非幻想異端的日常
2004年 2月 1日 (日)
 悠里と西新宿を散歩。寿司を食ったらお腹が痛くなり、その後まだ買い物をする予定だったのだが、中止して家に帰った。あそこの寿司を食うと、決まってお腹がいたくなるのはなぜだろう。サーモンあたりに蟲でも入っているのかもしれない。

サロン・キティ ティント・ブラス監督の「サロン・キティ」を見た。知る人ぞ知る、イタリアはアンダーグラウンド映画の古典である。俺は昔よくこういうヨーロッパのアングラな映画を喜んで見ていた。いまはあまり興味ないのだが、むかし興味があった時に身損ねていた映画のひとつとして、何気なく借りてきてみた。俺は現在、環境的に古い映画しか借りてこれないのだ。まあ、思ったよりまともな映画で、それなりによかった。いま見ても十分楽しめた。

2004年 2月 2日 (月)
女神ミーナ インド映画「Padai Veetu Amman」を見た。主演はインドの女神・ミーナ。役柄は文字どおり女神である。まさにハマり役と言える。なかなかの珍品だった。
 これは俺がいままで見たインド映画で初めての「怪獣映画」である。訳の解らない蛇の化け物やら巨大カエルやら巨大イタチやら巨大仏像やらが下手クソなCGで暴れまくり、ミーナ扮する女神のパワーでことごとくあっさりノックアウト。
 歌と踊りもエキゾチックで素敵だが、とくに最後の、全身を緑色にペイントした怒りの女神・ミーナが三叉戟をふりまわし邪悪と戦うミュージカル・シーンはとてもカッコよかった。
 インド映画界にはまだまだこんな面白い作品が隠れている。
 ますますインド映画にどっぷりハマってゆく俺なのだった。

 なにげに悠里のKOKOMOを見たら、インド映画の記事がのっていて驚いた。こいつもなかなかハマっているようだ。

2004年 2月 3日 (火)
 人の紹介で新しいクライアントとお会いする。たのまれた仕事は以前たずさわった仕事とまったく同じもの。儲りそうなことは猫も杓子もやりはじめる。それでいて誰も儲っているやつなんていない。そこを何とかうまくやるのが我々の仕事なのだ。

2004年 2月 4日 (水)
 無性にまたインド料理が食いたくなって、悠里をひっぱってパークタワーのスパイスヘブンへ食事に行く。ナスとチキンのカレーを注文。
 「カルダモンいっぱい入れてくださいね〜」
 と店員さんのケンケンにリクエスト。本当にカルダモンの粒がいっぱい入ってて、うまくてガツガツ食いちらかした。
 帰り、レジで店長に「インド料理は中毒になりますね。最近は腹がへるとかならずインド料理が無性に食いたくなりますよ」と言うと、「二三日前にもそう言ってたお客さんがいました」と店長。
 やはり。インド料理は依存性があるのだ。

2004年 2月 5日 (木)
心狂おしく インド映画「Dil To Pagal Hai」を見た。主演はお馴染みのシャールクとマドゥーリ、それとカリシュマ・カプール(ちなみにこのふたりの女優、よく見るとインド人にはとても見えない顔してるよな)。監督はヤシュ・チョプラ(DDLJの監督のお父さんだな)。日本タイトルは「心狂おしく」。内容はインド版「フラッシュダンス」といったところ。
 ノリノリのダンス満載で、けっこう笑えて、クライマックスは不覚にも泣けた。かなり面白かっただけに、ところどころ目につくズサンなストーリー展開が残念だ。…残念といえば、最後の音楽がプツンと切れる終わり方も尻切れトンボでいけない。せっかく映画の世界に酔っていたものを、いきなり現実に引きずり出される。
 この映画最大の発見はカリシュマ・カプール。いままで見ていた写真や断片的なクリップで大女優の割には不細工な顔していると思っていたが、いやいや、魅力あふれるいい女優さんではないか。踊りも演技もうまいし、セクシーだし、それに何よりこの子はコメディもできる。それだけにストーリーの後半、存在感がうすれてしまったのはまた残念。シャールク、マドゥーリ、カリシュマ、アクシェイの四角関係がストーリーの骨子になっているのに、カリシュマだけ早々にレースからしりぞき、マドゥーリを擁護する立場に成り下がってしまっては、バランスが悪くなるのも当然だ。
 マドゥーリは相変わらず素晴らしかった。指先や首のわずかな動きひとつひとつにピンとはりつめたオーラが宿っていて、もう彼女が画面にうつっているだけでそれは忘れられない名シーンになってしまう。芸人ですな。
 最後に、こんなたわいないストーリーでなんで泣けるのかと考えたところ、やはり俳優の演技やノリで泣かせるのだ。ノリで飽きさせず、ノリで笑わせ、最後はノリで感動させるという、まさにノリでつくったような映画だった。とくにシャールクのあの笑い泣きの演技はいつもながら大したインパクトだ。
 いろいろ文句も書いたが、またひとつスゴいものを見たという事実には変わりない。

2004年 2月 6日 (金)
 本郷に行ったついでに、前から目をつけていた中華料理屋に入る。あんかけ石焼きチャーハンというのがあったので、それを注文。名前の通り、ビビンバと同じような熱い石の器にチャーハンをいれて、あんかけをかけて食べるというもの。アツアツでとてもうまかった。ラーメンのスープがついていて、そちらの方もかなり美味。次はラーメンを食おう。

2004年 2月 7日 (土)
王様の漢方 「王様の漢方」という小説を読んだ。中国での原題は「漢方道」。著者は牛波(ニュウポ)。訳は江戸木純。江戸木純?……まあいいや。
 一昨年日中合作で映像化された同名映画の原作で、映画は「見る薬膳」というキャッチがついていたが、原作はそのまんま「読む薬膳」と解説されている。それも道理、著者の牛波が映像化の監督もつとめ、その共同脚本として訳者の江戸木がクレジットされている。
 ストーリーはあまり重要でなく、各々のシーンにもりこまれた美容と健康に役立つ知識が興味深く、非常に面白かった。
 映画も近いうちに見てみたい。

2004年 2月 8日 (日)
アテナ・チュウ 香港映画「餌食」を見た。原題は「強姦2/制服誘惑」すごいタイトルだ。そのまんま、コスプレ・マニアの変態歯科医が制服を着た女を強姦しまくるという話。制作があのバリー・ウォン。大した映画じゃなかったが、婦人警官役のアテナ・チュウの美しさも含めて、それなりに楽しかった。欲をいえばアテナ・チュウもぜひ裸にむいて強姦してほしかったな。

 ヨドバシカメラでプリンタを購入。

2004年 2月 9日 (月)
 鼻がやたらモゴモゴしてクシャミが止まらない。
 まさか、そろそろか?

 久しぶりにケンタッキーフライドチキンをむさぼり食った。今日のチキンはいつもよりもちょっと味が落ちていた。油が古かったのかもしれない。
 ケンタッキーの後、ハイチ料理屋で食後のコーヒーを飲んだ。ここのコーヒーは天下一品だが、今日は砂糖とミルクの調合を間違えてちょっとまずかった。特にミルクは入れすぎると体調にひびく。

 ヨドバシカメラでモニタを購入。

2004年 2月 10日 (火)
 仕事で大塚。待ち時間ができてしまって、仕方なく散歩していたら、ブックオフがあったので思わず入る。iPodでインド音楽を聴きながらぶらぶら本棚を眺めていたら、昔読んでいたヤンマガで好きだった漫画「しあわせ団地」が目に止まり、思わず購入。さらに歩いてゆくと、コリン・ウィルソンの本が目に止まり、面白そうだったので思わず購入。
 コリン・ウィルソンの本は買ってもほとんど最初の方しか読まないのだが、どうしても表紙を見ると面白そうに思えてつい買ってしまう。彼の本は文字が多すぎるのだ。最後まで読ませる本を書くのならもう少し短く簡潔にまとめてほしい。

 「銀河鉄道999/エターナル・ファンタジー」なんぞを借りてきてみる。思ったより完成度は高かったが……。最悪だった。駄目じゃないか、スリーナインをこんな物語にしちゃあ。スリーナインはアルカディア号や宇宙戦艦ヤマトみたいな宇宙船とは違うぞ。スリーナインは敵か味方か解らないシステムに組み込まれた謎の乗り物であってしかるべきだ。鉄郎がピンチのときに窓をつきゃぶって助けにきたりはしない。スリーナインは駅にむかって一直線にやってくるべきだ。なんだこの乗組員たちのなれ合いは。ふざけすぎてる。やはり見るべきではなかった。すべて解っていたことだ。

2004年 2月 11日 (水)
 仕事で西船橋。そこの社長に「ちょっと2時間ばかしつきあってくれ」と言われて着いてゆくと、ヤマダ電機へと辿り着いた。パソコンを買いたいので一緒に見てほしいという要望だった。俺もそれほど詳しいわけじゃないのだが、とりあえず解る範囲でアドバイスをした。CPUとメモリとハードディスクを見て、値段を比較して割の良いものを買うように指導した。CPUもメモリもハードディスクも何だか解らないというので、パソコンが机の上だとすると、メモリは机の上の広さ、ハードディスクは引き出しの中のスペース、CPUは動く速さだと説明した。この説明である程度は正確に理解されるだろう。
 ついでにDVDプレーヤーのコーナーを見ているうちに、DVDプレーヤーがほしくなった。俺のコレクションは現在インド映画のDVDが加速度的に増加中だが、やはりiMacDVの小さな画面で見るよりも、ちゃんとしたテレビで見た方がいい。来月あたり買おう。ついでにテレビも新しく買おう。古いビデオしか見れない状況も苦しくなってきた。

 夜、編集長と長電話。最近いろいろ悩んでいて、いろいろ相談したかったのだが、話がつぎつぎに横道にそれ、結局なにがなんだか解らないまま電話を切った。でも合間にちょこちょこ貰った助言は大変ためになった。

2004年 2月 12日 (木)
 休日。
 悠里とルミネまで散歩。青山ブックセンターに寄る。
 嫌な予感がしたが、やはりぶらぶら眺めているうちに本を買うはめになった。予感というより、もう確信に近い。最近は本屋に入ると必ず何か買ってしまう。
 今日ついに読みかけの本が八十冊を超えた。読むのが遅いくせに本を買いすぎるのだ。また本を買うと、どうしてもすぐに読みたくなってしまう。だから読みかけの本が増える。さっき、家に積んであった読みかけの本の山が音をたてて崩れた。如何ともし難い。
 購入したのはウニカ・チュルンの「ジャスミンおとこ」他一冊。あと悠里に寺山修司の詩集をプレゼント。他一冊が面白くて夜、むさぼり読んだ。

 ルミネの地下にうまそうな台湾料理屋があったので入る。大根餅、春巻、スープ類、定食類などを適当に注文した。
 定食はまずかった。特に肉は豚も牛もカタくて食えたものではなかった。中華料理系で肉がカタいというのは初めての経験である。しかしそれ以外はとてもうまい。魚料理はふわり柔らかく、春巻は味があり、大根餅はモチモチしていて美味。なかでも最高だったのは朝鮮人参のスープ。朝鮮人参のしぼり汁のような苦いスープに、朝鮮人参のぶつ切りが入っている。ひとくち飲めば、体内に力がみなぎってくる。俺は朝鮮人参が大好物なので、これは大変気に入った。その他デザートに薬草のゼリーなど、なかなか渋いメニューが揃っていて、他にもいろいろありそうだ。
 また来よう。

2004年 2月 13日 (金)
 今日は事務所で仕事。最近は必ず一週間に一日だけずっと事務所にいる日をもうけている。でないと机仕事がたまる一方なのだ。この日は通常、昼食は食わず、ずっとおかきやクッキーをボリボリ食いながら仕事をする。おかきと言えば、最近は軟弱なおかきが増えて困る。おかきや煎餅といったものはカタくて噛むとバリバリ景気の良い音がするものでなくてはいけない。うまそうだと思っておかきを買って口に入れると、サクッ、などと情けない音がして失望したことが何度かあり、最近はおかきを買うときは必ず袋の上から爪を押しあて硬度をチェックする癖がついた。ただ柔らかくてもうまいおかきはたまにあることも確かである。

2004年 2月 14日 (土)
 バレンタインデー。
 女子社員とクライアントの優しいおばさまから義理チョコを貰う。
 甘いものは好きで、とくに甘いものが食べたいと思っていた時にタイミング良く渡されたので、素直に嬉しかった。

2004年 2月 15日 (日)
 テレビを買いたかったのだが、寒くて街まで歩く気にならず、今日はほとんど家にいた。
 夕方、悠里が腹が減ったと言うので久しぶりにデニーズに食事に行く。俺も昼くらいからソパ・デ・アホが飲みたくて仕方がなかったのでちょうどよかった。宇治緑茶を飲みながら野菜ミートスパゲティを食べ、ソパ・デ・アホをすすり、デザートには苺の菓子を食った。適度な量で、良い食事だった。
 家に帰ると、BK1から五冊ばかし本がとどいていた。そういえば頼んでたっけな。内田百間、坂口安吾、高島俊男、その他二册。
 高島俊男が面白くて、夜はこれをずっと読んでいた。

2004年 2月 16日 (月)
 70年代のアメリカ映画「コフィー」を見た。俗にいうブラックエクスプロイテーションフィルムというやつである。“黒人宣伝映画”とでも訳すか。ようするに黒人のために作られた、黒人が出てくる暴力的な低予算映画のことである。
パム・グリア 主演はパム・グリア。タランティーノの「ジャッキー・ブラウン」に主演した女優だ。彼女のファンだったタランティーノは、敬愛する彼女へのプレゼントとして「ジャッキー・ブラウン」を作った。映画監督としても、タランティーノは70年代のブラックエクスプロイテーションフィルムから多大な影響を受けている。
 タランティーノの映画の元ネタという点でも興味があったし、昔のマイナーなアメリカ映画は好きなので、映画そのものとしてもけっこう期待して見た。しかし思ったほどは面白くなかった。たまに血肉わきたつエキサイティングなシーンがあるが、全体的に退屈だった。クライマックスからラストにかけてはまあよかった。タランティーノに関しては、元ネタというより、かなりパクっていたことが判明。「パルプフィクション」や「キルビル」で見たようなシーンがいっぱい。
 それにしてもパム・グリアって昔はイイ女だったんだな。

 とつぜんだが、坂口安吾の描く女性像はとても素敵だと思う。
 あの夜長姫が彼の小説から名前を拝借したのもうなずける。

 テレビを買おうと、ヨドバシカメラに行く。
 ずらりと並ぶテレビを見てびっくり。液晶テレビとプラズマ・テレビしかない。昔ながらの普通のテレビはもう売ってないのだろうか。どれも高すぎて手が出ない。暫く来ないうちに電気製品はずいぶん変わったものだ。
 いろいろ見ているうちに、ホームシアターがほしくなった。巨大なワイド画面にステレオのスピーカー、ゆったりとしたソファーで、インド映画のDVDが見れたら、もう何も言うことはないだろう。金貯めて買うか。いやその前に広い部屋に越さないと。
 とりあえずテレビは諦め、アップル売り場に行き、仕事で必要だった160GBの外付けハードディスクを購入した。

 ある小説の短編集を読んでいた。どの短編も信じられないくらいつまらなく、もうとっくに投げてもよい段階だったが、文章が簡単で読みやすいこともあって、なんとなく読み続けていた。
 ある短編のところまできて、思わず本を閉じた。それはある実話に基づいた、事実のなにをも語っていない小説だった。とたんに気分が悪くなった。つまらないだけならそれは実力だから仕方がない。でもこういうのはちょっと我慢できない。小説をなめている。
 わざわざこんなもの出版することはないのにな。

 掲示板のアイコンに「ちびくろサンボ」と「ジャングル黒ベエ」を追加しようと思って探したがみつからなかった。ちびくろサンボはあるにはあったが、俺が小さいころ読んだ絵本の絵柄ではなかったのでやめた。
 ひとつ意外な事実を発見した。これまでちびくろサンボはてっきりアフリカ系の黒人だと思っていたのだが、どうもオリジナルの原作ではインド人だったらしい。
 そう言えばアフリカには虎はいない。しかしインドにはいる。ちょっと考えたら解りそうなことだったな。

2004年 2月 17日 (火)
 新宿東口喫茶店ボアでホタルさんと待ち合わせ。で打ち合わせ。喫茶店を出て、まつげとストッキングを買うのにつきあう。さすが新宿、いろいろと派手な店があるものだ。
 ホタルさんと別れて、近くのビデオ屋ラムタラに寄る。タランティーノの「ジャッキー・ブラウン」のビデオが千円であったので買った。昨日「コフィー」を見たばかりでこの出会いは運命的だ。映画や本との出会いは人との出会いと同じなのだ。縁という見えない絆でつながれている。あと前に盗まれたジム・キャリーの「ライヤーライヤー」のビデオが五百円で売ってたので買いなおした。それから「英雄〜HERO〜」のDVDが目に止まり、思わず買ってしまった。

 先週買ったばかりの小説の一ページ目を開くと、最近の本にしてはやたら文字が小さく、文章がつまっている感じがある。なんとなくうんざりして二ページでいったん本を閉じた。そういえば最近の本はどれも文字が大きく、行間が広くなっている。だからたまに文字が小さく詰まった本を見ると、息苦しさを感じることがある。
 まさか、俺も活字離れか?
 そう心配して「俺も活字離れかな…」と誰ともなしに呟いたら、側にいたKENちゃんが俺の回りに山と積まれた本をみて「ご冗談を」とばかりに笑っていた。
 本当にそう思ったのだが。

2004年 2月 18日 (水)
 事務所で風邪が流行っているので皆に元気をつけさせようと、朝鮮人参のスープをテイクアウトしにルミネ地下の台湾料理に寄った。確かここはすべてのメニューがテイクアウトできると思った。ところが行って聞いてみたら、スープ類だけは器がないので持ち帰りが出来ないとのことだった。仕方がないので俺の夕食として、シューマイとセンマイの炒め物とゴマ団子を買って帰った。
 ついでにさくら屋に寄ってテレビを買った。

ジャッキー・ブラウン 昨日買った「ジャッキー・ブラウン」のビデオを見た。公開当時、先行ロードショーのオールナイトで一度見て以来である。
 この映画はパルプ・フィクションやレザボア・ドッグスに熱狂したファンを失望させた作品として知られている。確かにこれまでのタランティーノの映画にあったような気のきいた会話がまるでなく、作り方も地味で平淡だ。俺も正直はじめて見たときは少し首をかしげた覚えがある。
 しかるに今日、初めて解った。これはこういった渋い雰囲気を狙って作られた映画なのだ。その証拠に全編を通してあらゆる伏線や象徴性が排除され、ひたすらストレートでストイックな演出に終始している。それは細かなカットバックやカメラアングルにいたるまで徹底している。映画に必要な無駄というものがまったくない。ひねりがない。例えば冒頭のパム・グリアは横顔のままカメラは動くことなく、カットも変わらない。デ・ニーロもブリジット・フォンダも後ろ姿のまま殺され死体は永遠に映されることがない。大きな盛り上がりもない。ただ映画は始まり、人はひたすらただしゃべり、ただ動き、そしてただ終わる。あらゆるセリフもシーンもオブジェも何をも意味せず、どこにも繋がらず、ただそこに在る。人間を描く天才であるタランティーノが、小細工を弄せずあるがままの人間を描いてみた結果である。
 「キルビル」や「フォールームズ」を見ても解るように、タランティーノは作品ごとにそのテーマに最適な作風を選ぶ。パルプ・フィクションやレザボア・ドッグスのような会話やテンポを期待すると「ジャッキー・ブラウン」は肩すかしをくらうが、じっくり見れば、じゅうぶん理解できるはずだ、このセンスが。
 そして何よりもストーリーは至極面白い。タランティーノはうまい監督だ。これがミスであるはずがない。デ・ニーロの使い方だけ見ても、こんな演出ができる男がただものであるはずがない。
 今こそ俺は断言しよう。これはパルプ・フィクションやレザボア・ドッグスと比べても最高に面白い映画なのだ。そしてタランティーノの最高傑作のひとつであることも疑いようのない事実である。
 それにしても、よくもまあこれだけ抑えに抑えたものだ。

2004年 2月 19日 (木)
 どこにも出かけず、ただ机に座り、iBookを前に、仕事をした。
 ジャッキー・ブラウンのような一日だった。

2004年 2月 20日 (金)
 新しいテレビが届いた。これで新しいビデオも借りてこれるようになった。

 午後、悠里とともに東京ビッグサイトにて行われたギフトショーにでかけた。天然石販売業者から招待状を貰ったのである。イベント好きなわれわれ二人としては、こういったものにはとりあえず参加せずにはいられない。それにちょうど仕入れたいと思っていた天然石がいくつかあった。
 到着して暫くするといきなり下痢になり、トイレで唸っていた。お陰でほとんど歩き回ることができず、ただ知り合いの業者の店で仕入れの打ち合わせをしただけだった。でもいいものが手に入った。
 6時からパーティーがあったので参加した(どちらかというとこちらの方が楽しみにしていた)。参加費が安かったのでやたら人が多く、最初は座るイスもたりない状態で、帰ろうかと思ったが、なんとか座れて、ホッとしたと思ったら長々とした退屈なスピーチがはじまり、退屈で死にそうになったが、なんとかその後は楽しい食事と歓談のひとときを過ごすことができた。食事はうまかった。特にマッシュポテトの上にサーモンがのったやつと、インド風カレーがうまかった。ケーキもあったが、女性客が最初からハイエナのようにとりまくったため、すぐになくなってしまい、俺は食えなかった。あと音楽がうるさかったのであまりおしゃべりができなかったのが残念だ。俺はうるさいところで人と話すのは非常に苦手である。
 同じテーブルに座っていた若い男に「会社の社長になる極意を教えてください」と聞かれたが、知らないので「気持ちだけで十分ですよ」と適当に答えておいた。そんなこと俺に聞くなよ。

2004年 2月 21日 (土)
 仕事の予定がひとつ中止になったので、午後ついにDVDプレーヤーを買いにいった。前日新しいテレビが届いたばかりだったので、これは自然な流れと言える。
 レコーダーやハードディスクはいらず、ただ再生のみできればよいので、一番安い7,979円のを買った。帰って開けてみると、立派なDVDプレーヤーである。これでなんら問題はない。
 ためしに何かソフトをつっこんで再生してみると、至極映像がきれいだ。音もいい。いままでiMacの汚い画面で見ていたのとはえらい違いである。
 驚いたことに、なんとビデオCDも見れるではないか。DVDプレーヤーというくらいだからDVDしか見れないのかと思っていたら、これは思いがけない収穫だった。最近のデジタル再生機器はあなどれない。香港女優の歌のプロモーションビデオとかインド雑貨の福袋に入っていたインド映画とか、いくつかビデオCDを持っていて、これまで見にくいiMacのQuickTimeでえっちらおっちら見ていたのが、晴れてテレビの大画面で快適に見れるようになった。
 新品のテレビ。新品のDVDプレーヤー。映画を見る素敵な環境が揃ったところで、夜はインド映画のDVDをかたっぱしからつっこみ、悦にはいっていた。

2004年 2月 22日 (日)
 とある相談会で神田神保町に行った。これはネットサーフィンしている途中になにげなく申し込んだら後日電話がかかってきて参加することになったものだ。ひょこひょこついてきた悠里を近くのヴェローチェに置いて会場におもむいた。相談会は思ったより早く終わった。結果は数週間後書状にして送られてくると言う。そこの会社のパンフレットをたくさん貰った。結局なんだったのか、よく解らなかった。数週間後にはわかるだろう。

 神田に行ったついでにネットで調べておいた「エチオピア」というカレー屋さんで夕食をとる。ここは通がかようお店で、独特のスパイスの味が慣れるとやみつきになるという。食ってみたが、ぜんぜんうまくなかった。ただ、後からまた食いたいと思うようになりそうな味だった。インド風カレーというのは得てしてそういったものが多いが、最初に食った段階で多少はうまくないと、まったくうまくないようでは、後でまた食いたいという気持ちが起こったとしても、また食いに来る気にはちょっとなれない。例えば俺の好きな渋谷のカレー屋「ムルギー」などは、何度か食っているうちにやみつきになるお店だが、やはり最初に食ったときも多少はうまいものだ。

 神田の後、仕事で上野方面へ。土曜日だと言うのにあれこれ行くところがある日である。ひょこひょこついてきた悠里をパチンコ屋においてクライアントのところへ向かった。用事を終わらせパチンコ屋に戻ると、悠里がフィーバーしていた。さすがである。

2004年 2月 23日 (月)
 見事に風邪を引いた。
 今年は俺、風邪引かないなぁ、などと悠長に笑っていたところが、最後の最後にこんな暖かくなってから引いてしまった。
 昼、栄養補給にルミネ地下の台湾料理屋に行って、朝鮮人参のスープ、豚足、薬草のゼリーなど、薬膳料理を食べた。とくに朝鮮人参のスープがきいて、一時的にかなり元気になった。しかし夕方また具合が悪くなった。
 だるくて頭がボーッとしてしょうがないので夜までずっと寝ていた。ただ寝ていた場所は事務所の床だったので、逆効果だったかもしれない。

 夜、Jさんが遊びに来た。彼は俺が昔いた会社の同僚である。会うのは実に8年ぶりである。彼とはずっと連絡をとりたいと思っていたし、今後のことでもいろいろと相談したいことがあったので、最近こちらから連絡をとって、来てもらったのだ。
 彼と悠里と三人で、デニーズで食事をした。
 彼はまだ以前の会社にいる。その会社と言うのがまたネタの宝庫で、話題は尽きることがなかった。面白い話もいろいろ聞けたし、実のある情報も入手できた。将来につながる提案もいくつかできた。かなり有意義なひとときだった。
 人間、変わるところはとことん変わるし、変わらないところは果てしなく変わらない。

2004年 2月 24日 (火)
 ホタルさんに彼女の参加しているSMのイベントの招待券をもらった。
 インド料理を食べてから、取材がてら見に行った。
 感想は一言、食事を先にしといてよかったな、と。

2004年 2月 25日 (水)
ローラ ドイツ映画「ラン・ローラ・ラン」のDVDを借りてきて見た。
 これは以前ビデオを借りてきて、途中でテープがヘッドにからまって見れなくなってしまってそれっきりになっていた曰く付きの映画である(2003/07/04,09の日記参照)。
 やっとぜんぶ見れた。思ったよりまともな映画だったな。ぶっとび方に最初と最後で温度差があるのはなんだろう。
 主人公がひたすら走っている映画というのは石井聰亙の「シャッフル」をはじめ、いままでたくさんあったが、これはその中でも最も内容と「走る」というテーマのバランスがよかったような気がする。その秘密はローラのあの、赤い髪の毛と、青いランニングシャツに隠されているのかもしれない。
 ちなみにこの映画の「走る」という行為を性交に置き換えると、すなわちアダルトビデオということにはならないだろうか。

2004年 2月 26日 (木)
 給料日。久しぶりに余裕のある月だった。
 余裕があるからといって安心してもいられない。広告代理店において、頑張った成果は二三ヶ月後に出る。いま余裕があるのは二三ヶ月前に頑張ったからだ。それと、外注スタッフをあまり使わなかったので、その分があまっているというのもある。
 いまの余裕はつぎの苦境を生む。これはくりかえされる法則だ。
 しかし、くりかえさないに越したことはない。

 給料が入ったので、またネットであれこれ、通販で購入した。
 今度は本は一冊もなく、すべてDVDだ。割合はインド映画9割、香港映画1割である。
 見つからないがどうしても欲しいものは、カナダから注文したりした。

2004年 2月 27日 (金)
ミーナ ミーナ主演のインド映画「DAYA」を見た。なんとなく雰囲気とかで大した映画じゃないだろうと思ってい見ていたが、最後まで見たら結構すごい名作っぽかった。よく出来てる。ところどころ完成度の非常に高いミュージカルがあり、クライマックスからラストにかけての演出はかなり力が入っていて脚本も説得力がある。感動したというより、あっけにとられた。
 ミーナは相変わらず魅力的だ。彼女を見ていると、自分はデブ専なんじゃないかと思えてくるから不思議である。

2004年 2月 28日 (土)
 どういうわけだか、我が家にDVDソフトが異常な勢いで増えている。この現象は、先日DVDプレーヤーを買ったことと無関係ではないだろう。……ああ、まただ。両手が勝手に動き出す。ネットの通販サイトにアクセスする。ショッピングカートのボタンを押しまくるもうひとりの自分がいる。誰か止めてくれ。

2004年 2月 29日 (日)
 Yahooオークションで落札したチャウ・シンチーの「喜劇王」のDVDが届いたので再見。我が生涯最強最大の萌えキャラであるピウピウの個性がまぶしい傑作である。

 深夜いきなりインドカレーが食べたくなり、我慢の限界を超えた。しかしもうスパイスヘブンは閉まっている。そういえば、先日スパイスヘブンのケンケンに南インド料理のレシピ本を借りたっけ。こうなったら自分で作ってしまおう。
 というわけで、いきなり衝動的にインド料理を作ることにした。
 スーパーに行って、ガラムマサラをはじめ、コリアンダー、ターメリック、おろしニンニク、おろし生姜、月桂樹の葉、チャツネ、ココナッツパウダー、タマネギ、骨つき鶏肉、トマトホールなどを買い込んだ。
 ボールに鶏肉を入れ、おろし生姜、おろしニンニク、そしてスパイス各種をぶちこみ、よくまぜて一時間ほどマリネする。その間、米を研ぎ、炊飯器のスイッチを入れる。タマネギを千切りにし、なべにぶちこみ四十分ほど中火で飴色になるまで炒める。そこにマリネしておいた鶏肉を入れ、トマトホールを流し込み、あとは煮込むだけ。
 なんとなくドロドロしすぎていてご飯にかけて食べるにはちょっと違和感があるので、水をざぶざぶ入れてみた。そしたらやたら水っぽくなってしまい、かなり味が薄くなってしまった。仕方がないのでまたスパイス各種を大量にぶちこむ。それでもまだかなり水っぽいので、そのまま蓋をせずに暫く煮込んだ。
 数時間たってようやくいい案配にドロドロしてきたので、味見をしてみると、なんとなくたよりない。インド料理レストランで食べる味には何かが足りない。
 買ったスパイスを端から匂いをかいでみる。ターメリック、足りないものの正体はこいつか? とりあえずターメリックをまたドサッとぶちこむ。なんとなく香りは近くなってきた。しかしまだ味に深みがたりない。
 思案して、チャツネをちょっと多めに入れ、ついでに蜂蜜もちょろっと入れてみる。味見をしてみると、なかなか良くなってきた。仕上げにココナッツパウダーを入れ、ひと煮立ちさせ、完成した。
 ご飯にかけて食べてみると、これがなかなか美味であった。最初は失敗の予感がただよっていたが、最後はかなりそれっぽい味になったではないか。生まれて初めてインド料理を作ってみた割には上出来だ。
 悠里さん、どうですか、食べてみた感想は。
 「いままでザッピーが作ったカレーで一番おいしい」
 ありがとうございます。


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