ヘルマン・ヘッセの「車輪の下」などを何気なく読みはじめたら意外に面白くてはまった。この小説は確か、高校のときトンチンに「ヘッセの『車輪の下』ってスッゴク面白いよ!」とすすめられ、15年前に読んだきりなのだ。ところがそのときは読みやすいと思っただけでまったく解らなかった。今のトンチンは音楽ばかりで読書から遠ざかってしまったので、なつかしいことである。
ちなみにヘッセは美少年趣味の女の子なんぞに人気があるらしい。そこらへんのつまらないヤオイ小説なんかを読むよりはよほど感心なことだが、俺としてはヘッセを読みながら竹宮惠子とかの絵図がふっと脳裏をよぎったりすると非常に興醒めするぞ。
そんなこんなでまた朝までだらだらと起きていて、朝8時頃やっと寝た。昼過ぎ、悠里から「Kさんが来ておりますのですぐ来てください」との電話で無理矢理起された。まだすごく眠かったのだが、仕方なく顔を洗って腫れぼったい目で事務所に出勤した。
Kさんは韓国人でフリーで広告代理店をやっている気の良いおじさんである。Kさんと仕事の話をして、来週一緒に中華料理で紹興酒を飲む約束をして、彼は帰っていった。
Kさんと入れ違いで、「そしてギターは」のamigoさんがやってきた。
網さんはパフォーマンスの次なる天地として、来年故郷のウエスト・リバー・タウンに帰ってしまうので、その挨拶回りと、俺に行けなくなった映画のチケットをくれるために、わざわざやって来てくれたのだった。彼が東京を去ってしまうと、俺はまた音楽を聞きながら酒を飲む唯一の機会を失うことになるので大きな痛手だが、こういったことは男のロマンに関することなので頑張れと言うしかない。
網さんが帰ると、すでに午後2時。あわてて外出。
銀行に行き、外注先、仕入先、家賃等数カ所に振込をして、ついでに現金をおろして入金に広告代理店I社におもむいた。I社は女性ふたりが経営する広告代理店で、ふたりとも俺がかつて勤めていた広告代理店の上司にあたる。
来月うちが有限会社になることを報告すると、喜んでくれるかと思ったら「いやん、面倒臭〜い」と不満をたれながした。書類を変更しなくちゃならないんだってさ。
墨森先生の話が出て、彼は1年前にすでにうちの会社を辞めたことを言うと、知らなかったらしくえらく驚いていた。そういえばこのふたりは去年、墨森先生を彼女達の友達のTさんと引き合わせようと画策していたことがあったのだった(墨森先生は知る由もない)。
帰り、パークハイアットに寄って注文していた印鑑をゲットする。わが社の玉璽だ。やっぱり黒水牛はいいね。やっぱりハンコは印相体だね。
会社が大きくなって自社ビルが建ったら、玄関にはアメリカ・バイソンのはく製を飾ろう。