葉攻め好きなんだー、しかもおじさんとボク系、と思いながらノリスは体を揺らして言う。許してほしいのにお仕置きしてと言えというのは不条理だが、こういうのもプレイの醍醐味というやつだ。
「ちょっと、触られただけで、おちんちんおっきくしちゃってる、いけないノリスに、お仕置き、してください」
「いいだろう。スカートを捲り上げて、お尻を出しなさい」
 やっぱあれやるんだな、と少しドキドキしながら言われた通りスカートを捲り上げて下着をわずかにずらす。ぷりんとして瑞々しいノリスの尻がデュラインの目の前に突き出された。
 じゅる、とよだれをすする音が聞こえたかと思うと、デュラインはノリスの腰をつかんでパァン、と尻に平手打ちした。
「あんっ!」
 ノリスは思わず叫んで体をよじる。けっこう強烈な打撃だった。
 スパンキングの経験はけっこうあるが、ノリスはこれが嫌いではない。痛いしあとで尻が腫れたりするのだが、鞭で叩かれたりするのより体温と手の柔らか味がある分優しい刺激になるのだ。
 デュラインはノリスが叫ぶと興が乗ったのかパァン、パァン、と平手打ちを繰り返す。
「ほぅら、ほぅら、ほらほらほら!」
 パァン、パァン、パンパンパン!
「やっ! いたっ! 痛いいたっやぁっ、ごめんなさーいっ!」
 最後の方はちょっと本気で許しを請うほど強烈な平手打ちをかまされ、ノリスは解放された。思わずその場にへたへたとくずおれる。
 デュラインはノリスを立たせ、前の方に手をやった。下着の中に手を突っ込んで初めてノリスの陰茎に触れ、にやりと笑う。
「本当にノリスはいけない子だ、おちんちんをちょっと濡らしてるじゃないか」
「え……」
 それは本気でちょっと意外で、ノリスは驚きの声を上げる。スパンキングで気持ちいい、と言い切れるほどの感覚を感じたことはなかったのだが。
 だがデュラインはその無骨な指を繊細に動かし、ノリスの前を弄る。亀頭を直接太い指で擦られ、ノリスは思わず悲鳴を上げた。
「やっ! 痛いっ!」
「痛いのがいいんだろう? ほらほらおつゆがどんどんこぼれてきたぞ」
「あっ、やっ、たっ、やぁぁ……」
 デュラインはもう一方の手で、尻、それも後孔周辺を少しずつ撫で回し始めた。しかもいつの間にか潤滑油をたっぷりつけて。
 後孔を濡らされ、指先で入り口をちょいちょいとこじられ、前の方も亀頭だけでなく幹をしごかれたりもして、ノリスは本格的に感じて勃起してきた。
「あん、やん、そんなとこ、いじらないでぇ……」
「いじってほしいんだろう? ほらほらどんどん先っちょが濡れてきたぞ。お尻いじられてこんなに大きくしちゃうなんてなんていやらしい子だ」
 ――ちなみにこういう喘ぎ声やおねだりにはちょっと演技が入っている。いかにノリスが感じやすいとはいえそう簡単に前後不覚になったりはしない。
 でもその方がどんな人にも受けいいし、その方が自分もノレるし、というのでノリスはこういう時ある程度は積極的に演技を交えることにしている。
 デュラインが前をいじっていた指を下着から抜き、ノリスの口に持っていった。これはあれかな、と察して咥えたそうに口を開けてやる。
「そんなに私の指を咥えたいのか? お前のいやらしいおつゆを舐めたいのか?」
「はぁい……舐めたいですぅ……」
「よぅし、口の中に入れてやろう。ほら、舌を使って舐めて、吸いなさい」
 ノリスは素直に従ってデュラインの指をまるでペニスを舐めている時のように舐め、吸う。複数の指が口の中で、舌を挟み口の内壁をいじる。
 まるで激しいキスをされているような感覚にノリスが酔い始めると、デュラインはぐいっとノリスの上体を起こさせて口中の指を抜き、つつぅと首から下方へと滑らせながら言った(ちなみに、その間も後孔は休みなく広げられている)。
「さぁ、次はどうしてほしい?」
 うーん、このタイミングからすると……これかな?
「……おっぱい、いじって、ください……」
 その言葉は正解だったらしく、デュラインは嬉しげな声で言ってきた。
「おやおや、ノリスは男の子なのにおっぱいが感じるのか?」
「はい……」
「じゃあちゃんとおねだりしなさい。『ノリスは男の子なのにおっぱいが感じる変態です、おっぱいいっぱいいじってください』。ほら」
「ノリスは、男の子なのに……っ、おっぱいが、感じる、変態ですぅ……っ。おっぱ……い、いっぱい、いじってくだ……さい」
 この途切れ途切れになっているところはデュラインの指がノリスの後孔のいいところを擦ったせいだ。さすがはヒヒジジイ、テクニックは決して悪くない。
 デュラインは興奮でわずかに声を上擦らせながら、服の上からノリスの胸に手をやった。
「よぅし、いい子だ。いっぱいもみもみしてあげようなぁ」
「あぁん……」
 もみもみ、もみもみ。服の上から力強く、それでいて柔らかいタッチで胸を揉まれる。しばらく揉みしだかれたあと襟から手を入れられて直接にも。
 ノリスは胸がすごく感じるというわけではないが、優しくいじられればそれなりに気持ちいい。「あん……やぁ……ん、ふぅん……」と演技半分で声を上げた。
「おっぱい気持ちいいか、ノリス?」
「はぁい……気持ちいいですぅ……」
「そうかそうか。じゃあちゃんと気持ちいいところ見せなきゃなぁ?」
 そう言ったデュラインの手が襟元の布地をぐいっと引っ張ったので、ノリスは慌てて普通の声になって言った。
「あの、服破かれたら困るんだけど」
 慌てたあまり敬語も忘れていたが、ひどく上機嫌なデュラインは気にしなかった。
「ああ、心配するな、新しい服はちゃんと用意してある」
「……そーですか」
 ならいいや、とあっさりノリスは切り替えた。ノリスは衣装に対する執着はあんまりない。
 びり、びりびり、とメイドのような服を破かれ、胸周りを露出させられる。にやついた、ひどく嬉しげな声でデュラインは言った。
「乳首が立ってるなぁ。そんなに気持ちよかったのか?」
「はぁい……」
 ノリスはわりと感じるとすぐ乳首が立つ方だ。デュラインは立っていたのがよほど嬉しかったのか、ノリスを自分の方に向かせて身をかがめ、ちゅ、ちゅ、と乳首を吸ってきた。
「やぁ……いぃ……気持ちい……あん……」
 乳首を舐めたり吸われたりするのはノリスはけっこう好きだ。胸を揉まれながらやられると、かなり感じる。
 デュラインがなかなか揉んでくれないので仕方なく「おっぱい……揉んでぇ……」と言ってみると、にやりと笑って吸いながら揉んでくれた。
「あん……やぁん……はぁ……い……あっ!」
 最後の叫びは乳首を噛まれたからだ。優しい刺激のあとに強烈な刺激がくると、痛さと紙一重の強烈な快感を感じる。
 デュラインはその反応ににやりと笑い、また後孔をいじりながらひどく嬉しげににやついて言う。
「本当にお前はいけない子だなぁ、ノリス。私の知ってる中で一番いやらしい子だ。乳首なめなめされて、こんなにおちんちんおっきくしちゃうんだものなぁ」
「あんっ」
 もう下着から完全に先端をはみ出させている陰茎をぴんとはじかれ、ノリスは嬌声を上げた。
「こんないやらしい子にはお仕置きしなくちゃいけないなぁ。ノリス、どんなお仕置きされたいか言ってごらん?」
 ノリスは荒い息をつきながら数瞬考えた。もう始まってからけっこうな時間が経っている。全開にしているデュラインの前は、相変わらずビンビンだ。
 自分の欲望と相手の欲望、双方を計算に入れて考えて、そろそろ勝負に出るべきだと結論を出した。
 恥ずかしそうに目元を赤らめて、上目遣いで、掠れた声で途切れ途切れに言う。
「ご主人様の……おちんちん……ボクの、お尻の穴に、挿れて、ください………」
 服装に合わせたご主人様′トびのこのおねだりは大当たりだったらしい。デュラインの鼻の下がさらにびろーんと伸びて、めちゃくちゃにやついた顔で言われた。
「もっとちゃんと言わなきゃ駄目だろう?」
「ちゃんと……?」
「こう言うんだ。『ご主人様のぶっとくて固いチンポを、スケベで変態なケツ穴奴隷のノリスのいやらしいケツ穴に入れて、ぐちゅぐちゅにかき回してください』」
「……ご主人様の……ぶっとくて、固い、チンポを……スケベで、変態な、ケツ穴奴隷の、ノリスの、いやらしいケツ穴に入れて、ぐちゅぐちゅに、かき回してください……」
 このあまりに下品な言葉には、さすがのノリスも少し本気で恥じらった。だがその恥ずかしさがまた興奮を呼び、下着からはみ出た陰茎がぴくぴくと動く。
「『ご主人様のおっきなチンポでボクのいやらしいケツ穴がおっ広げて閉じなくなるまで犯して、いっぱいザーメン注ぎ込んで種付けしてください』。さぁ言え!」
「ごしゅ、じんさまの、おっきな、チンポで、ボクの、いやらしい、ケツ穴が、おっ広げて、閉じなくなるまで犯して、いっぱいザーメン注ぎ込んで、種付けしてくださいっ……!」
 後孔をいじられながら、奥まで指を突き立てられながら、いやらしい言葉を言う快感にノリスの身体は思わず震えた。
 デュラインが興奮しきった声で「ようしいい子だ!」と叫び、ノリスの手を壁につかせて尻を突き出させ――ぐいっと挿入した。
「…………はっ…………!」
 久しぶりの挿入に、ノリスは思わず短い悲鳴を上げた。壮年の男とは思えぬ硬度のデュラインのペニスが、充分に広げられたとはいえまだまだ狭いノリスの後孔を、ぐいぐいと分け入って奥に進んでくる……。
 デュラインはノリスのビンビンになった陰茎をいじりながら奥へ奥へと進んでくる。思いきり腰を引き寄せられ、ぱんっと音がするほどの勢いで最奥を突かれ、ノリスは嬌声の入り混じった悲鳴を上げた。
「はぁーっ……!」
「ノリスは本当にいやらしい子だ、こんなにチンポを締め付けて、そんなに挿れてほしかったのか? にゅくにゅくのくにゅくにゅじゃないか、ほら」
「やはぁぁんっ……!」
 ずん、とまた最奥を突かれる。それからずずずぅっ、と後孔の中の肉を引き出すような勢いで引き抜かれ、ノリスは今度こそ完全な嬌声を上げた。
「はや、ふぁぁん……!」
 それから先はもう決まっている。熱くて固いペニスで後孔をかき回され、いろんな場所を突かれながら抜き差しを繰り返される。
 その律動のたびに体と陰茎が震え、背筋にゾクゾクと快感が走る。たまらなくなってノリスはちらりとデュラインの方を振り向いた。
 デュラインは上着を脱ぎ捨てていた。上半身があらわになっている。その腹が、思ったより引き締まっているのを見て、ノリスは自分でも思いもしなかったほど燃え上がった。
(……こ、このおじさん……ヒヒジジイだけど、カッコいいかもしんないっ!)
 快感に耐えながら抜き差しを続けるデュラインの顔は意外と年輪を重ねた男らしい味わいがあった。見られているのに気づいたのか、デュラインがにやりと笑ってぐいっとノリスの上体を起こす。
「や……はぁぁんっ!」
 下から突き上げるようにして抜き差しされ、ノリスは強すぎる刺激に悲鳴を上げた。上体を起こせば律動は上下運動になる。つまりノリスの体重で横向きよりはるかに深く刺さるのだ。
「や、は、あぁ、あぁんっ」
「気持ちいいか、ノリス!?」
 年齢に似合わず強い腰でノリスを抱え上げるようにして抜き差ししながら、下着ごとノリスの陰茎を扱くデュライン。その声にはかなり余裕がない。
 だがノリスはそれ以上に余裕がなかった。先走りの露で下着はぐしょぐしょ、陰茎は下着を破らんばかりに完全に勃起しながらぴくぴく震え、メイド風のスカートを形がはっきりわかるほど押し上げている。
「はっ、いっ、きもち、い、ですぅっ」
「じゃあ気持ちいいって言え! ケツ穴突かれて気持ちいい変態ですって言え!」
「ボ、ボクはっ、けつあな、つかれて、きもちい、へんたい、ですぅっ……! あ、あー、ダメッ!」
「イイか? イくか!? イくのか!?」
「あー、あー、ダメッ、もうダメダメッ、イく、イっちゃうーッ!」
「よぅしイけっ、俺もイくぞっ、中に出すぞっ、くぅっ!」
 どぴゅどりゅでゅぷびゅくっびゅくっ。
 体内にたっぷりと精を注ぎ込まれ、女物の下着とスカートがべしょべしょになるほど精を放出し、「はー……はー……」と荒い息をつきながらノリスはデュラインの胸にぐったりと寄りかかった。

 それからさらに二度、ベッドで犯されよがらされ、唇からお尻まで全部吸われ舐めまわされ、精根尽きはてるまで搾り取られてようやくノリスは解放された。
 壮年の男とは思えぬその精力は、どうやら薬を使っていたらしいと偶然鞄の中を見てわかった。
「久しぶりに堪能させてもらった」
 事後の一服を楽しみながら、デュラインが満足気に言う。
「そーですか。そりゃよかったです」
「どうだ、私のものになる気はないか? お前の腕は相当なものだそうだし、将来的にはそれなりの地位につかせてもいい。これだけ体の相性がよければ、うまくやっていけると思わんか?」
 ノリスはちょっと考えたが、首を振った。
「ボク、いちおー冒険者なんで。冒険者は自由が表看板なんですよ。やっぱり、もーちょっとみんなと気楽に冒険してたいし。……最近はそう気楽にもしてられないけど」
 デュラインは失望の表情を浮かべたが、そこは曲がりなりにもギルドの幹部、にっこり笑ってうなずいた。
「そうか。気が変わったならいつでも言ってくれ。……一年以内にな」
「なんで一年以内?」
「私は本来はもう少し年若い子が好みなんでな。お前の女装があまりに見事なのと幼い顔をしてるので手を出しただけで。これ以上でかくなられたら困る」
「……そーですか」
 ま、別にいいけどね、と思いつつノリスはデュラインが用意した高そうなゴスロリ風メイド服を着こんで部屋をあとにした。
 そして宿を出て百歩ほど歩いてから気がついた。
「……あの人ご飯おごってくれなかった」
 ぐるるる、とノリスの腹が大きく鳴った。

 結局自腹でそこらの店で済ませて翌日。ノリスは今日も女装して《青い小鳩亭》跡地にいた。
「実際さー、女装も毎日やると飽きてくるよね? まつげ立てるのとか自然な感じにお化粧するのとか、毎日だとけっこー面倒くさいしさー」
「……わしの努力を無視して平然と女装しておきながらその態度はなんじゃクソガキ……!」
 今日はカレンさんに借りた衣装をまとい、ちょっとハイソなお嬢さま風のノリスの胸元をつかんでがっくんがっくん揺らすガルガド。ノリスの顔がだんだん青黒くなっていくのもおかまいなしだ。
「まーいいんじゃないの? 似合ってるんだし。どっからどう見ても女の子にしか見えないもん」
「よくないですよマウナさん! 僕が一瞬エルフ耳を妄想してしまうような女の子に扮されちゃあ、精神衛生上極めてよくないじゃないですか!」
「エキュー……あんたね……」
「まぁ太古の昔から英雄近辺の美少年は女装するものと決まっていますからな。エキューもやってみたらいかがですか?」
「バス……+1魔法の槍と戦乙女の投げ槍、どっちに突っこまれたい?」
「まぁ実際ノリスは女装すると女にしか見えんのだよな……どこぞの女の風下にこそっと遠慮しながら置かれてる筋肉鉄塊よりはよほど女らしいぞ」
「ヒース兄さん……わたしのプレートアーマーがヒース兄さんを思いきり抱きしめたいと主張しているのですが、実行してよろしいでしょうか?」
「すいませんボクが悪かったですからアイアンメイデンは勘弁してくださいイリーナさん」
 そんないつも通りの会話を繰り広げるヘッポコーズの前に、たたーっと一人の盗賊が走ってきた。
「ノリス・ウェイストック! デュラインさんからプレゼントだぜ?」
「ん? ボク?」
 小首を傾げながら前に進み出ると、昨日と同じその盗賊はにやついた顔を隠すように小さな箱をノリスの目線の高さに持ち上げた。ノリスはあっさり受け取って箱を開ける。周囲の仲間たちもなんとなくその箱に注目した。
『………おお〜………』
 全員思わず声を上げる。そこには庶民にはとても手が出ない値段であろう、気品のあるダイヤのブレスレットがカードつきで入っていたのだ。
 ノリスはその二つを一緒くたに取り上げて、眺めやる。
「うわー、ダイヤのブレスレットかぁ……売ったらいくらになるだろ」
「い、いや、売らない方がいいと思うぜ? デュラインさんにバレたら大変なことになるだろ」
「あ、そっか……カードにはなんて書いてあるかな〜……」
『楽しい一時に心ばかりの礼を デュライン・カッシュベル』
「………ふーん」
 さんざんやられてご飯もなしで、少し面白くなかったノリスだが、そのちょっとセレブな返礼に機嫌がよくなってきた。ブレスレットをつけて仲間たちに見せる。
「どうー、似合うー?」
「うーむ、そのカレンさんの体を包んだであろうハイソな服に包まれたノリスがダイヤのブレスレットを……てめぇ調子に乗ってんじゃありませんぞ、少しその幸運を分けてくれなさい!」
「うわっ、高そう〜! ちょっとノリスずるいわよ、どこでそんなもの買える人と知り合いになったの!」
「似合う似合わないよりあくまで値段にこだわるマウナさんも素敵です……ていうか実際不釣合いだろう中身には」
「でもでも、その格好のノリスにはそのブレスレットかなり似合ってます! ね、チビーナ?」
「はいでつまま! きらきらでぴかぴかなのでつ!」
「うむ、そうですな。セレブな雰囲気がなかなか似合っておりますぞ」
「……男に宝飾品はどうかと思うのだが……それよりクソガキ。そんな高そうなもの誰からもらった」
「えっとね、デュラインさんて人」
「なんでその人がそんなものをお前に贈る」
「楽しい一時のお礼だって。昨日ちょっと相手してあげたからそのお礼じゃない?」
「相手……? ちょっとの相手で普通ダイヤは買わんだろう」
「――デュライン。鼠≠フ長の、デュライン・カッシュベルですかな?」
「うん、そうだけど?」
「……バス。知っておるのか?」
「えぇ、まぁ、噂だけならば。盗賊ギルドの幹部でしてな、優秀で気前がよくてギルド内での信望も厚いのですが、少年愛好家という悪癖がありましてな。盗賊見習いの少年などに、少女の格好をさせてちょっかいをかけるのが大好きだそうでして……」
『……………………』
「………おい、ノリス。正直に答えろ」
「えー、なにー?」
「……貴様、まさか、まさかとは思うが……その男と……その……一夜の契りを交わしたのではっ、あるまいなっ!?」
 全員が沈黙して注視する中、ノリスは照れくさそうに小首を傾げた。
「………てへっv」
 数秒の沈黙のあと、ガルガドが大噴火した。
 本気でメイスを振り回しながら、「あのクソガキを殺してわしも死ぬ!」と叫ぶガルガドに、仲間たちは深い同情を捧げたという。

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