非幻想異端的日常
2003年 12月 1日 (月)
 昨日の残り物で料理をしてみたら、また失敗した。しかし昨日は予想外の失敗だったが、本日は予想の範囲内での失敗で、つまり昨日よりは大分うまく作れた。来週はもっとうまく作れるだろう。ああ、来週も挑戦するつもりだ。

2003年 12月 2日 (火)
 西新宿へ仕事で行ったついでに腹が減ったので、げんこつラーメンを食べてみた。香油ラーメンというのを注文した。最初のひとくちをすすってみて、そのあまりのうまさに驚く。しかし最後まで食べ終わると、油多すぎ味濃すぎで、酷い胸焼けに襲われた。そのまま一日中胸焼けが直らなかった。
 うまいけど油だらけのしょっぱすぎで二度と食べる気にならないというのは、最近のラーメン屋でよく感じることだ。なんとかしてもらいたい。
 それとも、俺が歳をとったとでも言うのか。

 つぶらが入社して、仕事がちょっとは楽になるかと思ったら、余計忙しくなった。年末だから仕事がゴッと増えたのだ。これでもし、つぶらが来ていなかったらと想像すると、ぞっとしない。外注スタッフももっと増やさにゃあなぁ…。
 というわけで、当社は相変わらずホメパゲ制作が出来る外注スタッフを募集中です。

 徹夜した。

2003年 12月 3日 (水)
 久しぶりに日記が書けた。絶対に毎日書こうと思っても、なぜか忙しくて書けない日々がやってきてしまう。如何ともし難い。

 今日は久しぶりに団鬼六の事務所の社長様とお会いした。今後の展開について何ごとかを話し合った。まずは、言われた通り、やるべきことをやるが吉であろう。
 途中から初めてお会いする出版関係の方が同席した。もののついでに、拙作「西遊記Z」を見せてみた。出版社の方、暫くパラパラと斜め読みした後、「これの対象年齢は?」と聞いてきた。意外な質問に気が動転しつつ、「そうですね〜、十代・二十代の娯楽活劇などが好きな若者でしょうか」と答えると、それだとちょっと漢字が難しすぎるなあと宣っていた。結局、頂けた感想は漢字のことだけだった。そんなもんか。

 SMの縛り縄を通販で売ろうかという企画案が出ていて、今日そのサンプルを受け取った。麻縄を丁寧になめした手作り品で、品質は中の上か上の下くらいとのことだが、俺にはさっぱり判断がつかない。

2003年 12月 4日 (木)
 今日はちょっと嫌なことがあったな。
 集金があって、クライアントのところに行った。以前にもいろいろあって(9月5日の日記参照)、もともとあまり好感を抱いていないクライアントである。
 駅前からそこの社長(社長さんだけはいい人だ)の携帯に電話をすると「金は事務所にいる人に渡してあるから」と言っていた。ところが事務所に行くと「お金持っている人が外出してるから戻るまで待ってて」と言われた。
 それから待つこと2時間。
 2時間だ。
 「まだですか?」と聞いても「まもなくやってくるからもうちょっと待って」の一点ばり。じきに社長がやってきて、俺を見るなり「まだいるのか!?」と驚いて、その場で金をくれた。後で、その金を持っている人というのは、どうやらその日は事務所に戻るつもりがなかったらしいと判明した。社長が戻ってこなかったら、俺は終電までそこにいて、結局金を貰えずに、帰るはめになっていたに違いない。
 年末で忙しいというのに、何が悲しゅうてこんな輩と2時間も雑談しなきゃならんのだ。理不尽な話である。日記で愚痴くらい書いても罰は当たらんだろう。

2003年 12月 5日 (金)
 深夜、そろそろめしでも食って休もうと思ったら、H社のS社長から電話があり、今夜中にホームページの更新をしてくれと頼まれた。3時くらいまでかけてやった。その後めしを食って、食後すぐ寝ると身体に悪いので、このあいだ買ったスティーブ・マーチンの映画のビデオと、インド映画のDVDを観た。観ている最中、倒れるように眠った。

2003年 12月 6日 (土)
 今夜は我が社の忘年会。つぶらの入社歓迎会も兼ねている。去年は他社の代理店の人間も多少呼んだのだが、今年は内輪でやろうと社員と外注スタッフ数人で催した。ちなみにその外注スタッフのひとりに天野も入っている。本当に内輪だ。
 場所は定番の歌舞伎町のスッポン料理屋「小松」。ちょっと前まで毎月のように通っていたので、我が社のことはすっかり覚えられている。忘年会の予約をしたときも電話で社名を聞いただけで「久しぶりですね〜」と言われた。今日、帰る時も「今年中にもう一度くらい来てくださいよ」と言われた。それはちょっと無理だ。
 スッポン一匹で三人前くらいあるところ、今日はほとんど6人で三匹食ったので、なかなか食いごたえがあった。最初に出てくる生き血もいつもより濃い目で、ぐっとやるとみぞおちのあたりがズォォッと精気に満ちてくるのが解る。スッポン・パワーは偉大だ。
 夜、帰って、疲れていたのですぐ寝たが、スッポンのお陰か深夜12時過ぎに目が覚めてしまい、結局事務所に戻って朝までキーボードを叩いて遊んでいた。

 本屋で何気なく大槻ケンヂの「神菜、頭をよくしてあげよう」というエッセイ集を見つけ、ぱらぱらとめくって読んでみた。
 大槻ケンヂのエッセイを買わなくなって久しい。その理由というのは他でもない。彼の本は何を読んでもどれも同じことばかりが書いてあるのだ。「また同じことが書いてある」「ああまただ」そう思っているうちに、いつしか買うのを辞めた。たまに本屋で新しい本が出ているのを見つけ手に取って二三ページ読んでみても、やはり以前読んだことのある内容ばかりなので、買わずにそのまま置いてしまう。
 ところがこの「神菜、頭をよくしてあげよう」は、なんとなくぱらぱらと読んでみた限りではそうでもなさそうだったので、買ってみた。読んだ。以前読んだ本と同じ内容はなかったものの、この本の中で同じような内容が繰り返し書かれていた。やられた、という感じである。もう小説以外の大槻ケンヂの本を買うのはやめよう。
 でも興味深いころもあった。彼が一時期精神を煩っていたことで、その理由として昔書かれた本には「UFOの本を読み過ぎた」と書いてあったのだが、この本では「タイでマジックマッシュルームを食べてバッドトリップをした」ことが理由になっている。昔より正直になったか、この男は。

2003年 12月 7日 (日)
 近頃、週末に料理をするようになった。俺が料理をするのは大変珍しいことである。まさに歴史的瞬間と言える。人間、変われば変われるものだ。
 今日はカレーライスでも作ろうと、スーパーに行き材料を買ってきた。ニンジン、タマネギ、にんにく、ピーマン、肉、印度カレー。俺はジャガイモの入ったカレーは嫌いなのでジャガイモは買わなかった。肉は豚肉。俺にとって、カレーに入れる肉は豚肉以外に考えられない。
 さっそく材料を切りきざみ、鍋にぶちこんで焼く。十分焼いたところで水を入れ、そのまま三時間。野菜など影も形もなくなるくらい煮こんでやった。俺の祖父は大きな肉や野菜がごろごろ入っているカレーが大好きだったが、俺は何もかもすべてドロドロに溶かして混沌とさせたカレーが好みである。数年前、最後にカレーを作った時も、豚の骨つき肉を入れ、骨がサクサクに食べられるくらいまで煮込んだ覚えがある。
 最後にカレー粉を投げ入れ、よくかきまぜ、隠し味に醤油をちょっと入れて完成した。味見をしてみると、やたらうまい。
 調子に乗って、もっとうまくなる方法はないかと、インターネットで「カレー 隠し味」で検索してみる。蜂蜜、ヨーグルト、ソース、チョコレート、ココア、本ダシ、ジャム、水飴、おろし林檎、オレンジジュース、酢、ケチャップ、コーヒー、アボガド、焼肉のタレ、イカスミ、桃缶、シナモン、バナナ、めんつゆ、牛乳、生姜、ワインなどなど、いろいろある。試しにココアをちょっと入れてみた。これがいけなかったのか、ご飯にかけて食べてみると、最初に味見をした時に比べてはるかにまずくなっていた。
 悔しいので、来週もカレーを作ろう。

2003年 12月 8日 (月)
 昨日の残りのカレーを食った。昨日よりはうまくなっていた。

2003年 12月 9日 (火)
 うちで運営しているサイトのひとつを見て、女性の外注スタッフが応募してきた。早速事務所に呼んで、面接をした。丁寧に履歴書まで持参してきた。それなりに制作はできそうだったので、試しに簡単な仕事を与えた。外注スタッフもけっこう増えた。

2003年 12月 10日 (水)
 数カ月前から絶縁していた魂の友達・ホタルさん(彼女のプロフィールに関しては2002年11月8日の日記参照)から久しぶりに電話があり、また仕事などでおつきあいをすることになった。とりあえずホームページを作ってほしいとのことで、打ち合わせに行った。
 彼女はインターネットに関してはかなり素人なので、ホームページとはどういったものか、というところから話を始めなければならなかった。しかも彼女との会話は数秒に一回、話がそれるので、なかなか先に進まない。
 結局三時間半くらい話していたが、次に会う時までにホームページの具体的な内容を考えてもらうようにお願いしただけで、帰ることになった。
 最後の方はほとんど音楽や映像の話になり、俺のiBookのiTunesを見せたらえらく感動していた。
 話はぜんぜん進まなかったが、ちょうどいい息抜きだったかもしれない。

2003年 12月 11日 (木)
 夕方、悠里と寿司を食った。その後、NA社のTさんと会った。
 NA社の事務所に入るなり、Tさんが出てきて「さあ、行きましょう」と俺を促し、すぐに外に出た。外を歩きながら、「さて、どこ行きましょうか?」とTさん。そこでああ、今日はめしを食う約束だったっけか、と気が付いた。
 あいにく俺は寿司を食ったばかりで腹がいっぱいである。でも食わない訳にはいかない。なるべく好きなものがよかろうと、「中華料理なんてどうですか?」と提案する。
 で、中華料理に行くことになった。定番の酸辣湯、小籠包、北京ダックなどを注文し、ビールを飲みながら食べた。本当は酒はやめたのだが、今日ばかりは腹がいっぱいなので、酒で誤魔化すしか仕方がなかった。
 あれこれビジネスの話をして、新宿駅前でお別れした。なかなか有意義な会合だった。また新たな展開の兆しである。

 I社のR子さんと会った。会うなり「もうおたくとの取り引きはやめようと思ってるの」とR子さん。
 「えっ、そんな。どおしてですか?」と俺。どうしても何も、先月、彼女と喧嘩したのだ。きっとあの喧嘩が尾を引いているのに違いない。クライアントと喧嘩する癖は直さないといけないな俺は。
 「某会社のHさんと言う人と取り引きすることにしたの」とR子さん。
 Hさんはよく知っている。十年前、俺がいた会社の後輩だった、五十代くらいのおじさんである。彼はあまり仕事ができる人ではなかったが、いい人だったので、彼に譲るのも悪くはないと、正直思ったりもした。しかし一応、「寂しいですね、もうR子さんの顔が見れなくなるのは」と言っておく。
 それから暫く話をしているうちに、だんだん和やかになってきて、来週、パソコンのインターネットの設定で、R子さんの家に行くことになった。最後にこれも何かの縁ですからとまとめて、I社を後にした。
 なかなか微妙だが、まあ危機はまぬがれただろうか。

2003年 12月 12日 (金)
 Kさんに電話する。Kさんは数日前会う約束があったのだが、いきなり電話が通じなくなり、保留になっていた。今日やっと電話がつながった。
 「で、どうなんですか?」と俺。
 「いやあ、ちょっとまずいことがあって」とKさん。
 「なんですか、まずいことって」と俺。
 「それはちょっと。明日会った時に話しますよ」とKさん。
 結局、訳が解らないまま電話を切った。
 なんだ、まずいことって。

2003年 12月 13日 (土)
 「アウトライブ」という韓国映画を見た。韓国には珍しい伝奇アクションである。去年映画館で見ようと思って見損ねたものだ。しかし映画館で見なくてよかった。つまらなくて途中でやめた。

 最近、映画に関する記述が少ない。最近、映画を見る機会がぐっと減ったのだ。その理由というのは他でもない。
 テレビデオのビデオが壊れたことは以前に書いた。実家からビデオを持ってきて、一応、テレビデオにつないで、ビデオは見れるようになった。つまり、テレビデオはテレビの部分だけを使っている。この状況が甚だ都合が悪いのだ。
 つまりテレビデオはもともとビデオが見れる機械なので、これにビデオをつなぐと、普通ならダビングのシチュエーションになり、プロテクトがかかっているビデオは見れなくなってしまうのだ。
 お陰で毎週ビデオは借りてくるのだが、半分以上は見れずに返却するはめになっている。なるべくプロテクトがかかっていないものをと、新作は避けているのだが、それでも見れないビデオが多い。
 というわけで、ビデオジャケットから、プロテクトがかかっているか否か判別する方法を知っている方がおられたら、ぜひ教えて頂きたい

2003年 12月 14日 (日)
 悠里と映画「ファインディング・ニモ」を見に行った。なにせ、俺と悠里はサカナが好きだ。数カ月前、映画館でこれの予告編を見た時、これは見に行くべきだとお互い確信し合った。
 で、見た。悠里は面白かったと言っていたが、俺はこれはかなり出来が悪いと思うなあ。「モンスターズインク」の方がはるかに面白かったぞ。映画館でも、途中でちらほら席を立つ客がいたしな。
 全体的に要のCGがこじんまりとしていてつまらない。クライマックスも大した見せ場がなく、映画を見終わってあんなもんがクライマックスだったのかと気が付く有り様だ。
 一番の問題はサカナの演出だ。俺はサカナの映画を見に来たのだ。サカナの着ぐるみを着た人間のドラマを見に来たのではない。そりゃサカナと言っても人間の言語をしゃべり親子の愛情を描いたりする映画だけに、人間社会を風刺してあるのは当然なのだが、それにしては何だか異様に割り切れない、この人間臭さはなんだろう。まあこれは俺のわがままな感想かもしれない。
 面白いところもあったが、とにかく俺はこの映画、大人にもお子様にもお勧めしません。

2003年 12月 15日 (月)
 第七回幻想異端文学大賞の結果を発表した。予想通り、こんな結果になった。
 前回の「花と蛇」の時も大賞不選出という不本意な結果に終わったが、今回はその下の優秀賞さえ選ばれないという体たらくだ。なにせ、枚数オーバーした、審査員のいくらかは読まなかった(読まなかった評価は0点になる)、内容も幻想異端文学から程遠い、俺のしがない娯楽活劇が合計で最高得点だったのだ。推して知るべしであろう。決して自慢しているわけではない。それだけ今回は全体のクオリティが低かったと言いたいのだ。例えば今回、前回の「花と蛇」の時と上位三作品の作者が同じだが、それでさえ優秀賞→佳作、佳作→参加賞と、一段階づつ低い方にずれている。
 二回も連続して大賞不選出などという事態が巻き起こると、幻想異端文学連盟はもう終わりなのか? などという自虐的な文句のひとつも吐きたくなる。状況を深刻に受け止める生真面目な主催者になると、これを機にサイト自体を閉じてしまうこともあり得るだろう。しかし、継続は力なりと言うではないか。幻想異端文学連盟にもあんな不毛の時期もあったなあ、といつか笑って振り返ることが出来るように、せいぜいこれからも邁進してゆくのみである。
 何せまだ七回しかやっていないのだ。長い歴史の中にはこんな時期もあるに違いない。

 さて、ここでこの日記だけで公表する新企画。名付けて“ザッピー浅野特別賞”だ。
 これは毎回、幻想異端文学大賞の参加賞の中から、ザッピー浅野がこれは参加賞には惜しいと思う作品を独断と偏見でピックアップして、この日記の中だけで誉めてつかわそうという特別企画である。本当は本番の受賞作品発表ページでやろうと思ったのだが、主催者の個人的主観を仮にも公の場で正式な賞として発表してもいいものだろうかという判断で、日記だけでやることにした。
 というわけで、第七回幻想異端文学大賞・ザッピー浅野特別賞受賞作品は、文駄多さんの「蜘蛛の糸」である。
 皆さんの評価で最低点を獲得したこの作品だが、実は俺が今回の参加作品で最も評価していたのがこの作品だった。
 この作品を読んだ時、読みながら思ったのは、なかなか面白い作品ではあるが、文章がヘタクソだなというものだった。この段階では平均点の3点評価である。ところが、後になって考えるうちに、この作品の文章の拙さは実は意図的なもので、本当は文章がすごくうまい人がわざと下手に書いているのではないか、と思い直したのだ。
 その証拠に作者の文駄多さんは、この作品の主人公の名前でもある。主人公は文章が下手な人間として描かれているだけに、その作品そのものが名文だったら、作品の内容そのものが嘘になってしまう。
 もし、この作品の拙い文章がそこまで計算に入れて意図的に書かれているものだったとしたら?
 俺は自らの憶測に突き動かされるかのように、この作品がメールで送信された時間の前後に幻想異端文学連盟にアクセスした人のIPアドレスをチェックした。犯人は作品を提出する前か後に、必ずこの場所に一度は訪れている。そう確信した俺は、滅多に見たこともないログ解析の一覧から、この作品を書いたと思われる「ある人物」の存在に行き当たった。
 しかしまさか、そんなはずはない。
 その「ある人物」とは、オンライン文学界でも希代の名文家として知られる「あのサイトの主催者」なのだ。いくら意図的だとは言え、あの人がこんな文章を書くのだろうか。
 いったい何が真実で、何が虚構なのか。
 考えれば考えるほど、思考は闇に引きずられるかの如く、謎に包まれてゆくのだった。
 傑作には程遠い。単なる駄作というには奥が深すぎる。
 まさにザッピー浅野特別賞に相応しい微妙な作品と言えるだろう。作品自らが「駄作」として貶されることを意図している作品というのも珍しいし、そうはさせるか、という俺の反骨精神も作用した上での今回の受賞の牽制攻撃である。
 ちなみに先日、天野氏と喫茶店で話していた時、俺がこれほどまでに頭を悩ませた難問を、彼がいともあっさりと全く別の方向から解決していたことに少なからず驚いた。
 天野「ねえ、ザッピーさん。あの『蜘蛛の糸』を書いた文駄多さんって、○○○さんでしょ」
 俺「あ、天野くん! ど、どうしてそれを!?」
 天野「だって、あそこに描かれている主人公って、要するに×××のことじゃないですか」
 俺「そ、そうか! そう言われてみれば……」
 一本とられました。
 まあ、そういうわけで、文駄多さん、受賞おめでとうございます。



 歌舞伎町のカニ道楽で、占い関係のクライアントの忘年会が催され、悠里ともども招待された。参加者はもちろん、俺と悠里と先方の代表以外はすべて占い師さん。しかも美女ぞろい。まさに瑞気が漂うような忘年会である。そこで交わされる会話も普通の飲み会と比べて異質な神秘性に満ち満ちていて、なかなか刺激的で面白いひとときだった。
 こんな忘年会なら何度でも出てみたいものである。


 今日はなんか、えらく長いな。

2003年 12月 16日 (火)
 レンタルビデオに行った。
 13日の日記にも書いたが、俺は現在、新しいビデオが見れない。だから古いビデオを借りてくるしかない。そしてちょうど今日はビデオ屋が全品100円レンタルデーだった。これを機会に、今日は20年くらい前にみたどうでもいい日本映画でも気まぐれに再見してみようと、森田芳光監督・とんねるず主演の「そろばんずく」と、村上龍原作脚本監督の「だいじょうぶマイフレンド」を借りてみた。
 コンセプトは、あの頃は「最高に面白い」あるいは「むちゃくちゃ酷い」と思ったが今見たら恐らくぜんぜん違う印象を持つだろうと思われる日本映画、である。
 早速見てみた。
 とんねるずの「そろばんずく」は当時駄作と酷評され、俺も試写会で見て呆れ返った覚えがあるが、あの頃とんねるずは売り出し中の人気お笑いコンビとして飛ぶ鳥落とす勢いだったし、森田芳光は若手映画監督として大林宣彦・伊丹十三などと並んで監督の名前で客が呼べる数少ない映画作家のひとりだった。そのため期待が高すぎたからとも言える。現在ではとんねるずはお笑いとしては一線を退いているし、森田は新作が出ても誰も森田だ何だと騒ぐほどのものはもうまったくない。「そろばんずく」みたいな映画は今くらいがちょうど熟成されて結構珍品として楽しめるほどのものがあるのではないかと踏んで見てみたのだが、誤算だった。今見ても思いきり酷かった。17年前に唯一笑えたシーンでさえ、もう笑えなかった。試みはまず失敗のスタートである。
 次に「だいじょうぶマイフレンド」を見た。これは20年前、小学生の頃祖父と劇場に見に行って、祖父は途中で「つまらんつまらん」とわめき出し、終いには「お前とはもう映画に行かんぞ!」と激怒して寝てしまったという苦い経験がセットでついているのだが、俺は子供心に意外と楽しんで見ていた覚えがある。しかし今見たらかなり酷いんじゃないかと思われ、そんな時空を越えた感性のギャップを楽しんでみようとワクワクしてビデオをデッキに突っ込んだ。見た。ちょっと予想していた感じと違った。確かにかなり酷いが、この底抜けの酷さの十万マイル奥底にそこはかとなく漂う妙な“悪くない感”は何だろう。演出や脚本など細部からしてズタズタながら、一応に工夫と言うか考えた痕跡が見受けられるのだ。これはちょうど、村上龍の小説を読んだ時の印象にそっくりだ。文章はあまりうまくないのに、行間から溢れる汗臭いながらも心地よい創意を感じさせる。何となく、村上龍の魅力が初めて解ったような気がした。
 しかし飛んでもない映画を作ってたんだな、昔の日本は。
 今日のビデオ鑑賞はいろいろな意味で、面白い過去の追体験であった。
 次は川島透監督・金子正次脚本の「チ・ン・ピ・ラ」なんぞを見てみたい。

2003年 12月 17日 (水)
 久しぶりにネット通販で大量の本を注文した。BK1で6冊。EasySeekで17冊。Yahooオークションで2冊。
 俺は常に30〜50冊くらいの本を平行して読んでいるが、事務所に積んである書物の山が近頃大分低くなってきたので、一気に仕入れることにしたのだ。
 買ったのは近頃はまっている老荘・神仙関係などの中国古典、漢詩、マサラ・ムービーなどの映画の本、映画の原作本、幻想怪奇小説、昔の探偵小説、坂口安吾、編集長に教えてもらった「ザ・ゴール」、プランシーの「地獄の辞典」、澁澤龍彦、しがないライトノベル、などなどだ。これらの本が今週から来週にかけて毎日ドカドカとうちの郵便受けに届きまくる。それを届いた先から読みしばいてゆくという寸法だ。
 楽しい年末年始になりそうである。

2003年 12月 18日 (木)
 六本木に行ったついでにバルチック・カレーを食う。カレーのチェーン店では俺はここが一番うまいと思う。今日初めて気が付いたのだが、ここはベースにロシア料理のボルシチを使っているそうだ。ボルシチの濃厚な味わいにカレーのルーがよく溶けこんでいて、むちゃくちゃうまい。

2003年 12月 19日 (金)
 長らく休止していた、うちで運営している某サイトをリニューアルオープンした。本日リニューアルしたのは、占い師の先生にこの日にオープンすると吉だと言われたからだ。
 話は変わるが、俺はとんかつが好きである。それで近所にとんかつ屋ができないものかと思っていたら、パークタワーの串焼き屋がつぶれて、とんかつのチェーン店「さぼてん」がオープンした。そのオープン日というのが本日、くしくも件のサイトのリニューアルの日と同じであった。
 そんなわけで今日は、悠里とつぶらを引きつれ、とんかつ屋でリニューアル記念の食事をした。
 無難な味で、うまかった。

2003年 12月 20日 (土)
 ジョン・ウー監督の映画「ソルジャー・ドッグス」を見た。俺は今までジョン・ウーの映画はあまり見たことがなかった。確か映画館で「フェイス・オフ」を見たのが唯一だったと思う。タランティーノが好きな監督で、先日見た「キル・ビル」の興奮も新しいことだし、ここらでジョン・ウーなどもぼちぼち見てゆこうと思って借りてきた。もちろん、環境的にうちは問題があるので、古い映画から順番に見て行くことになる。で、「ソルジャー・ドッグス」だ。前置きが長くなったが、これは凄いものを見た。かなりむちゃくちゃだが悪くない。細部まで工夫を凝らした残虐アクションにこびりついた、濃厚な人間ドラマが強烈である。特に、血で血を洗う戦場に女子供ひっぱりまわして戦いまくる不自然さが、たまらなくツボにはまった。

 石井隆の「ヌードの夜」という映画を見た。なんでこんな映画を借りてきたのかと言うと、団鬼六先生の「花と蛇」が石井隆監督、杉本彩主演で映画化され、そのうち原稿を書くことになりそうなので、参考にひとつ石井隆の映画を借りてみたのである。もちろん、環境的にうちは問題があるので、レンタルにある中で一番古い作品を借りてきた。一応、飽きずに見れたが、ジャンル的にまったく興味がない映画ので、なんとも言えない。日本映画としては面白い方なんじゃないだろうか。でもやっぱり雰囲気はテレビドラマくさい。

2003年 12月 21日 (日)
 せっせとあることをやっていた。

2003年 12月 22日 (月)
 せっせとあることをやっていた。
 なかなかカレーを作る暇がない。

2003年 12月 23日 (火)
 用あって浅草橋へ。
 前回浅草橋に来た時に、駅の近くの「水新菜館」というラーメン屋に行列が出来ているのを見つけて、ずっと気になっていた。ネットで検索してみたらかなりうまいらしい。次に浅草橋に行った時は絶対食うぞと決めていた。
 用事を終わらせ「水新菜館」に行ってみると、まだ開いてなかった。仕方なく近くの喫茶店・ベローチェで時間をつぶす。ベローチェと言えば、アイスクリームてんこもりのコーヒーゼリーである。飲み物はホットココアがなかったので、アイスココアを飲んだ。これらがいけなかった。
 「水新菜館」が開店し、入って、評判の広東麺を注文する。食った。あっさり系でとりとめのない味だったが、よく味わってみると、さすが有名店だけあって深いものがある。しかし、有名店だと知らなければ、恐らく何の変哲もない広東麺だと思って見逃してしまうような味だ。麺はモチモチして、いいかもしれない。まあ、とりあえず食ったぞ、と。
 広東麺はかなりボリュームがあり、その前にアイスクリームてんこもりのコーヒーゼリーとアイスココアを摂取していたため、かなりゲロゲロ状態になってしまった。帰りの電車が辛かった。死ぬかと思った。極悪がんぼ

 漫画「極悪がんぼ」の第五巻を購入。読んだ。面白かった。この漫画を読んでいると、金を儲けるぞ〜!という気になる。これはあくまでも気分の問題だけで、この漫画のような悪どいことをやるわけではない。

2003年 12月 24日 (水)
 せっせとあることをやっていた。

2003年 12月 25日 (木)
パワーストーン そういえばこの日記でまだ書いたことがなかったが、我が社は現在、パワーストーンの通信販売をやっている。もちろん、我が社の癒し系ビジネス事業部の悠里部長の企画である。
 パワーストーンというのも、こうして携わってみると実に深くて面白い。同じ石でもひとつひとつ表情や性格が違っていて、石は生き物なのだなと実感する。地球の大地の神秘である。
 興味ある方は、下記のアドレスをクリック!(そして買うように)

http://store.yahoo.co.jp/moon-store/

2003年 12月 26日 (金)
 眠かったので早く寝た。

2003年 12月 27日 (土)
 今日は我が社の仕事納め。だからと言って特別なことはなく、普通の一日だった。
 部屋にあるものをガタガタ動かすのがあまり好きではないので、大掃除などもやらなかった。
 ちなみに俺の仕事納めはまだだ。月曜日も火曜日もスケジュールがいっぱいである。

 親友である鬼脳さんが数年前に運営していたホームページを、幻想異端文学連盟にて意味なく復活させた。「意味なく」というのには実は意味がある。彼から長島さんのCVCと相互リンクを貼るためにホームページを復活させたいと連絡があったのが数カ月前。早速データを貰って用意したが、そのまま忙しさにかまけてアップするのを忘れている間にCVCが潰れてしまった。今となってはあまり意味が無くなってしまったが、ちょっと一段落ついて余裕ができたので、この度アップしてみた次第である。

2003年 12月 28日 (日)
ふたり 大林宣彦監督・石田ひかり主演の「ふたり」という映画を見た。
 例によって古い映画しか借りれないので、ここら辺で大林宣彦の映画など、まだ見ていない作品がかなりあるので、ぼちぼち見ていこうかなと、借りてきたのだ。大林の映画を見るのはほぼ十年ぶりである。ちなみに大林の「さびしんぼう」は日本映画の最高傑作のひとつだと思う。
 久々に見た大林宣彦の映像ワールドだが、これがまた素晴らしい。どこか懐かしさが香る不思議な感覚の映像美が、心を捉えて離さない。よく大林の特撮は下手クソだと非難する輩がいるが、これはわざと二十年前の特撮技術を使って叙情的な効果を醸し出しているのだ。
 というわけで結構しっとり魅入って見ていたが、しかし長い、長すぎる。いつになったら終わるんだこの映画。
 結局、見終わってジャケットを見てみたら、150分近くもあった。あまりにも長すぎて、ラストが訪れる頃には感動する体力もすっかり消耗していた。最後に流れる主題歌を大林宣彦本人が歌っていたのは「おお!」って感じだったけど。
 印象に残るシーンはいっぱいあるし、映画初主演の石田ひかりは好演だし、それ以上に中島朋子が素晴らしいし、その他のキャストも良いし、音楽も良いし、全体的に良い映画だと思うが、この長さは如何ともし難い。90分くらいにカットしたら傑作だろうなこの映画。そう言えば、大林宣彦の映画って退屈なところがあったっけな。
 大林の映像には酔いしれたいが、この退屈さをまた味わうかもしれないと思うと、次借りてくるのはちょっと勇気がいるなぁ。どうしようかなぁ。

2003年 12月 29日 (月)
 ジョン・ウー監督の「ウインドトーカーズ」という映画を見た。これは新しい映画だが、DVDを借りてiMacで見たのだ。
 ベタなストーリーに普通のアクションと、凡庸な出来だったが、楽しめた。
 随所にある日本語が出てくるシーンが非常に面白い(「ホリョダ!」「ニッポン、ダイスキデース!」)。
 微妙な感覚のズレはジョン・ウーの重要な魅力のひとつだよな。

ジーンズ ちょっと前にネット通販で購入したインド映画のDVD「ジーンズ/世界は二人のために」を見た。主演はアイシュ。音楽はラフマーン。
 万里の長城、ピサの斜塔、ローマのコロッセオ、ラスベガス、グランドキャニオン、パリのエッフェル塔、エジプトのピラミッド等、世界をまたにかけて壮大なロケーションを行った超大作だと聞いていた。見ながら、いつ話が世界に飛び出すのかと思っていたら、結局ストーリーはカリフォルニアとインドだけで、歌って踊るシーンになると、いきなり何の脈絡もなく場所が世界中へと、くるくる回るのだった。バカだ。
 この映画、かなり評判悪いが、それほどむちゃくちゃ悪くはなかった。それなりに楽しめた。インド映画を見る上での重要なポイントは、歌と踊りはもちろんだが、やはりこの道徳観だよな。
 ちなみに何で今になって慌ててこのDVDを見たのかというと、実は明日、また新たにインド映画のDVDが三つも届くのである。

2003年 12月 30日 (火)
 長電話と雑務の後、外出。六本木、上野とまわる。内勤の仕事もかなりたまっているが、今日明日と外出ばかりでなかなかこなす暇がない。大晦日と元旦は恐らく一番忙しくなるだろう。最大の難関は1月2日締め切りの、150枚近くの画像加工の仕事だ。年越しソバと格闘技観賞だけは押さえるが、基本的に年末年始もくそもない状況である。

2003年 12月 31日 (水)
 新宿駅前でホタルさんと待ち合わせ。
 腹が減っていたので、ハイチ料理屋で食事をしながら打ち合わせをすることにした。仕事の話は最初の5分ほどで終わり、その後は彼女の詩的で哲学的なお話を延々と聞かされた。
 いつもながら、彼女は非常によくしゃべる。
 ドライカレーにスプーンをさしこみ、こねくりまわしながら、それを口へ運ぶのはおおよそ十分に一回ほどもなく、ひたすら語っておられた。俺はただ感心して圧倒されるばかり。結局ドライカレーは半分も減らなかったが、ずいぶん時間がたっていた。
 ホタルさんと別れて、ちょっと遅れて次の打ち合わせ場所・千葉へと向かった。打ち合わせは三十分ほどで終わった。
 千葉に行ったついでに近くのクライアントのところに寄り、お歳暮を渡した。

 大晦日。
 平日と変わりなく仕事三昧の俺にとって、唯一大晦日らしいことと言えば、年越しソバと格闘技観賞である。
 悠里が具合が悪かったので、ひとりで年越しソバの材料を買いに出掛けた。どこで買っていいのかよく解らなかったので、風の吹く方へと当てもなく歩いてゆくと、いつのまにか京王デパートの地下へと辿り着いた。俗に言うデパチカというやつだ。
 ソバやエビのてんぷらをはじめ、湯葉やらスッポンスープやらほうれんそうやらカマンベールチーズやら、食いたいものをとりとめなくカゴに放り込み、レジへ持っていった。もちろん、モチを買うのも忘れなかった。
 家に帰り、ソバを作り、格闘技を見ながらズルズルすすった。うまかった。悠里もたいそう喜んでいた。

近藤有己 大晦日の夜と言えば、格闘技である。今年は猪木フェスティバル、K-1、プライドと、三大会が同時開催、しかも、テレビで同時放映という快挙である。一見つぶし合いに思えるが、格闘技界全体の活性化という点ではそれぞれ一役買っていると言える。K-1の選手、プライドの選手、プロレスの選手たちがそれぞれの大会にまんべんなく入り乱れて出場している状況もそれを物語っている。猪木フェスティバルにもと若乃花、K-1にもと貴乃花がゲストに出演していたりするところなど、その最たるものだ。
 さて、三大会のどれを見るかが問題だ。どれかひとつをビデオに録画し、他のひとつを見て、残りひとつは捨てるというのが常套手段だろうが、俺は最初に三大会それぞれの観たい試合をリストアップし、それに観たいものから順位をつけ、それぞれのチャンネルを渡り合いながら、試合が同時に放映されていると、順位の高いものを優先的に観賞するという方式をとった。幸いにも観たい試合は全部見れた。それにしても猪木フェスティバルだけ妙に浮いてたな。
 曙は思ったよりよく戦った。吉田とホイス戦、結果は引き分けだったが、事実上ホイスの圧勝だった。ベストバウトは近藤vsマリオ・スペーヒー戦で、あの近藤の膝蹴りは天才的。最後は桜庭とノゲイラ戦の超ハイレベルな寝技の攻防に心の底から酔いしれ、格闘技の夜は最高のクライマックスに幕を閉じた。写真は近藤。

 格闘技が終わり、謹賀新年の更新をするために、iBookを起動した。2003年はまもなく終わろうとしていた。


戻る
wwwnikki ver 0.641(20020410) (c)AuSYSTEM 2002